クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ

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第2話:森での邂逅

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森の木々きぎが夜風に揺れ、葉擦はずれの音が絶え間なく響いていた。
焚火たきびの橙の光に照らされ、従属したおおかみは静かに横たわっている。

高宮 悠斗たかみや ゆうと「……夢じゃない、よな」

あの声――『命令を確認、従属開始』。
思い返すだけで背筋が震える。だが目の前で眠る魔物が、忠実に寄り添っている現実は否応なく事実を突きつけてきた。



空が淡く白み始めた頃、おれは森の奥へと足を進めた。
食料も水もないままでは、いずれ餓死する。とにかく何かを探さなければならない。

そのとき――。

「……っ、はぁ……だれか……」

微かな声が耳に届いた。
おれは耳を澄まし、声の方へ駆け寄る。

木々の間に、白いドレスを泥に汚した少女しょうじょが倒れていた。
金色の髪が月明かりに揺れ、血の滲む傷口が痛々しい。

高宮 悠斗たかみや ゆうと「……人?」

声をかけても返事はない。ただ弱々しい息遣いだけが聞こえる。

その瞬間、茂みを割って数頭の牙猪がじしが飛び出してきた。
鋭い牙を剥き出しにして、倒れた少女しょうじょに向かって突進してくる。

「……くっ!」

身をすくめた俺の前に立ちふさがったのは――おおかみだった。

「グルァッ!」

咆哮とともに飛びかかり、最前の牙猪の首筋を噛み砕く。
血飛沫が散り、残りの牙猪は慌てて森へと逃げ去った。



俺は少女しょうじょを木の根元に寝かせ、裂いた布で応急処置を施した。
冷えた水を口に含ませると、彼女はゆっくりと瞼を開いた。

「……あなたが……助けて……?」

高宮 悠斗たかみや ゆうと「いや……助けたのはこいつだ」

隣に控えるおおかみを指すと、彼女はかすかに笑みを浮かべた。

「……ありがとう……」

それは俺に向けられた言葉であると同時に、確かに胸に染み渡る響きだった。



やがて少女しょうじょは浅い眠りに落ちていった。
おれは焚火のそばで背を預け、赤く燃える炎を見つめる。

(……ここで見捨てることなんて、できるわけない)

夜明けの風が頬を撫でる中、俺は彼女を背負い立ち上がった。
この出会いが、後に大きく運命を変えることになるなど――このときの俺はまだ知る由もなかった。

焚火《たきび》の炎が弱まり、森に朝の光が差し込んだ。
俺の背に預けられた体が、わずかに震えたかと思うと――。

「……ん……」

少女しょうじょが目を開いた。
淡い金色の瞳が、かすかな光を反射して揺れている。

「……ここは……?」

高宮 悠斗たかみや ゆうと「森の中だ。……無事でよかった」

俺が答えると、彼女は上体を起こそうとしたが、すぐに顔をしかめてまた崩れ落ちた。
腕の傷はまだ深い。

「助けてくれたのは……あなた?」

俺は一瞬言葉に詰まり、隣に控えるおおかみを指さす。

高宮 悠斗たかみや ゆうと「助けたのは、こいつだ」

少女しょうじょは驚いたように目を丸くし、そして微笑んだ。

「……そうなんですね。それでも……ありがとう」

まっすぐにそう言われ、思わず息を呑んだ。



しばらく沈黙が続いたあと、彼女は小さく口を開いた。

「私……リーネりーねっていいます」

初めて聞く名。
彼女は微かに躊躇ためらいを見せたが、それでも笑顔を添えて続けた。

「本当は……ただの村娘って言いたいんですけど……少し事情があって、ここに一人でいたんです」

言葉の端に影を感じる。
俺が深く尋ねようとすると、リーネは慌てて首を振った。

「ごめんなさい、今はまだ……。でも、ちゃんとお礼がしたいんです」



おおかみが小さく唸り声をあげた。
それをまるで合図のように、リーネが俺をじっと見つめる。

「お願いがあります。……私を、一緒に連れて行ってください」

高宮 悠斗たかみや ゆうと「……俺なんかで、いいのか?」

「はい。あなたなら……」

迷いのない言葉。
俺はしばし沈黙したあと、小さく息を吐いた。

「わかった。ただ、行き先はまだ決まってないぞ」

リーネはぱっと顔を輝かせた。

「それで十分です!」

こうして俺とリーネは、狼と共に歩き出すことになった。
小さな一歩が、やがて大きな運命を動かす――その始まりだった。

_______________________________

後書き

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第2話の続きでは、少女しょうじょが「リーネ」と名乗り、悠斗と同行する決意を描きました。

次回は、二人が村にたどり着き、そこで「全員を使役してしまう」というスキルの本質が明らかになります。
ぜひ引き続きお楽しみください!
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