転生彫り師の無双物語 〜最弱紋など書き換えればいいじゃない〜

Josse.T

文字の大きさ
15 / 49

第13話 青酸の使い手との一騎打ち

しおりを挟む
青酸撃シアニドストライク

俺を攻撃対象と見なしたアタミは、問答無用で先制攻撃を仕掛けてきた。
うん、これがアーモンド臭……なのか?実際にアーモンドを収穫した経験が無いのでよく分からないが。

おっと、ぐずぐずしていると毒が回ってしまうぞ。そうなる前に、一旦ハッタリをかましてみよう。

「シアニドジャミング」

これは分子単位で血中ヘモグロビンが毒であるシアン化物イオンと結合するのを強制阻止し、きちんと酸素が行き渡るようにする魔法だ。
即席で考えついたので上手く効くか分からない。ちょっとでも体調に異変を感じたらこの茶番はやめて解毒魔法を使おうと思ったが……その必要はなさそうだな。

「毒は効かない」

「……は?」

どうやらこの毒が効かないのは想定外らしいな。
酸素を必要としない動物や血液に頼らず酸素循環をさせる生き物は別だが、この毒は普通どんな相手でも効くからな。
酸素が行き渡らないというのは、タフさでどうこうできる次元の話じゃない。だからこそ、人間にこの毒が通じないショックも桁外れなんだろう。

……あ、これ死んだふりして油断させた方が作戦としては正解だったかもしれない。
まあ今更だが。

「バイクだけに、ブンブン」

「おおっと、再びあの二輪車が登場です!まあ敵は空にうかんでますからね。こっちから仕掛けるには近く手段が必要なんでしょう。次々に迫り来る爆撃を華麗に避けてます!まるで当たる気がしない!」

ドリフト、ウィリー、ターン。
結界道路と運転技術を組み合わせることで、敵の爆発魔法を的確に避けていく。

アタミはアタミでなかなか賢いもので、ただ青酸ガスを爆発させるのではなく、結界魔法で一旦青酸と空気の混合気体を圧縮して爆発力を高めるという粋な方法を使ってくる。
毒混じりの爆風がOBたちに届くと流石にまずいので、そういうのは優先的に後輪鋸ウィリー・ソーで破壊することにしている。

「おのれちょこまかちょこまかと……間欠泉パルススプリング
突如、地面からナイアガラの滝を逆さまにしたような噴水が襲ってきた。
一滴たりとも地面戻って来ず全てが沸騰しきっているあたり、いかに高熱の温水が湧き出ているかが分かる。

「敵もなかなかに必死です!無作為に湧き出る間欠泉パルススプリングを相手にどう戦うのでしょうか?な……なるほど!乗り物の急加速と急減速を繰り返すことで湧水のタイミングを避けています!これは敵も予測しずらいことでしょう!」

残念だったな。カワサキは当然、ABS装着車両だ。通過地点を予測して間欠泉パルススプリングを発生させようと、その手前で急停止するなど朝飯前。
時期に目と鼻の先までたどり着くことだろう。

「その程度の水量で、ハイドロプレーニング現象を起こせると思うなよ?」

「ハイド……は?」

しまった。挑発のつもりで言ったんだが、そもそもこの世界には自動車って概念が無いんだったな。
仮に馬車にブレーキの機構があったとて、馬車では時速120kmなんて出せないのでそもそもハイドロプレーニングにはならない。

というか……だんだんアタミの攻撃が雑になってきているな。
数撃ちゃ当たる作戦の極みというか、もはや間欠泉というよりは波のようになってきている。

「何というか淳さんがあまりにも安定した戦いぶりを見せるためつい忘れそうになりますが、あれほどの大魔法を平然と連発するあたり悍おぞましい敵である事には変わりないですね。おおっとお、ここで接近手段を変えたようです!あれは何といいますか……波に乗っているように見えます」

サフシヨ様の言う通り、俺は敵の攻撃を避ける片手間サーフィンボードを創造していた。
……をな。

「それっ!」

良い感じに波に乗り、ついにアタミの目前まで迫った俺はサーフィンボードを蹴りつけ、自身を結界魔法で覆う。
その直後。ブラックホールさえ蒸発させられそうな大爆発が、視界を完全に覆い尽くした。

数分間、視界は真っ白のままだった。
漸く視界が元に戻った時に俺が見たのは、富士山よりも高いのではと思うほどの巨大なキノコ雲だった。

うん。
爆発にかなり極端な指向性を持たせただけあって、王都方面は無事そうだな。

……さて、肝心のアタミは今の爆発で倒せたのだろうか。
その確認をしようとした、まさにその時。天から、というか空間全体を覆うように、不思議な声が響いた。

「──自動オート蘇生リザレクション

空のとある一点、先ほどの爆心地だったと思われるところに光の粒が集まり、次第に輝きを増していった。

「あれ……私、生きてる……?何で……?どうやって……?」

見間違えることもない。
そこにいたのは、先ほどまで戦いを繰り広げていた相手。魔王妃アタミそのものだった。
ただ、どうやって蘇ったのかは本人にも自覚が無いらしいな。

「な……何よ!繰り返し死の恐怖でも味わわせる気?」

誓って俺じゃねーぞ、そんな趣味は持ってない。
というか、百歩譲ってそういう趣味が俺にあったとして、そういうのはラスボス相手にやる事だと思う。魔王のやつ、薄情なのかよく分からないがさっきからずっと観戦してるだけじゃないか。

まあいいだろう。
1回の蘇生でこのザマだ。仮に何らかの要因で無限に復活するとしても、何度か倒していればいつか心が折れて魔界に帰るはず。
降りかかった火の粉さえ払いきれば、俺にとっての勝利条件は満たされてるというものだ。

「まあ、なんにせよ大事なのは私が生きてるってことよ。周りの状況を確認せず私を倒すことだけ考えるってならそれでも構わないけど、それだと向こうが大惨事になるんじゃないかしら?」

アタミが指差す方、つまり王都の城壁を振り返ると、地面が小腸の柔毛のように盛り上がっていた。
……魔王のやつ、ただ戦いを傍観していたんじゃなく「擬態能力の高い手下マントルグ」を地面に擬態させてこっそり王都に向かわせてたのか。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...