1 / 49
プロローグ 転生、そして神話との出逢い
しおりを挟む
「どう言うつもりだこのチャチな龍は!!」
俺は千堂淳。彫り師になって10年のベテランだ。
今日の依頼人は、とある暴力団の組長。依頼された龍の刺青はいつも通りのクオリティに仕上がったはずだ。
だが、組長はその出来に満足いかなかったらしい。決して怒らせてはいけない人を激怒させてしまった事実に動揺していると、眉間に拳銃を突きつけられた。
「腕の立つ彫り師と聞いて依頼してみれば、こんな程度の低い刺青を掘りおって......おめえは一生モンの肌に取り返しのつかないことをした。決して許さん!」
引き金を引く音と共に、俺は意識を失った。
走馬灯が走る余裕など、そこには無かった。
◇ ◇ ◇
目が覚めた時、俺はハンモックの上にいた。
確か、俺は暴力団の組長に射殺されたはずだった。それなのに、何故こんな場所にいるのだろう。
一命を取り留めて病院のベッドの上、というのならまだ分かる。しかし、脳を損傷したケガ人を揺れの大きいハンモックに寝かせる病院が一体どこにあると言うのだ。そんな病院は即刻潰れてしまうに違いない。
よく見ると、ドアの上に見慣れない文字が書いてある。そこには、「冒険者ギルド 休憩室」と書かれてあった。
・・・冒険者が一体どういうものなのかはさっぱり分からないが、ここが病院じゃないということだけは確実に言えそうだ。
ふと、銃で撃たれた部位に手を伸ばす。全くの無傷だった。
もしかしたら俺は、生まれ変わったのかもしれない。所謂輪廻転生ってヤツか。むしろ彫り師としての記憶の方こそ虚構って可能性もあるがな。
いずれにせよ、今は細かいことを気にしてる場合ではなさそうだが。
というのも、今の俺は一文無し。どうにかしてお金を稼がなければ今日の晩飯さえ食うことができない。
「ギルド」ってことはここは何かしらの組合なんだろうし、施設の人に話を聞いてみるとするか。
◇ ◇ ◇
「すいません、どこかお仕事を紹介してくれる場所をご存知ですか?」
休憩室を出るとすぐ受付があったので、係員に相談を持ちかける。
「お仕事......冒険者登録をなさるということでよろしいですか?」
「その、『冒険者登録』というのをしたらお金が貰えるんですか?てことは、冒険者というのは職業の一種?」
「......それをご存知なくてここに来る方は珍しいですね。はい、おっしゃる通りです。冒険者は薬草採取や魔物の討伐をしてお金を稼ぐ職業となります。」
「分かりました。冒険者登録をさせてください。」
何とか仕事にはありつけたようだ。魔物の討伐......狩りみたいなものだろうか。経験は全くの0だが、「冒険者」という単語を知らない人でも登録させてもらえたので「今日の稼ぎは無し」という事態だけは避けられるだろう。
と思ったのも束の間、登録用紙に記入していると係員が声をかけてきた。
「あの......大変申し上げにくいのですが、あなたは最弱紋なので戦闘行為には向かないと思います。冒険者としてはかなりやりづらいと思うのですが、よろしいのですか?」
何のことだろうと思ったその時、ふと手の甲の異変が目に入った。自分では入れた覚えのない刺青のようなものが入っている。
「最弱紋......これのことですか?」
手の甲の模様を指差しそう言うと、係員はこくりと頷いた。
「はい。紋章は生まれつき決まっているもので、魔法能力や成長限界の指標となります。後天的に変えることはできません。紋章は4種類あり、あなたの紋章は生活魔法を使うのでやっとということを示しています。」
「そうなんですか......」
相槌をうちながら俺は思った。紋章など彫り直してしまえばいいのではないか、と。むしろ、俺は今までそっちが本業だったのだから。
登録を終え、無料の貸し出し用武器を貰う際「すみませんが、注射器も貸していただけませんか」と頼んだ。すると係員はちょっと戸惑ったものの、すぐ二つ返事で注射器も渡してくれた。
注射器と武器を持ち、俺は休憩室に戻る。休憩所から出る時、そこに本棚があるのが見えたからだ。
もしかしたら、そこに紋章に関する本があるかもしれない。
目当てっぽい本はすぐ見つかった。「魔法大全」というものだ。
そういえば、係員の人も「魔法能力が~」とか言っていたな。ここは地球じゃないのだろうか、それとも物理法則などというものがある世界の記憶こそが虚構なのだろうか。
時間が余裕はないのでそんな雑念は消し去り、「魔法大全」を手に取る。
本を開くまでもなく、裏表紙に4つの紋章が描かれていた。
──と、その時。俺は本棚のある本に目が釘付けになった。タイトルの下に「魔法大全」に載っているどの紋章でもない紋章が描かれた、一冊の本。
そのタイトルは「リンネル神話」だった。
