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大学探訪
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相変わらずな二人です。~~旦( ̄▽ ̄*)
―――――――――――――――――――
緑の木々が並ぶ舗装された道路の両サイドには、赤茶色とグレーの壁の配列がとてもお洒落な、八階建てぐらいの建物がそびえ立っている。
その間の道路はと言うと、武骨な黒いアスファルトではなく、白、グレー、黒、エンジの石畳になっていて何だか歩きやすい。道の脇の草も雑草ではなく色とりどりの花がところどころに植えられていて、舗装された石畳を引き立たせている。
新川透の通うR大のキャンパスは、開設してからまだ7年と非常に新しい。講義棟や研究棟だけでなく、図書館や科学館、はては自然公園まであるので、とにかくやたら広い。
工学部系だけでこの広さとは。何て言うか、贅沢だよねー。
「ふわあ、すごーい」
思わず声を上げると、私の右側を歩いていた新川透がクスッと笑った。
「Y大もかなり広いでしょ。確か、ランドと同じ広さじゃなかった?」
「そうだけど、全学部が集まってるからという話もあるしね」
「確かゴルフ場を開拓してキャンパス作ったって話じゃなかったかな、Y大は」
「詳しいね……」
今日の新川透は、何だかゴキゲンだし多弁だ。何がそんなに嬉しいのか、目尻が下がりっぱなし。
傍目にも浮かれてるのが分かるのか、それともあまりにも釣り合っていない私が滑稽なのか、すれ違う人が私達の方をチラチラと見ていく。
今日は何かというと、前に潰れた『待ち合わせイベント』のリベンジです。
「もう東京駅みたいな異常にたくさん人がいるところはやめて!」
「ちゃんと準備する時間をちょうだい!」
と訴えたところ、
「じゃあウチのキャンパスに来てくれる? 水曜日は確か少し早く終わるよね?」
と言われた。
何が「じゃあ」なのかよくわからないけど、他の大学のキャンパスって面白そうだし、大学なら大学生しかいないしいいか、と思って軽く了承した。
それにここなら新川透が毎日通っている場所だから、そうオカシなこともしないだろうし。
という訳で、正門で待ち合わせして無事イベントはクリアしたんだけどね。
実際は……確かに東京駅よりは全然マシ、だけど意外に人がいる!
で、女子学生も多い! 何か意味ありげな視線をめっちゃ感じる!
これはあれかなー、何であんなイケメンにこんなちんちくりんが、とかなんだろうか。
人相が変わらない程度ではあるものの、ちゃんとメイクしてきたんだけどなー。
「莉子、何でそんなソワソワしてるの?」
「え、あ、いや」
視線が気になる、といったところで新川透には通用しないのだ。
何しろ殆どスルーだしね。何人かの学生が「あ」みたいな顔をしてたけど、さっと右手で制して
「悪いけど話しかけないで」
みたいなオーラを出してたからなあ。
友達に紹介するよ的なイベントは、疲れるし気が重いんで絶対に嫌。
だからこれはこれでいいんだけど、去っていった学友らしき人達の様子が気になるんだよなあ。
お化けでも見たような驚愕の表情を浮かべていたのよね。
「あのね、何人かちょっと挨拶した人がいるじゃない」
「うん」
「軒並み顔が引き攣ってたのが気になって。私、そんなに変だった?」
新川透がリアクションを返した人には、一応軽く頭は下げた。だって知らない人だからってシカトするのも変だと思ったし。
だけど表情が固かったかなあ。それとも動きがぎこちなかった?
