転生彫り師の無双物語 〜最弱紋など書き換えればいいじゃない〜

Josse.T

文字の大きさ
30 / 49

第27話 帰路と伝説の怪獣

しおりを挟む
「バイクだけに、ブンブン」

ヤウォニッカを筆頭とする魔族たちに見送られ、俺はカワサキでその場を後にした。

王都への方角は魔神に教えてもらったので、後はひたすら一直線に帰るだけである。
カワサキはその気になれば音速以上も出せるバイクなので、数日中に王都に帰れるはずだ。

転移魔法で帰らないのには理由がある。
今回の新魔王選出の一連の流れを体験する中で、色々と考えることができたのだ。
王都に戻れば業務再開で忙しくなるだろうから、その前に思考を整理しておきたい。

そもそも今回の新魔王選定の(俺にとっての)目的は、神の視点で行動する事で神の価値観を身につける事だった。
全ては破壊天使リンネルに会うアイデアを思い付くために。

その成果があったか、と問われれば実に微妙なところである。
せいぜい「自分は本当に魔神より強い、ということが実証された」という副産物があった程度だろう。

今俺の思考を巡っているのは、最後にヤウォニッカが放った一言だ。
──「すみません。私など眼中に無かったのですね」

もう一度、あの時の一連の流れを振り返ってみよう。
俺は魔神との決闘に勝ち、一気に魔族の人気を勝ち取った。
あの時の俺は、さながら芸能人のようだった。

──芸能人。
そう、ここがポイントだ。
俺とヤウォニッカは、「タレントと一般人の関係」にあったのだ。

だからこそ、俺はヤウォニッカの求婚を何でもないかのように断った。
芸能人がサイン会で過激なファンに「結婚してください」と言われても、普通のファンサだけでやり過ごすのと何ら変わりはない。

ここから導かれる懸念点は──今のままじゃ、俺と破壊天使リンネルの関係だってこれと同じ構図になってしまうのではないか、ということだ。

ヤウォニッカの想いは、俺が目の前にいたにも関わらず、そして俺に直接伝えたにも関わらず、俺に届かなかった。
仮に今リンネルに会う方法を見つけたとしても、同じことが起きるリスクが高すぎる。

破壊天使、それは全宇宙の全ての生物から一様に崇められる存在だ。
だからこそ、そこでただ一人彼女を恋愛対象として見る男が現れれば自然と特異な存在として注目される。
そうなればワンチャンある。今まではそう思っていた。

だが、リンネルから見た俺が芸能人から見た一般人みたいなものだとしたら。
その程度の矮小な特異性では、興味を引くことは困難を極めるだろう。

今回の件をポジティブに捉えるとするならば「実際に会う前にこの事に気づけたのは大きな収穫だ」ってところだろうが、そうは言っても解決策が見当たらない。

「……海風に当たりながら考えて尚、この思考のカオス具合か。やれやれ……」

颯爽と走っているうちに、夜が来た。
どうせ危険はないので走り続ければ良いのだろうが、それでも夜は寝たいのが人のさが。俺は寝る準備に入ることにした。

登録した方向を指すコンパスを想像し、王都の向きを登録する。
これで、明日方角に迷うことはなくなる。

睡眠は収納の中でとる事にした。
王立図書館で読んで分かったのだが、収納とは神創亜空間、つまり神が想像して人間に貸し出している空間だ。
人間は、魔法でその空間を借りているに過ぎない。

そして通常、収納には制限がかかっているため生物を生きたまま入れることは不可能だ。自分が入る事など尚更だ。
だが、俺には魔神の紋章マスターキーがある。
生物も、自身も、思うがままに入場可能。
正に最高のセキュリティ空間だ。


☆ ☆ ☆

翌日。

思考というものの面白いポイントの一つに、「寝ることが何よりも効率的な整理術」というものがある。
この効果は実に凄まじく、俺は今後すべきことをはっきりさせることができた。

というか、ただの原点回帰である。
そう、俺が「破壊天使の紋章」を身につければいいのだ。

俺が転生した当初これを断念したのは、あの頃の俺が前世の常識しか持っていなかったからだ。
だが今の俺は、もう魔法にだいぶ馴染んでいる。
前世の知識と今の世界の知識を総動員すれば、破壊天使の紋章を再現するのも不可能ではないだろう。

それさえ叶えば、俺とリンネルは正真正銘同格の存在。
「芸能人と芸能人」になる。

ここまで来れば、あとは前世の恋愛経験を活かして口説くのみだな。


考えがまとまり、清々しい気分で疾走しているその時だった。

「我ガ海域ニ何用ダ」
巨大な竜のような怪獣が行く手を阻んだ。

「我ガ眠リヲ妨ゲル者ハ何人タリトモ許シハセン」

……バイク、騒音妨害だっただろうか。結構な上空を走っていたし、水中に音は届いていないはずだと思ったがな。
しかし、それにしても某高校バスケ部のエースみたいなことを言う奴だな。

「すまないな、迂回していくよ」

「逃ガスカ!」

……問答無用か。
まあバイクでずっと同じ姿勢だったし、思考もずっとフル回転しっぱなしだったので気分転換に体を動かすのは歓迎ではあるがな。

とりあえず、弱点とかないか鑑定してみるか。

【リヴァイアサン】
海を統べる怪獣。弱点属性は特に無いが、水属性にめっぽう強いことから相対的に言えば「水以外の属性が弱点」とも言えるだろう。
怒らせると3日で大陸を殲滅する程の猛威を奮うこともある。


……短っ。
特に有用な情報は得られなかったな。

……いや、待てよ。リヴァイアサン、どこかで聞き覚えがあるな。

──「言い伝えによると、水属性攻撃には滅法強いはずのリヴァイアサンを水属性特殊魔法『間欠泉パルススプリング』で気絶させてしまったとも言われている」

ヤオジムが魔王妃について説明してくれた際、こんな喩えを言っていたな。

これが真実だとしたら。
コイツにとって、間欠泉パルススプリングはとんでもないトラウマのはずだ。

「これに見覚えはあるか? 間欠泉パルススプリング

リヴァイアサンには当てず、適当な場所に向けて間欠泉パルススプリングを放つ。

すると……リヴァイアサンは「スイマセンデシタ!」と言うなり一目散に海の中へ戻って行ってしまった。
あの話、本当だったのか。


再びカワサキを走らせ約1時間、大陸が見えてきた。
懐かしいという程の日数は経っていないだろうが、どこか久しぶりな気がするな。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...