俺は千堂淳。彫り師になって10年のベテランだ。
今日の依頼人は、とある暴力団の組長。依頼された龍の刺青はいつも通りのクオリティに仕上がったはずだ。
だが、組長はその出来に満足いかなかったらしい。決して怒らせてはいけない人を激怒させてしまった事実に動揺していると、眉間に拳銃を突きつけられた。
「腕の立つ彫り師と聞いて依頼してみれば、こんな程度の低い刺青を掘りおって......おめえは一生モンの肌に取り返しのつかないことをした。決して許さん!」
引き金を引く音と共に、俺は意識を失った。
走馬灯が走る余裕など、そこには無かった。
◇ ◇ ◇
目が覚めた時、俺はハンモックの上にいた。
確か、俺は暴力団の組長に射殺されたはずだった。それなのに、何故こんな場所にいるのだろう。
一命を取り留めて病院のベッドの上、というのならまだ分かる。しかし、脳を損傷したケガ人を揺れの大きいハンモックに寝かせる病院が一体どこにあると言うのだ。そんな病院は即刻潰れてしまうに違いない。
よく見ると、ドアの上に見慣れない文字が書いてある。そこには、「冒険者ギルド 休憩室」と書かれてあった。
・・・冒険者が一体どういうものなのかはさっぱり分からないが、ここが病院じゃないということだけは確実に言えそうだ。
ふと、銃で撃たれた部位に手を伸ばす。全くの無傷だった。
もしかしたら俺は、生まれ変わったのかもしれない。所謂輪廻転生ってヤツか。むしろ彫り師としての記憶の方こそ虚構って可能性もあるがな。
いずれにせよ、今は細かいことを気にしてる場合ではなさそうだが。
というのも、今の俺は一文無し。どうにかしてお金を稼がなければ今日の晩飯さえ食うことができない。
「ギルド」ってことはここは何かしらの組合なんだろうし、施設の人に話を聞いてみるとするか。
◇ ◇ ◇
「すいません、どこかお仕事を紹介してくれる場所をご存知ですか?」
休憩室を出るとすぐ受付があったので、係員に相談を持ちかける。
「お仕事......冒険者登録をなさるということでよろしいですか?」
「その、『冒険者登録』というのをしたらお金が貰えるんですか?てことは、冒険者というのは職業の一種?」
「......それをご存知なくてここに来る方は珍しいですね。はい、おっしゃる通りです。冒険者は薬草採取や魔物の討伐をしてお金を稼ぐ職業となります。」
「分かりました。冒険者登録をさせてください。」
何とか仕事にはありつけたようだ。魔物の討伐......狩りみたいなものだろうか。経験は全くの0だが、「冒険者」という単語を知らない人でも登録させてもらえたので「今日の稼ぎは無し」という事態だけは避けられるだろう。
と思ったのも束の間、登録用紙に記入していると係員が声をかけてきた。
「あの......大変申し上げにくいのですが、あなたは最弱紋なので戦闘行為には向かないと思います。冒険者としてはかなりやりづらいと思うのですが、よろしいのですか?」
何のことだろうと思ったその時、ふと手の甲の異変が目に入った。自分では入れた覚えのない刺青のようなものが入っている。
「最弱紋......これのことですか?」
手の甲の模様を指差しそう言うと、係員はこくりと頷いた。
「はい。紋章は生まれつき決まっているもので、魔法能力や成長限界の指標となります。後天的に変えることはできません。紋章は4種類あり、あなたの紋章は生活魔法を使うのでやっとということを示しています。」
「そうなんですか......」
相槌をうちながら俺は思った。紋章など彫り直してしまえばいいのではないか、と。むしろ、俺は今までそっちが本業だったのだから。
登録を終え、無料の貸し出し用武器を貰う際「すみませんが、注射器も貸していただけませんか」と頼んだ。すると係員はちょっと戸惑ったものの、すぐ二つ返事で注射器も渡してくれた。
注射器と武器を持ち、俺は休憩室に戻る。休憩所から出る時、そこに本棚があるのが見えたからだ。
もしかしたら、そこに紋章に関する本があるかもしれない。
目当てっぽい本はすぐ見つかった。「魔法大全」というものだ。
そういえば、係員の人も「魔法能力が~」とか言っていたな。ここは地球じゃないのだろうか、それとも物理法則などというものがある世界の記憶こそが虚構なのだろうか。
時間が余裕はないのでそんな雑念は消し去り、「魔法大全」を手に取る。
本を開くまでもなく、裏表紙に4つの紋章が描かれていた。
──と、その時。俺は本棚のある本に目が釘付けになった。タイトルの下に「魔法大全」に載っているどの紋章でもない紋章が描かれた、一冊の本。
そのタイトルは「リンネル神話」だった。
1
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる