『コミュ障ビビリは妹の前で強がりたい!(※つよい)』〜ビビりは追放? なら今から本気出すから全員オレの妹な!(自己暗示)【配信を添えて】〜

時雨オオカミ

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追放させる詐欺が流行ってるんだってよ!

ギルマスの許可取らずに追放宣言して大丈夫? 喜んで帰るけどな!

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「俺にはさっぱりとギルマスのご意向が分からん」
「はえ? はあ……そりゃ、人の意思なんて完璧に理解できるものじゃないですけど……?」

 ガヤガヤと騒がしい中で、オレはやたらと怖ーい顔面のギルドマスター代理と向き合っていた。マジ怖い。顔面凶器。挙動不審になっちゃうからその眼光でこっち見ないで。

 突然なんのことだと疑問を返すと、ギルマス代理は元から怖い顔をますます鬼のように歪めてオレを射殺すレベルで睨んで来た。やめてってば。眼光でオレを殺す気か? 組合に訴えて勝つぞ? 

「ノア、お前が依頼に行くときはいっつもギルマスがお前を叩き出しているな?」
「いやだって魔物怖いじゃないですか」

 普通の人間は襲ってくる魔物が怖いものなんですー。
 平気な顔して退治しにいく他のやつらが異常なの! オレ! 正常! 

「ぎゃーぎゃー泣き喚きながら情けないくらいに嫌がるよな」
「怖いですし」

 いやまあ、顔面汁まみれにしながらギルドの柱にしがみついて「行きたくない!」って駄々こねるのは確かに情けないよ? でも直球でそんなこと言う? 本人が目の前にいるんですけど? 

 最終的にちゃんと依頼達成してくるんだからいいじゃん……今のところオレ、依頼達成率100%ですし。

「お前とパーティを組みたがるような同期もいない」
「ああ、ええ、やらかしたことありますからねぇ」

 コミュ障が極まりすぎて知らない人相手だと余計なこと言ったり、もしくは言葉が足りてなさすぎたり……ともかく連携という連携ができない。団体行動をする才能というものが、圧倒的皆無! 

 オレは孤高の冒険者なのさ……ぼっちではない。決して! オレは自ら選んで一人でいるんだもの! 泣いてなんかいないぞ! 

「下のものから舐められて足を引っ掛けられて転ぶ」
「まさか人から攻撃を受けるとは思ってもいませんでしたね」

 そして持っていたシチューを頭から被った。あれは熱かったなあ。火傷するかと思った。でもまあ、子供のすることだしねえ……。

「お前、それでもSランク冒険者か? それも、ソロでSランクまで登り詰めたはずのお前が、なんて体たらくだ。ええ?」

 はい、おっしゃる通りですわ。
 でもね? 鬼畜な依頼ばっかり斡旋あっせんしてくるギルマスにも問題があると思うんですよ。このオレに「できるじゃない」とか言って高難易度、それも死亡率高い依頼ばっかりふっかけてくるんだぞ!? 死ぬわ! 故郷に残してきた妹がいなかったら頑張れなかったよね! そうじゃなかったら今頃ドラゴンかなにかの腹の中ですよ!? 

「それでだな、ノア・レルヴィン」

 ――お前に、ランク偽造の疑惑がかかっている。

「えっ」
「こんなに弱くてビビリで連携も壊滅的なお前がソロでSランクになんてなれるはずがない! どうせ、強いパーティに取り入って、ギルドポイントだけ貯めるセコイ寄生でもしてたんだろう? よって、このギルドを追放する」

 えっ? 
 一瞬言葉に理解が追いつかなかった。
 いやいやいや、え? 

「はあ!? ギルマスの判断なんですかそれ!?」
「ギルマス代理の、俺の判断だ。さっさと行け」
「ええー」

 つまりギルマスの判断じゃないじゃん! 
 え、えー……独断じゃん。ただの代理がギルマスの意思を確認せずに冒険者を追放するとかどうなの? 

「それとも、あれかい?ギルドの研究室に戻るかい? なんの成果もあげられないお前の席が残ってればなあ? ははっ、ちっせー頃から研究室で雇われていたはいいものの、なんもできねえから冒険者に転向したって聞いたぜ。十数年も研究費だけ食い漁ってよお……そんなに無能でよく生きてこれたな?」
「いや、でもギルマスの判断じゃないんですよね?」
「ギルマスもきっと俺と同意見さ。他の連中もそう。これはギルドの総意なんだよ。分かったらさっさと出ていきな!」

 なおも食い下がろうとしてから、はたと気づく。
 ……いや、待てよ。

 これ、逃げるチャンスなのでは? 

