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陸の怪【サテツの国の女王】
姉妹とチェシャ猫
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「…… ここ」
「おや、起きたかな? 大丈夫?」
そして、タイムリミットを迎える。
やっぱり俺は優柔不断だ。真実は、確実にこちらへ歩み寄ってくるっていうのに。
「……っ、お姉ちゃん! お姉ちゃん! やっと見つけた! お姉ちゃん!」
「レイシーに触るな!」
赤い目から狂気が失われ、正気を取り戻したアリスが二人に近づいていくものの、チェシャ猫が接触を拒むようにその異形の手で制する…… レイシーを守るようにして。
「あなた…… ジェシュ?」
「なんのことかな。ボクはチェシャ猫。お前なんて知らない」
「違う、絶対ジェシュよ! お姉ちゃんを返して! 返してよ! なんで逃げるの!?」
「お前から漂う血の匂い。この本の仲間達の血の匂いが教えてくれる。お前は危険。レイシーには近づけさせない! そんな物騒なもん持ったままだし!」
「え…… ? あれ、ナイフ…… 護身用の、でも、どうしてこんなに赤く…… 」
チェシャ猫は動揺しない。ただただ純粋に血塗れの彼女を威嚇するように振舞っている。
対してアリスのほうは自分の手の中にある真っ赤なナイフと、真っ赤に汚れた黒白のエプロンドレスに呆然としながら呟く。
「あたし、なに…… してた…… ? あたし、お姉ちゃんを取り返すために確か…… 本の中に…… どうしてこんな……」
だんだんと小さくなる声。小刻みに震える体。カチカチと、こちらにまで聞こえてくる歯が震えて鳴る音。瞳は信じられないものを見るようにすぼまり、自分の汚れたエプロンドレスを引き寄せて 「嘘、嘘、嘘」 と繰り返す言葉。
息が荒くなってきた彼女にとうとう限界が来ようとしているのを察したのか、紅子さんが近づいていき、少し悩んだようにしてから彼女の顔目掛けてなにやらスプレーをひと吹きさせた。
「ぶぇっ!?」
唐突な行動にアリスが反射的に悲鳴をあげながら顔を覆う。
「ちょっ、紅子さん!?」
俺が素っ頓狂な声で彼女に視線を向ければ、実にバツの悪そうな顔で彼女は口を開く。
「あー、こういうときに言葉でなんとかできればいいんだけどねぇ…… お生憎様、脳筋なものでさ。そういう器用なことはできないんだよ」
紅子さんは流し目で困ったように言い訳を述べてから、ふいと目を逸らす。
もしかして脳筋扱いされたのを根に持ってたりするのか。自虐ネタよろしくそんなこと言われてもなあ。
「害のあるやつじゃないよな?」
「あれはアルフォードさんから買ったやつだよ。興奮状態にあって話が通じないときとかに段階的に落ち着かせる御神水なんだって。強制的に落ち着かせるやつもあるけど、そっちは副作用あるから敵専用。こっちは味方用だねぇ」
敵用と味方用ね…… 副作用ってなんだよ。間違えて使ったら大惨事すぎる。
「あ、あたし…… そうだお姉ちゃん!」
「さ、さっきからなにを言ってるんじゃ…… ? 怖すぎるんじゃが」
レイシーが静かだと思っていたら、そうか覚えていないから分からないのか。
「お姉ちゃん? 分かんないの? あたし妹のアリシアだよ? お姉ちゃんは今病院で」
「うるさい!」
遮るように、チェシャ猫が叫ぶ。
彼はどうしても真実を知られたくないようだ。当たり前か。自分がレイシーの記憶を奪ってこの世界に閉じ込めている元凶だもんな。知られれば今までと同じように信頼を向けてくれるとは限らない。それが分かっていながら黙っているわけがないよな。きっと、想像するだけで怖いだろう。レイシーが自分を拒絶するのが。
「チェシャ…… ? どうしたのじゃ」
「あ、ご、ごめんレイシー。その、あ、あんな危険なやつはほら、さっさと叩き出さないと! 今回はレイシーが外に出る機会にならなくて残念だけどさ…… ね?」
「チェシャ…… 私になにか隠してる?」
