最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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9章

251話 SortieVenganzaCompany 

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「すまんかったな、付き合わせて」
「なーに、面白かったわよ、あんだけ唸って悩んでるあんたの事を見てるのは中々にね」
「ぬう、隙を見せてしまったか」
「何言ってんのよ、人間隙がある方が可愛げがあるってもんよ」

 最終問題の間抜けな正解音を聞きながらそんな事を言い、サクッとクリア。一緒になってクランハウスの2Fへと転移される。何だかんだでクランハウスの利便性が高いから、みんなして復活地点にしていたりする。

「こんな事、リアルでもあまりなかったからな」
「はいはい、まー、そう言う事もあるだろうよ」

 他人のリアル事情って微塵も興味ないからなあ。オンラインゲームで相手の事情まで汲むのって仕事だとか用事、都合で一緒に出来なくてログインが暫くできない、なんて連絡事項くらいだろ。
 
「明らかに興味がない話の時は生返事だな」
「リアル絡みの話ってどうでもいいからなぁ、あんましされるとゲームの興が削がれる」
「ゲーマーだのう……そんなに興味ないか」
「ないねー、全くしないとは言い切れないけど、そんなに言うもんじゃないでしょ」

 顎に手を当てて成程と納得半分、出来てないのが半分、の様な感じで返事をしてくる。
 勿論ゲームシナリオでメタ視点と言うか、ゲームでいきなりリアルの話をしてくるってのも、そこまで好きじゃない。そう言うのは没入感が薄れるから、やめて欲しい。

「さーてと、私はそろそろログアウトするか」
「まだ日も変わってないのに珍しいな」
「そら昼間からイベントやりまくってるんだから、精神的に疲れたのよ」
「ふむ、おやすみ」
「うーい」

 『お疲れさまでした、これよりログアウト処理を開始します』

 白い光の輪が足元から出てくるとそのままログアウトの処理が開始され、いつの間にか近くにいたアイオンがぺこりと頭を下げてお見送り。
 ゲーム内の方が、私有意義に過ごしている気がする。



「で、戻ってきたらこれだもんなあ」

 真夜中に掃除機かけるのって中々の背徳感。まあ上下左右煩いから、こっちが多少うるさくても文句言うんじゃねえよって話よ。
 で、掃除機かけて掃除して、ベッドメイクしてからシャワー浴びて飯食って一息。ゲーム内にリアルの事を持ち出すってのは好きじゃないけど、ゲーム内の事をリアルに持ち出したいってのはよくあるな。

「サイオン姉妹よ、今こそあんた達がリアルに欲しいと思った事はないわ」

 最近クラン資金について、口煩いって心の中で思っていてごめんよ、滅茶苦茶優秀だったよ。しかも毎時間地味にうちのクランハウスの掃除もしてるって聞いてるしなあ。ああー、欲しいよぉ、サイオン姉妹、1人でいいからリアルに欲しいなぁ!

「早くそういう世の中になってほしい」

 ぼふっとベッドに横になりながらタブレットでだらだら動画やらT2Wの公式サイトのインフォメーションを眺める。流石にVR技術が発達してるとは言え、リアルに持ち込めるってのはなあ。ああ、でも通販サイト系にフルダイブしてウィンドウショッピング出来るってのはらしいよな。
 こういう技術が無かった時に比べて3Dモデルで購入する商品と同じものを確認できるので商品詐欺が無くなったので良い事らしい、ただそれと合わせて通販サイトで溺れるって事が社会問題になっていたっけか。フルダイブ技術の力ってすげー。
 
 ま、私はめんどくさいから普通にサイトからぽちるんだけど。ゲームはパッケージ開けてやってみないとクソゲーか良ゲーか分からないわけだし。だからって買う前にレビューサイトを確認するってのもそれはそれで面白くない。

