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10.夏休み
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夏休みが始まると、いよいよ充は引っ越しのバイトを始めた。
充がもう何日も仕事をこなしていたこの日、忠明も初めて日雇いで工事現場の交通整理のバイトをしてみた。初めてバイトする忠明に、バイト先の人は優しかったが、くたくたに疲れて8000円ほどの稼ぎにしかならないことに衝撃を受けた。ディズニーランドに行けば入場だけで消える金額だ。
「父さんってすごいんだなぁ……」
充が夕方以降にも引っ越しの予定が入っているらしく、実家に帰ることにした。初めての給料を握り締め、家族分のケーキを買って帰る。母はモンブランが好きで、忠治はフルーツタルトが好きだ。父はいつも最後に残ったものを食べるので、父の好みは知らなかった。
「ただいま……」
「あ、おかえりー」
「これ」
「えっ、ケーキだ!」
「バイトした金で買ってみた」
「すごいわねぇ、デザートで食べましょ」
母がいそいそと冷蔵庫にケーキの箱を入れる。
「疲れ果ててもう眠くて……、おれが寝てても食べてね」
ソファーでだらりと座る。うとうとしていると賑やかな両親の声が聞こえる。
「忠明がバイトしたお金で買ってきてくれたのよ。疲れたみたいで、そこで寝てるよ」
「へぇ、どんなバイトにしたんだろう」
「お父さんったら、自分で聞きなさいよ」
「今日は泊まるのかな」
「さぁねぇ、お父さん、忠明の部屋のシーツ敷いてきたら?」
忠明がそのままソファーで寝落ちて1時間ほどしたときに、わっと大きな声がしてびくっと目が覚めた。
「兄ちゃん、帰ってたんだ」
部活終わりの忠治が忠明をのぞき込んでいる。
「忠治……」
ぐっと伸びをして起き上がると、テーブルに料理が並んでいた。
「おれが寝てても食べてっていったのに」
「父さんは食べたよ」
「ケーキもあるよ、忠治。早く手を洗ってきなさい」
寝ぼけまなこの忠明がテーブルにつくと、父は「バイトしたんだって?」と聞いてきた。
「そう。交通整理。お金を稼ぐって大変なんだな」
「もっと事務作業とか、簡単そうなのなかったの?」
「そういうの時給低かったから」
父がすごいと思った、というのは照れて言えなかった。忠治がケーキをみて今にも踊りだしそうにしていて、楽しい夜だった。
その夜忠明は実家に泊まり、翌日の夕方に自宅に戻ることにした。充からも遊びに行くと連絡があったのもあるが、それ以上いたら帰りたくなくなってしまいそうだった。母はいつまでも居ればいいと言うが、それでは夏休みが終わった時にきちんと一人の生活に戻れるか怪しい。
家についてしばらくすると、充がやってきた。
「忠明、おつかれ」
バイトを始めてから、充は「よう」とか「おう」ではなく「おつかれ」と言うようになった。
「母さんがめっちゃ卵持たせてくれて、親子丼作ろうと思うんだけど食う?」
「え、お前の分もハンバーガー買ってきちゃった。でも、親子丼もめっちゃ食う」
ハンバーガーが入った大きな袋をガサッと置き、背中に背負った大荷物も見せる。
「あとDVDと寝巻と歯ブラシもってきた」
「泊まる気じゃねぇか!」
「あぁ。だから家で風呂入ってきた」
言われてみれば、充は風呂上りっぽいさわやかな石鹸の香りがした。忠明が親子丼を作っている間に充はごろごろしてもDVDを見るのに支障のないレイアウトを整える。
「忠明はバイトどうだった?」
「んー。難しくはないし、いい人ばっかりだったんだけど、暑い中立ちっぱなしっていうのが想像以上にきつかったな。あんなにきつくて8000円かよって思ったし」
「時給いい方じゃね」
