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第1話 大災害を起こしてしまった
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「神話に載ってる紋章を彫れば4つの紋章どれの持ち主より強くなれるんじゃ......?」
期待で震える手で、「リンネル神話」に手を伸ばす。そして──希望は、一瞬にして打ち砕かれた。
「リンネル神話」の1ページ目には、破壊天使リンネルの挿絵が載っていた。緋色の瞳と艶かしい金髪を持つ、この世のものとは思えないような美女。
その手あったのは、動く紋章だった。
どんなに腕の良い彫り師でも、動く刺青など入れられる訳がない。
落胆しながら、「それでも一旦は手に取った本だから」と流し読みする。
そして、本の中盤まで差し掛かった時、俺は妥協案を見つけた。
魔神の紋章だ。
魔神の手に描かれた紋章は動いていない。これなら、彫ることだって不可能じゃない。
破壊天使リンネルには及ばないだろうが、それでも魔神の紋章なので人間の紋章を彫るより幾らかは強くなれるはずだ。
しかも、この紋章なら最弱紋にちょっと付け足すだけで完成する。元ある紋章の一部分を消さないといけないとかなれば一筋縄ではいかないところだったが、付け足すだけならば成功率も高いに違いない。
早速、借りた注射器を用いて魔神の紋章を彫り進める。自分で自分に刺青を入れるのは至難の業だが、利き手と反対の手の甲に入れるくらいならベテランの意地でどうとでもなる。
程なくして、魔神の紋章の刺青が入れ終わった。
するとその瞬間、とてつもなく強大な力が自分に宿るのが分かった。
・・・これが魔神の力か。基準がわからないので今自分がどれくらいの力の持ち主なのかは分からないが、心強くはあるな。
刺青を入れ終えて疲れたのでちょっと休憩してから冒険に出かけようと思い、「リンネル神話」の魔神の章を読み進める。
魔神はこの神話においてそれほど重要ではないのか、魔神に関する記述は吃驚するほど少なかったのだが、魔神には固有魔法が2つあるということだけは分かった。
「魔槍創造」と「ハイボルテージペネトレイト」の2つだ。
◇ ◇ ◇
ギルドを出ると早速、神話にあった技を試してみる事にした。
流石に敵もいないところで「ハイボルテージペネトレイト」を試すわけにはいかないだろうが、「魔槍創造」は戦闘準備魔法だろうからここで使ってみよう。
「魔槍創造」
出てきたのは、槍......と呼べるのかちょっと微妙な形状の武器だった。
・・・というかこれは、方天画戟だな。
果たしてちゃんと武器を扱えるのか不安だが、借り物のナイフよりはマシだろう。
そう思いながら、ギルドの係員に「初心者に適した狩場がありますよ!」と教えてもらった南門に歩いていく。
門の前に来ると、門番が話しかけてきた。
「この門を出たところで初心者用の狩場しか無いが、何をしにきたんだ?見たところ馬も無いし、他の街に向かうというわけでもなさそうだが。」
「狩りに行きます。」
「冗談を言うんじゃない。ここの狩場で国宝級の武器の出番など無いぞ。」
・・・いきなり変な事を言う門番だなと思ったが、方天画戟が気になってたのか。
自作の武器を国宝級と見立てられたのは驚きだが、そんなことでいちいち止まっていると日が暮れて飯抜きになってしまうので平静を装い話を進めよう。
「武器は国宝級かもしれないですが俺は初心者なので。法で使用が禁止されてる訳では無いのでしょう?」
「あ、、ああ。使用は禁止されてはいないが......どうやってその武器を手に入れたのかは知らないが、初心者が強力な武器に頼りきりになるのも考えものだぞ。今すぐ買い直してこいとまでは言わんがな。まあ、そういう事なら通っていい。」
