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第21話 教科書を持っていくと……
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「あらイナビルさん、おはようございます。今日はどうしたんですか?」
理事長室に入ると、テレサさんはそう言って出迎えてくれた。
この部屋は、ある程度広くはあるのだが……ここに教科書の山を置いて行かれても、流石にテレサさん困惑するよな。
とりあえずまずは、サンプルだけ見せるとするか。
「卒業の条件の一つである、教科書が完成したのでその報告に来ました」
私は精霊収納から全種類の教科書を一冊ずつ出しながら、そう話した。
「は、早くないですか……?」
テレサさんは教科書を一つ手に取り、中をパラパラと確認した。
そしてそれを全種類分終えると、興味と困惑が混じったような表情でこう聞いてきた。
「い、一体どうやったらこんなにたくさんの教材を、こんな短時間で……? もしかして、こうなることを見越して前々から準備していたとか……?」
「いや、そんなことはないですよ。昨日の内に全部仕上げました」
こんな特殊な卒業条件を見越せるとしたら、そっちの方が凄いというか、もはやエスパーだろ。
心の中でそんなツッコミを入れつつ、私はそう返事をした。
「昨日の内に全部って……もしかして、それも雷魔法の応用かなんかなのですか?」
「ええ。これは静電印刷魔法という、インクの粒子を静電気で制御して印字する魔法です」
「そんな魔法が……。何と言うか、イナビルさんの雷魔法ってほんと何でもアリですね」
「どの属性も、極めれば結構自由は利きますよ」
そんな会話をしている間にも、テレサさんはいくつかの書類に印を押し、何かの処理を進めていった。
そして、
「分量的にはこれで全く問題ありません。手書きで数か月で書ける程度のページ数を想定しておりましたので……これだけ頂ければ、十分すぎるくらいと言いますか。あとは内容ですが……こちらは『高度すぎて誰も理解できない』とかでなければまずNGは出ませんので、基本的に安心してもらって結構です」
そんな風に、教科書を見た感想を言ってくれた。
その基準なら、何も問題無さそうだな。
来年以降の学園生が使うことも想定して、序盤数ページはクラスメイトにとっては既習事項みたいな内容にしてるし。
それ以降も、「どの章も、前提知識は前章までの内容のみ」な構成にしたので、途中で難易度の落差が酷い、みたいなことにはなってないはずだ。
まあ仮に、それでも躓く部分があるようなら……その時は、相談された内容に応じて補足資料でも作ればいいし。
などと考え、私は安堵したのだが……次の瞬間。
テレサさんの表情は、どういうわけか申し訳なさそうな感じになった。
「ただ……約束をしておいて、申し訳ないのですが。正式な卒業までは、あと数日待って頂けませんか? 実は……私たち、イナビルさんのために『特殊卒業生制度』を制定しようと思っていて。その具体的な措置の内容が、まだ協議中なんです」
かと思うと……テレサさんは、そんな事情を説明した。
「特殊……卒業生……精度?」
そして私は……いきなり出てきた新しい話に、若干戸惑ってしまった。
「はい。ただ普通に卒業させるのでは不十分だと思ったので……いくつかの優遇措置が受けられる機能がついた卒業証書を作ろうという話になっているんです。具体的な措置内容は、『一番期待させたものが実際は盛り込まれなかった』みたいになるとまずいのでまだ言えませんが……」
「そ、そうなんですか……」
なんか思ってたよりとんでもない話が、裏では進んでたんだな。
私はそれを聞いて、ありがたい気持ちと、そこまでしてもらっていいのかみたいな不安が半々みたいな心情になった。
まあ何にせよ、良い話であるのは確かなんだし、その事情なら待つのが当然だな。
「あ……ありがとうございます。じゃあ後は、残りの教科書の置き場を教えてもらえましたら、そちらに置いてきますね」
私はそう言って、精霊収納にある人数分の教科書の置き場を聞くことにした。
「……ん、全部? 教科書はこれで全てではないのですか……?」
すると……テレサさんは、戸惑ったような声でそう聞き返してきた。
いやまあ、種類的には、机に置いたので全部なのだが……。
