3 / 6
第一章:バックグラウンド
其の二『出現』
しおりを挟む
三人は近くのファミレスに立ち寄り、計画を立てることにした。
流石に昼頃とはいえ無計画に山の中に入るのはいささか危険すぎる。
「いらっしゃいませー、何名様でお越しでしょうかー?」
「三人です」
「三名様ですね、こちらのお席へどうぞー」
店員さんに案内されて琳たち三人はテーブル席に座った、程なくして三人分の水が運ばれてきた。
「ご注文お決まりになられましたらお呼びください」
店員さんが消えると三人はメニューを開いてそれぞれ何を食べるかを決めた。
琳は日替わり定食を、総一郎はパスタを、葵はがっつりとハンバーグステーキをそれぞれ注文して料理が来るのを待った。
「で、本当に登るのか?」
「モチのロンっすよ、ですよね! 宗像先輩!」
「……僕に振るな」
「なんにせよ日が暮れる前には降りるぞ、流石に危険だ」
「分かってるっすよそれくらい、香月先輩は自分のことをなんだと思ってるんすか」
「……単細胞?」
「単細胞!?」
琳の言葉で葵は頭をテーブルに付けて「単細胞……」と嘆きながらうなだれている、その横で総一郎はお冷を飲みながら我関せずというように窓ガラスの外を見ている。
だがそのうなだれも料理が来るまでで、「ジュゥゥゥ……」と肉が焼ける香ばしい香りが鼻孔をつくと葵はガバッと勢いよく顔を上げてさらにはお腹を鳴らした。
やはり単細胞である。
琳たちはそれから約一時間ほどしてファミレスから出て三人は例の如月神社へと向かった。ファミレスから神社までは徒歩で約十五分ほどなので学校からの距離とは大して変わらない。
△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△
「おぉ!? 結構人いるっすね」
如月神社にはいつもより大勢の人たちが来ていた、しかもその多くはカメラを片手に複数人のグループで来ているのが多い。
恐らく「例の動画」を見た人たちが葵と同じような考えで集まっているのだろう。
「念のため参拝でもしておくか」
「賛成だ」
「了解っす」
三人は本殿の方へと行き二礼二拍手一礼をしてこれから安全を祈願した。
準備も整ったところで早速山の奥へと行くことにした。
葵が走り出し琳がそれを制止させるために追いかけ総一郎がやれやれといった表情でそれを追いかける。
琳はこういう時毎回思うことがある。
「ちっちゃい子供のいる親ってこんな気持ちなんだろうな……」と。
葵はワクワクが止まらないのか徹頭徹尾最初っから最後まで全力疾走で山の中を一直線に走り抜けていった、普通の高校生ならバテバテになるくらいの速度で。
現在、琳と総一郎は引退した身だが葵は現役の陸上部員。そのためスタミナは人一倍多い、引退した二人でやっと追いつけるくらいだ。
数分走り抜けたくらいであっという間に山の奥まで到達してしまった、その頃には引退した二人は息を乱して中腰になって呼吸を整えていた。
「はぁ……はぁ……総一郎、俺らも年だな……」
「そう……みたいだな……香月……」
「ふぅ! いい汗かいたっす!」
短距離選手のはずなのにこのスタミナ、確実に琳たちが知っているより体力が増えている。琳と総一郎は昼食べたものが出てきそうになっているのをぐっとこらえて体力を回復させる。
呼吸が落ち着いてきたところで三人は何のあてもなくただ単に森の中を歩き回ることにしたが歩けど歩けど目につくのは太い幹の木々ばかり、何の変化もないその光景に流石の葵もリアクションすらせずにただ黙々と歩くだけだった。
その途中でカメラを持った集団と遭遇した。
目的は琳たちと同じく「例の動画」を見た影響で来たのだという。
「どもども」
「どうもっす。何か収穫ありました?」
「いやー全然、何もありませんよ。全員高校生ですか?」
「そうっす。二人は先輩で私は後輩っす」
「そうですか、気を付けて下さいね。では私たちはこれで」
軽い挨拶を交わした程度でその集団とは別れ三人はまた森の中を歩きまわった、だがそれでも収穫は何も得られない。
集団と分かれて大体一時間ほど経った頃総一郎は腕時計で時間を確認した、現在午後五時になろうかという時間だった。