「時給で選んだしな。でも、きついとかきつくないとかより、いろんなバイトやってみたいから次は別のをやってみようかなって感じ」
親子丼が完成して盛り付けると、充が慣れた様子で箸を出す。充が変更した部屋のレイアウトは、中央に寝転がるための布団が敷いてあったが狭くは感じなかった。
(……高さがなきゃ大丈夫なのか)
「充は? バイト、完全に慣れた?」
手を合わせて食べ始めてすぐに尋ねると、口いっぱいのご飯を飲み込んでから充はうなずいた。
「おう。慣れたぜ。今日のは特に重いのが多かったけど、全然筋肉痛とか大丈夫そう」
「へぇー、特に重いって、どういうの?」
「今日はすっげぇ本棚が多い人で、本棚を何個も運び入れたと思ったら本が入ったダンボールが無限にあってやばかった。まぁ、本棚のレイアウトにこだわりあるらしくて本の開封はしなくてよかったのが救いだな」
「開封もあるの?」
「うん。本当の名前はカイコン? 有料オプションで時々あるらしい。ダンボールに詰め込むオプションもある。けど、まだどっちもやったことはない」
「へぇー、運ぶだけじゃないんだ」
充は親子丼をぺろりと食べてハンバーガーを食べ始めた。忠明は自分の分を冷蔵庫に入れようと袋を見ると、ハンバーガーはまだあと3つあった。
(何個食べるつもりだったんだ……)
「風呂入ってくる」
(そういえば、DVDってなんだろ……、ヘンなやつじゃないだろうな)
シャワーを浴びながら、意外とそういう下ネタは話したことがないなぁと考える。恵に対してそういうことを考えているのか、という目を向けそうなので今後もない方がありがたい。
寝巻を着て出ると、充がごろりと横になっていた。くつろぎすぎだと思ったが、食器が洗ってあったので何も言わないことにした。
「何見るんだ?」
「ハリポタ」
「え?」
アダルトビデオではないことを祈っていたものの、ファンタジー系とは完全に予想外だった。
「家に5作目まであって、なんとなく春に見たんだ。なんか最近急に続きが気になって、6作目借りてきた。一応、家にあるの全部持ってきたんだけど、お前見たことある?」
「ない。本も読んでない」
「よし、じゃあ賢者の石から」
見るからに主人公が幼いパッケージを取り出したので、慌てて止める。1本2時間として、12時間。見終わる頃には昼だ。
「待て、待て。6作目が見たいんだろ?」
「? あぁ」
「6作目だけでいいじゃん。主人公がハリー・ポッターで魔法でドンパチだろ? いいよ見なくて」
「いや、お前セドリックの雄姿を知らないのはだめだよ」
誰だよ、セドリックって。そう思ったものの、忠明はこれほど熱弁するほど感情移入しているなら登場シーンの多い主人公の親友だろうとあたりをつけて譲歩したような態度を見せた。
「それじゃあ、そのセドリックが出たらコイツだって教えてくれよ。どういう出会いかわかったら、そっからかいつまんで教えてくれたらいいから。それで6作目に飛ばそう」
充はニヤニヤしながら「仕方ねぇな」と言った。何か企んでいそうだとは思ったが、セドリックというキャラクターが出たら止めればいいのだ。親友ならば数十分だろう。
しかし初めに仲良くなるのはロンで、嫌味を言ってくるのはマルフォイで、優等生の女子はハーマイオニーだった。セドリックというキャラクターは出てこない。
「あれ? 出なくね?」
「まだだなぁ」
人間ではないのか、と疑ったりクライマックスで出るのかと集中してみたが、出なかった。
結局1作目をしっかり見終えてしまった。
「よし、次」
「えっ、出なかったよな」
「感想は?」
「面白かったけど……」
2作目の途中までは登場を待っていたものの、次第に純粋に映画に引き込まれていった。結局、充がニヤニヤしていた理由に気付くのは4作目が始まってからだった。
