29 / 49
第26話 加護を与えた
しおりを挟む
魔神の手当てを終えて観客の方を振り向くと、一気に歓声が湧きあがった。
これで魔王直轄領と魔王妃領の軋轢が解消できた、とまでは思わないが少なくとも今この瞬間は心が一つになったようだ。
歓声の比率は……野太い歓声:黄色い歓声=7:3くらいか。
試しに投げキッスを送ってみると、見事に比率が逆転した。
魔神と魔王の間には、加護という絆が生まれるのだ。魔神たるもの、ファンサはきっちりしなければな。
覚醒魔法を起動する。
「みんな、盛り上がってるかーー!」
ウオオオオオォォォォォッッッッッ!
「愛してるぜーーっ!」
キャァァァァァッッッッ!
……なんかだいぶ板についてきた。
前世、彫り師なんてやってずにJから始まる事務所に所属してたら天寿を全うできたかもしれないな。
まあ、後の祭りだが。
とりあえず、先ほどの優勝者を正式に魔王とするために儀式を行わねばな。
治癒しながら魔神に聞いたが、この儀式には特に決まった形は無いらしい。
つまり、完全に俺流で大丈夫ってわけだ。
ならば……この方式でいくか。
「さあついにやって参りました、記念すべき第1回『魔神sのラジオ』、略して『マジラジ』のお時間です! なんとね、第1回から満員御礼ということで、好調なスタートを切ることができ嬉しい限りでございます」
みんな、真剣に聞いてくれている。バラエティ番組形式にしたのは正解だったな。
「さて本日のメインイベントなんですが、なんと今回、新しい魔王の選出となっております。魔王に最も相応しいと認められた方をゲストとしてお呼びしておりますので、改めて紹介したいと思います」
……あ、あの子の名前把握するの忘れてた。鑑定。ヤウォニッカちゃんね。
「ハ~イ、今回のゲストは先程行われた選抜試合で見事優勝を飾ったヤウォニッカちゃん! 燃えるような赤い髪に凛とした顔立ち、まさしく誰もが魔王と認めることでしょう。そんなヤウォニッカちゃんの強さに、チェ~ケラッチョ!」
拍手をしながら、ヤウォニッカに目線で「出ておいで」と合図する。
ヤウォニッカが歩いてくる中、会場は一気に拍手に包まれた。
目の前まで歩いてきてもらったところで手を上げ、一旦拍手をやめてもらう。
「それでは、実際に加護を与えましょう!」
自分の力の一部を転送するように意識しつつ、鑑定でちゃんとヤウォニッカの強さが上昇しているかをチェックする。
0.00236......0.00244......0.00312......0.00443......
『淳、待たんか!』
おっと、急に魔神から念話が入った。儀式の流れを切らないように工夫してくれたのはありがたいが、何事だろうか。
『どうしました?』
『いくら何でも与える加護が強すぎだろう! 既に元の強さの倍になっているではないか』
『しかし、これでも故・プレート=テクト=ニクスの60分の1にも満たない強さですよ?』
『そこを基準にするでない! そもそもカルイザワとプレート=テクト=ニクスの強さがおかしかったんだ。今の加護でもカルイザワの前の代に比べれば十分強い。そこで止めておけ』
それならば、と思い加護は結局0.00576で止めることにした。
一瞬人類とのパワーバランスのことが頭をよぎったが、そもそも人類の寿命は短い。俺が生きている間人類と魔族の交戦が無ければ良いだけの話だ。
「只今、加護の授与が完了しました。皆さん、新たな魔王に盛大な拍手を!」
再び会場が湧き上がる。
と、その時だった。ヤウォニッカが、とんでもないことを口走った。
「魔神様……いえ、淳様。淳様さえよろしければ……私と結婚してくださいませんか?」
……は?
一瞬、魔神に嵌められたかと思った。魔王と魔神は婚姻を結ぶ決まりになっているのを隠し、俺を破壊天使リンネルから遠ざけようとしたのかと。
だがそれはあり得ない話だ。
それなら、3人の「魔王妃」とは一体何だったんだという話になるからな。
というかあの魔王と魔神のカップルとか想像したくもない。
どちらかと言えば、より厄介なのは観衆の女魔族たちだ。
今に至っては、黄色い歓声が10割を占めてしまっている。
彼女らの期待の眼差しが、断りにくい雰囲気と化している。
……だが、この場を納めるヒントもまた彼女らの歓声の中にあると言えよう。
この子、おそらく恋心とファン心理の区別が付いてない。
「その気持ち、恋と憧れの区別がつくようになってもまだ覚えていたらもう一度言いに来いよ。いつか……必ず、俺より素敵な白馬の王子様が現れると思うけどな」
こう言って念話を切り頭を撫でてやると、ヤウォニッカは俯き「すみません。私など眼中に無かったのですね」と呟いた。
申し訳ないが、事実なので言い訳のしようもない。
……おい、今横から舌打ちが聞こえたぞ。
こんな事で俺が破壊天使リンネルを諦めるわけないだろう、アール=エルシィ。
この後は特にこれと言った非常事態は起こらず、加護の儀式は無事に終わった。
そろそろ王都に戻るとするか。
これで魔王直轄領と魔王妃領の軋轢が解消できた、とまでは思わないが少なくとも今この瞬間は心が一つになったようだ。
歓声の比率は……野太い歓声:黄色い歓声=7:3くらいか。
試しに投げキッスを送ってみると、見事に比率が逆転した。
魔神と魔王の間には、加護という絆が生まれるのだ。魔神たるもの、ファンサはきっちりしなければな。
覚醒魔法を起動する。
「みんな、盛り上がってるかーー!」
ウオオオオオォォォォォッッッッッ!