「違うよレイシー! それよりほら、カッコいい喋り方が崩れてるよ! そっちはやめるって言ってたよね?」
酷い焦りだ。
あたふたしているチェシャ猫を睨みつけるのは、アリスだ。
ペティさんは余計な口出しをしないようにか、目を細めて辺りを探っている。
そうだ、これを仕掛けたのはあいつ…… ニャルラトホテプだ。どこかでこの一部始終を見ていてもおかしくはない。俺も警戒はしておかないと。
「ねえ、チェシャ。お願いだから教えて。いつも教えてくれたでしょ? あの子は誰? なんで私のことお姉ちゃんって呼ぶの? ねえ!」
「れ、レイシーは外で少し危ない目にあったんだよ。だから、たまたまアリスとしてやってきたレイシーを女王様にして引き止めたんだよ。そのままじゃレイシーが危ないから!」
「危ない…… ? 外の世界は危ないの?」
「そう! そうだよレイシー! でもここにいればずっとずっと安全なんだよ。ずっとボクら二人、楽しく過ごしていただろ? もっともっと楽しませてあげる! だからここにいよう? ね?」
「違うわお姉ちゃん! お姉ちゃんはそいつに閉じ込められてるの! あたしはお姉ちゃんを助けにきたんだから!」
「私様…… 私、は」
まるで板挟みだ。
どちらが正しいのかが分からない。中学生くらいにしては幼いレイシーは、余計に混乱してしまうのだろう。
正直、今俺が話し出してもよくはならない。これはあの子達の問題だけらだ。余計な大人が口出しするべき場面じゃない。たとえ、ほとんどのことに察しがついていたとしてもだ。言い訳でもなく、これは本気でそういう状況なんだ。
…… 多分、紅子さん達と共有するなら記憶を覗いてすぐ、レイシー達と離れてするべきだったんだろう。
「外には…… 出たいと思ってたのじゃ…… ずっと。アリスと交代なら出られると、言ってくれたから、ずっと待ってたのに…… どういうことなのか、もう分からん!」
「レイシー、ボクとずっと一緒にいてくれるんじゃないの!?」
「な、ならお姉ちゃん。あたしと一緒に帰りましょう? ね、いい子だから」
「子供扱いはやめてくれ!」
紅子さんも、ペティさんも静観する方針みたいだからなあ。
こういうことには基本手出ししないスタンスなのか。
そう言う俺も出せる手なんてないんだけどな。
「やめて、やめてよ…… 分かんないもん…… どうすればいいかなんて、分かんないもん!」
「ね、ねえレイシー。レイシー…… ねえ、ボク。キミに必要とされなくなったら、ボクはどうすればいいのか分かんなくなっちゃうよ。ボクはレイシーに死んでほしくないからこうしてるのに…… アリスはなにも分かっちゃいないしさぁ」
「へ、お姉ちゃんが死ぬ…… ?」
アリスが、目を見開いた。
自分の中にあった前提をひっくり返されたような顔だった。
多分、捕まった姉を救うために来た感じだろうし、現実に引き戻されればいずれレイシーが死ぬことを避けられないってことは知らないだろう。
黒猫さえどうにかすればいいと思っていたのかもしれない。
「な、なあ〝 帰り道 〟を持ってるのは誰だ?」
「何度か持ち替えてるけれど…… 今のところはペティさんが持ってるねぇ」
こそこそと紅子さんと話しつつ、ペティさんと距離を詰める。
チェシャ猫達は寄ってきたアリスと口論してるからその後ろを抜けて合流。
なんか、無性に嫌な予感がするのだ。できればアリスも回収しておきたいけれど、渦中にいるからな。
「…… 二人共、黄泉返り…… なんて普通は無理なんだろ?」
「俺様に喧嘩売ってんのか? 黄泉返りなんかできてたらとっくにして、置いて来ちまった子を迎えに行くぜ」
「あー、まあ、普通なら命ひとつ分の代償が必要になるよねぇ。ずっと一緒にいたいと思うなら亡霊になるなりなんなりするしかないし…… それだって冥界の方で許可もらわないといけないからねぇ」
むしろ冥界で許可とか取れるのか…… なら青水さんも焦らなければ夢枕に立ってお礼を言うくらいできたんじゃないか…… ?
