転生彫り師の無双物語 〜最弱紋など書き換えればいいじゃない〜

Josse.T

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第12話 溶岩は大人しく凍ってろ

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コラーゲン討伐から12日後、つまり魔王との約束の期日。
王都を囲うように張り巡らされた防衛用の壁の南側に、魔王の軍勢が控えていた。
壁の内側には俺とサフシヨ様、そしてフワジーラ学院のOB・OG──平たく言えば、聖騎士──が控えている。

・・・そういえばアタミの奴、「俺を引き渡せ」とかメッセージに残しておきながら、どこから出現するか教えてくれてなかったよな。
俺が広域探知魔法を使えたから良いものの……

「魔界はこの惑星のほぼ反対側に位置するわ。だからどの方角から来るか読めない。恐らくは……初めから『淳を引き渡しに来なかった』と言いがかりをつけて全面戦争に持ち込む気だったわね」

サフシヨ様が、俺の思考を読み取ったかのような明確な予想をした。

「もしくは、『王都全体を覆うレベルの探知魔法の使い手がいるかどうか』を基準に人類側の実力を測り、全面戦争に踏み切るかの材料にするつもりだったかも知れんな」

俺も、もっともらしい予想を立ててみた。

「それにしても、夥しい数の軍勢ね。それもみんなマグマゴーレム」

サフシヨ様の言う通り、魔王側には約2000体のマグマゴーレムが控えていた。
魔族とはもっと多種多様な存在の総称のはずだが……今回は魔王直属の軍勢だけで来たと言ったところだろうか。

あともう一つ疑問なのは、相手の見た目が「ザ・ゴーレム」なのだ。伝承にあった高度な擬態能力とやらはどこへ言ったのやら。
擬態の必要性がないから素の姿でいるだけかもしれないが。

「じゃあ、行ってくる。作戦通りよろしく頼むよ。──バイクだけに、ブンブン」

そう伝えると俺はカワサキに跨り、勢いよくゴーレム達に突っ込んだ。
と同時に方天画戟に絶対零度を付与し、サフシヨ様と王都内の民衆全体を念で繋いだ。

「さあ今から元気に実況を始めていきましょう、どうもサフシヨということなんですけども……今回はですね、魔王軍討伐という内容でお送りします。目を瞑ることで脳裏に実況映像が流れますので今の作業を止め、黙想に入ってください!」

朗々と脳内に響き渡るサフシヨ様の声。これが俺の念話で王都の民衆全てに伝わっている。あとサフシヨ様の言う通り、目を瞑ると俺が敵を倒す光景が観れるよう念話を工夫している。

これが今回の作戦だ。まさか敵も、戦場で実況をしている訳の分からん奴が回復要員だとは思うまい。サフシヨ様への攻撃の優先度も大幅に下がることだろう。
それに……これで俺の勇姿が、直接民に知れ渡るというものだ。凱旋してから「これは俺が紋章を彫り直した成果です」とスピーチすれば前世レベルで客が殺到することだろう。

客は荒くれ者の比率が高くなりそうだが、そんなのは正直どうってことない。前世だって、接客相手は極道だったのだから……おっと、そんなことを言ってる場合ではない。敵を倒さねば、取らぬ狸の皮算用だ。

「さあさあ、まずはどんな攻撃を見せてくれるんでしょうか……おおっと!なんと、方天画戟が伸びましたぁ!これはリンネル神話でもみたことのない斬新な使い方。伸びる方天画戟の突きによりゴーレムたちがみるみるうちに分断され、冷凍されていきます。アレは氷結魔法のエンチャントですかね。あんな悍しい威力の氷結魔法は未だかつて見たことがありませんが……なんと、今のたった一撃で敵軍のど真ん中に道ができてしまいましたー!」

今の突きで40体くらいは倒せただろうか。後ろの見通しが良くなったため魔王と魔王妃と思われる3人が目についたが、特段彼らが驚く様子はない。
ユフインを殺せる人ならこの程度できるのは想定内、と言った表情だな。

俺はゴーレム軍のちょうど中央あたりまで突っ切るとカワサキを収納し、左手で方天画戟の穂先を握る。そしてこう詠唱した。
「ハイボルテージマリオネット」

全身に電流が駆け巡るが、不思議と痛くない。
これは王立図書館でより詳しいバージョンのリンネル神話を読んで知った技で、自身の神経を魔法電流で強制操作し、桁違いのスピードを出せるようにする技だ。
ゴーレムどもを手っ取り早く一掃するにはこの状態で首を飛ばして回るのが一番だろう。

「またまた初めて見る魔法です!属性付きの身体強化でしょうが、雷属性でというのは聞いたことがありません。早すぎて良く見えませんが、おそらく方天画戟で首を刈っているのでしょう!……あれ、でも大部分のゴーレムは首を刈られてというより、ついでに飛び散った放電で機能停止している模様。そもそも首を刈る意味はあるんd──「そ こ ま で だ !!!」」

実測時間にして約30秒。
ゴーレムも残すところ数十体というところまで倒したところで、おそらくアタミのものと思われる劈くような拡声魔法が実況を遮った。

「う……煩い!しかし、ゴーレムも残すところあと50体ほど。これなら聖騎士で余裕で対処できます。淳さん、魔王妃の対処は任せます!」

残りのゴーレムは先輩方が対処してくださるということなので、一件落着と思った俺はサフシヨ様に笑顔で手を振り、ウインクした。
今回の念通信ではサフシヨ様がビデオカメラの役割を果たしているからな。

「これは、引き渡しの意思無しとみなしていいのね。というか……アンタがユフインとサルファ=ラ=ドンの仇ね」

そう言った女性は、こちらに憎悪の目を向けてきた。
明らかに禍々しい猛毒のオーラを纏っているので、あれがアタミとみて間違いないだろう。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「何たる力……あれならコラーゲンを1人で倒せたのも道理じゃわい……」
そう言ったのは、あの漁師連合の討伐証明にサインした男だ。

「あれが特殊初心者……俺たちとは格が違う……」
「あれが育つと聖騎士になるんだろ?俺たち、もっと聖騎士に感謝しなきゃな」
そう口々につぶやくのは都内の冒険者たちだ。
……一部、(一般の)聖騎士への過大評価も混じっているが。

「キャー!!今こっち向いて私にウインクしてくださったわ!」
「違うわバカ。今のは私に向けてよ!」
「勇者様ー!」
都内の女子たちは黄色い歓声を上げている。夢を潰すようなことを言うとすると、皆サフシヨ様の視界を通して実況を見ているため全員の方を向いてウインクしたことになるのだが。

こうして、王都の庶民たちはそれぞれ思い思いの感想を抱きながら実況を見ていた。
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