クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ

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第3章:揺れる絆、迫る真実

第79話:裂け目の予兆

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森を駆ける。
夜露に濡れた枝葉が顔を打ち、足元の土が跳ねる。
背後では蹄音と怒声がまだ追ってきていた。

「速ぇ……! 追いつかれる!」
誰かが叫ぶ。

「止まるな! 走れ!」
蓮司の号令が飛ぶ。
だが疲弊した仲間たちの足は重く、列は徐々に乱れていった。



「悠斗、こっちへ!」
リーネが腕を引き、暗い獣道へ導く。
俺は息を切らしながらもついていく。

胸の奥が焼けるように痛い。
さっきの従属の反動はまだ抜けず、意識がふらつく。

(……マジでやべぇな)



「悠斗くん……大丈夫?」
美咲が必死に肩を貸してくる。
小さな体で俺を支えながら、必死に食らいついていた。

「無理すんな。お前まで倒れたら意味ねぇだろ」
そう言うと、彼女は震えながらも首を振った。

「倒れても……絶対に離れない」

その言葉に胸がざわつく。
だが返す余裕はなかった。



後方で。

「……ちっ」
拓真が舌打ちを漏らす。
彼は列の最後尾を走りながら、袖口に忍ばせた紋章を指でなぞった。

(今なら……渡せる。あいつらの位置も全部……)

彼の視線が、追ってくる黒装束の一団と交わる。
その瞬間、微かに頷き合う仕草があった。



「拓真!」
鋭い声が背を撃った。
振り返ると、蓮司が睨んでいた。

「お前……今、何をした」

「な、何も……!」
拓真は慌てて顔を背ける。
だが蓮司の目は鋭く、決して見逃してはいなかった。



その場に漂う不穏な空気を、桜井先生の情けない悲鳴がかき消した。

「ひぃぃぃ! 木の根っこに引っかかって転んだぁぁぁ!」
ドサッ、と派手に倒れる音に、何人かが思わず吹き出す。

緊張が一瞬だけ緩む。
だが蓮司の視線は、まだ拓真に突き刺さっていた。



やがて、森の奥の崖に辿り着いた。
眼下には濃い霧が漂う谷。

「……ここを下るしかねぇ」
蓮司が短く言い、縄を取り出す。

「マジかよ……!」
仲間たちがざわめく。

追手の足音はすぐ近くまで迫っていた。



「悠斗、先に行け」
リーネが俺の背を押す。

「いや、俺は――」
「今のあなたは囮にもなれない。……だから守られる側に回って」

その冷静な言葉に、何も言い返せなかった。



背後で、拓真が小さく笑みを浮かべるのを、俺は見逃さなかった。

(……やっぱり。何か隠してやがる)

胸の痛みよりも、心の奥のざわつきの方が強くなっていった。



__________________

後書き

ここまで読んでくださりありがとうございます!

第79話では「撤退戦」と「拓真の不穏な行動」を描きました。
蓮司がその動きを見逃さず、悠斗も違和感を確信。
一方で美咲の支え、リーネの冷静な判断も際立っています。

次回、第80話では――
追手を振り切るための“崖下り”が描かれます。
そこでついに、拓真の裏切りが決定的な形で露見する可能性が……!
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