「セドリックってキャラ、なんか聞いたこと……あ!」
数時間も前に聞いた名前など忘れかけていた頃に登場したセドリックはどことなく充に似ていた。充がハーフ顔というわけではないし、髪型も違う。なんとなく佇まいが似ていると思ったのだ。
「まぁまぁ、このまま雄姿を見守ってくれよ」
「もう普通に見るけどさ」
深夜、あまり起きていることのない時間帯だったが、眠くなることもなく見続ける。充一押しのシーンは雄姿というには悲惨なように感じた。充に似ていると思って応援していた忠明にとっては大変なショックだった。
そして、充が4作目から5作目にDVDを入れ替えている途中に突然がくっと首が倒れた。
「一回寝るか?」
「んん……」
充が黙って電気を消したあと、青白い光がともっていたテレビを少し操作して消す。二人とも上半身だけが布団に乗っている状態だったが、眠さの限界がきて不便さは感じなかった。
朝起きると、狭い布団の上で充に抱きすくめられていた。寝たときと体の向きが変わっている。
「……!?」
ぞわぞわと鳥肌が立って充をぐいっと押すと、「なんだよ」と寝ぼけながらぼやく。
「べたべた触んなよっ」
「お前の寝相が悪いから捕まえてたんだよ」
充があくびを嚙み殺しながら起きだす。携帯を見ると、既に昼過ぎだった。顔を洗って、昨晩充が買ってきたハンバーガーをレンジに入れると、充がDVDをセットしていた。
結局、そのまま6作目までを一気に見た。それだけでもう夕方になっていた。
「えっ、これ、ここまで続いてまだ完結じゃないのか」
「今年の秋に完結編の前編があるらしい」
「前編!? どんだけ長いんだよ」
立ち上がるとパキパキと骨が鳴った。
「DVD返すついでに、外で食べようぜ」
充がいう。断る理由はないが、充は再び忠明の家に帰ってくるつもりのようでレンタルショップに返すDVD以外の荷物は置いて出た。
夏休みに入って2週間が過ぎようとしていた。8月もきっとこんな調子で続くのだろう、と忠明は夏空に向かって大きく伸びをした。
充がもう何日も仕事をこなしていたこの日、忠明も初めて日雇いで工事現場の交通整理のバイトをしてみた。初めてバイトする忠明に、バイト先の人は優しかったが、くたくたに疲れて8000円ほどの稼ぎにしかならないことに衝撃を受けた。ディズニーランドに行けば入場だけで消える金額だ。
「父さんってすごいんだなぁ……」
充が夕方以降にも引っ越しの予定が入っているらしく、実家に帰ることにした。初めての給料を握り締め、家族分のケーキを買って帰る。母はモンブランが好きで、忠治はフルーツタルトが好きだ。父はいつも最後に残ったものを食べるので、父の好みは知らなかった。
「ただいま……」
「あ、おかえりー」
「これ」
「えっ、ケーキだ!」
「バイトした金で買ってみた」
「すごいわねぇ、デザートで食べましょ」
母がいそいそと冷蔵庫にケーキの箱を入れる。
「疲れ果ててもう眠くて……、おれが寝てても食べてね」
ソファーでだらりと座る。うとうとしていると賑やかな両親の声が聞こえる。
「忠明がバイトしたお金で買ってきてくれたのよ。疲れたみたいで、そこで寝てるよ」
「へぇ、どんなバイトにしたんだろう」
「お父さんったら、自分で聞きなさいよ」
「今日は泊まるのかな」
「さぁねぇ、お父さん、忠明の部屋のシーツ敷いてきたら?」
忠明がそのままソファーで寝落ちて1時間ほどしたときに、わっと大きな声がしてびくっと目が覚めた。
「兄ちゃん、帰ってたんだ」
部活終わりの忠治が忠明をのぞき込んでいる。
「忠治……」
ぐっと伸びをして起き上がると、テーブルに料理が並んでいた。
「おれが寝てても食べてっていったのに」
「父さんは食べたよ」
