9 / 30
第8話 二番弟子、冒険者登録をする
しおりを挟む
家庭教師のマイアさんが来てから一週間が経った。
始めはさっぱり分かっていなさそうだった正負の魔素の理論も何とか理解してもらえ、マイアさんは自力で一通りの訓練メニューをこなせるようになった。
残念ながら気の操作の感覚はまだ掴めていないようだが、今の調子でいけばそれもあと1か月でいけそうだな。
魔圧はてんで低いが、そうとう狩りの経験を積んだのだろう、最大魔力量だけなら俺より多いからな。成長が早いのはそれもあってのことだろう。
そして今日だが、俺はそろそろまた狩りに行こうかと思っている。
今度は、マイアさんと一緒に。
魔法と気の複合技を、早いとこ実演した方がマイアさんのモチベーションアップに繋がるだろうからな。
「行こっか」
「そうね。私も、家庭教師を続けるためのお金を稼がなければならないもの」
「……授業料免除は、マイアさんが気を扱えるようになってからだぞ?」
「分かってるわよ」
そう。
一週間前、マイアさんは「私が教わってるのにお金をもらうのはおかしいから」と授業料の免除を提案してきたのだ。
だが、実際に授業料を免除するにあたっては、俺の実力について両親に話さなければならない。
マイアさんが気を扱えないうちは、それは時期尚早だ。
そう判断したので、妥協案として「マイアさんが気を扱えるようになったら、授業料免除について親に話す」としたのだ。
……ちなみに今ため口で話しているのは、俺の世渡りスキルで自然に移行した賜物である。
「そういえば、テーラスはもう冒険者登録は済ませてるの?」
「あ、それまだだな。まず先そっちにしよっか」
マイアさんありがとう。重要な事を忘れていくところだった。
前回魔物を狩った時は気にしてなかったのだが、マイアさん曰く「冒険者と一般人では戦利品の売値が倍違う」らしい。
冒険者を保護する措置なのだそうだ。
小遣いは多ければ多いほど良いからな。
ちゃんと冒険者登録は済ませよう。
☆ ☆ ☆
屋敷をでて30分ほど歩くと、冒険者ギルドが見えてきた。
そこで、俺はマイアさんにこう言った。
「先、ギルドの中入っといて」
「……え? 何で?」
「いいから」
そう言うと、マイアさんは不思議そうにしながらも先に行ってくれた。
そこで、俺は人目につかないようミスディレクションで存在感を消した。
冒険者には、性格が野蛮な者も多い。
子どもがギルドに入ろうとしていれば、ちょっかいをかけてくる奴が出てこないとも限らない。
ギルドの中こそ喧嘩厳禁なので入ってしまえばどうという事は無いのだが、入り口付近は最も危険なのだ。
だから、俺は手品師が使うような視線誘導を駆使し、冒険者の目につかないようにギルドに入ることにしたのだ。
言っておくが、ミスディレクションは魔法でも気でもないただの技術だ。
マイアさんを先に行かせたのにも理由がある。
マイアさんは単体で見れば優秀な魔法使いに見えるはずだが、俺を連れていればただの子連れの女だとたかを括られかねない。
さすがの俺も、目立つ美人の隣でミスディレクションは成功させられないからな。
お互いのために、別々にギルドに向かったのだ。
ギルドに入ると、マイアさんもほぼ同じタイミングで入ってきた。
「お待たせ」
「……テーラス? 今、どこから出てきたの?」
「え、普通にミスディレクションで人目につかないように入って来たよ? 野蛮人に絡まれないように」
「何さらっと高等技術使ってんの!?」
……ミスディレクションが高等技術だと?
