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6章

168話 イベント後の反動

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 たまには戦闘と思って、北エリア2-1にやってきたんだけど、対人イベントの反動がかなり来てる。いや、もう、何が大変って、HPとMPの管理なのよ。
 イベント時にはただ単に100の75で2.5倍くらい余裕があったから、とにかく装填したり、トラッカー常に使って索敵したり、ダメージちょっと貰った程度でも回復しないで大丈夫じゃん!って思っていたわけだが。
 通常状態になると47の20よ、もう貧弱とか言うレベルじゃないくらいに気を使う。

「もろ入ったワンパンで15くらいは貰うとは……いや、何だかんだでこのスーツ大分強いんだな……今度あのゴリマッチョに改めてお礼言わないとな」

 手持ちの空銃弾になっている各銃に装填しつつ、自動回復を待ち続ける。
 わかりやすさを追求しているこのゲームで、マップの構造は今更ではあるのだが、北エリアの難易度は常に他のマップよりも低めに設定されている。
 はず、なんだよね。
 そもそも東エリアの方を進めていたから突破できるはずなんだけど、どうも苦戦する。ステータス変わったのをちゃんと考えて行動しなきゃならんと言う事だよね。

「あー、きっつ……あー、すげー楽しい」

 ふいーっと大きく息を吐き出してからウサ銃を構えなおす、とにかく銃剣を外せないのでウサ銃が手放せないのもどうにかしなきゃならない。
 
 そういえば拳銃に剣を付けるって言うのもあったが、あんなくっそ使いにくい武器をなんで作ろうと思ったのやら。浪漫だったり見栄えに関してはかなりそそるものではあるんだが、そもそも拳銃に付けるくらいなら自分でナイフもって突き刺せよって話になる。
 
 かの有名な失敗兵器パンジャンドラムを作ったイギリスで、塹壕相手にライフルじゃ取り回しが悪いから拳銃に剣を付けたら強いんじゃないか!って発想で付けてみた物の、銃のバランスは崩れるわ、肝心の銃剣は使いにくいわ、両方とも結局使えなくなったって言う話もある。
 ちなみにパンジャンドラムを作った30年くらい前の話だったりする。

「リボルバーとオートマチックをもう1丁ずつ作れれば2丁拳銃だったり、ガンカタ的な事も開けると思うんだけどなあ」

 そういえば対人イベントに関して、特に報酬ってのは無かった。まあそりゃそうだよな、対人が好きじゃない人もいるわけだし、参加不参加で有利不利が発生するってのはよろしくない。
 変な所で気にしてる気がするな、PvPメインのゲームではないのでその辺りはある程度ばら撒いても良いと思ったのだが、PvEでもある程度のバランスは欲しいと言う事だろう。
 最初のイベントの様にイベントのポイントがあれば新しい銃を手に入れられたかもしれないのは残念だな。

「そういえばあのトカゲが銃を使ってたけど、刻印銃だったっぽいしなあ……あんまり対峙しなかったから軽くしか見れなかったんだっけか」

 ふーむ、と唸りながらウサ銃を構えてさらに北エリアの奥に進む。

 ちなみに北エリア2-1のモンスター分布は4種類。


北エリア2-1
Lv15 ポイズンラット
Lv17 スラッシュラビット
Lv19 赤リス
Lv20 ボーデンドラゴン


 のラインナップであって、普通にやってりゃそこまで強いラインナップでもないんだろう。さっさと倒せればいいんだけど、銃剣メインでの立ち回りだとやっぱり厳しい所がある。
 散々銃剣って言っておき、さらにメインで使ってるのにいまだに初期武器ってのが問題なのだがね。

 やっぱり現状の装備を見直して、先に進める様にするのがいいって事か。

「そう思うだろ?」

 少し大きく、鋭利な耳を持っているウサギと対峙しながら銃剣を構えてこっちに飛び掛かってくるのに合わせながら一定距離を保つ。
 対人だったらすごい不意打ちとか飛び掛かってくる攻撃してくるんだろうけど、モンスターの方が苦戦するな。
 飛び掛かり、耳を振って斬撃をしてくるのに合わせてウサ銃の銃剣で受けつつ下がり、着地した所を目がけて突き、刺さったうえで引き金を絞って銃撃。
 突き刺さったままなら外す事もほぼないし、確実に一撃かませれると言う最高の攻撃方法。問題はしっかり刺さってない状態にぶっ放すと、ものすごい隙を晒すって所がネックだが。