「莉子はおかしくないよ。多分、俺だね」
「へ?」
「きっと普段と様子が違うからだろうね」
「ふうん……」
普段の様子、か。
結局、編入学で二年から入った新川透だけど、どういうキャンパスライフを送っているんだろう。
聞こうと思ったところで、大きなガラス窓がぐるりと取り囲んでいる建物が目に映った。建物の一、二階部分だけ外に少し飛び出している。
「ここが学食。入ろうか」
と言われ、新川透は私の返事を待たずに背中を軽く押して促した。
まぁ、他の大学の学食に来る機会なんてそうそうないだろうし、興味が出てきたので素直に従うことにする。
学食は一階と二階があって、一階がカフェテリア、二階がフードコート。私たちは一階のカフェテリアに入った。
中はかなり広くて、天井が高い。丸い太い柱が等間隔に並んでいて緩やかな曲線を描いている。照明も明るすぎず暗すぎず落ち着く感じ。
六人掛けの白いテーブルが並んでいて……そのうちの一角に、どうやら新川透の顔見知りのグループがいたようだ。
だけど新川透は一瞥しただけで表情も変えず、そのままそのグループからは少しだけ離れた窓際の席に私を案内した。
な、何か微妙な距離ね。声をかける訳でもないのに極端に遠ざかる訳でもなく、聞こうと思えば会話の内容が聞こえそうな距離。
もう夕方だから食堂はガラガラだ。離れた席なら、どれだけでもあるのに。
そのグループはというと、男性が三人に女性が一人というやや片寄った構成。日本人離れした目鼻立ちくっきりの華やかな顔の美人さんが、色んなタイプの男の人をはべらせている感じ。
そしてその美女はというと、私を見てピクリと右の眉を上げた。そのあと何か、四人でゴチョゴチョ話をしている。
「莉子はこっちね」
と言い、新川透が椅子を引いてくれた。
まぁ、こっち側なら私は彼らに背を向けることになる。これ以上彼らを気にしなくてもいいからいっか、と思いながら椅子に腰かけた。
ちょっと待ってて、と言い残し、新川透が飲み物を取りに行く。
ボケーッと窓の外の景色を見ながら待っているふりをしつつ、全神経を背後に集中させた。
会話は聞こえない……だけど、視線は感じる。
これはアレだな、あの綺麗な女の人と何かあったな、きっと……。
そーゆー面倒くさいことに私を巻き込まないでよ、もう。
とりあえず背筋は伸ばしておこう、と向き直ったところで、新川透がアイスコーヒー二つを手に持ち現れた。
「お待たせ」
と言いながらテーブルに並べ、私の向かい側に座る。
視線は……流れてないね。私の方しか見てないや。
あの女の人と何かあった訳じゃないのかな。私の気にし過ぎかな?
「……後ろの人、知り合い?」
背後のグループには聞こえないぐらいの声でこそっと聞いてみると、新川透の右目が若干細くなった。やや渋い顔。
「顔を知っていて話をしたことがあるというのを知り合いと言うなら、一応そうなるね」
随分持って回った言い方だなあ。あまりいい感情を持っていないことは分かる。
「挨拶しなくていいの?」
「サークルに入ってくれってうるさくてね。だからいいよ」
「何のサークル?」
「んー、何か説明してたけど……要は遊びサークルだし、どうでもいい」
ちょ、ちょっと、聞こえます! やめてー!
背中から何とも言えない気配が伝わってくるんですけどー!
今、急にボリューム上げたよね。確信犯か!
「ちょっと、何を企んでるの?」
「ん? 何も?」
「だって、あの人たちがこの時間ここにいることを知ってて、私をここに連れてきたでしょう」
私が再び声をひそめて言うと、新川透は少しだけ驚いたように目を見開いた。
「あれ、よく分かったね」
「分かるよ……」
溜息をつきながらズズズッとストローでコーヒーを啜る。目の前の新川透はと言うと、さすがに少し申し訳なさそうな顔をしたものの、すぐにクイッと口の右端を上げた。
あ、コレ、久々の魔王スマイルですね。よからぬことを考えているときの顔だ。他の人にはわからないだろうけど。
「どれだけ自分に自信があるのか知らないけど、アプローチがしつこくて。莉子と一緒にいるところを見せた方が話が早いな、と」
「逆効果じゃない?」
「どうして?」
「あの程度なら敵じゃない、イケるって思われるよ」
新川透の瞳には8年越しの強力謎フィルターがかかってるから、分からないだろうけど。
客観的に見たら地味で冴えない女の子ですよ、私は。
「えー? こんなに可愛いのに?」
「ちょっ……やめて、こんなとこで!」
右手を伸ばして頭をなでなでされたので慌ててペシッと叩き落す。
ここ、あなたの本拠地でしょ! これから毎日生活していくところ! 逃げも隠れもできないところ!
どういう神経してるの、恥ずかしくないの!?