そんなもんなのか。まあ今は冒険者としての成長より当面の飯の確保と命の保証が大事だし、何より武器を買う金がないのでこのまま行かせてもらうがな。
『本当は紋章上書きが上手くいってなくて武器も見かけ騙しだったら』と若干心配だったので、門番に武器の強さを保証してもらえたのは心強いなと思いながら門を後にした。
◇ ◇ ◇
門を出てから早歩きで約30分。初めて魔物が現れた。
ウサギ型の魔物だ。
見た目に反していきなり致命傷を与えて来るような奴かもしれないので、まずは手加減無しでいくか。方天画戟を突き出しながら詠唱する。
「ハイボルテージペネトレイト」
詠唱の直後。
大爆発と共に隕石の直撃かと思うようなクレーターができ、上空は塵灰に覆われて夜のごとく暗くなった。
もしかしなくてもオーバーキルだった。せっかくの獲物が跡形もなく消え去ってしまっている。
塵で日光が完全に遮蔽された真っ暗闇の中、爆心に煌々と光る石があった。
さっきの魔物の魔石だろうか。そうであれば、とりあえず収穫ゼロは免れられるな。
魔石っぽいものをポケットにしまい、帰路に着く。こうも暗くては狩りの続行など不可能だ。
魔石の値段次第では夕食抜きで休憩室で一夜を明かすハメになりそうだが、遭難するよりはマシか。
◇ ◇ ◇
魔石の光を頼りに歩くこと約50分、ようやく門に帰ってこれた。
俺の姿を見つけるなり、門番が疾風の如く駆け寄ってきた。
「ご無事でしたか!今さっき天変地異のような大爆発が起きたので、巻き込まれたのではと心配していたのです!」
「あー、今のは俺がちょっとした手違いで起こしてしまったものです。迷惑をかけてしまって申し訳ありません。」
「ははは、いくら国宝級の武器の持ち主とはいえ、人間が1人で古竜のブレスを超える威力の技を出せる訳ないじゃないですか。......あ、もしかして動揺している私たちを落ち着かせるためにご冗談を?お気遣い感謝します、中へどうぞ。」
盛大な勘違いを受けてしまった。てかあれ、古竜のブレス以上だったのか。そりゃウサギの魔物など跡形もなく消え去る訳だ。
どうやら本当のことは信じてもらえなさそうなので、お言葉に甘えてここを立ち去るとしよう。
期待で震える手で、「リンネル神話」に手を伸ばす。そして──希望は、一瞬にして打ち砕かれた。
「リンネル神話」の1ページ目には、破壊天使リンネルの挿絵が載っていた。緋色の瞳と艶かしい金髪を持つ、この世のものとは思えないような美女。
その手あったのは、動く紋章だった。
どんなに腕の良い彫り師でも、動く刺青など入れられる訳がない。
落胆しながら、「それでも一旦は手に取った本だから」と流し読みする。
そして、本の中盤まで差し掛かった時、俺は妥協案を見つけた。
魔神の紋章だ。
魔神の手に描かれた紋章は動いていない。これなら、彫ることだって不可能じゃない。
破壊天使リンネルには及ばないだろうが、それでも魔神の紋章なので人間の紋章を彫るより幾らかは強くなれるはずだ。
しかも、この紋章なら最弱紋にちょっと付け足すだけで完成する。元ある紋章の一部分を消さないといけないとかなれば一筋縄ではいかないところだったが、付け足すだけならば成功率も高いに違いない。
早速、借りた注射器を用いて魔神の紋章を彫り進める。自分で自分に刺青を入れるのは至難の業だが、利き手と反対の手の甲に入れるくらいならベテランの意地でどうとでもなる。
程なくして、魔神の紋章の刺青が入れ終わった。
するとその瞬間、とてつもなく強大な力が自分に宿るのが分かった。
・・・これが魔神の力か。基準がわからないので今自分がどれくらいの力の持ち主なのかは分からないが、心強くはあるな。
刺青を入れ終えて疲れたのでちょっと休憩してから冒険に出かけようと思い、「リンネル神話」の魔神の章を読み進める。
魔神はこの神話においてそれほど重要ではないのか、魔神に関する記述は吃驚するほど少なかったのだが、魔神には固有魔法が2つあるということだけは分かった。
「魔槍創造」と「ハイボルテージペネトレイト」の2つだ。
◇ ◇ ◇
ギルドを出ると早速、神話にあった技を試してみる事にした。
流石に敵もいないところで「ハイボルテージペネトレイト」を試すわけにはいかないだろうが、「魔槍創造」は戦闘準備魔法だろうからここで使ってみよう。
「魔槍創造」
出てきたのは、槍......と呼べるのかちょっと微妙な形状の武器だった。
・・・というかこれは、方天画戟だな。
果たしてちゃんと武器を扱えるのか不安だが、借り物のナイフよりはマシだろう。
そう思いながら、ギルドの係員に「初心者に適した狩場がありますよ!」と教えてもらった南門に歩いていく。
門の前に来ると、門番が話しかけてきた。
「この門を出たところで初心者用の狩場しか無いが、何をしにきたんだ?見たところ馬も無いし、他の街に向かうというわけでもなさそうだが。」
「狩りに行きます。」
「冗談を言うんじゃない。ここの狩場で国宝級の武器の出番など無いぞ。」
・・・いきなり変な事を言う門番だなと思ったが、方天画戟が気になってたのか。
自作の武器を国宝級と見立てられたのは驚きだが、そんなことでいちいち止まっていると日が暮れて飯抜きになってしまうので平静を装い話を進めよう。
「武器は国宝級かもしれないですが俺は初心者なので。法で使用が禁止されてる訳では無いのでしょう?」
「あ、、ああ。使用は禁止されてはいないが......どうやってその武器を手に入れたのかは知らないが、初心者が強力な武器に頼りきりになるのも考えものだぞ。今すぐ買い直してこいとまでは言わんがな。まあ、そういう事なら通っていい。」
そんなもんなのか。まあ今は冒険者としての成長より当面の飯の確保と命の保証が大事だし、何より武器を買う金がないのでこのまま行かせてもらうがな。
『本当は紋章上書きが上手くいってなくて武器も見かけ騙しだったら』と若干心配だったので、門番に武器の強さを保証してもらえたのは心強いなと思いながら門を後にした。
◇ ◇ ◇
門を出てから早歩きで約30分。初めて魔物が現れた。
ウサギ型の魔物だ。
見た目に反していきなり致命傷を与えて来るような奴かもしれないので、まずは手加減無しでいくか。方天画戟を突き出しながら詠唱する。
「ハイボルテージペネトレイト」
詠唱の直後。
大爆発と共に隕石の直撃かと思うようなクレーターができ、上空は塵灰に覆われて夜のごとく暗くなった。
もしかしなくてもオーバーキルだった。せっかくの獲物が跡形もなく消え去ってしまっている。
塵で日光が完全に遮蔽された真っ暗闇の中、爆心に煌々と光る石があった。
さっきの魔物の魔石だろうか。そうであれば、とりあえず収穫ゼロは免れられるな。
魔石っぽいものをポケットにしまい、帰路に着く。こうも暗くては狩りの続行など不可能だ。
魔石の値段次第では夕食抜きで休憩室で一夜を明かすハメになりそうだが、遭難するよりはマシか。
◇ ◇ ◇
魔石の光を頼りに歩くこと約50分、ようやく門に帰ってこれた。
俺の姿を見つけるなり、門番が疾風の如く駆け寄ってきた。
「ご無事でしたか!今さっき天変地異のような大爆発が起きたので、巻き込まれたのではと心配していたのです!」
「あー、今のは俺がちょっとした手違いで起こしてしまったものです。迷惑をかけてしまって申し訳ありません。」
「ははは、いくら国宝級の武器の持ち主とはいえ、人間が1人で古竜のブレスを超える威力の技を出せる訳ないじゃないですか。......あ、もしかして動揺している私たちを落ち着かせるためにご冗談を?お気遣い感謝します、中へどうぞ。」
盛大な勘違いを受けてしまった。てかあれ、古竜のブレス以上だったのか。そりゃウサギの魔物など跡形もなく消え去る訳だ。
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