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6章

190話 優秀な人材×2

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「何でメイドロボにしたんだ」
「んー?趣味もあるけど、それよりもロボって所がポイントでしょ」

 いつも通り自宅……ではなくクランハウスの1Fでトカゲの奴とガンナーの二次職のすり合わせ中。
 ガンスミスだから銃は貰えなかったらしいのだが、代わりに手に入れたのがリローディングマシンってどういう事なんだろうか。
 
「あんたが貰った物も合わせて考えていくと、やっぱり機械工学が存在していると思うのよ」
「その根拠が俺が貰ったアイテムと、メイドロボって事か」

 正解、と言う様に指をさしてにぃっと笑う。
 種族からしてこういうのがいるって事は何かしらの機械が存在していると思うんだけど、説明書きにも有った通り、NPCが何かしらのスキルをくれたり、ヒントをくれたりと言う事は一切ない。
 って言うかプレイヤーに対して有利になる事をNPCがぽこぽこ教えてくれるとか、導いてくれるってそれはもう介護よ。

「作り直しが基本出来ないゲームで初期選択で出てこないロボ種族がいるってのがやっぱり気になったのよね」
「キャラの作り直しは課金アイテムだったな」
「で、流石に気になったから作り直しアイテムの課金してみたんだけど、やっぱ選択肢にロボ系の種族はないんだよねえ」

 ちなみにキャラ作り直しアイテム1つで500円、無駄にはなっていないが、結局使ってもいないのでただのお布施になったが収穫はあった。
 他にも課金アイテムとして、重ね着が出来るようになるもの、武器スキンだったりと、どちらかと言えば容姿関係が課金アイテムだった。
 この辺は国内のゲームじゃあんまりやらない手法だな、どちらかと言えばMOBA系や、キャラ自体が固定しているゲームで見られる物だ。

「だからクエストでアンロックする特殊な物だと思うのよね、すっごい単純に考えてだけどそれだけじゃ、労力として弱いから、おのずと機械工学もあるんじゃないかなーって」
「ゲーム進行度に合わせてのアンロックで容易に作り直しが出来ないって問題は」
「機械工学はスキルだろうからどの職業でも良いとして、キャラ作り直しの方はその種族アンロックの時に課金アイテムが1つくらい配布される気はするわ、折角アンロックしたのに課金しろってのは不親切っしょ」

 まあキャラの作り直し云々は良いとして、その種族アンロックがされるかどうかがポイントなのよ。

「ゼイテから8方向に進めるってのを考えると、基本4方向以外の所に何かしらの村や町、アンロック要素が隠されているって事だと思うのよ」
「真っすぐ進んでアンロックしていってくれている前線組は助かるけど、寄り道しないと分からん所が多いのは確かだな」
「とにかく、機械工学があれば銃器開発の道もさらに開けると思うわけだし、ちょっとした確認も含めてあのメイドロボにしたわけ」

 そのメイドロボはと言うと、相変わらずクランハウスの入口でぴしっと立ったままで辺りを眺めたりしている。
 10万も払ったのに何もさせてないって随分と勿体ない使い方しているわ、現状じゃ思いっきり金持ちの道楽って感じ。

「あの猫耳に商品棚と看板作ってくれって頼んだけど、まだ暫く掛かるみたいだし、暫くは店として使えないわ」
「口は悪いが腕はいいな、あいつ」
「その口が悪いせいでどこも引き取れなかったってのがまた面白ポイントなのよ」

 そりゃそうだな、と、お互いでくすくすと笑う。
 俺様職人で拘りが強すぎる上に自信過剰、ついでに言えばちょっとめんどくさいって言うんだから、どこも引き取ってくれるわけないわな。勿論うちは実力主義だから誘ったしな。

「まあ、腕はいいから結構仕事あるみたいだし、いいんじゃないかしらねえ」
「あのメイドロボが受付してくれるとかはないのか」
「その発想はなかった。多分やってくれるんじゃないかな……サイオン」

 声を掛けると入口で待機していたサイオンが此方の方にすたすたと歩いてくる。
 机と椅子くらい持って来ればよかったな。

「お呼びですか、マスター」
「個人依頼の受付をあんたが代行してできない?」
「はい、可能です。代行をしたいプレイヤーが私にどういう物かを指定していただく形になります」
「優秀だったわ、うちのサイオンちゃん」

 軽く会釈をして私の傍で待機し続ける。
 物凄い高度なAIが搭載されているって訳ではないけど、NPCとして命令できることが多いと言う感じかな。
 
「あんた、マニュアルみたいな物は無いの?」
「はい、メニュー画面のヘルプを参照していただくか、冒険者ギルドで説明を受ける事が可能です」
「個人的に欲しくなる優秀さだ」
「流石に10万払って無能だと運営に文句の1つや2つ言いたくなるしな」

 優秀と言われたのを恐縮ですと返事をしてから会釈してまた待機状態に。
 うむ、出しゃばらないNPCって素敵だな。

「して、何で此処に呼んだんだ」
「ああ、そうそう、その理由言うの忘れてたわ……前に入れてくれって言われたピンク髪なんだけど、そいつに呼ばれたのよね」
「それが俺と何の関係があるんだ」
「そのピンク髪にうちのクラン入るための条件として銃弾を作って見せろって言ったんだけど、どうやら目処が立ったみたいでね、ガンナーのあんたを呼んだのよ」
 
 なるほどと言った感じに頷き、クランハウスの1Fゆったりと待つのだが……。
 流石に立ちっぱなしってのは良くない気がしてきた、寛げるスペースも確保しないといけないわ、これ。
 あー、何だろう、コンビニ作ったり、遊園地作ったり、そういった経営シミュレーション的にあれこれ考え始めてきた。

 そうして暫くトカゲと一緒にサイオンのマニュアルを見たり、性能を確かめていると、大きく扉を開けてくるのが1人。
 ピンク髪が特徴の普通のヒューマンが私ら3人を眺めてから目の前に歩いてくる。

「銃弾できたよ!」
「じゃ、見せて貰おうかしらね」
「確かにそれは俺も見ておくべき案件だな」

 ガンナー2人でそのピンク髪が銃弾を作る様を眺め、しっかりと出来ているのを確認すると共に、後ろでその様子を見ていたサイオンが両手を胸の前で合わせてパチパチと拍手している。
 うんうん、うちのメイドロボは可愛い奴だ。



『うちのクランで初めての志願者が来たわよ』
『ガンナー配信者のももえでーす!』
『頭悪そうだけど、一応私の言った事はクリアしてるから馬鹿じゃないわよ』
『また変な奴が増えたな』
『変な奴ってぇ?』
『全員ってとこじゃな』
『それはまあ、違いないわねぇ、仲良くすんのよ、あんた達』

 何だったら変人しかいないな、うちのクラン。
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