ドンと両手の拳を握ってテーブルに突きあぐあぐしていると、新川透は楽しそうに「ははは」と笑い、私に叩かれた右手を嬉しそうに左手でさすっている。
「まぁ、それはさておき」
「さておかれた!」
「莉子が思っている感じじゃない。どうもパンダにしたいらしいんだよね」
「パンダ?」
「構ってられないから、そういうの」
客寄せパンダってことかな。あの女王様然としている女の人が運営しているサークルの。
確かにタイプの違うまぁまぁのイケメンさんを引き連れてるけどね。
「だからこうやってイチャイチャしてみせればね、戦意喪失するんじゃないかと思って」
「いっ……」
「莉子の可愛い恥ずかしそうな顔も見れるし、一石二鳥だよね」
「あぐっ……」
イチャイチャって何だ!? っていうか、イチャイチャしているように見えるの!? それは恥ずかしい!
そして赤面する私を見たがるというそのヘキ、マジで直してほしい! いつになったら飽きてくれるんだろう!
いや、私自身に飽きられたら困るけど……こ、困るけども!
「じゃあ、目的は達成したからいいよね。もう出よう」
「まぁまぁ、せっかくだからもう少し楽しもうよ」
楽しんでるのはお前だけだ!
と叫びたくなったけど、まだアイスコーヒーも飲み終えてないのでおとなしく引き下がる。ゴゴゴッと一気飲みするのもみっともないしね。
新川透にコナをかけてきた華やか美人に対抗する訳じゃないけど……ほら、新川透に恥をかかせる訳にもいかないし。
ねっ、そーゆーこと!
「莉子の大学の学食は? どういう感じ?」
「行ったことないから分かんない」
「ないの? 何で?」
「何でって言われても……用事が無いから」
「だって、お昼は?」
「食べてないもん」
何気なくそう答えた途端、正面から『ピキッ』みたいな音が聞こえた気がした。
アイスコーヒーから目を離して顔を上げると、口の左端がヒクヒクした微妙な笑顔の新川透と目が合う。
あれっ? 何か様子が変だぞ?
「食べてないの?」
「だって、朝と夜はマンション一階のカフェでしっかり食べてるし」
「で?」
「掃除婦してた頃と違ってそんなにお腹すかないし」
「ほう」
「だから食べなくても……」
「莉ぃ子ぉ~~」
「ひゃい!?」
地の底を這うような声が聞こえてきて、肩がビクッと震える。
しまった、ちょっと噛んでしまった。
新川透の表情から笑顔が消えた。腕を組んでふんぞり返り、半目で私を見下ろしている。
「一日三食、人として基本でしょ?」
「えっと……江戸時代までは一日二食だったらしいよ」
「そんな四百年前の話を持ち出して、俺が納得するとでも?」
「えー、だってさぁ……」
ちらっとカーディガンに包まれた自分の右腕に目を落とす。
一食ぐらい抜いても問題なく動けるし、その分食費が浮くし。
……というのもあるけど、何て言うかな、ちょっと太った気がするんだよね。
だから食べなくても大丈夫なら食べるのは無駄と言うか……。
「まさかダイエットとか考えた?」
「いやっ、そこまでは考えてないけど!」
何でそんなに鋭いの! 私のちょっとした仕草であっという間に見抜きやがりましたよ、この人!
怖いわ、この観察力! ストーカー歴8年は伊達じゃないね!
って、褒めてどうする!
「えーと、ちょっと丸くなったかな、とは思って」
「それは健康的になったって言うの。せっかくいい感じになってきたのに」
「いい感じ?」
「抱き心地が柔らかくていい感じ」
「……っ、バッカじゃないの!?」
私が叫んだのと同時に、背後から「ばふぅ!」みたいな変な音が聞こえてきた。
そりゃそうだよ、日中の食堂で言う言葉じゃない!
しかもしっかり聞こえてるじゃん、後ろの人達に!
そして当の本人はというと、余裕の笑顔だ。
この人本当に、自分がどう思われても全然気にしないんだね!
「莉子が聞き返すから……」
「真っすぐ答えろって言ってない!」
「え? これでも婉曲表現だよ? 胸が育ったとか言ってないでしょ」
「ば……バカバカバカ! 最っ低!」
これ以上ここにはいられない!
ガタンッと椅子が倒れるぐらいの勢いで猛然と立ち上がる。
「もう帰る!」
「そうだね、帰ろうか」
空になった二人分のグラスを持って、新川透も優雅な仕草で席を立つ。
「莉子、出口はこっち」
「きゃんっ!」
頭に血が昇ったついでに目の前もよく見えてなかったようで、グンと腕を引っ張られた。
新川透は器用にも右手でグラスを二つ持ち、左手で私の肩を抱いている。
「離して!」
「迷子になりそうだから」
「歩ける! 一人で歩けますー!」
何なの、この公開処刑! 非常識でしょ、どう考えても!
あんたは一体何をしたかったの、本当に!
「まぁ、勝手にお昼を抜いてた罰としてはこんなもんでいいかな」
「罰だったんだ! ひどい!」
「ひどくない。本当に放っておけないね、莉子は」
「気にしすぎだよ! 過保護! 過保護過保護~~!」
「何と言われようとそこは譲れない」
「ぐうぅ……」
「しかし困った子だね。これから毎日どんな昼食をとったか報告してもらおうか」
「そこまで管理する必要ある!?」
「あるね。莉子はあまりにも食事に無頓着すぎる」
「これから毎日ちゃんと食べます! ほら、これでいいでしょ!?」
* * *
引きずられるようにして歩きながら、そんなやりとりをしていたんだけども。
翌朝7時半頃、新川透に一階のエントランスに呼び出され。
赤いギンガムチェックの巾着袋に包まれたお弁当箱を手渡されました。
手にしたお弁当箱は、ほんのり温かくて。
こんなの何年ぶりだろう、とかちょっとしんみりしつつも。
そっと覗くと、スリムな二段重ねのお弁当箱。淡いピンク色に花の絵のワンポイントがある可愛い感じで、どう見ても女性用。
昨日の今日なのに、一体いつ用意したんだろう、とちょっと怖くなりました。
……まさか同棲するつもりだった頃に買っておいたんだろうか?
だとしたら、新川透の想像する『めくるめく同棲生活』ってどんなのだったんだろう?
―――――――――――――――――――――――
『大学探訪』の裏側を、ちょっとだけ。d( ̄▽ ̄*)
~莉子と新川透を見送った学友3人組~
A「……あれ、妹だと思う? それとも……」
B「彼女だろ、絶対!」
C「妹にアレじゃ逆にヤベーよ」
B「すっごくデレデレだったよな」
C「俺、新川さんは女嫌いだと思ってた」
B「俺も。声かけられたらあからさまに嫌そうな顔してたもんな」
A「彼女、ちっちゃかったねー」
C「確かに」
B「俺は一瞬過ぎてよくわからなかった」
A「新川さんの陰からペコってお辞儀してたのが可愛かったよ」
C「お前、ソレ絶対に新川さんに言うなよ」
A「何で?」
C「だって咄嗟に隠してたじゃん、俺たちから!」
A「どういうこと?」
B「牽制されたよな。見せつけといて見るな、って何なんだ」
A「なーなー、どういうこと?」
C「お前はとりあえず口をつぐんどけ」
B「そうそう」
C「だけどヤベーよな。高校生ぐらいじゃなかった?」
B「中学生だったりして」
C「ヤメロ。あり得ん」
A「新川さんっていくつだっけ?」
C「確か6つ上じゃなかったか?」
B「……ろりこ……」
C「言うな」
A「何かさあ、姫と執事みたいだったよねー」
C「お前は平和だな」
B「ところでさ。明日、どうする?」
C「何が?」
B「昨日のあの子、彼女ですか?って、聞く?」
C「うーん」
B「スルーした方が無難かな」
C「どうだろ。微妙……」
B「でも絶対、俺たちが女子連中に聞かれるよね」
C「はぁ、どうすっかなー」
A「え? 普通に聞けばいいんじゃないの?」
B「……フツー……」
C「そっか。最初に新川さんに声をかけたのもお前だったよな」
A「うん」
B「よし、行ってこい」
A「任せてー。えーと……」
C「わっ、バカ、今じゃねぇよ!」
A「え? メールぐらいよくない?」
B「邪魔したら殺される、気がする」
* * *
はたから見ると、目の前の小石すら避けんばかりの勢いで新川透に世話をされているのだが、莉子はもうすっかり慣れてしまってまったく気づいていないのであった……。( ̄▽ ̄;)
―――――――――――――――――――
緑の木々が並ぶ舗装された道路の両サイドには、赤茶色とグレーの壁の配列がとてもお洒落な、八階建てぐらいの建物がそびえ立っている。
その間の道路はと言うと、武骨な黒いアスファルトではなく、白、グレー、黒、エンジの石畳になっていて何だか歩きやすい。道の脇の草も雑草ではなく色とりどりの花がところどころに植えられていて、舗装された石畳を引き立たせている。
新川透の通うR大のキャンパスは、開設してからまだ7年と非常に新しい。講義棟や研究棟だけでなく、図書館や科学館、はては自然公園まであるので、とにかくやたら広い。
工学部系だけでこの広さとは。何て言うか、贅沢だよねー。
「ふわあ、すごーい」
思わず声を上げると、私の右側を歩いていた新川透がクスッと笑った。
「Y大もかなり広いでしょ。確か、ランドと同じ広さじゃなかった?」
「そうだけど、全学部が集まってるからという話もあるしね」
「確かゴルフ場を開拓してキャンパス作ったって話じゃなかったかな、Y大は」
「詳しいね……」
今日の新川透は、何だかゴキゲンだし多弁だ。何がそんなに嬉しいのか、目尻が下がりっぱなし。
傍目にも浮かれてるのが分かるのか、それともあまりにも釣り合っていない私が滑稽なのか、すれ違う人が私達の方をチラチラと見ていく。
今日は何かというと、前に潰れた『待ち合わせイベント』のリベンジです。
「もう東京駅みたいな異常にたくさん人がいるところはやめて!」
「ちゃんと準備する時間をちょうだい!」
と訴えたところ、
「じゃあウチのキャンパスに来てくれる? 水曜日は確か少し早く終わるよね?」
と言われた。
何が「じゃあ」なのかよくわからないけど、他の大学のキャンパスって面白そうだし、大学なら大学生しかいないしいいか、と思って軽く了承した。
それにここなら新川透が毎日通っている場所だから、そうオカシなこともしないだろうし。
という訳で、正門で待ち合わせして無事イベントはクリアしたんだけどね。
実際は……確かに東京駅よりは全然マシ、だけど意外に人がいる!
で、女子学生も多い! 何か意味ありげな視線をめっちゃ感じる!
これはあれかなー、何であんなイケメンにこんなちんちくりんが、とかなんだろうか。
人相が変わらない程度ではあるものの、ちゃんとメイクしてきたんだけどなー。
「莉子、何でそんなソワソワしてるの?」
「え、あ、いや」
視線が気になる、といったところで新川透には通用しないのだ。
何しろ殆どスルーだしね。何人かの学生が「あ」みたいな顔をしてたけど、さっと右手で制して
「悪いけど話しかけないで」
みたいなオーラを出してたからなあ。
友達に紹介するよ的なイベントは、疲れるし気が重いんで絶対に嫌。
だからこれはこれでいいんだけど、去っていった学友らしき人達の様子が気になるんだよなあ。
お化けでも見たような驚愕の表情を浮かべていたのよね。
「あのね、何人かちょっと挨拶した人がいるじゃない」
「うん」
「軒並み顔が引き攣ってたのが気になって。私、そんなに変だった?」
新川透がリアクションを返した人には、一応軽く頭は下げた。だって知らない人だからってシカトするのも変だと思ったし。
だけど表情が固かったかなあ。それとも動きがぎこちなかった?
