聖夜の光りシリーズ

貴船きよの

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二人の年越し

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 床に着衣を脱ぎ捨てた二人には、互いを求める気持ちが高まっていた。
「入れるよ……?」
 再びベッドに寝転んだ悠志に、郁人はスキンを装着したペニスを挿入した。
「あぁっ、……一気に……っ!」
 ずぶんと奥まで入り込み、それを受け止めた襞が、郁人のペニスの形を確かめるようにうねった。
「ああ、悠志のなか、すごいよ……」
 郁人がゆっくりと腰を動かすと、悠志のなかに塗りこんだジェルが卑猥な音を立てる。
「悠志、平気……?」
「へい、き……っ、いい、よ……っ」
「そう? よかった……」
 悠志の腰の下には郁人の枕が敷かれ、郁人は悠志の体を労るようにやさしく突いた。
 悠志は、じわじわと広がっていく快楽に身を委ねる。
「あ、……あっ、あぁっ」
「今月は忙しくて、あんまりできなかったもんね……、いっぱいしなきゃね」
「ぁあっ、あ、……あぁっ!」
 郁人は、ペニスで悠志のなかを味わうようにゆっくりと、それでいて的確に悠志の好きな場所に当てた。
「あぁ! あっ、ん、……あぁ……っ!」
 焦らすように動かれながらも、悠志は全身が痺れて理性が麻痺していく。
 自分の枕に頭を預け、時々顔を横に振りながら乱れていく悠志を見ていると、次第に郁人の悪戯心に火がついた。
「悠志……、耳も舐めてあげる」
「あぁっ! あ、や、やぁ……っ!」
 耳が唾液で濡れると、悠志は身をよじった。
 けれど、郁人は悠志を抱きしめて逃がさず、薄い耳を食み、耳の輪郭に舌を這わせる。
「あっ、んん、あぁ……っ!」
「悠志って、耳の感度が上がったよね。……ん、ちゅっ、んん……っ」
「ああっ、あ、は……っ、ああっ!」
 郁人は耳のなかまで舌を差し込んだ。
「ああっ、んんっ!」
「こんな、なんでもないようなところまで性感帯になるなんて、悠志はえっちだよね……ちゅっ」
「あぁっ、も、やぁ……っ!」
「いやじゃないでしょ?」
 郁人は、どんどん自分のペースにはまっていく悠志の反応を楽しんでいた。
 しかし、それだけでは終わらない。
「悠志、……乳首もいじったらどうなるのかな?」
「え? ……ああっ!」
 郁人が耳から離れたかと思うと、休む間もなく、指先が小さな乳首にこすりつけられる。
「も、もう、胸は……っ! ぁあっ、あ……っ!」
「悠志が感じているの、お尻のなかの動きでわかっちゃうよ?」
「あぁっ、あっ、だ、だめ、……イク、イキそう……っ!」
 悠志は、なかで郁人のペニスをきつく締めた。
「おっと、まだイかないでね?」
 すると、郁人は胸を弄るのを止め、悠志のペニスの根元をぎゅっと握った。
「……え?」
 寸止めされた悠志は、荒く呼吸をしながら、潤んだ目で郁人を見つめた。
 爆発寸前で止められたもどかしさが、腹部で疼いている。
 郁人は、にこりとして言った。
「体勢を変えて、もう少ししたいな。悠志、うつ伏せになれる?」
 悠志がベッドにうつ伏せに寝ると、一度抜かれた郁人のペニスは、予告なく再び挿入された。
 それは滑りよく進入し、悠志の弱点を強く突いた。
「ああっ!! ぁ……っ」
 悠志は、思わず大きな声が出た。
 シーツを掴み、必死に声を抑えようとしたが、それでも郁人の腰の動きに押されて漏れ出てしまう。
「ぁあっ! あ、はぁっ、んん……っ!」
「ここ……、ちんぽでごりごりされて感じちゃう?」
「あぁっ!」
 前立腺に郁人のペニスが当たるたびに、悠志は体を震わせて感じた。
 郁人は少し背が高いだけで体格は自分とそれほど違わないのに、背後に感じる郁人の気配は大きい。
「ああっ、あ、はぁっ、やぁっ、ああんっ!」
 悠志は反論する余裕もなく、自分でもわかるほど全身が火照っていた。ベッドが軋む音すら耳に入らない。
「悠志、可愛い……、俺もイキそうになっちゃうよ」
 そうは言うものの、郁人のペニスはますます元気さを増して、悠志のなかを蹂躙する。
「ああっ! ああっ! いく、と、……当てすぎっ、ああんっ!」
「こうされるの、好きでしょ?」
 悠志がどうされれば感じるのか、それを知っているのは当然と言いたげに、郁人は悠志の前立腺をこすり上げる。
「ああんっ! あっ! んんっ! だ、だめ、もう、イキそう……っ!」
「あぁ、悠志のなか、すごい……っ」
「ああぁ……っ!!」 
 体中を痙攣させて、悠志は呼吸まで震わせていた。達したようだった。
「……あれ?」