「ふんっ、ショックすぎて言葉も出ないようだな。それとも、ランクの偽造は図星かあ?」
「……」

 ギルドで冒険者になっていたのは給料良くて働いていただけだし、ギルマスは怖い依頼ばっかりよこしてくるしさ。ここに留まる必要も、冷静に考えたらないわけだ。

 研究が終わったら帰ってもいいって思ってたのに、数年前によりにもよってドラゴンの被害で村にあるみんなの家がたくさん壊れちゃってさ。

 だから村には帰らずに、どころか冒険者に転向してまで復興のために頑張っていた。そのおかげさまで、ここ数年だけでも金はかなり貯められたし……きっとこれだけあれば村の復興も進むだろう。

 Sランク冒険者になってからそれなりに時間も経つし、給料もかなり上がっていたうえに……娯楽に割く時間があるならと、可愛いくせにクソほど鬼畜なギルマスに無理矢理ダンジョンに放り込まれたりしていたから、貯めるだけ貯めてお金もほとんど使っていない。

 これだけあれば村の家全部建て直すことも可能かもしれない。

 そ れ に。

 可愛い妹が!! 家で待ってるしな!!

 もうギルドに泊まり込んでダンジョンデスマーチとかしなくて済むってことでしょ!?
 いやったー!!!!

「分かりました、出ていきます。今までお世話になりましたと、『アルフィン』さんが帰ってきたらお伝えください」
「おうよ。逃げ帰んな。テメェみたいなのがいても危ねぇだけだ。さっさと行け……不正がバレないうちになぁ?」

 ギルマスのアルフィンさんは自ら遠征中。というかギルドの総合協会のほうでギルマス同士で会議中だ。

 この機を見計らって、このギルマス代理はオレを追い出す魂胆だったんだろう。

 こっちとしては大歓迎だからいいけどね? 

 ……というわけで、パパッと荷物をまとめ、今までのお給金を持って嬉々として街の外へ。
 しばらく街道を行ったところで、馬車が襲われているのを発見した。

「ゴブリンだ! ゴブリンが出たぞー!」

 馬車が引き倒されて馬が逃げ出していく。んー、あれって中の人大丈夫かな。いや、でもゴブリンでしょ? ええ……こわ……スルーしようかな……オレじゃなくてもきっと助けられるだろうし……でも……。

「うう、怖い」

 そんなこと言ってもスルーできないんですけどね! 
 ロングソードを抜いてゴブリンに斬りかかる。こっわ! こっわ! ぎゃぎゃって言った! なに喋ってんの? お前を今から八つ裂きにしてやろうかとか!? こっわ! 

「あ、あれ、お兄ちゃん?」

 反射的に振り返る。倒れた馬車の中から、今は故郷で暮らしているはずの顔が見えて、すんっと表情を消した。

 そして、ロングソードを握る手に力が入る。

 ――三歩青雷さんぽせいらい

 呟いて魔力を込める。ロングソードからバリバリと青い雷が迸り、一瞬で10匹はいたゴブリンの心臓を、次々と貫いた。

 三歩歩いた先で剣を鞘にしまう。これで全部片付けたな? 
 さて、だらしない顔をしないように……にやけないように……。

「ユラ、無事か? しかし、どうして君がここにいるんだい? 兄ちゃん、なにも聞いていないんだが」

 キリリと眉を上げ、腰に手を当てる。妹のユラ・レルヴィンはそれだけでしゅんとした顔になり「勝手にごめんなさい」とこちらを見つめてくる。

 うっ、だめだ叱れない。許してしまう。
 内心はもうすでに全部許しているものの、兄としてここはしっかり事情を聞いておかなければ! 

「ぎゃぎゃ!」
「お、お兄ちゃん! 森の中に!」

 声が聞こえた頃にはすでに、オレはマントの中に隠していた短剣を投げたあとだった。森の中で弓をひいてこちらを狙っていたゴブリンが一撃でその場に倒れる。

 ひ~! こわっ! 不意打ちとかありえんわ! 
 妹が怖がるでしょうが!! あー、怖い。街道のど真ん中で会話とか正気の沙汰じゃないわ。でもそんなこと言えない……! だって! だって! 

「すごい! すごいよお兄ちゃん!」
「そんなことはないよ。怪我はないかい?」
「うん!」

 ――妹の前で情けない姿なんて見せるわけにはいかないじゃないか! 

 だって、だってさ!?
 妹に「お兄ちゃんクソ弱いじゃん」なんて思われたくなくない⁉︎ どうせならお兄ちゃん格好いい! って思ってほしいじゃん!?

 オレがコミュ障でビビリなのは真実である。だが、オレは弱音を吐くわけにはいかなかった。そう、全ては妹に幻滅されたくないがため! 

 故に、一人でならば実力を発揮することができる特性を活かして冒険者生活を過ごしてきたのだ! なぜなら、『妹のために!』と思い込んで戦うことができるからである。

 その代わり他の人間との連携はクソほど上手くいかないけどな! 本来のビビリ症が前面に押し出されて動けなくなっちゃうんです! 

 つまりだ。

 ――なにを隠そう、オレは究極のシスコンなのである。
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