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第12話 訓練に手頃な魔物持ってきました。……え、これが天災級?
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十秒ほどすると……目当ての魔物の姿が肉眼で見えるようになってきた。
「ミトコンドリア・ヘルファイア」
私はそいつに火炎放射をぶち当て、その全身を丸焦げにした。
そして……頭部に高圧電流を流し、魔物の脳の闘争本能を司る部分を損傷させ、戦意を喪失させる。
私は魔物を抱えると、再び電磁飛行魔法で地上に急降下した。
往復に約二十秒、戦闘に十秒弱。約束通り、三十秒ほどでの帰還だ。
「これを使うのはどうですか?」
私はそう言って……とりあえず自分の机の上に、獲ってきた魔物を置いた。
魔物がデカいので、置いたというよりは大部分が机からはみ出しているが。
先生が良いですよと言えば……この魔物を、教卓のところへ持っていこう。
「き、き、き、キメラ!?!? 一体どうやって倒してきたんですか!」
だが……先生の口から出たのは「OK」でも「ダメ」でもなく、そんな驚嘆の一言だった。
確かに……この魔物はキメラの一種だな。
元になった魔物のうち一種類がギガントイーグルっぽいので、飛行型になったのだろう。
まあ今は、丸焦げのせいで焼き鳥みたいな風になってしまっているが。
「キメラの単独討伐って、それ確か騎士団長クラスの戦闘力では!? イナビルさん、あなたは規格外の特Aクラスの中でも更に格が違うとは聞いてましたけど、流石にこれはいったい……」
……それは流石に、先生の騎士団長に対する認識が間違ってるんじゃなかろうか。
先生の発言に、私は正直そんな感想を抱いてしまった。
流石に騎士団長がこのレベルなら、この国の国防とんでもなく危ういぞ。
新米騎士の間違いなんじゃなかろうか。
というか自己紹介の時の宮廷魔術師の件といい、不穏な話をしょっちゅう聞くな……。
……じゃないや。そんなこと考えるのは後回しだ。
このままじゃ、せっかく魔物を取ってきたのに埒が明かないからな。
「とにかく、これがあればテストはできますよね?」
私は先生に、単刀直入にそう聞いてみた。
だが……すると先生は、顔をしかめつつこう言ってきた。
「確かにそれなら、このクラスの生徒たちのヒールを以てしても全快は難しそうですが……その魔物、回復させたらマズいのでは? 回復させたが故にキメラが獰猛さを取り戻せば、おびただしい被害が出そうですが……」
「あ、そこは大丈夫です。脳の闘争本能を司る部分を損傷させてますし……その損傷は、治らないようにしていますので」
まあ、先生の懸念事項は想定通りのものだったので、私はそう安全性を説明した。
脳の損傷は、たとえ前世の英才教育を受けたとしても、習い始めて一週間の聖女に治癒できるものではないのだ。
だから先生が危惧しているような事態は、間違っても起こらないというわけだ。
「あの……イナビルさん、それってキメラの損傷度合いをコントロールしたってことですか? それってまさか、かなり余裕での討伐って意味……」
「え、ええまあ……。それより、小テストの方、再開しませんか? もう授業時間半分弱過ぎてますし……」
先生はまだ何か言いたげだったが、流石に今のペースだと小テストが終わる前に授業時間が終了しそうだったので、私は先生にそう促した。
「そ、そうでした。では……一人ずつ私が呼んだ順番で、キメラにヒールをかけてください」
先生がそう指示を出したので、丸焦げキメラを教卓までもっていく。
それから小テストが再開され、クラスメイトたちは一人一人順に、丸焦げキメラにヒールをかけていった。
その間ずっと、先生は目を白黒させ続けている。
採点の手も止まってしまっているが……まあ従来の採点基準なら全員満点は余裕だろうし、特に問題はないだろう。
そして、ちょうど最後の一人がヒールをかけたところで……キメラの外傷が、完全に消え去った。