そんな後悔が少し滲むが、今はそんなことを考えている場合ではない。
「 俺、さっき図書館で本当のチェシャ猫に会ったんだよ。それで、この世界に染みついたレイシーと黒猫の記憶を覗いたんだ。黒猫は黄泉返った。あいつの化身としてだ。でもそれで代償がないなんてことはありえないだろ? レイシーは外の世界で黒猫が過去に負った傷を追体験している。つまり、外の世界にいれば、レイシーはいずれ死ぬことになる」
「お兄さん、それもう少し早めに言ってほしかったかなあ……」
「ロクなことにはならねーとは思ってたが、予想以上にまずいぜそれ」
え、確かにあいつが関わってる以上、やばいことに変わりはないが……この二人がそこまで言うほど…… なのか? もしかして俺、あいつに慣れすぎて大分感覚が麻痺してるのかな。
「邪神が関わってるってことは、今も見てるってこった。つまり、最悪な場面で介入してくる可能性が高いってことだ」
「今すぐ終わらせよう。アリスを連れて帰るんだよ、お兄さん。恨まれようとなんだろうと、それが最善手だからね。キミのご主人様に介入されたらもっと酷いことになる」
そうか、嫌な予感はそれか……
やはり感覚が麻痺してるな。素直に二人の言うことを聞こう。そして、チェシャ猫とレイシーについては…… 可哀想だが現状維持するしかないだろうな。
「外にいたら、お姉ちゃん死んじゃうの?」
「そうだよ。だからこそボクが一緒にいるんだから。そうレイシーも望んでくれるでしょ?」
「わたくしさま…… は」
けれど、タイムリミットは突然の終わりを告げるのだ。
「おやおや、元凶がよくもそんな都合の良いことを言えますねぇ」
「おや、起きたかな? 大丈夫?」
そして、タイムリミットを迎える。
やっぱり俺は優柔不断だ。真実は、確実にこちらへ歩み寄ってくるっていうのに。
「……っ、お姉ちゃん! お姉ちゃん! やっと見つけた! お姉ちゃん!」
「レイシーに触るな!」
赤い目から狂気が失われ、正気を取り戻したアリスが二人に近づいていくものの、チェシャ猫が接触を拒むようにその異形の手で制する…… レイシーを守るようにして。
「あなた…… ジェシュ?」
「なんのことかな。ボクはチェシャ猫。お前なんて知らない」
「違う、絶対ジェシュよ! お姉ちゃんを返して! 返してよ! なんで逃げるの!?」
「お前から漂う血の匂い。この本の仲間達の血の匂いが教えてくれる。お前は危険。レイシーには近づけさせない! そんな物騒なもん持ったままだし!」
「え…… ? あれ、ナイフ…… 護身用の、でも、どうしてこんなに赤く…… 」
チェシャ猫は動揺しない。ただただ純粋に血塗れの彼女を威嚇するように振舞っている。
対してアリスのほうは自分の手の中にある真っ赤なナイフと、真っ赤に汚れた黒白のエプロンドレスに呆然としながら呟く。
「あたし、なに…… してた…… ? あたし、お姉ちゃんを取り返すために確か…… 本の中に…… どうしてこんな……」
だんだんと小さくなる声。小刻みに震える体。カチカチと、こちらにまで聞こえてくる歯が震えて鳴る音。瞳は信じられないものを見るようにすぼまり、自分の汚れたエプロンドレスを引き寄せて 「嘘、嘘、嘘」 と繰り返す言葉。
息が荒くなってきた彼女にとうとう限界が来ようとしているのを察したのか、紅子さんが近づいていき、少し悩んだようにしてから彼女の顔目掛けてなにやらスプレーをひと吹きさせた。
「ぶぇっ!?」
唐突な行動にアリスが反射的に悲鳴をあげながら顔を覆う。
「ちょっ、紅子さん!?」
俺が素っ頓狂な声で彼女に視線を向ければ、実にバツの悪そうな顔で彼女は口を開く。