「今出したものは、全種類を一部ずつサンプルとして取り出したものです。教科書なんですし……当然、特Aクラスの人数分は刷ってますよ?」
理事長室に入ると、テレサさんはそう言って出迎えてくれた。
この部屋は、ある程度広くはあるのだが……ここに教科書の山を置いて行かれても、流石にテレサさん困惑するよな。
とりあえずまずは、サンプルだけ見せるとするか。
「卒業の条件の一つである、教科書が完成したのでその報告に来ました」
私は精霊収納から全種類の教科書を一冊ずつ出しながら、そう話した。
「は、早くないですか……?」
テレサさんは教科書を一つ手に取り、中をパラパラと確認した。
そしてそれを全種類分終えると、興味と困惑が混じったような表情でこう聞いてきた。
「い、一体どうやったらこんなにたくさんの教材を、こんな短時間で……? もしかして、こうなることを見越して前々から準備していたとか……?」
「いや、そんなことはないですよ。昨日の内に全部仕上げました」
こんな特殊な卒業条件を見越せるとしたら、そっちの方が凄いというか、もはやエスパーだろ。
心の中でそんなツッコミを入れつつ、私はそう返事をした。
「昨日の内に全部って……もしかして、それも雷魔法の応用かなんかなのですか?」
「ええ。これは静電印刷魔法という、インクの粒子を静電気で制御して印字する魔法です」
「そんな魔法が……。何と言うか、イナビルさんの雷魔法ってほんと何でもアリですね」
「どの属性も、極めれば結構自由は利きますよ」
そんな会話をしている間にも、テレサさんはいくつかの書類に印を押し、何かの処理を進めていった。
そして、
「分量的にはこれで全く問題ありません。手書きで数か月で書ける程度のページ数を想定しておりましたので……これだけ頂ければ、十分すぎるくらいと言いますか。あとは内容ですが……こちらは『高度すぎて誰も理解できない』とかでなければまずNGは出ませんので、基本的に安心してもらって結構です」
そんな風に、教科書を見た感想を言ってくれた。
その基準なら、何も問題無さそうだな。
来年以降の学園生が使うことも想定して、序盤数ページはクラスメイトにとっては既習事項みたいな内容にしてるし。
それ以降も、「どの章も、前提知識は前章までの内容のみ」な構成にしたので、途中で難易度の落差が酷い、みたいなことにはなってないはずだ。
まあ仮に、それでも躓く部分があるようなら……その時は、相談された内容に応じて補足資料でも作ればいいし。
などと考え、私は安堵したのだが……次の瞬間。
テレサさんの表情は、どういうわけか申し訳なさそうな感じになった。
「ただ……約束をしておいて、申し訳ないのですが。正式な卒業までは、あと数日待って頂けませんか? 実は……私たち、イナビルさんのために『特殊卒業生制度』を制定しようと思っていて。その具体的な措置の内容が、まだ協議中なんです」
かと思うと……テレサさんは、そんな事情を説明した。
「特殊……卒業生……精度?」
そして私は……いきなり出てきた新しい話に、若干戸惑ってしまった。
「はい。ただ普通に卒業させるのでは不十分だと思ったので……いくつかの優遇措置が受けられる機能がついた卒業証書を作ろうという話になっているんです。具体的な措置内容は、『一番期待させたものが実際は盛り込まれなかった』みたいになるとまずいのでまだ言えませんが……」
「そ、そうなんですか……」
なんか思ってたよりとんでもない話が、裏では進んでたんだな。
私はそれを聞いて、ありがたい気持ちと、そこまでしてもらっていいのかみたいな不安が半々みたいな心情になった。
まあ何にせよ、良い話であるのは確かなんだし、その事情なら待つのが当然だな。
「あ……ありがとうございます。じゃあ後は、残りの教科書の置き場を教えてもらえましたら、そちらに置いてきますね」
私はそう言って、精霊収納にある人数分の教科書の置き場を聞くことにした。
「……ん、全部? 教科書はこれで全てではないのですか……?」
すると……テレサさんは、戸惑ったような声でそう聞き返してきた。
いやまあ、種類的には、机に置いたので全部なのだが……。
「今出したものは、全種類を一部ずつサンプルとして取り出したものです。教科書なんですし……当然、特Aクラスの人数分は刷ってますよ?」
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