最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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9章

241話 脱獄2日目

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「あれだけ苦労して煙草5本ってふざけてんのか」
「缶詰なんて処理のめんどくさいもん取ってくるからだろ」
「慰謝料よこせ、慰謝料、ボコられたんだぞ」

 鉄格子越しに相手の胸倉を掴んで引き寄せ、ああ?っと思い切りガン付ける。その上でガンガンと鉄格子にぶつけて脅迫。

「わかった、わかった10本、10本!」
「よーし、わかってんじゃない」

 追加の5本を受け取り、早速1本口に咥え、指をパチリと鳴らすと共に火を付けて一服。

「って言うか何であんた、こんなもん持ってるのよ」
「俺は『調達屋』だからな、もっと優しく扱っておいた方がいいんじゃねえか?」
「そういう脅しって私には通じないわよ」
「……まあ、俺のやる事は物々交換や、仕事の斡旋だよ、報酬にアイテムや金を渡している」

 あー、よくいるよな、この手の映画やゲームにいる「どこから持ってきたんだ」ってなるような奴、大体最後に裏切る。それにしても煙草吸ってる所を看守に見られても別に咎められないあたり、ルールが結構緩いな。
 あまりガチガチにすると自由度が下がるので、その辺の塩梅はうまく調整しているって事か。

「ちなみにどういう物を持ってるわけ?」
「凶器以外の物は調達できるな、脱獄するための鍵なんてものもないな」

 ふむ、どこから調達してるのか聞くのは野暮ってもんだが、こいつを如何に活用するかがポイントにもなりそうだ。このまま関係性を結んでクリアできれば調達屋ルートって事になるんだろう、多分だけど。
 
「ふー……情報は売ってないのか?」
「物によるね」

 鉄格子にもたれながらふいーっと紫煙を吐き出す。
 
「どっか抜け道は無いの?」
「それは物を持ってきてもらわねえとな」

 根性焼きでもかまして吐かせてやろうと思ったけど、流石にさっき鉄格子にガンガンぶつけてやったらこれ以上はまずい気がするのでやめておこう。
 後はアイテムに関してだが、単純にポケットに突っ込める数が限られているのでそれでやりくりが大事になりそうだ。理由としては煙草を仕舞おうとした時にインベントリを開けずにそのままポケットの中に煙草を仕舞い込んだから、それが証拠だな。
 これって持ち物検査なんてあったりするんかね。毎回毎回独房の中調べられて、持ち込み禁止品を持っていたら没収的な?
 って言うのを元のゲームを考えればどこかにアイテムを隠して手持ちのアイテムとやりくりしていくってのが攻略方法になるのか。



「とりあえずどうやって脱獄すっかなあ」

 監獄の中央にある、運動場でラジオ体操しながらどうするかを考える。
 夜中、食堂に忍び込んで缶詰かっぱらってからダウンして起きたらもう点呼だったわけで、昼間の体操の時間になる前に調達屋の所でやり取りしていた形になる。

「あんた、昨日の夜に何やってたんだ?」

 ジャンプしながら手を広げて閉じていたら隣から声を掛けられる。
 
「食堂に忍び込んで缶詰かっぱらってた」
「もう、脱獄する算段が?」
「いや、ちょっとしたクエストね」

 最後の深呼吸をしながら隣の奴にちらりと見やる。トカゲ顔って思ったけどドラゴン顔だったわ。どっちも爬虫類と言えば爬虫類なんだけど、こう、がっつりの奴に私は縁がある気がする。そういやジャンキーの奴がキャラモデル変えるとかいってたな。
 で、体操が終わって自由時間。

「あんたは何かやってるわけ?」
「トンネルを掘ってはいる」
「流石に時間掛かるし、土とかどうするん」
「だと思うよな、土魔法で処理できるのをさっき知ってな」

 手頃なベンチに座って情報交換。
 
「じゃあ、速攻でトンネル掘れるんじゃないの?」
「最初はそうしたんだが、ダメだった。魔法にもある程度制約が掛かっていて難しいんだ」
「あまり殺傷能力の高いスキルは制限掛かってるって事かねぇ」

 また煙草を咥えて火を付け、唇を器用に動かして煙草を上下に揺らす。トラッカーと生活火魔法に関してはそう言った制限も無いのを考えれば補助スキルは単純に使えるって事か。スキルのレベルや種類の多い既存プレイヤーが単純に有利にならない作りがこう言う所で出来ているんだな。

「……あんた、どこからその煙草入手したんだ」
「トンネル掘っている以外の情報を教えてくれたら、教えていーわよぉ」

 ぷぁっと煙を輪を出して、少し唸って考え込んでいるのを確認しながらしばらく待つ。

「分かった、自分の知っている事は何個かあるから、それと交換で」
「物わかりの良い奴は好きよ」

 で、何個か話を聞いていく訳だが。
 まずプレイヤーは50人びっちり、それぞれソロでやっているのが20人程。2人以上で協力しているのが残りになる。大体はトンネルを掘ったり、壁を壊そうとしているのが大半で、力業がメインらしい。
 スキルに関しても私が思った通り、強いのは殆どが封印されていて、補助系スキルは殆どが据え置き、戦闘ばっかり上げているのは結構苦戦しているらしい。

「概ね私が考えていた通りねえ……このマップに関しては何かない?」
「四角型の建物で外周は二重金網に有刺鉄線……見張り台は4つ、交代は12時間……一応屋根に登れるルートが見つかったらしい」
「ふーむ……それはどこ情報?」
「隣の部屋にいる奴、夜中と昼間に色々調べまわったらしい」
「だったら見つけてそうなんだけどなあ……じゃあ、次は私か……調達屋って言うNPCがいるんだけど、そいつから貰ったわ、これ」

 咥えていた煙草を手に取って灰を落とす。
 
「私の場合は、夜中に食堂に忍び込んで缶詰かっぱらったら交換できるようになったわ」
「昨日、凄い看守が騒いでたけど、それか?」
「かしらねぇ……誰か1人見つかると警戒が強くなるとかあるって事か」
「そうなってくると、ある程度全員の行動を把握して、何をやっているかを確認する必要があるな」
「違反しているのが見つかって、看守全員が警戒状態になるのはやってみるか……」

 そういうとすっと立ち上がる。

「何をする気だ?」
「こういうのはね、最初に分かっている方がいいのよ」

 ポケットから煙草を出して、ドラゴン頭に渡しておく。

「後で返しなさいよ」
「それは良いが、何を……」

 とりあえず手頃に近くにいた看守の肩を叩いてから、思いっきりグーパン。
 すぐさま大きく笛が鳴ると共に警報が鳴り響く。昼間で大っぴらにやっているって言うのもあって、すぐに他の看守がやってくるわ、別に喧嘩を売らなかった連中に関しては御咎め無しではあるのだが、独房に戻れと指示されている。

 私はと言うと追加でやってきた看守と大乱闘よ、がんがん殴って蹴って、そりゃあもう喧嘩よ。
 なるほど、一度こういった警戒状態になったらプレイヤー全員、一旦独房に戻されるっぽいのは確定だけど、点呼を取るかどうかはあのドラゴン頭に聞くとしよう。

 私の方としては、看守を数人ボコってダウンさせていたら、途中でHPがゼロになりダウン。昨日と同じように首根っこ掴まれて放り込まれているだけよ。
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