「そろそろ降りよう」
「もうそんな時間か、結構歩いたな」
「一之瀬さんもそれでいいな?」
「仕方ないっすねー……面白もの撮れると思ったんだけどなー……」
「ぶつくさ言ってないで降りるぞー」
そう決めて下山するべく進路を変えて数分あるいた頃、後ろから耳を劈くような悲鳴が森全体に響き渡った。
「なんだ?」
「分からん……」
その時、茂みの奥から一人の男性が必死に走ってこちらへと向かってきた。
その男性とは先ほどすれ違った集団の人で挨拶を交わしたその人だった。
男性は三人に気付くと鬼のような形相で「逃げろ!」と叫んだ。琳は何があったのかを男性に聞いたが男性は「化物がでた」の一点張り、それ以外に何かあったのかと聞いたところ「仲間が……仲間が……!!」と怯えて再び逃げるように走り去ってしまった。
その時、森の奥から黒い「何か」がこちらへとものすごい速度で走ってきた。
その姿はおおよそこの世の物と思えない、そう、例えるなら先ほどの男性が言っていた通り「化物」である。
『キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』
「逃げるぞ!」
化物は甲高い声を上げながら一直線に琳たちの方へと向かってくる、琳たちはそれから逃げるべく走る。
「あっ!」
化物から逃げている最中、葵が木の根に足を引っかけて転んでしまった。どうやら膝を擦りむいたらしく血が出てる。
「くそっ!」
「香月!」
「先に行け総一郎! 俺はこいつをおぶってく!」
「うぅ……すみません、先輩」
「気にすんな、ほら、早く乗れ」
琳は転んだ葵を背中に乗っけて、森の中を一気に走り抜けた。
流石に昼頃とはいえ無計画に山の中に入るのはいささか危険すぎる。
「いらっしゃいませー、何名様でお越しでしょうかー?」
「三人です」
「三名様ですね、こちらのお席へどうぞー」
店員さんに案内されて琳たち三人はテーブル席に座った、程なくして三人分の水が運ばれてきた。
「ご注文お決まりになられましたらお呼びください」
店員さんが消えると三人はメニューを開いてそれぞれ何を食べるかを決めた。
琳は日替わり定食を、総一郎はパスタを、葵はがっつりとハンバーグステーキをそれぞれ注文して料理が来るのを待った。
「で、本当に登るのか?」
「モチのロンっすよ、ですよね! 宗像先輩!」
「……僕に振るな」
「なんにせよ日が暮れる前には降りるぞ、流石に危険だ」
「分かってるっすよそれくらい、香月先輩は自分のことをなんだと思ってるんすか」
「……単細胞?」
「単細胞!?」
琳の言葉で葵は頭をテーブルに付けて「単細胞……」と嘆きながらうなだれている、その横で総一郎はお冷を飲みながら我関せずというように窓ガラスの外を見ている。
だがそのうなだれも料理が来るまでで、「ジュゥゥゥ……」と肉が焼ける香ばしい香りが鼻孔をつくと葵はガバッと勢いよく顔を上げてさらにはお腹を鳴らした。
やはり単細胞である。
琳たちはそれから約一時間ほどしてファミレスから出て三人は例の如月神社へと向かった。ファミレスから神社までは徒歩で約十五分ほどなので学校からの距離とは大して変わらない。
△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△
「おぉ!? 結構人いるっすね」
如月神社にはいつもより大勢の人たちが来ていた、しかもその多くはカメラを片手に複数人のグループで来ているのが多い。
恐らく「例の動画」を見た人たちが葵と同じような考えで集まっているのだろう。
「念のため参拝でもしておくか」
「賛成だ」
「了解っす」
三人は本殿の方へと行き二礼二拍手一礼をしてこれから安全を祈願した。
準備も整ったところで早速山の奥へと行くことにした。
葵が走り出し琳がそれを制止させるために追いかけ総一郎がやれやれといった表情でそれを追いかける。
琳はこういう時毎回思うことがある。
「ちっちゃい子供のいる親ってこんな気持ちなんだろうな……」と。
