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第19話 二番弟子、アテが外れる
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午前中は筆記試験だ。
試験時間は70分×2回、間に10分の休憩を挟む。
解く方針だが、とりあえずしっかりと自己アピールすることが肝要だと思うので、使える飛び道具は可能な限り使っていこうと思う。
初等的に解ける問題でも、準同型定理など群の概念を用いて解いてみたり。
とにかく試験官の印象に残ることに重点を置き、あわよくば追加点をもらおうって算段だ。
最初の70分の出題範囲では、他に面白かったのはエイリアンに関する自由記述式問題だな。
エイリアンは、だいたい100年に一度くらい飛来してくる宇宙の生物だ。
迷宮深層の魔物や森の主とも一線を画すレベルの強さだが、同時に決定的な弱点もある。
それは、「空からやってくる」という点だ。
空中にいる間に、オーラレールガンなどの巨大長距離狙撃兵器で狙い撃ちにしてやれば割と簡単に倒せるのだ。
もっとも、今の時代だとエイリアンの中でも桁違いの存在である「異形級」が来てしまうとどうしようもないが……奴らに至っては、1000年に一度くらいの頻度でしかやって来ない。
マイアさんの教え子の中にストイックな子がいれば、異形級の襲来よりも、その子が異形級を倒せる力をつける方が先だろう。
異形級はその強さ故に、襲来の5年前には探知が可能だし、もしもの場合は転生術でバックれちゃってもいいしな。
……待てよ。今の時代に、オーラレールガンって存在するんだろうか。
あれは、オーラバズーカと違って材料にアダマンタイトだのオリハルコンだの必要になる上に、組み立てにも数か月かかるので、製作が非常に面倒なのだが。
「使途不明な古代兵器」かなんかとして、現存していることを願いたいものだな。
まあ、そんな感じでとりあえず、試験の解答用紙には対処法を記述しておいた。
これを答えられる受験生はまずいないだろうし、差をつけられたことだろう。
チャイムが鳴り、前半の試験の解答用紙が回収された。
長時間座っていると血流が悪くなるので、ちょっと廊下でも散歩するか。
そうして教室の外に出ると──そこには、1人の知り合いの姿があった。
「おう、マリカじゃん」
「あ、久しぶり! テーラスも受験しに来てたんだ」
「うん。昼飯って持ってきてる?」
「一応、弁当があるけど……どうして? まさかお昼休憩にバーベキューしようとかは言わないよね?」
「俺を何だと思ってる。ただタコわさでも奢ろうかと思っただけだ」
「いいけど……この近くに海ってあったっけ?」
「まあまあ、そこは、さ」
特に試験に緊張していたわけでは無いが、それでも親しい人の姿を見かけるとホッとするもんだな。
レッサークトゥルフ、美味しいので是非ご馳走しよう。
……なんか忘れている気もするが……何だったっけな。
まあいいや。次の試験も頑張ろう。
「お互い受かろうぜ」
「もちろんよ」
教室に戻ってしばらくすると、筆記試験の後半が始まった。
こちらは社会系の科目なので、特に追加点を取りにいける問題は無い。
俺の前世時代からの歴史問題でもあれば良かったのだがな。
まあ、マイアさんに教えてもらったことをきっちり解答に落とし込んでおこう。
筆記試験が全て終わり、お昼休憩の時間になった。
転生探知でマリカを探す。
……そうだった、隣の教室だわ。骨折り損もいいとこだ。
収納から皿に盛ったレッサークトゥルフのタコわさを取り出した。
「マリカ、これ食べよ」
「……冗談抜きでタコわさだ。ほんと、こんなのどこで手に入れたの?」
「近くの迷宮だ」
「迷……もしかして、レッサークトゥルフとか言わないよね?」
「食べてみれば分かる」
恐る恐る、タコわさに手を伸ばすマリカ。
そんなに慎重になることも無いだろうに。
「……!」
口に入れた途端、目を見開いたマリカ。
「どうした?」
「こんな美味しいタコってあるんだ」
「レッサークトゥルフは、海産のタコとは歯ごたえの次元が違うからな」
「やっぱりレッサークトゥルフ……そんな高級食材、私にくれてよかったの?」
「いつでも狩れるしな」
「いつでも……テーラスにとって、レッサークトゥルフってその程度の存在なのね。もうそれ、特待生確定じゃない?」
「そんな家計に優しい話があればいいんだけどな」
「筆記試験、どうだったの?」
「とりあえず、解答欄は全部埋めたぞ」
「なんだろ。すごく典型的なできない奴の発言なのに、なぜかテーラスだけは例外だって思っちゃう」
「だと良いんだけどな」
「午後は、まずは剣術だね」
「そうだな」
……あ、今思い出したぞ。
「魔剣使いのマリカ」のことを。
なんで、マリカがペリアレイ魔法学園に来てるんだ?