「ケーキもあるよ、忠治。早く手を洗ってきなさい」
寝ぼけまなこの忠明がテーブルにつくと、父は「バイトしたんだって?」と聞いてきた。
「そう。交通整理。お金を稼ぐって大変なんだな」
「もっと事務作業とか、簡単そうなのなかったの?」
「そういうの時給低かったから」
父がすごいと思った、というのは照れて言えなかった。忠治がケーキをみて今にも踊りだしそうにしていて、楽しい夜だった。
その夜忠明は実家に泊まり、翌日の夕方に自宅に戻ることにした。充からも遊びに行くと連絡があったのもあるが、それ以上いたら帰りたくなくなってしまいそうだった。母はいつまでも居ればいいと言うが、それでは夏休みが終わった時にきちんと一人の生活に戻れるか怪しい。
家についてしばらくすると、充がやってきた。
「忠明、おつかれ」
バイトを始めてから、充は「よう」とか「おう」ではなく「おつかれ」と言うようになった。
「母さんがめっちゃ卵持たせてくれて、親子丼作ろうと思うんだけど食う?」
「え、お前の分もハンバーガー買ってきちゃった。でも、親子丼もめっちゃ食う」
ハンバーガーが入った大きな袋をガサッと置き、背中に背負った大荷物も見せる。
「あとDVDと寝巻と歯ブラシもってきた」
「泊まる気じゃねぇか!」
「あぁ。だから家で風呂入ってきた」
言われてみれば、充は風呂上りっぽいさわやかな石鹸の香りがした。忠明が親子丼を作っている間に充はごろごろしてもDVDを見るのに支障のないレイアウトを整える。
「忠明はバイトどうだった?」
「んー。難しくはないし、いい人ばっかりだったんだけど、暑い中立ちっぱなしっていうのが想像以上にきつかったな。あんなにきつくて8000円かよって思ったし」
「時給いい方じゃね」
「時給で選んだしな。でも、きついとかきつくないとかより、いろんなバイトやってみたいから次は別のをやってみようかなって感じ」
親子丼が完成して盛り付けると、充が慣れた様子で箸を出す。充が変更した部屋のレイアウトは、中央に寝転がるための布団が敷いてあったが狭くは感じなかった。
(……高さがなきゃ大丈夫なのか)
「充は? バイト、完全に慣れた?」
手を合わせて食べ始めてすぐに尋ねると、口いっぱいのご飯を飲み込んでから充はうなずいた。
「おう。慣れたぜ。今日のは特に重いのが多かったけど、全然筋肉痛とか大丈夫そう」
「へぇー、特に重いって、どういうの?」
「今日はすっげぇ本棚が多い人で、本棚を何個も運び入れたと思ったら本が入ったダンボールが無限にあってやばかった。まぁ、本棚のレイアウトにこだわりあるらしくて本の開封はしなくてよかったのが救いだな」
「開封もあるの?」
「うん。本当の名前はカイコン? 有料オプションで時々あるらしい。ダンボールに詰め込むオプションもある。けど、まだどっちもやったことはない」
「へぇー、運ぶだけじゃないんだ」
充は親子丼をぺろりと食べてハンバーガーを食べ始めた。忠明は自分の分を冷蔵庫に入れようと袋を見ると、ハンバーガーはまだあと3つあった。
(何個食べるつもりだったんだ……)
「風呂入ってくる」
(そういえば、DVDってなんだろ……、ヘンなやつじゃないだろうな)
シャワーを浴びながら、意外とそういう下ネタは話したことがないなぁと考える。恵に対してそういうことを考えているのか、という目を向けそうなので今後もない方がありがたい。
寝巻を着て出ると、充がごろりと横になっていた。くつろぎすぎだと思ったが、食器が洗ってあったので何も言わないことにした。
「何見るんだ?」
「ハリポタ」
「え?」
アダルトビデオではないことを祈っていたものの、ファンタジー系とは完全に予想外だった。
「家に5作目まであって、なんとなく春に見たんだ。なんか最近急に続きが気になって、6作目借りてきた。一応、家にあるの全部持ってきたんだけど、お前見たことある?」