「莉子はおかしくないよ。多分、俺だね」
「へ?」
「きっと普段と様子が違うからだろうね」
「ふうん……」
普段の様子、か。
結局、編入学で二年から入った新川透だけど、どういうキャンパスライフを送っているんだろう。
聞こうと思ったところで、大きなガラス窓がぐるりと取り囲んでいる建物が目に映った。建物の一、二階部分だけ外に少し飛び出している。
「ここが学食。入ろうか」
と言われ、新川透は私の返事を待たずに背中を軽く押して促した。
まぁ、他の大学の学食に来る機会なんてそうそうないだろうし、興味が出てきたので素直に従うことにする。
学食は一階と二階があって、一階がカフェテリア、二階がフードコート。私たちは一階のカフェテリアに入った。
中はかなり広くて、天井が高い。丸い太い柱が等間隔に並んでいて緩やかな曲線を描いている。照明も明るすぎず暗すぎず落ち着く感じ。
六人掛けの白いテーブルが並んでいて……そのうちの一角に、どうやら新川透の顔見知りのグループがいたようだ。
だけど新川透は一瞥しただけで表情も変えず、そのままそのグループからは少しだけ離れた窓際の席に私を案内した。
な、何か微妙な距離ね。声をかける訳でもないのに極端に遠ざかる訳でもなく、聞こうと思えば会話の内容が聞こえそうな距離。
もう夕方だから食堂はガラガラだ。離れた席なら、どれだけでもあるのに。
そのグループはというと、男性が三人に女性が一人というやや片寄った構成。日本人離れした目鼻立ちくっきりの華やかな顔の美人さんが、色んなタイプの男の人をはべらせている感じ。
そしてその美女はというと、私を見てピクリと右の眉を上げた。そのあと何か、四人でゴチョゴチョ話をしている。
「莉子はこっちね」
と言い、新川透が椅子を引いてくれた。
まぁ、こっち側なら私は彼らに背を向けることになる。これ以上彼らを気にしなくてもいいからいっか、と思いながら椅子に腰かけた。
ちょっと待ってて、と言い残し、新川透が飲み物を取りに行く。
ボケーッと窓の外の景色を見ながら待っているふりをしつつ、全神経を背後に集中させた。
会話は聞こえない……だけど、視線は感じる。
これはアレだな、あの綺麗な女の人と何かあったな、きっと……。
そーゆー面倒くさいことに私を巻き込まないでよ、もう。
とりあえず背筋は伸ばしておこう、と向き直ったところで、新川透がアイスコーヒー二つを手に持ち現れた。
「お待たせ」
と言いながらテーブルに並べ、私の向かい側に座る。
視線は……流れてないね。私の方しか見てないや。
あの女の人と何かあった訳じゃないのかな。私の気にし過ぎかな?
「……後ろの人、知り合い?」
背後のグループには聞こえないぐらいの声でこそっと聞いてみると、新川透の右目が若干細くなった。やや渋い顔。
「顔を知っていて話をしたことがあるというのを知り合いと言うなら、一応そうなるね」
随分持って回った言い方だなあ。あまりいい感情を持っていないことは分かる。
「挨拶しなくていいの?」
「サークルに入ってくれってうるさくてね。だからいいよ」
「何のサークル?」
「んー、何か説明してたけど……要は遊びサークルだし、どうでもいい」
ちょ、ちょっと、聞こえます! やめてー!
背中から何とも言えない気配が伝わってくるんですけどー!
今、急にボリューム上げたよね。確信犯か!
「ちょっと、何を企んでるの?」
「ん? 何も?」
「だって、あの人たちがこの時間ここにいることを知ってて、私をここに連れてきたでしょう」
私が再び声をひそめて言うと、新川透は少しだけ驚いたように目を見開いた。
「あれ、よく分かったね」
「分かるよ……」
溜息をつきながらズズズッとストローでコーヒーを啜る。目の前の新川透はと言うと、さすがに少し申し訳なさそうな顔をしたものの、すぐにクイッと口の右端を上げた。
あ、コレ、久々の魔王スマイルですね。よからぬことを考えているときの顔だ。他の人にはわからないだろうけど。
「どれだけ自分に自信があるのか知らないけど、アプローチがしつこくて。莉子と一緒にいるところを見せた方が話が早いな、と」
「逆効果じゃない?」
「どうして?」
「あの程度なら敵じゃない、イケるって思われるよ」
新川透の瞳には8年越しの強力謎フィルターがかかってるから、分からないだろうけど。
客観的に見たら地味で冴えない女の子ですよ、私は。
「えー? こんなに可愛いのに?」
「ちょっ……やめて、こんなとこで!」
右手を伸ばして頭をなでなでされたので慌ててペシッと叩き落す。
ここ、あなたの本拠地でしょ! これから毎日生活していくところ! 逃げも隠れもできないところ!
どういう神経してるの、恥ずかしくないの!?