「あー、こういうときに言葉でなんとかできればいいんだけどねぇ…… お生憎様、脳筋なものでさ。そういう器用なことはできないんだよ」
紅子さんは流し目で困ったように言い訳を述べてから、ふいと目を逸らす。
もしかして脳筋扱いされたのを根に持ってたりするのか。自虐ネタよろしくそんなこと言われてもなあ。
「害のあるやつじゃないよな?」
「あれはアルフォードさんから買ったやつだよ。興奮状態にあって話が通じないときとかに段階的に落ち着かせる御神水なんだって。強制的に落ち着かせるやつもあるけど、そっちは副作用あるから敵専用。こっちは味方用だねぇ」
敵用と味方用ね…… 副作用ってなんだよ。間違えて使ったら大惨事すぎる。
「あ、あたし…… そうだお姉ちゃん!」
「さ、さっきからなにを言ってるんじゃ…… ? 怖すぎるんじゃが」
レイシーが静かだと思っていたら、そうか覚えていないから分からないのか。
「お姉ちゃん? 分かんないの? あたし妹のアリシアだよ? お姉ちゃんは今病院で」
「うるさい!」
遮るように、チェシャ猫が叫ぶ。
彼はどうしても真実を知られたくないようだ。当たり前か。自分がレイシーの記憶を奪ってこの世界に閉じ込めている元凶だもんな。知られれば今までと同じように信頼を向けてくれるとは限らない。それが分かっていながら黙っているわけがないよな。きっと、想像するだけで怖いだろう。レイシーが自分を拒絶するのが。
「チェシャ…… ? どうしたのじゃ」
「あ、ご、ごめんレイシー。その、あ、あんな危険なやつはほら、さっさと叩き出さないと! 今回はレイシーが外に出る機会にならなくて残念だけどさ…… ね?」
「チェシャ…… 私になにか隠してる?」
「違うよレイシー! それよりほら、カッコいい喋り方が崩れてるよ! そっちはやめるって言ってたよね?」
酷い焦りだ。
あたふたしているチェシャ猫を睨みつけるのは、アリスだ。
ペティさんは余計な口出しをしないようにか、目を細めて辺りを探っている。
そうだ、これを仕掛けたのはあいつ…… ニャルラトホテプだ。どこかでこの一部始終を見ていてもおかしくはない。俺も警戒はしておかないと。
「ねえ、チェシャ。お願いだから教えて。いつも教えてくれたでしょ? あの子は誰? なんで私のことお姉ちゃんって呼ぶの? ねえ!」
「れ、レイシーは外で少し危ない目にあったんだよ。だから、たまたまアリスとしてやってきたレイシーを女王様にして引き止めたんだよ。そのままじゃレイシーが危ないから!」
「危ない…… ? 外の世界は危ないの?」
「そう! そうだよレイシー! でもここにいればずっとずっと安全なんだよ。ずっとボクら二人、楽しく過ごしていただろ? もっともっと楽しませてあげる! だからここにいよう? ね?」
「違うわお姉ちゃん! お姉ちゃんはそいつに閉じ込められてるの! あたしはお姉ちゃんを助けにきたんだから!」
「私様…… 私、は」
まるで板挟みだ。
どちらが正しいのかが分からない。中学生くらいにしては幼いレイシーは、余計に混乱してしまうのだろう。
正直、今俺が話し出してもよくはならない。これはあの子達の問題だけらだ。余計な大人が口出しするべき場面じゃない。たとえ、ほとんどのことに察しがついていたとしてもだ。言い訳でもなく、これは本気でそういう状況なんだ。
…… 多分、紅子さん達と共有するなら記憶を覗いてすぐ、レイシー達と離れてするべきだったんだろう。
「外には…… 出たいと思ってたのじゃ…… ずっと。アリスと交代なら出られると、言ってくれたから、ずっと待ってたのに…… どういうことなのか、もう分からん!」
「レイシー、ボクとずっと一緒にいてくれるんじゃないの!?」
「な、ならお姉ちゃん。あたしと一緒に帰りましょう? ね、いい子だから」
「子供扱いはやめてくれ!」
紅子さんも、ペティさんも静観する方針みたいだからなあ。
こういうことには基本手出ししないスタンスなのか。
そう言う俺も出せる手なんてないんだけどな。
「やめて、やめてよ…… 分かんないもん…… どうすればいいかなんて、分かんないもん!」
「ね、ねえレイシー。レイシー…… ねえ、ボク。キミに必要とされなくなったら、ボクはどうすればいいのか分かんなくなっちゃうよ。ボクはレイシーに死んでほしくないからこうしてるのに…… アリスはなにも分かっちゃいないしさぁ」
「へ、お姉ちゃんが死ぬ…… ?」
アリスが、目を見開いた。
自分の中にあった前提をひっくり返されたような顔だった。
多分、捕まった姉を救うために来た感じだろうし、現実に引き戻されればいずれレイシーが死ぬことを避けられないってことは知らないだろう。
黒猫さえどうにかすればいいと思っていたのかもしれない。
「な、なあ〝 帰り道 〟を持ってるのは誰だ?」
「何度か持ち替えてるけれど…… 今のところはペティさんが持ってるねぇ」
こそこそと紅子さんと話しつつ、ペティさんと距離を詰める。
チェシャ猫達は寄ってきたアリスと口論してるからその後ろを抜けて合流。
なんか、無性に嫌な予感がするのだ。できればアリスも回収しておきたいけれど、渦中にいるからな。
「…… 二人共、黄泉返り…… なんて普通は無理なんだろ?」
「俺様に喧嘩売ってんのか? 黄泉返りなんかできてたらとっくにして、置いて来ちまった子を迎えに行くぜ」
「あー、まあ、普通なら命ひとつ分の代償が必要になるよねぇ。ずっと一緒にいたいと思うなら亡霊になるなりなんなりするしかないし…… それだって冥界の方で許可もらわないといけないからねぇ」
むしろ冥界で許可とか取れるのか…… なら青水さんも焦らなければ夢枕に立ってお礼を言うくらいできたんじゃないか…… ?
そんな後悔が少し滲むが、今はそんなことを考えている場合ではない。
「 俺、さっき図書館で本当のチェシャ猫に会ったんだよ。それで、この世界に染みついたレイシーと黒猫の記憶を覗いたんだ。黒猫は黄泉返った。あいつの化身としてだ。でもそれで代償がないなんてことはありえないだろ? レイシーは外の世界で黒猫が過去に負った傷を追体験している。つまり、外の世界にいれば、レイシーはいずれ死ぬことになる」
「お兄さん、それもう少し早めに言ってほしかったかなあ……」
「ロクなことにはならねーとは思ってたが、予想以上にまずいぜそれ」
え、確かにあいつが関わってる以上、やばいことに変わりはないが……この二人がそこまで言うほど…… なのか? もしかして俺、あいつに慣れすぎて大分感覚が麻痺してるのかな。
「邪神が関わってるってことは、今も見てるってこった。つまり、最悪な場面で介入してくる可能性が高いってことだ」
「今すぐ終わらせよう。アリスを連れて帰るんだよ、お兄さん。恨まれようとなんだろうと、それが最善手だからね。キミのご主人様に介入されたらもっと酷いことになる」
そうか、嫌な予感はそれか……
やはり感覚が麻痺してるな。素直に二人の言うことを聞こう。そして、チェシャ猫とレイシーについては…… 可哀想だが現状維持するしかないだろうな。
「外にいたら、お姉ちゃん死んじゃうの?」
「そうだよ。だからこそボクが一緒にいるんだから。そうレイシーも望んでくれるでしょ?」
「わたくしさま…… は」
けれど、タイムリミットは突然の終わりを告げるのだ。
「おやおや、元凶がよくもそんな都合の良いことを言えますねぇ」
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