クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ

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第3章:揺れる絆、迫る真実

第89話:迫る討伐の足音

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夜明け前。
小さな村の外れ、冷えた空気の中で俺は荷を背負った。

「……もう、ここには居られねぇ」

村の人々は昨夜から落ち着きをなくしていた。
王国の兵が忍び寄ったことを知り、俺たちを恐れる者も、同情する者もいた。
だがいずれにせよ、この村にいればまた巻き込まれる。

「悠斗……」
リーネが隣に立ち、赤い瞳で俺を見た。
「覚悟は、できています」

美咲は小さく唇を噛みしめて頷いた。



村人の老婆が、籠いっぱいのパンを差し出してきた。
「……遠くへ行きなされ。あんたは人を助けた。……それだけは忘れないよ」

「……感謝します」
俺は深く頭を下げた。

その温もりが胸を締めつける。
だからこそ――余計に、王国の冷酷さが際立った。



村を出て森道を進む。
しかし数刻も経たないうちに、重い地響きが響いてきた。

「……馬の蹄音」
リーネが立ち止まり、険しい表情を見せる。
「数十……いや、百は超えている」

美咲が息を呑む。
「そ、そんなに……」

やがて霧の向こうから現れたのは、銀鎧に身を包んだ騎士たちの大隊だった。
旗には王国の紋章。
そして先頭に立つ巨躯の男が、低く号令を発した。

「――“従属の異邦人”。その身、我ら王国が預かる」

ガイウス・ドレイクがいあす・どれいく
王国騎士団長。
鋭い眼差しが、まっすぐに俺を射抜いていた。



「悠斗くん……!」
美咲が震える声を漏らす。
俺は剣を抜き、静かに構えた。

「来やがったか……」

背後では、従属下にある兵士たちが一斉に立ち上がり、俺の命令を待つように沈黙していた。

「……リーネ、美咲。ここから先は、覚悟を決めろ」

「もちろんです」
リーネが短く答え、詠唱の構えを取る。

「私も……! 悠斗くんと一緒にいるって決めたから!」
美咲も震えながら剣を握りしめた。



「包囲を狭めろ!」
ガイウスの声と同時に、騎士たちが森を揺るがす勢いで迫る。
槍が並び、盾が壁となり、逃げ道を塞いでいく。

俺は深く息を吸い、心の奥で呟いた。

(……ここが、分岐点だ)

生き延びるために、俺は――また従属の力を解き放つ。



「命令だ……! 俺の仲間を、守れ!」

その声と共に、従属した兵士たちが一斉に動き出す。
王国の討伐隊と、俺の支配下の兵士が正面からぶつかり合う。

鉄と鉄が衝突し、森に轟音が響いた。



__________________

後書き

ここまで読んでくださりありがとうございます!

第89話では「村を後にする悠斗たち」と「王国の本格的な討伐隊の出陣」が描かれました。
ついに騎士団長ガイウスが登場し、大規模な戦闘の幕開けとなります。

次回、第90話では――
従属と王国騎士団の激突。
そして、その戦闘の中で“美咲”に迫る危機が物語の焦点となります。
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