前世では、町内会の防犯教室で子供の人気ダントツ1位を飾った技術だったんだがな。
ちと平和ボケしすぎではないだろうか、今の人類。
まあいい。冒険者登録をしよう。
「すみません、冒険者登録をしたいのですが」
「……失礼ですが、年齢をお聞かせしてもらえないでしょうか」
「6才です」
「でしたら、特別登録試験をお受け頂くことになります。こちらへどうぞ」
そう言って、受付の人は俺を別室に連れていこうとした。
なんでも、ギルドのルールとして12歳未満の冒険者登録は原則認められていないため、例外となれる実力があるかの試験を受けさせられるのだそうだ。
それも、12歳でも8割が落ちる難易度の試験をだ。
……もっとも、俺はその試験は受けるつもりは無いがな。
マイアさんが、俺たちの会話の間に入る。
「ペリアレイ魔法学園83期特待生のマイアです。私がこの子、テーラス樹君の実力の保証人となります」
マイアさんはそう言って、魔法学園の卒業証書の写しを見せた。
そう、実はこの試験、一定の優秀さを示す者の推薦があれば免除できるのだ。
エリート魔法学園の元特待生なら、言う事なしだ。
……別に俺なら、今の時代の基準で良いなら12歳児の上位20%に食い込むくらい訳は無さそうだ。
だが、マイアさんは就任以来、碌に家庭教師らしいことができないでいた。
だから、こういう所でしっかり花を持たせてあげようと思ったのである。
数分後。
俺はギルドの会員証を受け取り、受付カウンターを後にできた。
始めはさっぱり分かっていなさそうだった正負の魔素の理論も何とか理解してもらえ、マイアさんは自力で一通りの訓練メニューをこなせるようになった。
残念ながら気の操作の感覚はまだ掴めていないようだが、今の調子でいけばそれもあと1か月でいけそうだな。
魔圧はてんで低いが、そうとう狩りの経験を積んだのだろう、最大魔力量だけなら俺より多いからな。成長が早いのはそれもあってのことだろう。
そして今日だが、俺はそろそろまた狩りに行こうかと思っている。
今度は、マイアさんと一緒に。
魔法と気の複合技を、早いとこ実演した方がマイアさんのモチベーションアップに繋がるだろうからな。
「行こっか」
「そうね。私も、家庭教師を続けるためのお金を稼がなければならないもの」
「……授業料免除は、マイアさんが気を扱えるようになってからだぞ?」
「分かってるわよ」
そう。
一週間前、マイアさんは「私が教わってるのにお金をもらうのはおかしいから」と授業料の免除を提案してきたのだ。
だが、実際に授業料を免除するにあたっては、俺の実力について両親に話さなければならない。
マイアさんが気を扱えないうちは、それは時期尚早だ。
そう判断したので、妥協案として「マイアさんが気を扱えるようになったら、授業料免除について親に話す」としたのだ。
……ちなみに今ため口で話しているのは、俺の世渡りスキルで自然に移行した賜物である。
「そういえば、テーラスはもう冒険者登録は済ませてるの?」
「あ、それまだだな。まず先そっちにしよっか」
マイアさんありがとう。重要な事を忘れていくところだった。
前回魔物を狩った時は気にしてなかったのだが、マイアさん曰く「冒険者と一般人では戦利品の売値が倍違う」らしい。
冒険者を保護する措置なのだそうだ。
小遣いは多ければ多いほど良いからな。
ちゃんと冒険者登録は済ませよう。
☆ ☆ ☆
屋敷をでて30分ほど歩くと、冒険者ギルドが見えてきた。
そこで、俺はマイアさんにこう言った。
「先、ギルドの中入っといて」
「……え? 何で?」
「いいから」
そう言うと、マイアさんは不思議そうにしながらも先に行ってくれた。
そこで、俺は人目につかないようミスディレクションで存在感を消した。
冒険者には、性格が野蛮な者も多い。
子どもがギルドに入ろうとしていれば、ちょっかいをかけてくる奴が出てこないとも限らない。
ギルドの中こそ喧嘩厳禁なので入ってしまえばどうという事は無いのだが、入り口付近は最も危険なのだ。
だから、俺は手品師が使うような視線誘導を駆使し、冒険者の目につかないようにギルドに入ることにしたのだ。
言っておくが、ミスディレクションは魔法でも気でもないただの技術だ。
マイアさんを先に行かせたのにも理由がある。
マイアさんは単体で見れば優秀な魔法使いに見えるはずだが、俺を連れていればただの子連れの女だとたかを括られかねない。
さすがの俺も、目立つ美人の隣でミスディレクションは成功させられないからな。
お互いのために、別々にギルドに向かったのだ。
ギルドに入ると、マイアさんもほぼ同じタイミングで入ってきた。
「お待たせ」
「……テーラス? 今、どこから出てきたの?」
「え、普通にミスディレクションで人目につかないように入って来たよ? 野蛮人に絡まれないように」
「何さらっと高等技術使ってんの!?」
……ミスディレクションが高等技術だと?
前世では、町内会の防犯教室で子供の人気ダントツ1位を飾った技術だったんだがな。
ちと平和ボケしすぎではないだろうか、今の人類。
まあいい。冒険者登録をしよう。
「すみません、冒険者登録をしたいのですが」
「……失礼ですが、年齢をお聞かせしてもらえないでしょうか」
「6才です」
「でしたら、特別登録試験をお受け頂くことになります。こちらへどうぞ」
そう言って、受付の人は俺を別室に連れていこうとした。
なんでも、ギルドのルールとして12歳未満の冒険者登録は原則認められていないため、例外となれる実力があるかの試験を受けさせられるのだそうだ。
それも、12歳でも8割が落ちる難易度の試験をだ。
……もっとも、俺はその試験は受けるつもりは無いがな。
マイアさんが、俺たちの会話の間に入る。
「ペリアレイ魔法学園83期特待生のマイアです。私がこの子、テーラス樹君の実力の保証人となります」
マイアさんはそう言って、魔法学園の卒業証書の写しを見せた。
そう、実はこの試験、一定の優秀さを示す者の推薦があれば免除できるのだ。
エリート魔法学園の元特待生なら、言う事なしだ。
……別に俺なら、今の時代の基準で良いなら12歳児の上位20%に食い込むくらい訳は無さそうだ。
だが、マイアさんは就任以来、碌に家庭教師らしいことができないでいた。
だから、こういう所でしっかり花を持たせてあげようと思ったのである。
数分後。
俺はギルドの会員証を受け取り、受付カウンターを後にできた。
1
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる