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第2章:王都に蠢く影、交錯する運命
第31話:再び広がる距離
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森を抜けた先の岩場。
夜が明け始め、灰色の空が東の端から少しずつ朱に染まっていく。
血の匂いと鉄の臭気がまだ漂う中、クラスメイトたちは肩を寄せ合って腰を下ろしていた。
みな疲れ果て、剣を地面に突き立てて寄りかかる者、ただ虚ろに空を見上げる者もいる。
俺は少し離れた場所に腰を下ろし、焚火の小さな炎を見つめていた。
隣にはリーネが座り、無言で水を差し出してくれる。
「……ありがとう」
俺はそれを受け取り、一口飲む。
冷たい水が喉を通り、体に染み渡る。
◇
そのときだった。
「……なぁ」
疲れ切った声で、誰かがぽつりと口を開いた。
その言葉は次第に周囲のざわめきを集め、やがて形を持った疑念となっていく。
「俺たち、このまま高宮と一緒に行動してて大丈夫か?」
「は? 何言ってんだよ」
「だってそうだろ……。王国が狙ってんのはアイツだ。巻き込まれたら俺たちも危険だろ」
ざわ……と空気が揺れた。
一度出た言葉は伝染する。
「そうだ。人間まで従わせるなんて、普通じゃない。……いや、危険すぎる」
「もし俺たちにだって使われたらどうするんだよ」
「俺たちを従属させる気なんじゃ……」
次々に口を出すクラスメイトたち。
その視線が、遠巻きに俺を突き刺す。
◇
俺は深くため息を吐いた。
(……結局、こうなるのか)
助けたときは感謝し、力を見せれば恐れる。
裏切られ、切り捨てられる流れにはもう慣れ始めていた。
「だったら、勝手にすればいい」
短く言い捨て、俺は焚火の炎を見つめ続けた。
◇
「悠斗くんは違う!」
鋭い声が響いた。
場の空気を切り裂くような叫びだった。
立ち上がったのは、美咲。
顔は蒼白で震えているのに、その瞳だけは力強く輝いていた。
「どうしてそんな言い方するの!
悠斗くんは私たちを助けてくれた。危険を承知で前に出て……それなのに、なんで……」
彼女の声は震え、涙混じりだった。
だが一言一言が、皆の胸を打つように響いていた。
誰もすぐに反論はできなかった。
しかし沈黙の中、誰かがぽつりと吐き捨てる。
「……じゃあお前だけ残ればいいだろ」
その一言で、美咲の肩がぴくりと震えた。
だが彼女は視線を逸らさず、ただ真っ直ぐに俺を見ていた。
◇
リーネはそのやり取りを静かに見ていた。
美咲の表情、声色、わずかに震える指先――そこに宿るものを、彼女は確かに感じ取っていた。
(……やっぱり。彼女の想いは、悠斗に向いている)
そう気づきながらも、リーネは言葉を飲み込んだ。
口にする権利もなければ、意味もない。
ただ胸の奥がわずかにざわつくのを、彼女は深呼吸で誤魔化した。
一方の悠斗――俺は、その視線に気づくこともなく、ただ無言で立ち上がった。
◇
「よ、よし! じゃあ私は先生として高宮に付いていくぞぉ!」
その場の空気を一瞬で壊したのは、桜井先生だった。
土下座ポーズのまま両手をばたばたさせ、涙目で叫ぶ。
「宿題チェックも! ノートの丸写しも! なんでもするからなぁぁぁ!」
「うるせぇぇぇ!!」
俺が怒鳴ると、数人が堪えきれずに笑った。
だがその笑いもすぐに消え、再び重い沈黙が戻ってくる。
◇
結局その場で、クラスメイトたちは俺から距離を取ることを選んだ。
「一緒に行動すれば危険」という、もっともらしい理由を掲げて。
だが――ただ一人。
美咲だけは最後まで動かなかった。
「……悠斗くんと一緒に行く」
震える声で、それでも迷いなくそう告げる。
その横顔を見たとき、誰もそれ以上言葉を重ねることができなかった。
◇
(……また、離れていくのか)
胸の奥に広がる虚しさを抱えながら、俺はただ夜明けの光を見つめた。
_______________________________
後書き
ここまで読んでくださってありがとうございます!
第31話では「クラスメイトが再び悠斗から距離を取る」流れを描きました。
恐怖と自己保身から離れていく者たち。
しかし美咲だけは「悠斗くんを信じたい」と残る決断をし、リーネはその想いに気づきながらも黙して胸にしまいました。
そして桜井先生は、今回も空気をぶち壊す役として健在。
シリアスとギャグの落差が、この物語の色を強めています。
次回は「分かれた行動の行方」。
離れたクラスメイトたちに迫る影と、悠斗たちに訪れる試練が描かれていきます。
ぜひご期待ください!
夜が明け始め、灰色の空が東の端から少しずつ朱に染まっていく。
血の匂いと鉄の臭気がまだ漂う中、クラスメイトたちは肩を寄せ合って腰を下ろしていた。
みな疲れ果て、剣を地面に突き立てて寄りかかる者、ただ虚ろに空を見上げる者もいる。
俺は少し離れた場所に腰を下ろし、焚火の小さな炎を見つめていた。
隣にはリーネが座り、無言で水を差し出してくれる。
「……ありがとう」
俺はそれを受け取り、一口飲む。
冷たい水が喉を通り、体に染み渡る。
◇
そのときだった。
「……なぁ」
疲れ切った声で、誰かがぽつりと口を開いた。
その言葉は次第に周囲のざわめきを集め、やがて形を持った疑念となっていく。
「俺たち、このまま高宮と一緒に行動してて大丈夫か?」
「は? 何言ってんだよ」
「だってそうだろ……。王国が狙ってんのはアイツだ。巻き込まれたら俺たちも危険だろ」
ざわ……と空気が揺れた。
一度出た言葉は伝染する。
「そうだ。人間まで従わせるなんて、普通じゃない。……いや、危険すぎる」
「もし俺たちにだって使われたらどうするんだよ」
「俺たちを従属させる気なんじゃ……」
次々に口を出すクラスメイトたち。
その視線が、遠巻きに俺を突き刺す。
◇
俺は深くため息を吐いた。
(……結局、こうなるのか)
助けたときは感謝し、力を見せれば恐れる。
裏切られ、切り捨てられる流れにはもう慣れ始めていた。
「だったら、勝手にすればいい」
短く言い捨て、俺は焚火の炎を見つめ続けた。
◇
「悠斗くんは違う!」
鋭い声が響いた。
場の空気を切り裂くような叫びだった。
立ち上がったのは、美咲。
顔は蒼白で震えているのに、その瞳だけは力強く輝いていた。
「どうしてそんな言い方するの!
悠斗くんは私たちを助けてくれた。危険を承知で前に出て……それなのに、なんで……」
彼女の声は震え、涙混じりだった。
だが一言一言が、皆の胸を打つように響いていた。
誰もすぐに反論はできなかった。
しかし沈黙の中、誰かがぽつりと吐き捨てる。
「……じゃあお前だけ残ればいいだろ」
その一言で、美咲の肩がぴくりと震えた。
だが彼女は視線を逸らさず、ただ真っ直ぐに俺を見ていた。
◇
リーネはそのやり取りを静かに見ていた。
美咲の表情、声色、わずかに震える指先――そこに宿るものを、彼女は確かに感じ取っていた。
(……やっぱり。彼女の想いは、悠斗に向いている)
そう気づきながらも、リーネは言葉を飲み込んだ。
口にする権利もなければ、意味もない。
ただ胸の奥がわずかにざわつくのを、彼女は深呼吸で誤魔化した。
一方の悠斗――俺は、その視線に気づくこともなく、ただ無言で立ち上がった。
◇
「よ、よし! じゃあ私は先生として高宮に付いていくぞぉ!」
その場の空気を一瞬で壊したのは、桜井先生だった。
土下座ポーズのまま両手をばたばたさせ、涙目で叫ぶ。
「宿題チェックも! ノートの丸写しも! なんでもするからなぁぁぁ!」
「うるせぇぇぇ!!」
俺が怒鳴ると、数人が堪えきれずに笑った。
だがその笑いもすぐに消え、再び重い沈黙が戻ってくる。
◇
結局その場で、クラスメイトたちは俺から距離を取ることを選んだ。
「一緒に行動すれば危険」という、もっともらしい理由を掲げて。
だが――ただ一人。
美咲だけは最後まで動かなかった。
「……悠斗くんと一緒に行く」
震える声で、それでも迷いなくそう告げる。
その横顔を見たとき、誰もそれ以上言葉を重ねることができなかった。
◇
(……また、離れていくのか)
胸の奥に広がる虚しさを抱えながら、俺はただ夜明けの光を見つめた。
_______________________________
後書き
ここまで読んでくださってありがとうございます!
第31話では「クラスメイトが再び悠斗から距離を取る」流れを描きました。
恐怖と自己保身から離れていく者たち。
しかし美咲だけは「悠斗くんを信じたい」と残る決断をし、リーネはその想いに気づきながらも黙して胸にしまいました。
そして桜井先生は、今回も空気をぶち壊す役として健在。
シリアスとギャグの落差が、この物語の色を強めています。
次回は「分かれた行動の行方」。
離れたクラスメイトたちに迫る影と、悠斗たちに訪れる試練が描かれていきます。
ぜひご期待ください!
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