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第25話 軌道変化式電磁加速砲
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魔王選抜のために作られた試合場。
堅牢な作りに重ね、何重にも結界魔法が張り巡らされたその場所に、俺と魔神が降り立った。
未だ見ぬ超次元の戦いへの期待が、全ての魔族を黙らせる。
親子設定などという茶番は、彼らの脳みそからはすっかり消えていた。
プログラムされた興奮の極み。
未知なる極限への期待。
鎮静する口に対し、かつてなく騒ぐDNA。
天文学的な感情の沸騰。暴虐的なスリルとパッション。
不仲を超え統一された魔族たちの思いは、空気を飽和させて余りある。
そんな中、俺が収納から取り出したのは方天画戟だ。
相手が相手だからな。なり振り構ってはいられないだろう。
新技を思いついたので、方天画戟の両側に付いている三日月状の刃のうち片方を取り外した。
「……は?」
声がした方を見ると、魔神がポカンとした表情でこちらを見ていた。
まさか、武器は使用不可とか言わないだろうな? 魔神だって青龍偃月刀を用意しているのだし。
「方天画戟って、そこ脱着可能だったのか?」
……おい、それ知らないで使ってたのかよ。
まあ何にせよ、動揺させられたのはラッキーだがな。
「それでは両者準備は良いですね」
赤髪の少女が審判──は無理だろうから、はじめの挨拶をやってくれるのだろう。
「始め!」
開始の合図とともに、俺は取り外した三日月状の刃を両腕の肘辺りで支えるようにし、両腕に高圧電流を流した。
「軌道変化式電磁加速砲」
刃に強大な電磁誘導がかかり、明後日の方角へ向かって飛んでいった。
しかし、これは計算通り。
三日月状の刃は空気抵抗により、ブーメランのような軌道を描く。
その軌道の先には──魔神の腕があった。
近代兵器のような弾速を持つ刃は、いとも容易く魔神の腕を切り裂く。
一瞬遅れて、魔神は自分の胴体と腕が切断されていることに気づいた。
「……何が起き……」
無理もない。俺とて、軌道の予測がついてなければあんな物を目で追うのは不可能だ。
動揺している隙に追撃させてもらおう。
限界まで高めた身体強化で一気に魔神に肉薄し、魔神が残った手で傷口を押さえるより早く魔神の傷口に手を添える。
「青酸撃」
アタミ、技を借りるぞ。
尤も、俺にイメージできるのはあくまで化学の知識としての青酸なので、技の効果は似ても似つかない。
俺がやったのは、魔神の血液や組織液に高濃度のシアン化物イオンを込めることだけだ。
しかし、それでもその直後から魔神は目に見えて弱り始め、吐き気を抑えながら青龍偃月刀の刃を空中に飛ばした。
……絶対生命維持の月か。確かにあれが光っているうちは、どんなに形成が不利でも死ぬことは無い。懸命な判断だな。
だが、ここで戦況を戻されるのを指を咥えて見ているわけにはいかない。
追撃をかけなければ。
「ハイボルテージトーチャー」
魔神の全身の末梢神経から中枢神経、果ては脳へと痛みを伝える神経伝達物質が迸る様子をイメージし、魔法を行使した。
尚、この技は「リンネル神話」にも技名以外の紹介が一切載っていなかったので、技の効果は完全なる空想である。
「ぐがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ! 参った、参った!」
ふう、と俺は大きくため息をつく。
傍目には俺の圧勝だったかもしれないが、当人の心境としては最後までギリギリの攻防のようだったからな。
何はともあれ、勝てて良かった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ [魔神視点]
決闘は終わると、淳は即座に青酸を解毒し腕までも繋げてくれた。
シーエ=ヌにやられた時は地道に回復魔法をかけ続ける事しか出来ず、腕の再生に数百年の時がかかったというのにな。なかなかどうして、慈悲のある奴だ。
……振り返ってみても、かつてない次元で酷い決闘だったな。
我は決闘の前、魔族たちの対立を好都合だと思ってしまった。
正当な理由の下お互いに時空魔法を封じる事で、リンネル様に気づかれるリスクなく淳を葬れる好機と見たのだ。
尤も、相手は我と同じ紋章を持ちながら何故かしら方天画戟を使える。勝率が低いのは覚悟していたが、藁をも摑むようなチャンスと思ったのだ。
ところが。始まってみれば、淳は方天画戟で最大級のハイボルテージペネトレイトを放つでもなく、見たことも聞いたこともない不思議な技を使ってきおった。
そこで気づいてしまったのだ。淳の強さの本質は我に匹敵する魔力量よりも、際限なき多彩な魔法の扱いにあるのだと。
何よりもまずかったのは、腕を斬られた時必要以上に狼狽してしまったことだ。
奇しくも、断たれたのは先のシーエ=ヌとの決闘の際超青酸龍拳で噛み切られた場所と完全に一致していた。
トラウマが蘇ったのが、運の尽きだったのだ。
そして、最後のハイボルテージトーチャー。
あれは本来、あんな技ではない。
まるで神経に直接作用するかのような、あらゆる防御を無視した究極の拷問術。
どちらかといえば……淳の魔法は、リンネル様が得意とする拷問魔法に近いものだった。
……まさか、淳のやつ、既にリンネル様と面識があるのか?