 ところが、郁人が悠志の体の下に手を入れてみると、シーツは乾いたままだった。
「もしかして、中イキしちゃったの? ……いやらしいね、悠志」
「はあ、あぁ……、あんまり、動くな……っ」
 そっと振り返って力なく睨みつける悠志が愛らしく、郁人はくすりと笑った。素直ではない恋人の照れ隠しには慣れている。
「悠志、顔を見せて。体ごとこっちを向いてよ」
「ぁあ……っ!」
 郁人は悠志を背中から抱いて体ごと起こすと、自分は背中からベッドに寝転んだ。
「いきなり、強引だぞ……」
 悠志は憎まれ口を叩きながらも、郁人に言われるがまま、郁人のものが抜けないようにして体の向きを変えた。
「こっちはお漏らししていたんだね」
 悠志が寝転ぶ郁人の上に乗ると、郁人の視線の先には、ペニスから糸を引いているカウパーが映った。
 郁人はカウパーを塗りたくるように、悠志の亀頭を指先でやさしく撫でる。
「ぁあっ、ばか、今触ったら……っ!」
「悠志のなか、とろとろなのにきゅうきゅう締まって気持ちいい……」
「そんなことしたら、出るだろ……っ」
 余裕がなくなり泣きそうな声を出す悠志に、郁人は慰めるようにして、彼の太腿を撫でながら言った。
「ごめん、ごめん。今度は、ちゃんと出させてあげるから」
 そして、郁人は悠志のなかを一気に突き上げた。
「あああっ!」
 郁人にずん、と重く突かれるたびに、悠志は頭のてっぺんまで甘く痺れた。
「ああ、はあっ、ああ……っ!」
 涙を浮かべて郁人との繋がりを感じている悠志を見上げて、郁人は満足していた。
 二年付き合ってきて、寄りかかったり寄りかかられたりのバランスは取れてきたけれど、素面の悠志はなかなか甘えてはくれない。
 こうしているときだけは、悠志はクールな表情を崩し、本来の自分を包み隠さず見せ、郁人のペースに溺れていく。
 その光景は、郁人の独占欲を満たした。
「悠志、俺、そろそろイクかも……っ」
 郁人は、悠志の姿を見ながら、自身の快感がせり上がってくるのを感じた。
「俺も、イキたい、一緒に……っ!」
「ちょっと、激しくするね」
 郁人は、言葉どおり、悠志の臀部と自分の腿がぶつかる音が響くほど腰を打ちつけた。
「ああっ、ああっ! ああっ! 郁人、あぁっ!」
 郁人に体を揺さぶられながら、悠志はもう限界だった。
「あぁ、もう、イク……っ!」
「いいよ、俺も……っ」
「あぁっ、あっ、ああぁ……っ!!」
 全身をびくびくとさせて、悠志は上りつめた。郁人も、悠志のなかで勢いよく達していた。
 悠志は脱力し、呼吸を落ち着かせながら郁人を見下ろすと、郁人の胸や腹には、自分の放った精液が飛び散っていた。
 郁人は、自分の胸にかかった悠志の精液に指先で触れて言った。
「こんなに出して……、そんなによかったの?」
「……よかった」
 ぼんやりとして頬を赤らませ、悠志は小さな声で言った。
 急に幼い表情を見せられたようで、郁人は思わず笑みを浮かべた。
「ほんと、可愛いなぁ」
 郁人は上体を起こすと、悠志をぎゅっと抱きしめた。
 悠志も抱きしめ返そうとして腕を上げたが、はたとして動きを止めた。
 肌にぬるりと触れた感触が、悠志を正気に戻させた。
「……体に精液が付いた」
「これ、悠志のだよ? 俺もべったりだから、一緒にシャワーを浴びよう。洗ってあげる」
 シャワーをすることさえ楽しそうに提案する恋人の顔に、悠志は諦めたように笑って言った。
「……もう、どうにでもしてくれ」
 悠志は、郁人に体重を預けて抱きついた。
 
 
 外から聞こえていた除夜の鐘は、いつのまにか止んでいた。
 二人はさっとシャワーを浴びてスウェットに着替え、別々の枕と一緒の毛布で眠るところだった。
 顔だけ悠志のほうを向いて、郁人は言った。
「ねえ悠志、一緒に住まない?」
「え?」
 横向きで郁人のほうを見ていた悠志は、驚いた。唐突に出た話だった。
 郁人は続けた。
「時々、考えていたんだよね。悠志が家に来るたびに、このまま一緒に住んだらどうなるのかなって」
「……それは、俺も考えたことがある」
「ほんと?」
「ほとんど毎週、ここに来ているからな」
 互いに同じ想いだったと知ると、悠志と郁人は、見つめ合ってくすぐったい喜びに包まれた。
「ここだと二人で住むには狭いから、住むところは探さなきゃね」
「そうだな。ここにも愛着はあるけど」
 今年も、二人で過ごす予定が立っていく。
 二人でしっかりと毛布に潜り直し、郁人は言った。
「今年もいい年になるといいね」
「うん」
 悠志と郁人は、毛布の下で手を握り合った。



〈終〉


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