「ない。本も読んでない」
「よし、じゃあ賢者の石から」
見るからに主人公が幼いパッケージを取り出したので、慌てて止める。1本2時間として、12時間。見終わる頃には昼だ。
「待て、待て。6作目が見たいんだろ?」
「? あぁ」
「6作目だけでいいじゃん。主人公がハリー・ポッターで魔法でドンパチだろ? いいよ見なくて」
「いや、お前セドリックの雄姿を知らないのはだめだよ」
誰だよ、セドリックって。そう思ったものの、忠明はこれほど熱弁するほど感情移入しているなら登場シーンの多い主人公の親友だろうとあたりをつけて譲歩したような態度を見せた。
「それじゃあ、そのセドリックが出たらコイツだって教えてくれよ。どういう出会いかわかったら、そっからかいつまんで教えてくれたらいいから。それで6作目に飛ばそう」
充はニヤニヤしながら「仕方ねぇな」と言った。何か企んでいそうだとは思ったが、セドリックというキャラクターが出たら止めればいいのだ。親友ならば数十分だろう。
しかし初めに仲良くなるのはロンで、嫌味を言ってくるのはマルフォイで、優等生の女子はハーマイオニーだった。セドリックというキャラクターは出てこない。
「あれ? 出なくね?」
「まだだなぁ」
人間ではないのか、と疑ったりクライマックスで出るのかと集中してみたが、出なかった。
結局1作目をしっかり見終えてしまった。
「よし、次」
「えっ、出なかったよな」
「感想は?」
「面白かったけど……」
2作目の途中までは登場を待っていたものの、次第に純粋に映画に引き込まれていった。結局、充がニヤニヤしていた理由に気付くのは4作目が始まってからだった。
「セドリックってキャラ、なんか聞いたこと……あ!」
数時間も前に聞いた名前など忘れかけていた頃に登場したセドリックはどことなく充に似ていた。充がハーフ顔というわけではないし、髪型も違う。なんとなく佇まいが似ていると思ったのだ。
「まぁまぁ、このまま雄姿を見守ってくれよ」
「もう普通に見るけどさ」
深夜、あまり起きていることのない時間帯だったが、眠くなることもなく見続ける。充一押しのシーンは雄姿というには悲惨なように感じた。充に似ていると思って応援していた忠明にとっては大変なショックだった。
そして、充が4作目から5作目にDVDを入れ替えている途中に突然がくっと首が倒れた。
「一回寝るか?」
「んん……」
充が黙って電気を消したあと、青白い光がともっていたテレビを少し操作して消す。二人とも上半身だけが布団に乗っている状態だったが、眠さの限界がきて不便さは感じなかった。
朝起きると、狭い布団の上で充に抱きすくめられていた。寝たときと体の向きが変わっている。
「……!?」
ぞわぞわと鳥肌が立って充をぐいっと押すと、「なんだよ」と寝ぼけながらぼやく。
「べたべた触んなよっ」
「お前の寝相が悪いから捕まえてたんだよ」
充があくびを嚙み殺しながら起きだす。携帯を見ると、既に昼過ぎだった。顔を洗って、昨晩充が買ってきたハンバーガーをレンジに入れると、充がDVDをセットしていた。
結局、そのまま6作目までを一気に見た。それだけでもう夕方になっていた。
「えっ、これ、ここまで続いてまだ完結じゃないのか」
「今年の秋に完結編の前編があるらしい」
「前編!? どんだけ長いんだよ」
立ち上がるとパキパキと骨が鳴った。
「DVD返すついでに、外で食べようぜ」
充がいう。断る理由はないが、充は再び忠明の家に帰ってくるつもりのようでレンタルショップに返すDVD以外の荷物は置いて出た。
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