ドンと両手の拳を握ってテーブルに突きあぐあぐしていると、新川透は楽しそうに「ははは」と笑い、私に叩かれた右手を嬉しそうに左手でさすっている。
「まぁ、それはさておき」
「さておかれた!」
「莉子が思っている感じじゃない。どうもパンダにしたいらしいんだよね」
「パンダ?」
「構ってられないから、そういうの」
客寄せパンダってことかな。あの女王様然としている女の人が運営しているサークルの。
確かにタイプの違うまぁまぁのイケメンさんを引き連れてるけどね。
「だからこうやってイチャイチャしてみせればね、戦意喪失するんじゃないかと思って」
「いっ……」
「莉子の可愛い恥ずかしそうな顔も見れるし、一石二鳥だよね」
「あぐっ……」
イチャイチャって何だ!? っていうか、イチャイチャしているように見えるの!? それは恥ずかしい!
そして赤面する私を見たがるというそのヘキ、マジで直してほしい! いつになったら飽きてくれるんだろう!
いや、私自身に飽きられたら困るけど……こ、困るけども!
「じゃあ、目的は達成したからいいよね。もう出よう」
「まぁまぁ、せっかくだからもう少し楽しもうよ」
楽しんでるのはお前だけだ!
と叫びたくなったけど、まだアイスコーヒーも飲み終えてないのでおとなしく引き下がる。ゴゴゴッと一気飲みするのもみっともないしね。
新川透にコナをかけてきた華やか美人に対抗する訳じゃないけど……ほら、新川透に恥をかかせる訳にもいかないし。
ねっ、そーゆーこと!
「莉子の大学の学食は? どういう感じ?」
「行ったことないから分かんない」
「ないの? 何で?」
「何でって言われても……用事が無いから」
「だって、お昼は?」
「食べてないもん」
何気なくそう答えた途端、正面から『ピキッ』みたいな音が聞こえた気がした。
アイスコーヒーから目を離して顔を上げると、口の左端がヒクヒクした微妙な笑顔の新川透と目が合う。
あれっ? 何か様子が変だぞ?
「食べてないの?」
「だって、朝と夜はマンション一階のカフェでしっかり食べてるし」
「で?」
「掃除婦してた頃と違ってそんなにお腹すかないし」
「ほう」
「だから食べなくても……」
「莉ぃ子ぉ~~」
「ひゃい!?」
地の底を這うような声が聞こえてきて、肩がビクッと震える。
しまった、ちょっと噛んでしまった。
新川透の表情から笑顔が消えた。腕を組んでふんぞり返り、半目で私を見下ろしている。
「一日三食、人として基本でしょ?」
「えっと……江戸時代までは一日二食だったらしいよ」
「そんな四百年前の話を持ち出して、俺が納得するとでも?」
「えー、だってさぁ……」
ちらっとカーディガンに包まれた自分の右腕に目を落とす。
一食ぐらい抜いても問題なく動けるし、その分食費が浮くし。
……というのもあるけど、何て言うかな、ちょっと太った気がするんだよね。
だから食べなくても大丈夫なら食べるのは無駄と言うか……。
「まさかダイエットとか考えた?」
「いやっ、そこまでは考えてないけど!」
何でそんなに鋭いの! 私のちょっとした仕草であっという間に見抜きやがりましたよ、この人!
怖いわ、この観察力! ストーカー歴8年は伊達じゃないね!
って、褒めてどうする!
「えーと、ちょっと丸くなったかな、とは思って」
「それは健康的になったって言うの。せっかくいい感じになってきたのに」
「いい感じ?」
「抱き心地が柔らかくていい感じ」
「……っ、バッカじゃないの!?」
私が叫んだのと同時に、背後から「ばふぅ!」みたいな変な音が聞こえてきた。
そりゃそうだよ、日中の食堂で言う言葉じゃない!
しかもしっかり聞こえてるじゃん、後ろの人達に!
そして当の本人はというと、余裕の笑顔だ。
この人本当に、自分がどう思われても全然気にしないんだね!
「莉子が聞き返すから……」
「真っすぐ答えろって言ってない!」
「え? これでも婉曲表現だよ? 胸が育ったとか言ってないでしょ」
「ば……バカバカバカ! 最っ低!」
これ以上ここにはいられない!