「愛してるぜーーっ!」
キャァァァァァッッッッ!
……なんかだいぶ板についてきた。
前世、彫り師なんてやってずにJから始まる事務所に所属してたら天寿を全うできたかもしれないな。
まあ、後の祭りだが。
とりあえず、先ほどの優勝者を正式に魔王とするために儀式を行わねばな。
治癒しながら魔神に聞いたが、この儀式には特に決まった形は無いらしい。
つまり、完全に俺流で大丈夫ってわけだ。
ならば……この方式でいくか。
「さあついにやって参りました、記念すべき第1回『魔神sのラジオ』、略して『マジラジ』のお時間です! なんとね、第1回から満員御礼ということで、好調なスタートを切ることができ嬉しい限りでございます」
みんな、真剣に聞いてくれている。バラエティ番組形式にしたのは正解だったな。
「さて本日のメインイベントなんですが、なんと今回、新しい魔王の選出となっております。魔王に最も相応しいと認められた方をゲストとしてお呼びしておりますので、改めて紹介したいと思います」
……あ、あの子の名前把握するの忘れてた。鑑定。ヤウォニッカちゃんね。
「ハ~イ、今回のゲストは先程行われた選抜試合で見事優勝を飾ったヤウォニッカちゃん! 燃えるような赤い髪に凛とした顔立ち、まさしく誰もが魔王と認めることでしょう。そんなヤウォニッカちゃんの強さに、チェ~ケラッチョ!」
拍手をしながら、ヤウォニッカに目線で「出ておいで」と合図する。
ヤウォニッカが歩いてくる中、会場は一気に拍手に包まれた。
目の前まで歩いてきてもらったところで手を上げ、一旦拍手をやめてもらう。
「それでは、実際に加護を与えましょう!」
自分の力の一部を転送するように意識しつつ、鑑定でちゃんとヤウォニッカの強さが上昇しているかをチェックする。
0.00236......0.00244......0.00312......0.00443......
『淳、待たんか!』
おっと、急に魔神から念話が入った。儀式の流れを切らないように工夫してくれたのはありがたいが、何事だろうか。
『どうしました?』
『いくら何でも与える加護が強すぎだろう! 既に元の強さの倍になっているではないか』
『しかし、これでも故・プレート=テクト=ニクスの60分の1にも満たない強さですよ?』
『そこを基準にするでない! そもそもカルイザワとプレート=テクト=ニクスの強さがおかしかったんだ。今の加護でもカルイザワの前の代に比べれば十分強い。そこで止めておけ』
それならば、と思い加護は結局0.00576で止めることにした。
一瞬人類とのパワーバランスのことが頭をよぎったが、そもそも人類の寿命は短い。俺が生きている間人類と魔族の交戦が無ければ良いだけの話だ。
「只今、加護の授与が完了しました。皆さん、新たな魔王に盛大な拍手を!」
再び会場が湧き上がる。
と、その時だった。ヤウォニッカが、とんでもないことを口走った。
「魔神様……いえ、淳様。淳様さえよろしければ……私と結婚してくださいませんか?」
……は?
一瞬、魔神に嵌められたかと思った。魔王と魔神は婚姻を結ぶ決まりになっているのを隠し、俺を破壊天使リンネルから遠ざけようとしたのかと。
だがそれはあり得ない話だ。
それなら、3人の「魔王妃」とは一体何だったんだという話になるからな。
というかあの魔王と魔神のカップルとか想像したくもない。
どちらかと言えば、より厄介なのは観衆の女魔族たちだ。
今に至っては、黄色い歓声が10割を占めてしまっている。
彼女らの期待の眼差しが、断りにくい雰囲気と化している。
……だが、この場を納めるヒントもまた彼女らの歓声の中にあると言えよう。
この子、おそらく恋心とファン心理の区別が付いてない。
「その気持ち、恋と憧れの区別がつくようになってもまだ覚えていたらもう一度言いに来いよ。いつか……必ず、俺より素敵な白馬の王子様が現れると思うけどな」
こう言って念話を切り頭を撫でてやると、ヤウォニッカは俯き「すみません。私など眼中に無かったのですね」と呟いた。
申し訳ないが、事実なので言い訳のしようもない。
……おい、今横から舌打ちが聞こえたぞ。
こんな事で俺が破壊天使リンネルを諦めるわけないだろう、アール=エルシィ。
この後は特にこれと言った非常事態は起こらず、加護の儀式は無事に終わった。
そろそろ王都に戻るとするか。
1
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる