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第9話 二番弟子、伝説の調理方法で上手い飯を食う
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ギルドを出た俺たちは、屋敷近くの平原へと戻って来た。
俺が前行った森とギルドは、屋敷を挟んで反対側に位置するからな。
平原を通って道中で出くわしたホーンラビットを狩りつつ、森に入ろうって算段だ。
と、その時。
「あ、高級肉だ」
滅多に見かけることの無いホーンラビットの上位種、デリシャスホーンラビットが近くを通たので、俺は気功風刃でそいつを倒した。
デリシャスホーンラビットは、名前の通りホーンラビットと違って肉が甘く、ジューシーな魔物だ。
前世ではワイルドホーンラビットと呼ばれていたのだが……この時代の人々は、命名原理が人間本位なことだな。
略して高級肉と呼んでいる俺が言えたことではないが。
「今のが魔法と気の複合技……あんな威力の魔法で、即死させられちゃうんだ……」
マイアさんが感動している。
いい刺激になっているようだ。
「まるで俺の冒険者デビューを祝ってくれてるみたいだな」
そう言って、俺はデリシャスホーンラビットを解体し、肉を食べられるように処理した。
そして肉を、気で作った結界の箱に入れる。
この結界には、外からの光は通し、結界の内側では光を全て反射するという性質がある。
そこに、結界の外から魔法で電磁波を当てる。
前世では「オーブンレンジ」と呼ばれていた、簡単な調理術だ。
「オーブンレンジ」を発動したまま、俺とマイアさんは森へと歩き続けた。
「あっ……! こっちにもいた! ただのホーンラビットだけど……」
マイアさんも魔物を見つけたようで、風魔法の風刃を使い、一撃で倒していた。
「魔石、魔石っと」
ホーンラビットを解体しつつ、軽快な足取りでついてくるマイアさん。
本来ならそんなことをしていれば魔物にいらぬ傷がついてしまうのだが……目ぼしい部位の無い魔物だから、気にしないのだろうな。
俺だってそうする。
……おっと、そうこうしている内に、肉の調理が終わったようだ。
結界を解除すると、いい匂いが漂ってくる。
「マイアさん、高級肉焼けたよ。お昼にしない?」
そう言って、平原に転がっていた、座れそうな大きさの岩を指さした。
「……え?」
「ほら、もうお腹がすく時間じゃん。食べよう?」
「いや、『高級肉が焼けた』ってさ、さっきのデリシャスホーンラビットのことでしょ? ずっと歩いてたのに、いつ焼いたの?」
「さっきからずっと『オーブンレンジ』で温めてたよ」
「おー……。え、ええー!?」
……ん? 何か驚く要素があっただろうか。
「オーブンレンジって、あの伝説の『食べ物を温める不思議な箱』のこと? どこにそんなもの持ってたの?」
「持ってた?」
「だから、今テーラスが使った伝説のアーティファクトのことよ! 『オーブンレンジ』って、自分で言ったじゃない!」
……ああ。
それな、前提から間違ってるわ。
「そんなアーティファクトが有るわけないだろう。電子レンジも、気と魔法の複合技だぞ?」
「え゛っ。そうだったの……」
「っていうか、その反応から察するにこの調理法、今では使われてないのか? この時代でも、魔法使いと気の使い手が協力すれば発動可能だと思うんだが」
「うーん、まずこの世界では、『魔法と気の合わせ技』って発想がまず無いものね。実態も勘違いされてるわけだし、使用者はいないと思うわ」
そうなのか。
普通に火で調理するより、肉汁を無駄にせずジューシーに温められるので便利な技なんだがな。
ま、これもぼちぼち普及させていくとするか。
「好きな部位から食べていこう」
俺はマイアさんに、そう促した。
肉は、腹、もも、胸など部位ごとに解体してある。
衛生面のことを考えると解体用のナイフで切り分けたくはないので、こういうピクニックだと部位で分配する事になる。
「どこが美味しいの?」
「人によるな。あっさりしたのが好きなら胸、脂が乗ってるのが好きなら腹、その中間がいいならもも。迷うなら、俺から選ぶぞ」
「じゃあ、私は胸で」
女性らしい選択だな。
そう思いながら、一口目を頬張る。
「こっれだ、これこれ。100年振りだわこの味」
ジューシーな脂身から溢れ出る、脳天を突き抜けるような旨味。
人工調味料では決してたどり着けない究極の味の配合が、「食べるほどに飢える」という奇妙な現象を起こすのだ。
たとえ世界が滅びても、これが食えるならそれでいい。
そう思わせるほどの美味なのだ。
「その発言が冗談や比喩じゃ無いってのが慣れないのよね……」
マイアさん、俺の発言への感想より肉を食べようよ。冷めちゃうぞ。
それとも猫舌か?
俺が2口目にいこうとしたところで、マイアさんも食べ始めた。
そして。
「……」
何も言えなくなっていた。
絶対数が少なすぎて、王族でも滅多に食えない高級肉だからな。普通そうなるだろう。
その後しばらくは、2人とも無言のまま一心不乱に肉を食べ続けた。
☆ ☆ ☆
「いよいよ森か」
「そうね、気を引き締めないと」
そう言って、森の中へと一歩踏み出した。
前回は、手前に敵をおびき寄せただけだったからな。中に入るのは、実質これが初めてだ。
俺は右手に魔力を螺旋状に流し、左腕の関節あたりを魔力的に絶縁した。
「LC共振探知」という、気配を探る魔法だ。
魔物は、種類ごとに違った気の波長を持つ。
それを捉え、どんな魔物がいるかを知るのがこの魔法の原理だ。
「前方300mあたりからベイベーウルフが来るぞ」
「ああ、あの気配ね。……って、何で魔物の種類まで分かるの!?」
「逆に聞くが、種類を特定せずにどうやって存在だけを知ったんだ?」
LC共振探知は、体内の魔力の流れが特定の魔物の気で乱されることで魔物の存在を知る魔法だ。
必然的に、魔物の位置と種類を同時に特定する事になる。
「え? 普通に魔力を放って、その反射で調べたんだけど……」
「そうか、分かった。とりあえず、今日の狩りでは探知は俺に任せてくれ。魔力温存のためにな。俺は魔力を消費せずに探知ができるから」
「は……はい? 何それ、どんだけ便利な技なのよ」
マイアさんは、呆れたようにそう言った。
「近いうちに教えるから」
「う……うん! 楽しみにしてるね!」
さて、そんなことを言っているうちにベイベーウルフが目の前までやって来たな。
ベイベーウルフは、超小型の狼型魔物であることからその名がついた。決して、赤ちゃんというわけではない。
マイアさんのお手並み拝見と行こうか。
「水撃!」
マイアさんの魔法が炸裂する。
高圧水の威力で、ベイベーウルフの首元に傷ができた。
そのうち、大量出血で死ぬだろう。
この分なら、それなりに狩りができそうだな。
この日、俺たちは合わせて10匹近くの魔物を狩った。
敵の絶対数が少ない平和な森ならこんなもんか。
俺が前行った森とギルドは、屋敷を挟んで反対側に位置するからな。
平原を通って道中で出くわしたホーンラビットを狩りつつ、森に入ろうって算段だ。
と、その時。
「あ、高級肉だ」
滅多に見かけることの無いホーンラビットの上位種、デリシャスホーンラビットが近くを通たので、俺は気功風刃でそいつを倒した。
デリシャスホーンラビットは、名前の通りホーンラビットと違って肉が甘く、ジューシーな魔物だ。
前世ではワイルドホーンラビットと呼ばれていたのだが……この時代の人々は、命名原理が人間本位なことだな。
略して高級肉と呼んでいる俺が言えたことではないが。
「今のが魔法と気の複合技……あんな威力の魔法で、即死させられちゃうんだ……」
マイアさんが感動している。
いい刺激になっているようだ。
「まるで俺の冒険者デビューを祝ってくれてるみたいだな」
そう言って、俺はデリシャスホーンラビットを解体し、肉を食べられるように処理した。
そして肉を、気で作った結界の箱に入れる。
この結界には、外からの光は通し、結界の内側では光を全て反射するという性質がある。
そこに、結界の外から魔法で電磁波を当てる。
前世では「オーブンレンジ」と呼ばれていた、簡単な調理術だ。
「オーブンレンジ」を発動したまま、俺とマイアさんは森へと歩き続けた。
「あっ……! こっちにもいた! ただのホーンラビットだけど……」
マイアさんも魔物を見つけたようで、風魔法の風刃を使い、一撃で倒していた。
「魔石、魔石っと」
ホーンラビットを解体しつつ、軽快な足取りでついてくるマイアさん。
本来ならそんなことをしていれば魔物にいらぬ傷がついてしまうのだが……目ぼしい部位の無い魔物だから、気にしないのだろうな。
俺だってそうする。
……おっと、そうこうしている内に、肉の調理が終わったようだ。
結界を解除すると、いい匂いが漂ってくる。
「マイアさん、高級肉焼けたよ。お昼にしない?」
そう言って、平原に転がっていた、座れそうな大きさの岩を指さした。
「……え?」
「ほら、もうお腹がすく時間じゃん。食べよう?」
「いや、『高級肉が焼けた』ってさ、さっきのデリシャスホーンラビットのことでしょ? ずっと歩いてたのに、いつ焼いたの?」
「さっきからずっと『オーブンレンジ』で温めてたよ」
「おー……。え、ええー!?」
……ん? 何か驚く要素があっただろうか。
「オーブンレンジって、あの伝説の『食べ物を温める不思議な箱』のこと? どこにそんなもの持ってたの?」
「持ってた?」
「だから、今テーラスが使った伝説のアーティファクトのことよ! 『オーブンレンジ』って、自分で言ったじゃない!」
……ああ。
それな、前提から間違ってるわ。
「そんなアーティファクトが有るわけないだろう。電子レンジも、気と魔法の複合技だぞ?」
「え゛っ。そうだったの……」
「っていうか、その反応から察するにこの調理法、今では使われてないのか? この時代でも、魔法使いと気の使い手が協力すれば発動可能だと思うんだが」
「うーん、まずこの世界では、『魔法と気の合わせ技』って発想がまず無いものね。実態も勘違いされてるわけだし、使用者はいないと思うわ」
そうなのか。
普通に火で調理するより、肉汁を無駄にせずジューシーに温められるので便利な技なんだがな。
ま、これもぼちぼち普及させていくとするか。
「好きな部位から食べていこう」
俺はマイアさんに、そう促した。
肉は、腹、もも、胸など部位ごとに解体してある。
衛生面のことを考えると解体用のナイフで切り分けたくはないので、こういうピクニックだと部位で分配する事になる。
「どこが美味しいの?」
「人によるな。あっさりしたのが好きなら胸、脂が乗ってるのが好きなら腹、その中間がいいならもも。迷うなら、俺から選ぶぞ」
「じゃあ、私は胸で」
女性らしい選択だな。
そう思いながら、一口目を頬張る。
「こっれだ、これこれ。100年振りだわこの味」
ジューシーな脂身から溢れ出る、脳天を突き抜けるような旨味。
人工調味料では決してたどり着けない究極の味の配合が、「食べるほどに飢える」という奇妙な現象を起こすのだ。
たとえ世界が滅びても、これが食えるならそれでいい。
そう思わせるほどの美味なのだ。
「その発言が冗談や比喩じゃ無いってのが慣れないのよね……」
マイアさん、俺の発言への感想より肉を食べようよ。冷めちゃうぞ。
それとも猫舌か?
俺が2口目にいこうとしたところで、マイアさんも食べ始めた。
そして。
「……」
何も言えなくなっていた。
絶対数が少なすぎて、王族でも滅多に食えない高級肉だからな。普通そうなるだろう。
その後しばらくは、2人とも無言のまま一心不乱に肉を食べ続けた。
☆ ☆ ☆
「いよいよ森か」
「そうね、気を引き締めないと」
そう言って、森の中へと一歩踏み出した。
前回は、手前に敵をおびき寄せただけだったからな。中に入るのは、実質これが初めてだ。
俺は右手に魔力を螺旋状に流し、左腕の関節あたりを魔力的に絶縁した。
「LC共振探知」という、気配を探る魔法だ。
魔物は、種類ごとに違った気の波長を持つ。
それを捉え、どんな魔物がいるかを知るのがこの魔法の原理だ。
「前方300mあたりからベイベーウルフが来るぞ」
「ああ、あの気配ね。……って、何で魔物の種類まで分かるの!?」
「逆に聞くが、種類を特定せずにどうやって存在だけを知ったんだ?」
LC共振探知は、体内の魔力の流れが特定の魔物の気で乱されることで魔物の存在を知る魔法だ。
必然的に、魔物の位置と種類を同時に特定する事になる。
「え? 普通に魔力を放って、その反射で調べたんだけど……」
「そうか、分かった。とりあえず、今日の狩りでは探知は俺に任せてくれ。魔力温存のためにな。俺は魔力を消費せずに探知ができるから」
「は……はい? 何それ、どんだけ便利な技なのよ」
マイアさんは、呆れたようにそう言った。
「近いうちに教えるから」
「う……うん! 楽しみにしてるね!」
さて、そんなことを言っているうちにベイベーウルフが目の前までやって来たな。
ベイベーウルフは、超小型の狼型魔物であることからその名がついた。決して、赤ちゃんというわけではない。
マイアさんのお手並み拝見と行こうか。
「水撃!」
マイアさんの魔法が炸裂する。
高圧水の威力で、ベイベーウルフの首元に傷ができた。
そのうち、大量出血で死ぬだろう。
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