クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ

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第3章:揺れる絆、迫る真実

第94話:決着の刃、揺れる真実

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「ぬぅぅ……!」
巨剣が唸りを上げ、大地を裂く。
ガイウスの一撃は一振りで木々をへし折り、岩を砕く。

だが、俺は退かなかった。

(……もう逃げられねぇ。ここで立たなきゃ、全部終わる!)



「悠斗!」
リーネの叫び。
その赤い瞳は限界を超えた魔力で揺らぎながらも、まだ俺を支え続けていた。

「悠斗くん!」
美咲の声。
涙を滲ませたその叫びは、俺の自我を繋ぎ止める鎖だった。

二人の声が背を押す。
その温もりが、暴走しかけた力を正気へと引き戻していく。



「――従属開始」

胸の奥で、あの声が低く響く。
だが、今までのように俺を呑み込むのではなかった。
むしろ――俺が“選ぶ”ことを待っているかのように。

(……そうか。力に流されるんじゃねぇ。俺が……選ぶんだ!)



「はああああぁぁっ!」

全身の力を一つに収束させる。
炎と雷、剣技と膂力、治癒と防御――従属した者たちの断片を重ね合わせ、ただ一撃に込める。

「これが……俺の答えだ!」



振り下ろされた巨剣と、俺の渾身の斬撃がぶつかり合う。
光と衝撃が炸裂し、大地が大きく揺れた。

「ぐぅぅぅぅぅっ!!」
ガイウスの巨体が押し返される。
彼の剣に走る亀裂が、一気に広がった。



「……なにっ……!」

巨剣が砕け散り、爆風が吹き荒れる。
その中心で俺の剣が、ガイウスの胸元を斬り裂いた。

「がはっ……!」

鮮血が舞い、巨体が崩れ落ちる。
地響きと共に沈黙したその姿を見て、戦場に一瞬の静寂が訪れた。



「……勝った、のか」
膝をつき、俺は荒い息を吐いた。

「悠斗!」
リーネが駆け寄り、肩を支える。
美咲も涙を拭いながら必死に頷いた。

「よかった……ほんとによかった……!」



だが――。

俺の耳にはまだ、残響のような声が響いていた。

『従属は……支配ではない』
『繋がり……重ね合わせ……』

(……今のは……誰の声だ?)

確かに俺の中に、誰かの意思が混じったように感じた。
ガイウスですら、その瞬間にわずかに笑っていたように見えた。

(……使役スキルの本質……ただの“従属”じゃねぇ……?)



「悠斗……?」
リーネが怪訝そうに覗き込む。

「……なんでもねぇ。今は……終わったんだ」

俺は立ち上がり、血に濡れた剣を振り払った。

だが胸の奥で、確かな違和感が膨らみ続けていた。



――戦いは終わった。
だが“真実”は、まだその先に隠れている。



__________________

後書き

ここまで読んでくださりありがとうございます!

第94話では「ガイウス戦の決着」を描きました。
悠斗が“力に呑まれる”のではなく、“自分で選び取る”ことで暴走を抑え、勝利を掴む展開です。
そして最後に、スキルの本質が“従属=支配ではない”ことを示す謎の声――次章の核心への布石を打ちました。

次回、第95話では「戦いの余韻」と「リーネと美咲の関係の変化」、そして第3章の締めへと繋がっていきます。
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