気の適性があって、アウラ気流女学院に通うんじゃなかったのか?
これは完全に誤算だ。
他校に彼女を作っておく作戦が潰れてしまったではないか。
まあ、部での振る舞いがちょっと面倒になる程度の話なので、そこまで大きな問題では無いのだが。
しかし、疑問は残るな。
結局、「魔剣」って何の話だったんだ?
適性が魔法で、俺レベルの気を扱える実力があれば、甲羅弾でもレッサークトゥルフでも驚かないはず。
順当に考えて、今のマリカにそこまでの力は無いだろう。
そもそも師範が理論を体系化させる以前の「天才」だって、効率的に訓練できる訳では無かったので、適性のない方の能力の扱いはひよっこレベルだったとのことだ。
魔法の適性がある者に魔剣を発動するほどの気は扱えないはずだし、気の適性持ちではペリアレイの魔法の実技は突破できないだろう。
平たく言えば、この時代の「魔剣使い」が魔法学園に来ること自体、あり得ない話なのだ。
訳が分からなくなってきた。
まあ、もう少しで実技試験なので、そこで真相を知るとしよう。
試験時間は70分×2回、間に10分の休憩を挟む。
解く方針だが、とりあえずしっかりと自己アピールすることが肝要だと思うので、使える飛び道具は可能な限り使っていこうと思う。
初等的に解ける問題でも、準同型定理など群の概念を用いて解いてみたり。
とにかく試験官の印象に残ることに重点を置き、あわよくば追加点をもらおうって算段だ。
最初の70分の出題範囲では、他に面白かったのはエイリアンに関する自由記述式問題だな。
エイリアンは、だいたい100年に一度くらい飛来してくる宇宙の生物だ。
迷宮深層の魔物や森の主とも一線を画すレベルの強さだが、同時に決定的な弱点もある。
それは、「空からやってくる」という点だ。
空中にいる間に、オーラレールガンなどの巨大長距離狙撃兵器で狙い撃ちにしてやれば割と簡単に倒せるのだ。
もっとも、今の時代だとエイリアンの中でも桁違いの存在である「異形級」が来てしまうとどうしようもないが……奴らに至っては、1000年に一度くらいの頻度でしかやって来ない。
マイアさんの教え子の中にストイックな子がいれば、異形級の襲来よりも、その子が異形級を倒せる力をつける方が先だろう。
異形級はその強さ故に、襲来の5年前には探知が可能だし、もしもの場合は転生術でバックれちゃってもいいしな。
……待てよ。今の時代に、オーラレールガンって存在するんだろうか。
あれは、オーラバズーカと違って材料にアダマンタイトだのオリハルコンだの必要になる上に、組み立てにも数か月かかるので、製作が非常に面倒なのだが。
「使途不明な古代兵器」かなんかとして、現存していることを願いたいものだな。
まあ、そんな感じでとりあえず、試験の解答用紙には対処法を記述しておいた。
これを答えられる受験生はまずいないだろうし、差をつけられたことだろう。
チャイムが鳴り、前半の試験の解答用紙が回収された。
長時間座っていると血流が悪くなるので、ちょっと廊下でも散歩するか。
そうして教室の外に出ると──そこには、1人の知り合いの姿があった。
「おう、マリカじゃん」
「あ、久しぶり! テーラスも受験しに来てたんだ」
「うん。昼飯って持ってきてる?」
「一応、弁当があるけど……どうして? まさかお昼休憩にバーベキューしようとかは言わないよね?」