葵はワクワクが止まらないのか徹頭徹尾最初っから最後まで全力疾走で山の中を一直線に走り抜けていった、普通の高校生ならバテバテになるくらいの速度で。
現在、琳と総一郎は引退した身だが葵は現役の陸上部員。そのためスタミナは人一倍多い、引退した二人でやっと追いつけるくらいだ。
数分走り抜けたくらいであっという間に山の奥まで到達してしまった、その頃には引退した二人は息を乱して中腰になって呼吸を整えていた。
「はぁ……はぁ……総一郎、俺らも年だな……」
「そう……みたいだな……香月……」
「ふぅ! いい汗かいたっす!」
短距離選手のはずなのにこのスタミナ、確実に琳たちが知っているより体力が増えている。琳と総一郎は昼食べたものが出てきそうになっているのをぐっとこらえて体力を回復させる。
呼吸が落ち着いてきたところで三人は何のあてもなくただ単に森の中を歩き回ることにしたが歩けど歩けど目につくのは太い幹の木々ばかり、何の変化もないその光景に流石の葵もリアクションすらせずにただ黙々と歩くだけだった。
その途中でカメラを持った集団と遭遇した。
目的は琳たちと同じく「例の動画」を見た影響で来たのだという。
「どもども」
「どうもっす。何か収穫ありました?」
「いやー全然、何もありませんよ。全員高校生ですか?」
「そうっす。二人は先輩で私は後輩っす」
「そうですか、気を付けて下さいね。では私たちはこれで」
軽い挨拶を交わした程度でその集団とは別れ三人はまた森の中を歩きまわった、だがそれでも収穫は何も得られない。
集団と分かれて大体一時間ほど経った頃総一郎は腕時計で時間を確認した、現在午後五時になろうかという時間だった。
「そろそろ降りよう」
「もうそんな時間か、結構歩いたな」
「一之瀬さんもそれでいいな?」
「仕方ないっすねー……面白もの撮れると思ったんだけどなー……」
「ぶつくさ言ってないで降りるぞー」
そう決めて下山するべく進路を変えて数分あるいた頃、後ろから耳を劈くような悲鳴が森全体に響き渡った。
「なんだ?」
「分からん……」
その時、茂みの奥から一人の男性が必死に走ってこちらへと向かってきた。
その男性とは先ほどすれ違った集団の人で挨拶を交わしたその人だった。
男性は三人に気付くと鬼のような形相で「逃げろ!」と叫んだ。琳は何があったのかを男性に聞いたが男性は「化物がでた」の一点張り、それ以外に何かあったのかと聞いたところ「仲間が……仲間が……!!」と怯えて再び逃げるように走り去ってしまった。
その時、森の奥から黒い「何か」がこちらへとものすごい速度で走ってきた。
その姿はおおよそこの世の物と思えない、そう、例えるなら先ほどの男性が言っていた通り「化物」である。
『キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』
「逃げるぞ!」
化物は甲高い声を上げながら一直線に琳たちの方へと向かってくる、琳たちはそれから逃げるべく走る。
「あっ!」
化物から逃げている最中、葵が木の根に足を引っかけて転んでしまった。どうやら膝を擦りむいたらしく血が出てる。
「くそっ!」
「香月!」
「先に行け総一郎! 俺はこいつをおぶってく!」
「うぅ……すみません、先輩」
「気にすんな、ほら、早く乗れ」
琳は転んだ葵を背中に乗っけて、森の中を一気に走り抜けた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした
茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。
貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。
母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。
バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。
しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる