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3章

82話 ソロの覚悟

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「海が遠い」

 南エリア2-1は正直突破しやすい。川の近くにいるタツノオトシゴとノンアクティブのスライムにさえ気を付けて移動すれば比較的対処がしやすい相手ではある。
 鳥は群れてる所と鳴き声が聞こえるので余計な事さえしなければ攻撃されない、硬蟲……一番わかりやすいのはカナブンとかカブトムシの雌の様な形の相手で赤ん坊一人くらいの大きさなのでビジュアルはかなりきつい。裏面とかみたら悲鳴を上げれる自信がある。
 で、一番の強敵と言うか、厄介で数が多いのがコボルト戦士。しばらくこのコボルトシリーズが中核をなして、上と下にちょっと特殊なのが出てくるのが基本パターンくさいな。

「そこそこのレベルのわりに数が多いから先に進めないんだよ!」

 犬の叫び声を辺りにさせながらポリゴン状になって消失していくコボルト戦士を見ながら構えを解かずに辺りを警戒し続ける。他のコボルト系と変わらず、武器を使っての戦闘になるので、ここで銃格闘が役に立ってくるれるわけなのだが、問題は倒したときだ。
 この犬特有の叫び声と言うか遠吠えのせいで他のコボルト戦士が引っかかって連戦になる事が多い。防御的にはキャットスーツのおかげと銃格闘組み合わせの受け防御のおかげで大きいダメージは貰わないが、数発に一回は多めのダメージを貰う。

 そりゃそうだ、状況とか体勢とかで受けきれないときもあるし、何より何だかんだで格上相手だ。
 じゃあ強い相手なんだからといって下手に銃撃したら音で余計な物をひっかけそうだからおいそれと使う訳にはいかない。聴覚探知なのは分かっているし、銃声音思いっきりさせたらそれでアクティブ大量釣りとかになってボコられそうなのもでかい。

「先込めじゃ無理だからなあ……さっさと銃弾作ってのサプレッサー付きの銃でも手に入れたい」

 まあ、今はそんな事よりも連戦が続いているコボルトの方が大変なのだが?
 地味に3本目のHP下級ポーションを飲み干して容器をポイっと捨てる。あれ、この容器使いまわせばスライム回収……!出来るわけもなく、敵を倒したときと同じように容器は消滅している。
 手元を離れて少ししたら普通に消えていくんだな、前にこれをぶつけて怯ませたりしたけど、消失するまでのラグで出来た芸当って事か。やっぱガラス容器作るのも視野に入れるか。

「まあそういうのは後の話であってね!」

 コボルト戦士からの攻撃を毎度お馴染み銃を横にしての受け防御。これも何回もやったら針金が切れてバラバラになったりしないよな。
 こいつの攻撃方法と言うか、装備は片手剣に盾なんだが、角の付いた兜までご丁寧にこさえている。文字通り戦士型って事なんだろうけど、盾一つ持たれるだけで銃剣を弾かれるというのがまた厄介だ。
 やっぱりと言うか、当たり前ではあるが、戦士タイプに対してめっぽう弱い。特に盾持ちの相手。一発撃ってみたわけだが盾塞ぎされると固定ダメージが入らない。ついでに言えば追加で2匹やってきたのでそりゃ必死こいて逃げる。

「うーん、ダメだなあ……もうちょっとしっかり戦えるようにならんと」

 後ろから追撃してくる足音を聞きながら逃げつつ南エリア2-2のほうへとさらに南進。やっぱり銃格闘伸ばしたり軽業的な事も出来るようにしていくか?何にせよコボルトとか人型かつ装備を付けている相手が今後出てくるようであれば、対策しなくちゃいけないなあ。
 あー、どうしようかなあー。

 まあレベルなりにやれる事しか出来ないわけだし、いきなり超レア装備が手に入りましたーとか、もう強力なスキルが揃ってばんばん先に進めまーすとか、MMORPGでそれは楽っちゃ楽だけどゲーム寿命縮めるだけよな。
 そもそもそんなご都合主義に装備揃うとかオフゲーでいいじゃん。
 
「何はともあれ、とりあえずこの状況を脱するのが先の話になるんだけどさ」

 パイプライフルを構えながらちらちらと後ろを見る。コボルト戦士が3匹私の後ろをついてきているのは変わらず……あ、1匹脱落した。
 何度か打ち合った奴かな、流石に体力ってかスタミナが無かったか。何にせよ一つ発見と言えば発見だ、ダメージ与えた相手は離脱しやすいって事をだな。
 
 でも残り2匹か、あー、海行くだけでなのにガチ戦闘ばっかりだよ。
 って言うか私のT2Wって銃周りの研究と戦闘ばっかりだな。楽しんでるっちゃ楽しんでるわけだけど。

「あー、ったく……タンク型が恋しいわ!」

 軽く開けた場所に到達すると共に足に力を入れ、体を捻り、パイプライフルのストック先を両手で持つと共に走りこんできたコボルト戦士に合わせておもいっきり叩きつける。最初にこんな事やってたな、そういえば。
 振りぬくと同時にめきめきと骨の軋む音をさせながらコボルトの横っ面を銃身の下部で殴ると共に銃剣を滑らせて一気に斬りぬく。
 
「んなろぉおぉ!」

 力いっぱい無理に押し込みながら一匹目を転倒させる。
 すぐさま二匹目が怯んだ所ですぐにパイプライフルを構えなおし、盾の横を滑らせ突き入れる。
 深く突き刺さる音と犬の鳴き声をさせた所ですぐに蹴り飛ばす。

「そういやこのゲーム、戦闘してたらスキル沸いてくるの忘れてたよ!」

 なりふり構わず、やれる事はやらないと。
 基本ソロなんだし、対多数戦闘も出来る様にならないとだめだ。
 
 突きを入れられ、盾ごと蹴られたコボルトがよろけて怯んだ所をもう一度蹴り入れてさらに追撃し、尻もちをつかせる。

「やってて良かったロボゲー!」

 よろけと転倒をチームで繰り出してハメ倒すゲームやってて良かった。
 ああいうゲームでの多数戦闘は一体を転がして、相手してまた殴り合いして転倒させて時間を稼ぐのだが、このゲームに関してはブースト量とかは無いし、攻撃動作にいちいち制限が掛からないのから自分の思い通りに動けれるって素敵だわ。

「対多数戦闘の経験って、意外とためになるわねっ」

 最初の一匹目が立ち上がる所に近づいて、跳躍。寝ている所から攻撃してくるのはあまりいない。盾ごと踏んで上から体重を掛け、動きを制限させたままで銃剣を突き下ろし突き刺す。
 それに合わせて自分も体重を掛けてさらに深く銃剣をねじ込む。転倒して銃剣を突きさされているのを助けるために二匹目が剣を振りかぶってくるのを確認し、その攻撃に合わせて飛び、ごろごろと避け転がる。

「ふっ、ふっ……おお、やっべ、タンク役がいたせいでなまってるわ、私」

 上げてて良かったAGI、やっぱステータスの補正って大事だな、極型に比べたらそこまで行動の速度は速くないけど、十分動ける。勝負勘と言うか、やっぱり安全圏でどうこうするってのは性に合わない。
 ひりつくようなぎりぎりの戦いって滾るじゃない。

 と言うかレベル以上の相手と戦うんであればステータス以上に立ち回りと、動き方次第だな。スキルと装備でごり押しとかできないし、しょうがないけど。

「だからと言って私が負ける要素にはならねぇ!」

 倒れているのが起きあがるまでもう一匹は向かってこない。チームプレイも出来るとかなかなかやるな。向かって来ないのであれば一発装填し、腰に据えて構える。銃口を下に向けさえしなければ弾は落ちない。
 こう言う事がないから、さっさと銃弾を作りたいって言うのになあ、そう思いながらも海行きたいとか何言ってんだって話になるが。

「ああ、海みてえー!」

 倒れていたのが完全に起き上がり、体勢を整える前に、立っていた一匹の方の盾に思い切りぶつかって密着する。こうしておけば剣の攻撃はこない、そのままぐいぐい押し込み体で抑え込み、もう一匹が立ち上がりに合わせて腕の力のみでパイプライフルで攻撃、刺さるのと同時に合わせて引き金を絞り一撃。
 叫び声を上げさせる前にポリゴン状に消失していくのを確認し、さらに体で盾を押し込みつつ、同時に装填を行う。装填Lv5の効果を舐めんなよ。

「泥臭い戦い方とか得意なんだよ、こちとらぁ!」

 片手で盾を内側に持って来させてからすぐに外側に引っ張り、正面がら空きにしたところを構えなおした銃剣で突き刺し、さっきと同じように引き金を絞る。

「ああー、疲れるってのにぃー!」

 やっとのことでポリゴン状に倒した相手を眺めながら遠くの方から追加が来ているのを確認、さっさと移動しないと。
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