ガタンッと椅子が倒れるぐらいの勢いで猛然と立ち上がる。
「もう帰る!」
「そうだね、帰ろうか」
空になった二人分のグラスを持って、新川透も優雅な仕草で席を立つ。
「莉子、出口はこっち」
「きゃんっ!」
頭に血が昇ったついでに目の前もよく見えてなかったようで、グンと腕を引っ張られた。
新川透は器用にも右手でグラスを二つ持ち、左手で私の肩を抱いている。
「離して!」
「迷子になりそうだから」
「歩ける! 一人で歩けますー!」
何なの、この公開処刑! 非常識でしょ、どう考えても!
あんたは一体何をしたかったの、本当に!
「まぁ、勝手にお昼を抜いてた罰としてはこんなもんでいいかな」
「罰だったんだ! ひどい!」
「ひどくない。本当に放っておけないね、莉子は」
「気にしすぎだよ! 過保護! 過保護過保護~~!」
「何と言われようとそこは譲れない」
「ぐうぅ……」
「しかし困った子だね。これから毎日どんな昼食をとったか報告してもらおうか」
「そこまで管理する必要ある!?」
「あるね。莉子はあまりにも食事に無頓着すぎる」
「これから毎日ちゃんと食べます! ほら、これでいいでしょ!?」
* * *
引きずられるようにして歩きながら、そんなやりとりをしていたんだけども。
翌朝7時半頃、新川透に一階のエントランスに呼び出され。
赤いギンガムチェックの巾着袋に包まれたお弁当箱を手渡されました。
手にしたお弁当箱は、ほんのり温かくて。
こんなの何年ぶりだろう、とかちょっとしんみりしつつも。
そっと覗くと、スリムな二段重ねのお弁当箱。淡いピンク色に花の絵のワンポイントがある可愛い感じで、どう見ても女性用。
昨日の今日なのに、一体いつ用意したんだろう、とちょっと怖くなりました。
……まさか同棲するつもりだった頃に買っておいたんだろうか?
だとしたら、新川透の想像する『めくるめく同棲生活』ってどんなのだったんだろう?
―――――――――――――――――――――――
『大学探訪』の裏側を、ちょっとだけ。d( ̄▽ ̄*)
~莉子と新川透を見送った学友3人組~
A「……あれ、妹だと思う? それとも……」
B「彼女だろ、絶対!」
C「妹にアレじゃ逆にヤベーよ」
B「すっごくデレデレだったよな」
C「俺、新川さんは女嫌いだと思ってた」
B「俺も。声かけられたらあからさまに嫌そうな顔してたもんな」
A「彼女、ちっちゃかったねー」
C「確かに」
B「俺は一瞬過ぎてよくわからなかった」
A「新川さんの陰からペコってお辞儀してたのが可愛かったよ」
C「お前、ソレ絶対に新川さんに言うなよ」
A「何で?」
C「だって咄嗟に隠してたじゃん、俺たちから!」
A「どういうこと?」
B「牽制されたよな。見せつけといて見るな、って何なんだ」
A「なーなー、どういうこと?」
C「お前はとりあえず口をつぐんどけ」
B「そうそう」
C「だけどヤベーよな。高校生ぐらいじゃなかった?」
B「中学生だったりして」
C「ヤメロ。あり得ん」
A「新川さんっていくつだっけ?」
C「確か6つ上じゃなかったか?」
B「……ろりこ……」
C「言うな」
A「何かさあ、姫と執事みたいだったよねー」
C「お前は平和だな」
B「ところでさ。明日、どうする?」
C「何が?」
B「昨日のあの子、彼女ですか?って、聞く?」
C「うーん」
B「スルーした方が無難かな」
C「どうだろ。微妙……」
B「でも絶対、俺たちが女子連中に聞かれるよね」
C「はぁ、どうすっかなー」
A「え? 普通に聞けばいいんじゃないの?」
B「……フツー……」
C「そっか。最初に新川さんに声をかけたのもお前だったよな」
A「うん」
B「よし、行ってこい」
A「任せてー。えーと……」
C「わっ、バカ、今じゃねぇよ!」
A「え? メールぐらいよくない?」
B「邪魔したら殺される、気がする」
* * *
はたから見ると、目の前の小石すら避けんばかりの勢いで新川透に世話をされているのだが、莉子はもうすっかり慣れてしまってまったく気づいていないのであった……。( ̄▽ ̄;)
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