「殺意のあるウサギやらネズミやら、いきなり難易度上がっている気がするな」

 東側に進んでいた時は結構パワータイプだったが、北側は絡め手が増えてきたと言う感じ。この辺からもうちょっと状態異常に気を付けろって運営からのメッセージだと思う。
 毒消しとか持ってきてないから、結構雑攻略してるけど。

 でもまあ、やっぱり対人とは違って、一匹ずつの攻略方法を見つけながら先に進んで行くってのは結構楽しい。
 流石にレベル差があると厳しいのはあるが、しっかりとした立ち回りを作れれば応用も効くし、これから先の強い相手にもある程度立ち回れるように出来てはいると思う。

「実は第三の街まではチュートリアル扱いされるんだったりして」

 葉巻に火を付けて口で揺らしながら襲い掛かってくるモンスターを捌きつつ、ゆったり景色を楽しみつつ、銃撃音を響かせ、ポリゴン状に消失していくモンスターを眺めながら先に進んでいく訳なのだが……。

「此処に来て銃撃音のデメリットが微妙に厳しくもなってきてるなあ」

 不遇理由の一つ、クソでかい音によるアクティブ釣り。そういやサプレッサーもこれの為に作ろうとか言ってた気がする。
 撃つたびに暫くしたら新しいモンスターがやってくるのでそれを捌いて、前に進んでを繰り返すわけだが、β時代の様に銃弾が潤沢にあるわけでもないので、やっぱり戦闘が多くなるほど消耗は厳しい。
 現代の西部開拓時代ってどうやってあんなに量産したのか不思議だわ、もうちょっとしっかり調べてみたら同じような事が出来るとは思うんだが、工業製品だったらアウトっぽい。

「よくよく考えりゃ東に行って水銀取りに行った時もトラッカー使いまくりの隠密プレイだから突破出来たんだった」

 ヤバい時は鳳仙花を使ってやりくりしていたんだったな、八兵衛八兵衛。後はもうがっつり走り抜けるって方法ばっかりだったわ。
 やっぱりそろそろごり押しするだけじゃどうにもならない所になってきたか。
 
 対人の時は不遇で大したことないって認識されてたから銃撃音聞かれても無視されがちだったが、モンスターは素直だな、すぐ音聞きつけてこっちにやってくるんだもんな。

「1回戻ってどうするか考えるかあ」

 ガンベルトに入れる銃弾の余裕すらなくなってきたし、やっぱりガンナーギルド探し当てて銃弾確保してから出直そう。
 
「あの髭親父にめっちゃドヤ顔で指さして正解なんて言った割に結構あっさり出戻りするとかかっこわりー」

 そう言う事もあるさと、新しく引っかかってきたボーデンドラゴンの相手をし始める。
 こいつもこいつで結構強いんだった。4足歩行のトカゲだけど、鱗は硬いし、体勢が低いし、柔い所は口や目の部分って所か。
 どっかの誰かがモンスター攻略法!なんて言いながら一匹ずつ対処法を詳しく記載してるくらいにはバリエーション豊かだよな。

「ああ、いいね、モンスターの対処法を一匹ずつメモって纏めるとか楽しそう」

 「ガチン」と硬質な音をさせて私の事をかみ殺そうとしてくるこのボーデンドラゴンにすら、愛着がわいてくる……爬虫類って結構好きなのよね、カメレオンとか可愛い。

「但し、てめーはダメだ」
 
 口を開け、噛みついてくる瞬間に思い切り銃剣をねじ込んで、腕ごと噛まれながら銃撃。噛みついてきたまま、2発銃撃を文字通り食らわせてやったらポリゴン状になって消失していく。
 
「幾らスーツ着てるからって、ダメージはでかいわ……」

 残りHP2で踏みとどまったのは僥倖。さっさと回復して一回戻るとしよう。
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