「す……凄い! あの重症キメラを、全員で完治させちゃうなんて……!」
先生は半ば感動したようにそう言いつつ……おそらく採点記録帳と思われるノートに、でっかい丸をつけるが如くペンを走らせた。
「じゃあ、キメラは回復させて放ちますね。……ああもちろん、人間に敵意を抱くような記憶は全て抹消しますのでご心配なく」
その様子を見た後……私はそう言って、用済みになったキメラを野に返そうとした。
だが……先生はそんな私を見て、大慌てでこう叫んだ。
「せっかく捕まえたのになんでみすみす逃すんですか! 天災級の魔物ですし……素材として売ればかなりの値がつきますのに、もったいないですよ?」
「え……そうなんですか?」
私はそれを聞き……教室を出ようとする足を止めた。
前世の基準で考えると、こんな低級なキメラが高値で取引されるところは想像し難いが……先生がそう言うのであれば、確かに野に放つのはもったいない気がする。
将来第二の精霊育成に専念したいことを考えると、生活費が気にならないくらいの資金はできれば早めに確保したかったしな。
こんなのでも高く売れるのであれば、ありがたい情報だ。感謝しなければ。
「教えてくださりありがとうございます。ちなみにこれ、どこで売ればいいんですか?」
「それは……冒険者ギルドとかで売ればいいかと」
「冒険者ギルドって……聖女も利用できる施設なのですか?」
「基本的には冒険者のための場所ですけど……魔物素材も持ち込みは、誰でもできたはずです」
「分かりました……」
冒険者ギルド、か。
機を見ていつか立ち寄るとしよう。
そう思いつつ、私はキメラの心臓付近に高圧パルス電流を流し、キメラを絶命させた。
そしてそれを、精霊収納に入れた。
「あれ……イナビルさん、今キメラどこにやりました?」
「精霊収納の中です」
「で、伝説の収納魔法が、何でもないことかのように……」
先生はそう言うと、またもや目を白黒させた。
収納魔法……まあ精霊自体が知られていないようじゃ、伝説上の存在にもなってしまうか。
私はいつかの授業で精霊収納も取り扱おうと、心に決めたのだった。
「ミトコンドリア・ヘルファイア」
私はそいつに火炎放射をぶち当て、その全身を丸焦げにした。
そして……頭部に高圧電流を流し、魔物の脳の闘争本能を司る部分を損傷させ、戦意を喪失させる。
私は魔物を抱えると、再び電磁飛行魔法で地上に急降下した。
往復に約二十秒、戦闘に十秒弱。約束通り、三十秒ほどでの帰還だ。
「これを使うのはどうですか?」
私はそう言って……とりあえず自分の机の上に、獲ってきた魔物を置いた。
魔物がデカいので、置いたというよりは大部分が机からはみ出しているが。
先生が良いですよと言えば……この魔物を、教卓のところへ持っていこう。
「き、き、き、キメラ!?!? 一体どうやって倒してきたんですか!」
だが……先生の口から出たのは「OK」でも「ダメ」でもなく、そんな驚嘆の一言だった。
確かに……この魔物はキメラの一種だな。
元になった魔物のうち一種類がギガントイーグルっぽいので、飛行型になったのだろう。
まあ今は、丸焦げのせいで焼き鳥みたいな風になってしまっているが。
「キメラの単独討伐って、それ確か騎士団長クラスの戦闘力では!? イナビルさん、あなたは規格外の特Aクラスの中でも更に格が違うとは聞いてましたけど、流石にこれはいったい……」
……それは流石に、先生の騎士団長に対する認識が間違ってるんじゃなかろうか。
先生の発言に、私は正直そんな感想を抱いてしまった。
流石に騎士団長がこのレベルなら、この国の国防とんでもなく危ういぞ。
新米騎士の間違いなんじゃなかろうか。
というか自己紹介の時の宮廷魔術師の件といい、不穏な話をしょっちゅう聞くな……。
……じゃないや。そんなこと考えるのは後回しだ。
このままじゃ、せっかく魔物を取ってきたのに埒が明かないからな。
「とにかく、これがあればテストはできますよね?」
私は先生に、単刀直入にそう聞いてみた。
