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6章

172話 虚無タイム

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 自分の姿を鏡で見たけど作業着に眼帯っておかしいわ。多分インベントリの肥やしになるなこれ。
 ついでに手に入れたツナギは結構いい感じで。


名称:ツナギ 防具種:衣服
必要ステータス:無し 
防御力:+5
効果:スキル2枠のLv+2補正
詳細:上下の繋がってる青い作業着
製作者:薫


 もろ作業着、何だったら優秀。
 その代わり防具としての性能は無いから、もう根っこから本当に生産職向けの奴で無条件で使えるってのもいいポイント、やっぱいいもんくれるわ、あのゴリマッチョ。

「でもまあ、戦闘する時は結局スーツ着るから、あんまし意味ないな」

 それでも街中ではあまり目立たなくなったのは確かだな。所謂ファンタジーの鎧を着ているのもいるが、結構現代寄りの服装もあるので違和感がない。
 やっぱり、この辺の自由度は頭ちょっとおかしいな。

「さてと、石灰取りに行くか」

 どうせ着替えるツナギだけど、作業する時には様になるから良し。


 
 南エリア2に来るのも久々だよね。最後に来たのは硝石丘を作る時だったっけ?あのメカクレとおしゃべり忍者がと一緒にサハギン狩りに来た時が最後か。
 そういや髭親父が槍使いだったんなら、あのサハギン槍貰っておけば良かったな。槍だけに尖った性能しているけど、かなり強い武器って言ってたし、レア品なだけあったなあ。
 まあ、もう手元にない物をあれこれいってもしょうがないし、今は貝殻に集中しよう。

 ちゃんとした海と言うか、観光目的の側面も強いので南エリア2-2は海の方にいかなきゃ結構、ノンアクティブが多い。
 私以外に海を堪能している人もいるし、やたらとでかい砂の城を作ってる奴もいるしで、遊び幅が広いわ。
 やっぱ戦うだけがゲームじゃないって改めて認識できるのもいいんだけど、私は延々と貝殻集めて焼いて石灰を作りまくってるだけなんだけどさ。

「たまには何にも考えないで遊ぶってのもありじゃないかしらねぇ」

 バケツに直火でもがんがん貝殻を燃やしているのを眺めながらぐいーっと伸び一つ。バケツ一杯の貝殻燃やして1kgって所だから……えーっと、苗1つに対して100gぐらい?面積に対してどれくらい使うのかってのも知らないのが問題だよなあ。
 やっぱりファーマークランの連中に恨みを持たれたのもやらかしたポイントだけど、それでも対人イベントで思いっきり爆破されたからってなあ。
 髭親父の奴が仲介って言うか、あいつも一緒になってファーマークランの奴らボコってたじゃん、何だったら結構な一撃ぶち込んでるわ。

「私にはトライアンドエラーしか選択肢がないんか」

 出来上がった石灰を仕舞い、また次の貝殻を燃やす作業を繰り返す。前にバケツの数をまた増やして、計20個、20㎏の石灰を完成させる。
 
「もうちょい簡単に手に入る方法探すって言っても、あんましないってのが問題か……ただ需要も大してないからなあ、使い道が限られてるし、錬金素材としても弱いか」

 石灰の入ったバケツ20個を確認し終わり、今後の事を波打ち際で考えるわけだが、とりあえずいつも通りにファーマーやって農業ギルドのレベルを上げるのに集中するか。
 金策並行しながら農地広げていって、そのうち葡萄作ってワインの仕込みなんて出来る様にしたら面白そうだ。

「密造ってわけじゃないけど、やってる事がすげーグレーな気がしてきた」

 砂地の上にペタンと座って、踵を基点にして足をぷらぷら左右に揺らしてまったり。そういえば風景を楽しむなんてことも殆どしてなかったわ、改めて海を眺める。
 結構作りこみはいいよね、海は綺麗ででかいし、水平線や、反射光の再現度も高い。

「綺麗な物を見て癒されるって感覚ってあんましわかんないけど、こういうのを見たらいいなーってのは分かるなあ」

 1週間駆け抜けて、2日休んでようやく軌道に乗ってきたから踏ん張りどころではあるんだが、急ぎ過ぎてもか?ガンナーギルドだけは最初に見つけたいという気持ちはある事はあるが、別の奴が見つけてもそれはそれ……でもないわ、やるならやるでやっぱトップを走りたいわ。
 
『銃弾どうやって作ったんだ?』
『あー、レシピ教えてなかったっけか……今のところ自作銃弾は鉄パイプの組み合わせでの薬莢、雷酸水銀で雷管、鉛弾と黒色火薬って所かな』
『もっと他に良い素材使って雷管作らない理由は?』
『その良い素材ってのが見つからないからなあ……一番良いのはピクリン酸に水酸化ナトリウムを加えてから硫化ナトリウム、還元してピクラミン酸ナトリウムにしてから、塩酸酸性の水中で亜硝酸ナトリウムを加えてジアゾ化、で、作ったのを濾過して温風乾燥……』
『ああ、うん、悪かった、俺が悪かった』
『ただまあ、原子番号の記載はあるから、やりくりすれば出来そうな気がするけど……まー、これもWikiの受け売りだから』

 ちょっと化学を齧ってたからなんとなーく、分かると言えばわかるのだが……よくこんなんを現実の1900年代初頭に作れたもんだよ。
 って言うかどういう発想をしたら作れるんだろうか。

『まあ、とにかくある程度手頃に手に入って作りやすかったってのが雷酸水銀で、それを使い始めたってのが正しいのよ』
『銃見せて貰った時もそうだったが大分苦労してるんだな』
『今更よ今更、どっちにしろ実用範囲内かつ手に入りやすいって条件での選択肢だったし、公害だったり銃の劣化を気にしなくて良いって点がある時点での選択だかんね』
『うちのボスに常識なんて通用せんぞ』
『無理無理、あたしより頭おかしいもん』
『ぶっ飛ばすわよ、あんた達』
『火縄作るだけで苦労したのに、まだ先があるとはなあ……火薬の元すら今は手に入りにくいってのに』
『私はもう量産体勢入ってるからそうでもないけどねぇ、レシピは教えるけど素材は自分で見つけないと駄目よ』
『教えてやりゃいいのに』
『正直な所「自分で作れた」って感動は他の職や生産の比じゃないわよ』

 これは事実、あっさり作れるけど、手が震える位には感動したからね。
 火薬を作れた時、銃を作れた時、銃弾を作れた時、ターニングポイントは結構あるわ。

『どーしても駄目だってなったら教えてやるかな、それまでは頑張りなさいな』
『うーむ……まあ、何でも答えを出されたら面白くないか』
『そう言う事』
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