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第19話:試される絆
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◇
王都の冒険者ギルドは、昼も夜もざわめきに満ちている。
木の扉をくぐった瞬間、俺たちは注目を浴びた。
「お、あれが“勇者候補”のクラスだってよ」
「見たか、剣聖の少年がいるぞ」
ざわめきと羨望、そして嫉妬。
慣れているはずの視線なのに、今はやけに重く感じられた。
(……拓真のことがあるから、だろうな)
俺――佐伯 蓮司は拳を握りしめる。
拓真はいまだ床に伏しており、王都の神官ですら完治できていない。
あの戦いでの傷は深く、誰もが「次は自分かもしれない」と恐れていた。
◇
「依頼を受けていただけますか?」
受付嬢が差し出した羊皮紙には、近郊の街道で頻発している魔物被害が記されていた。
対象は「黒狼の群れ」。
数は不明だが、牙猪よりも素早く、群れで連携する危険な魔物だ。
「……やるしかない」
俺が答えると、仲間たちは一斉に顔を曇らせた。
だが逃げるわけにはいかない。
俺たちは“勇者候補”――この国にとっての希望だ。
◇
街道に出た瞬間、嫌な気配が漂った。
風に混じる獣の匂い。
次の瞬間、黒い影が飛び出す。
「来るぞ!」
鋭い牙が光り、五体の黒狼が同時に襲いかかってきた。
咄嗟に剣を振るい、一匹を切り裂く。
だが残りは散開し、女子や後方の魔導士に迫る。
「ぎゃっ!」
「ひぃっ!」
叫び声と血飛沫。
防御が遅れた男子の肩に牙が食い込み、桜井先生の治癒が追いつかない。
◇
「落ち着け! 陣形を崩すな!」
必死に叫ぶ。
だが仲間たちの動きは鈍く、恐怖で足がすくんでいた。
牙猪の戦いで“無敵ではない”ことを知ったせいだ。
(ちくしょう……俺一人じゃ守りきれない……!)
剣を振るいながら、心の奥で思ってしまう。
――もし、あいつがここにいたら。
高宮 悠斗。
あのとき「無能」と追放された男。
彼がここにいれば、この戦いはどう変わっただろうか。
◇
黒狼の群れはさらに増えていく。
森の奥から次々と影が現れ、十体、二十体。
もはや依頼の想定を大きく超えていた。
「れ、蓮司……これ以上は……!」
仲間の声が震える。
確かに――退くべきかもしれない。
だが退けば、街道を通る人々が犠牲になる。
「俺たちは……勇者候補なんだ!」
叫びながら、俺は再び剣を振るった。
だが胸の奥の不安は消えない。
◇
その夜。
なんとか黒狼を退けたが、犠牲は大きかった。
仲間の数人は重傷を負い、拓真に続いてまたしても回復室に運ばれた。
焚火の前で、誰もが黙り込む。
炎に照らされた顔には、恐怖と疑念が浮かんでいた。
(……このままじゃ、俺たちは……)
勇者候補と呼ばれながら、揺らぐ心。
その影は、まだ誰も気づかぬ場所で力を広げている一人の少年――悠斗へと繋がっていく。
__________________
後書き
ここまで読んでくださってありがとうございます!
第19話では、クラスメイトたちが再び依頼を受け、黒狼の群れとの戦闘に挑みました。
しかし拓真の重傷の影響で全体の士気は下がり、勇者候補としての自信が大きく揺らいでいます。
一方で、彼らの心には「無能と追放されたはずの悠斗」の影がよぎり始めました。
次回は悠斗サイドに戻り、村に迫る新たな動きが描かれます。
二つの物語が交わる日が、少しずつ近づいてきます。
王都の冒険者ギルドは、昼も夜もざわめきに満ちている。
木の扉をくぐった瞬間、俺たちは注目を浴びた。
「お、あれが“勇者候補”のクラスだってよ」
「見たか、剣聖の少年がいるぞ」
ざわめきと羨望、そして嫉妬。
慣れているはずの視線なのに、今はやけに重く感じられた。
(……拓真のことがあるから、だろうな)
俺――佐伯 蓮司は拳を握りしめる。
拓真はいまだ床に伏しており、王都の神官ですら完治できていない。
あの戦いでの傷は深く、誰もが「次は自分かもしれない」と恐れていた。
◇
「依頼を受けていただけますか?」
受付嬢が差し出した羊皮紙には、近郊の街道で頻発している魔物被害が記されていた。
対象は「黒狼の群れ」。
数は不明だが、牙猪よりも素早く、群れで連携する危険な魔物だ。
「……やるしかない」
俺が答えると、仲間たちは一斉に顔を曇らせた。
だが逃げるわけにはいかない。
俺たちは“勇者候補”――この国にとっての希望だ。
◇
街道に出た瞬間、嫌な気配が漂った。
風に混じる獣の匂い。
次の瞬間、黒い影が飛び出す。
「来るぞ!」
鋭い牙が光り、五体の黒狼が同時に襲いかかってきた。
咄嗟に剣を振るい、一匹を切り裂く。
だが残りは散開し、女子や後方の魔導士に迫る。
「ぎゃっ!」
「ひぃっ!」
叫び声と血飛沫。
防御が遅れた男子の肩に牙が食い込み、桜井先生の治癒が追いつかない。
◇
「落ち着け! 陣形を崩すな!」
必死に叫ぶ。
だが仲間たちの動きは鈍く、恐怖で足がすくんでいた。
牙猪の戦いで“無敵ではない”ことを知ったせいだ。
(ちくしょう……俺一人じゃ守りきれない……!)
剣を振るいながら、心の奥で思ってしまう。
――もし、あいつがここにいたら。
高宮 悠斗。
あのとき「無能」と追放された男。
彼がここにいれば、この戦いはどう変わっただろうか。
◇
黒狼の群れはさらに増えていく。
森の奥から次々と影が現れ、十体、二十体。
もはや依頼の想定を大きく超えていた。
「れ、蓮司……これ以上は……!」
仲間の声が震える。
確かに――退くべきかもしれない。
だが退けば、街道を通る人々が犠牲になる。
「俺たちは……勇者候補なんだ!」
叫びながら、俺は再び剣を振るった。
だが胸の奥の不安は消えない。
◇
その夜。
なんとか黒狼を退けたが、犠牲は大きかった。
仲間の数人は重傷を負い、拓真に続いてまたしても回復室に運ばれた。
焚火の前で、誰もが黙り込む。
炎に照らされた顔には、恐怖と疑念が浮かんでいた。
(……このままじゃ、俺たちは……)
勇者候補と呼ばれながら、揺らぐ心。
その影は、まだ誰も気づかぬ場所で力を広げている一人の少年――悠斗へと繋がっていく。
__________________
後書き
ここまで読んでくださってありがとうございます!
第19話では、クラスメイトたちが再び依頼を受け、黒狼の群れとの戦闘に挑みました。
しかし拓真の重傷の影響で全体の士気は下がり、勇者候補としての自信が大きく揺らいでいます。
一方で、彼らの心には「無能と追放されたはずの悠斗」の影がよぎり始めました。
次回は悠斗サイドに戻り、村に迫る新たな動きが描かれます。
二つの物語が交わる日が、少しずつ近づいてきます。
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