堅牢な作りに重ね、何重にも結界魔法が張り巡らされたその場所に、俺と魔神が降り立った。
未だ見ぬ超次元の戦いへの期待が、全ての魔族を黙らせる。
親子設定などという茶番は、彼らの脳みそからはすっかり消えていた。
プログラムされた興奮の極み。
未知なる極限への期待。
鎮静する口に対し、かつてなく騒ぐDNA。
天文学的な感情の沸騰。暴虐的なスリルとパッション。
不仲を超え統一された魔族たちの思いは、空気を飽和させて余りある。
そんな中、俺が収納から取り出したのは方天画戟だ。
相手が相手だからな。なり振り構ってはいられないだろう。
新技を思いついたので、方天画戟の両側に付いている三日月状の刃のうち片方を取り外した。
「……は?」
声がした方を見ると、魔神がポカンとした表情でこちらを見ていた。
まさか、武器は使用不可とか言わないだろうな? 魔神だって青龍偃月刀を用意しているのだし。
「方天画戟って、そこ脱着可能だったのか?」
……おい、それ知らないで使ってたのかよ。
まあ何にせよ、動揺させられたのはラッキーだがな。
「それでは両者準備は良いですね」
赤髪の少女が審判──は無理だろうから、はじめの挨拶をやってくれるのだろう。
「始め!」
開始の合図とともに、俺は取り外した三日月状の刃を両腕の肘辺りで支えるようにし、両腕に高圧電流を流した。
「軌道変化式電磁加速砲」
刃に強大な電磁誘導がかかり、明後日の方角へ向かって飛んでいった。
しかし、これは計算通り。
三日月状の刃は空気抵抗により、ブーメランのような軌道を描く。
その軌道の先には──魔神の腕があった。
近代兵器のような弾速を持つ刃は、いとも容易く魔神の腕を切り裂く。
一瞬遅れて、魔神は自分の胴体と腕が切断されていることに気づいた。
「……何が起き……」
無理もない。俺とて、軌道の予測がついてなければあんな物を目で追うのは不可能だ。
動揺している隙に追撃させてもらおう。
限界まで高めた身体強化で一気に魔神に肉薄し、魔神が残った手で傷口を押さえるより早く魔神の傷口に手を添える。
「青酸撃」
アタミ、技を借りるぞ。
尤も、俺にイメージできるのはあくまで化学の知識としての青酸なので、技の効果は似ても似つかない。
俺がやったのは、魔神の血液や組織液に高濃度のシアン化物イオンを込めることだけだ。
しかし、それでもその直後から魔神は目に見えて弱り始め、吐き気を抑えながら青龍偃月刀の刃を空中に飛ばした。
……絶対生命維持の月か。確かにあれが光っているうちは、どんなに形成が不利でも死ぬことは無い。懸命な判断だな。
だが、ここで戦況を戻されるのを指を咥えて見ているわけにはいかない。
追撃をかけなければ。
「ハイボルテージトーチャー」
魔神の全身の末梢神経から中枢神経、果ては脳へと痛みを伝える神経伝達物質が迸る様子をイメージし、魔法を行使した。
尚、この技は「リンネル神話」にも技名以外の紹介が一切載っていなかったので、技の効果は完全なる空想である。
「ぐがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ! 参った、参った!」
ふう、と俺は大きくため息をつく。
傍目には俺の圧勝だったかもしれないが、当人の心境としては最後までギリギリの攻防のようだったからな。
何はともあれ、勝てて良かった。
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決闘は終わると、淳は即座に青酸を解毒し腕までも繋げてくれた。
シーエ=ヌにやられた時は地道に回復魔法をかけ続ける事しか出来ず、腕の再生に数百年の時がかかったというのにな。なかなかどうして、慈悲のある奴だ。
……振り返ってみても、かつてない次元で酷い決闘だったな。
我は決闘の前、魔族たちの対立を好都合だと思ってしまった。
正当な理由の下お互いに時空魔法を封じる事で、リンネル様に気づかれるリスクなく淳を葬れる好機と見たのだ。
尤も、相手は我と同じ紋章を持ちながら何故かしら方天画戟を使える。勝率が低いのは覚悟していたが、藁をも摑むようなチャンスと思ったのだ。
ところが。始まってみれば、淳は方天画戟で最大級のハイボルテージペネトレイトを放つでもなく、見たことも聞いたこともない不思議な技を使ってきおった。
そこで気づいてしまったのだ。淳の強さの本質は我に匹敵する魔力量よりも、際限なき多彩な魔法の扱いにあるのだと。
何よりもまずかったのは、腕を斬られた時必要以上に狼狽してしまったことだ。
奇しくも、断たれたのは先のシーエ=ヌとの決闘の際超青酸龍拳で噛み切られた場所と完全に一致していた。
トラウマが蘇ったのが、運の尽きだったのだ。
そして、最後のハイボルテージトーチャー。
あれは本来、あんな技ではない。
まるで神経に直接作用するかのような、あらゆる防御を無視した究極の拷問術。
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追記:2025/09/20
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