だが……すると先生は、顔をしかめつつこう言ってきた。
「確かにそれなら、このクラスの生徒たちのヒールを以てしても全快は難しそうですが……その魔物、回復させたらマズいのでは? 回復させたが故にキメラが獰猛さを取り戻せば、おびただしい被害が出そうですが……」
「あ、そこは大丈夫です。脳の闘争本能を司る部分を損傷させてますし……その損傷は、治らないようにしていますので」
まあ、先生の懸念事項は想定通りのものだったので、私はそう安全性を説明した。
脳の損傷は、たとえ前世の英才教育を受けたとしても、習い始めて一週間の聖女に治癒できるものではないのだ。
だから先生が危惧しているような事態は、間違っても起こらないというわけだ。
「あの……イナビルさん、それってキメラの損傷度合いをコントロールしたってことですか? それってまさか、かなり余裕での討伐って意味……」
「え、ええまあ……。それより、小テストの方、再開しませんか? もう授業時間半分弱過ぎてますし……」
先生はまだ何か言いたげだったが、流石に今のペースだと小テストが終わる前に授業時間が終了しそうだったので、私は先生にそう促した。
「そ、そうでした。では……一人ずつ私が呼んだ順番で、キメラにヒールをかけてください」
先生がそう指示を出したので、丸焦げキメラを教卓までもっていく。
それから小テストが再開され、クラスメイトたちは一人一人順に、丸焦げキメラにヒールをかけていった。
その間ずっと、先生は目を白黒させ続けている。
採点の手も止まってしまっているが……まあ従来の採点基準なら全員満点は余裕だろうし、特に問題はないだろう。
そして、ちょうど最後の一人がヒールをかけたところで……キメラの外傷が、完全に消え去った。
「す……凄い! あの重症キメラを、全員で完治させちゃうなんて……!」
先生は半ば感動したようにそう言いつつ……おそらく採点記録帳と思われるノートに、でっかい丸をつけるが如くペンを走らせた。
「じゃあ、キメラは回復させて放ちますね。……ああもちろん、人間に敵意を抱くような記憶は全て抹消しますのでご心配なく」
その様子を見た後……私はそう言って、用済みになったキメラを野に返そうとした。
だが……先生はそんな私を見て、大慌てでこう叫んだ。
「せっかく捕まえたのになんでみすみす逃すんですか! 天災級の魔物ですし……素材として売ればかなりの値がつきますのに、もったいないですよ?」
「え……そうなんですか?」
私はそれを聞き……教室を出ようとする足を止めた。
前世の基準で考えると、こんな低級なキメラが高値で取引されるところは想像し難いが……先生がそう言うのであれば、確かに野に放つのはもったいない気がする。
将来第二の精霊育成に専念したいことを考えると、生活費が気にならないくらいの資金はできれば早めに確保したかったしな。
こんなのでも高く売れるのであれば、ありがたい情報だ。感謝しなければ。
「教えてくださりありがとうございます。ちなみにこれ、どこで売ればいいんですか?」
「それは……冒険者ギルドとかで売ればいいかと」
「冒険者ギルドって……聖女も利用できる施設なのですか?」
「基本的には冒険者のための場所ですけど……魔物素材も持ち込みは、誰でもできたはずです」
「分かりました……」
冒険者ギルド、か。
機を見ていつか立ち寄るとしよう。
そう思いつつ、私はキメラの心臓付近に高圧パルス電流を流し、キメラを絶命させた。
そしてそれを、精霊収納に入れた。
「あれ……イナビルさん、今キメラどこにやりました?」
「精霊収納の中です」
「で、伝説の収納魔法が、何でもないことかのように……」
先生はそう言うと、またもや目を白黒させた。
収納魔法……まあ精霊自体が知られていないようじゃ、伝説上の存在にもなってしまうか。
私はいつかの授業で精霊収納も取り扱おうと、心に決めたのだった。
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