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第4章:奈落の影、揺るがぬ誓い
第110話:限界の先に
◇
「はあっ!」
剣を振り抜くと、三体の影従隊が霧散した。
だが次の瞬間には、黒い霧が渦巻き、新たな形を取って立ち上がる。
「……やっぱりな」
息を吐き、汗が頬を伝う。
(何度倒しても再生する。これじゃキリがねぇ……!)
◇
「悠斗!」
リーネの声が飛ぶ。
「影従隊は“術者の影”を媒介に存在している! 術者を断たない限り、永遠に蘇る!」
「……っ、だが肝心の術者は……どこだ」
敵の後方には指揮官らしき騎士が見える。
だが、影従隊を操っているのは別の存在――もっと奥、もっと深いところからだと直感した。
◇
「悠斗くん!」
美咲が駆け寄ろうとする。
「もう無理だよ! 体が限界なんでしょ!」
「下がってろ!」
俺は怒鳴り、剣を振るって影を弾いた。
だが次の瞬間、頭の奥で声が木霊する。
『命令を確認――従属開始』
『命令を確認――従属開始』
何重にも重なる声が、脳を圧迫した。
「ぐっ……! やめろぉっ!」
◇
視界が赤黒く染まる。
無数の兵士や影従隊の雑念が流れ込み、俺の思考を削っていく。
『突撃だ……』
『退くな……』
『命令は絶対……』
体が勝手に動き、剣が振り下ろされる。
味方の声すら聞こえなくなりかけたそのとき――
◇
「悠斗ッ!!」
リーネの叫びが雷鳴のように響いた。
振り返ると、彼女の赤い瞳が必死に俺を見つめている。
「あなたはあなた! 力に飲まれないで!」
同時に、美咲の声も重なる。
「悠斗くん! お願い、帰ってきて……!」
二人の声が、胸の奥で交差した。
◇
(……俺は……俺だ!)
膝をつき、剣を地面に突き立てる。
黒鎖が暴れるが、俺はそれを両手で押さえ込んだ。
「……俺は、怪物じゃねぇ……!
守るために、この力を使うんだ……!」
◇
黒鎖が一斉に震え、眩い光が迸った。
影従隊の斬撃が迫る中、俺は剣を振り上げる。
「うおおおおっ!!」
斬撃が閃光と共に放たれ、影従隊の群れをまとめて薙ぎ払った。
霧が吹き飛び、戦場に一瞬の静寂が広がる。
◇
「……これが……」
俺は荒い息を吐きながら呟いた。
(従属じゃない……“解放”だ。力を押さえ込むんじゃなく、意思で解き放った……)
◇
だが、その光はすぐに収まった。
影従隊は完全には消滅せず、残骸のように蠢いて再生を始めていた。
「……やっぱり、術者を断つしかねぇか」
剣を握り直し、俺は奥の影を睨んだ。
◇
__________________
後書き
ここまで読んでくださりありがとうございます!
第110話では「影従隊の再生能力」と「悠斗の限界突破の兆し」が描かれました。
倒しても蘇る影従隊
雑念に飲まれかける悠斗
リーネと美咲の声で正気を取り戻し、“従属”ではなく“解放”という新しい力を発現
だが影従隊はまだ消えず、術者の存在が示唆される
次回は、この“術者”を突き止める戦いへと突入していきます。
「はあっ!」
剣を振り抜くと、三体の影従隊が霧散した。
だが次の瞬間には、黒い霧が渦巻き、新たな形を取って立ち上がる。
「……やっぱりな」
息を吐き、汗が頬を伝う。
(何度倒しても再生する。これじゃキリがねぇ……!)
◇
「悠斗!」
リーネの声が飛ぶ。
「影従隊は“術者の影”を媒介に存在している! 術者を断たない限り、永遠に蘇る!」
「……っ、だが肝心の術者は……どこだ」
敵の後方には指揮官らしき騎士が見える。
だが、影従隊を操っているのは別の存在――もっと奥、もっと深いところからだと直感した。
◇
「悠斗くん!」
美咲が駆け寄ろうとする。
「もう無理だよ! 体が限界なんでしょ!」
「下がってろ!」
俺は怒鳴り、剣を振るって影を弾いた。
だが次の瞬間、頭の奥で声が木霊する。
『命令を確認――従属開始』
『命令を確認――従属開始』
何重にも重なる声が、脳を圧迫した。
「ぐっ……! やめろぉっ!」
◇
視界が赤黒く染まる。
無数の兵士や影従隊の雑念が流れ込み、俺の思考を削っていく。
『突撃だ……』
『退くな……』
『命令は絶対……』
体が勝手に動き、剣が振り下ろされる。
味方の声すら聞こえなくなりかけたそのとき――
◇
「悠斗ッ!!」
リーネの叫びが雷鳴のように響いた。
振り返ると、彼女の赤い瞳が必死に俺を見つめている。
「あなたはあなた! 力に飲まれないで!」
同時に、美咲の声も重なる。
「悠斗くん! お願い、帰ってきて……!」
二人の声が、胸の奥で交差した。
◇
(……俺は……俺だ!)
膝をつき、剣を地面に突き立てる。
黒鎖が暴れるが、俺はそれを両手で押さえ込んだ。
「……俺は、怪物じゃねぇ……!
守るために、この力を使うんだ……!」
◇
黒鎖が一斉に震え、眩い光が迸った。
影従隊の斬撃が迫る中、俺は剣を振り上げる。
「うおおおおっ!!」
斬撃が閃光と共に放たれ、影従隊の群れをまとめて薙ぎ払った。
霧が吹き飛び、戦場に一瞬の静寂が広がる。
◇
「……これが……」
俺は荒い息を吐きながら呟いた。
(従属じゃない……“解放”だ。力を押さえ込むんじゃなく、意思で解き放った……)
◇
だが、その光はすぐに収まった。
影従隊は完全には消滅せず、残骸のように蠢いて再生を始めていた。
「……やっぱり、術者を断つしかねぇか」
剣を握り直し、俺は奥の影を睨んだ。
◇
__________________
後書き
ここまで読んでくださりありがとうございます!
第110話では「影従隊の再生能力」と「悠斗の限界突破の兆し」が描かれました。
倒しても蘇る影従隊
雑念に飲まれかける悠斗
リーネと美咲の声で正気を取り戻し、“従属”ではなく“解放”という新しい力を発現
だが影従隊はまだ消えず、術者の存在が示唆される
次回は、この“術者”を突き止める戦いへと突入していきます。
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