「俺を何だと思ってる。ただタコわさでも奢ろうかと思っただけだ」
「いいけど……この近くに海ってあったっけ?」
「まあまあ、そこは、さ」
特に試験に緊張していたわけでは無いが、それでも親しい人の姿を見かけるとホッとするもんだな。
レッサークトゥルフ、美味しいので是非ご馳走しよう。
……なんか忘れている気もするが……何だったっけな。
まあいいや。次の試験も頑張ろう。
「お互い受かろうぜ」
「もちろんよ」
教室に戻ってしばらくすると、筆記試験の後半が始まった。
こちらは社会系の科目なので、特に追加点を取りにいける問題は無い。
俺の前世時代からの歴史問題でもあれば良かったのだがな。
まあ、マイアさんに教えてもらったことをきっちり解答に落とし込んでおこう。
筆記試験が全て終わり、お昼休憩の時間になった。
転生探知でマリカを探す。
……そうだった、隣の教室だわ。骨折り損もいいとこだ。
収納から皿に盛ったレッサークトゥルフのタコわさを取り出した。
「マリカ、これ食べよ」
「……冗談抜きでタコわさだ。ほんと、こんなのどこで手に入れたの?」
「近くの迷宮だ」
「迷……もしかして、レッサークトゥルフとか言わないよね?」
「食べてみれば分かる」
恐る恐る、タコわさに手を伸ばすマリカ。
そんなに慎重になることも無いだろうに。
「……!」
口に入れた途端、目を見開いたマリカ。
「どうした?」
「こんな美味しいタコってあるんだ」
「レッサークトゥルフは、海産のタコとは歯ごたえの次元が違うからな」
「やっぱりレッサークトゥルフ……そんな高級食材、私にくれてよかったの?」
「いつでも狩れるしな」
「いつでも……テーラスにとって、レッサークトゥルフってその程度の存在なのね。もうそれ、特待生確定じゃない?」
「そんな家計に優しい話があればいいんだけどな」
「筆記試験、どうだったの?」
「とりあえず、解答欄は全部埋めたぞ」
「なんだろ。すごく典型的なできない奴の発言なのに、なぜかテーラスだけは例外だって思っちゃう」
「だと良いんだけどな」
「午後は、まずは剣術だね」
「そうだな」
……あ、今思い出したぞ。
「魔剣使いのマリカ」のことを。
なんで、マリカがペリアレイ魔法学園に来てるんだ?
気の適性があって、アウラ気流女学院に通うんじゃなかったのか?
これは完全に誤算だ。
他校に彼女を作っておく作戦が潰れてしまったではないか。
まあ、部での振る舞いがちょっと面倒になる程度の話なので、そこまで大きな問題では無いのだが。
しかし、疑問は残るな。
結局、「魔剣」って何の話だったんだ?
適性が魔法で、俺レベルの気を扱える実力があれば、甲羅弾でもレッサークトゥルフでも驚かないはず。
順当に考えて、今のマリカにそこまでの力は無いだろう。
そもそも師範が理論を体系化させる以前の「天才」だって、効率的に訓練できる訳では無かったので、適性のない方の能力の扱いはひよっこレベルだったとのことだ。
魔法の適性がある者に魔剣を発動するほどの気は扱えないはずだし、気の適性持ちではペリアレイの魔法の実技は突破できないだろう。
平たく言えば、この時代の「魔剣使い」が魔法学園に来ること自体、あり得ない話なのだ。
訳が分からなくなってきた。
まあ、もう少しで実技試験なので、そこで真相を知るとしよう。
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