「んー、私の有休パワーもあと1週間くらいで終わるのが問題だなあ……」

 今までの様にログインしまくってレベリングやイベント参加ってのも難しくなってくるだろうな。少ない時間で効率的に……ゲームといっても、あんまりやる事は変わりない。
 他のクラン員もいるし、サイオン姉妹もいるから運営としては問題ないか。それに他の連中も何かしらの用事があったりでログインの時間がばらついてるのに私よりレベルが高いから、私の効率が悪いだけか。

「でもまぁ、いつも通りっちゃいつも通りだろうなあ」

 タブレットを枕の横にぼふっと置いて、そのままひと眠り。
 




『To The World Roadへようこそ』

「だから休みの間にひたすらゲームしてやろうと思うんだよなあ」

 あれから一眠り入れて、昼方になったらすぐに白い輪を出しながらログイン。ちょっと休み入れたらすぐにゲームするってのもいいもんだなー。ついでに言えば今日は日曜日だし、月曜日は祝日なので世間的には連休。

「おい、こんな遅くにログインして何やってたんだ!」
「遅くないじゃん、何言ってん」

 ばたばたとうちの1Fのショップも煩いな。
 そんなに騒ぎ立てて何かあるとは思わないんだが、どういう事なんだろうな。

「馬鹿、お前あれ見ろよ、あれ!」
「他の連中はー?」
「いいから、見ろって!」

 ぐいぐいと押されて窓に押し込まれ、外を見る。
 いつもと変わらず、街の中心にやたらとでかいモンスターが叫びをあげて足元にいるプレイヤーを薙ぎ払い、吹き飛ばし、スキルががんがんと飛び交っている。

「ハハハ」
「アッハッハ」

 お互いに見つめてから笑い声をあげ、テーブルに座って一息つきながら、シオンからお茶を貰って啜る。知らない間に緑茶を仕入れていたのか。

「じゃ、ねえよ!」
「あれはなにかな、チミ」
「運営からのサプライズイベントだとよ、全員ひっくるめてのレイド戦よ」
「うちのクラン員は?」
「全員ログインしている、つーかお前待ちだよお前待ち」

 私待ちって言われてもなあ?と、思っていたら全員が全員クランハウスのリビングに集合。またサイオン姉妹が条件化でのメールでも送信したか。

「お、きたきた」
「アカメちゃんおそーい」
「ボスは御寝坊さん?」
「これで勢揃いだな」

 それにしても、うちの濃ゆい面子がこんなに集まってるのって結構久々じゃないかな?ついでに言えばレースイベントは全員が敵だったし、前々回は髭親父とジャンキーしかいなかったしな。

「……珍しく全員揃ってるわけだけど、何で私の事待ってたんだ」
「そりゃ、簡単だろうし、分かってるだろう?」
「お祭り騒ぎするのにアカメちゃんがいないのはねぇー」

 ふいーっと大きめにため息を吐き出し、葉巻を咥えて火を付けて貰う。もう葉巻を出すだけで素早く私の物に火を付けてくるとは……こいつ成長している。
 すぱすぱと葉巻を吹かしたりし、お茶を楽しんでいると時折爆発音とプレイヤーの悲鳴が聞こえてくる。うんうん、いい一服だ。

「やっぱお祭り騒ぎと言えば、なあ?」
「ちなみにあれ、いつからいるわけ?」
「アカメがログアウトして少ししたらだな。リアルタイムで日曜日になってすぐのはずだ」
「じゃあ、もうちょっと起きてたらあいつの出現が見れたのか」

 ギャオーと響く鳴き声だが、何だろうな、水爆実験に巻き込まれて巨大化した爬虫類って感じ?世界的に有名な怪獣なわけだが、あれをベースしたような気がする。

「で、あいつに何度か喧嘩売ってたんだけど、まー、つよいねー……配信映えはするけど」
「そこで、てめえのFWSで一発ド派手に吹っ飛ばそうって話よ」
「……あー、なるほどねー……確かにイベントモンスターも一撃っちゃ一撃だけど」

 メニューを開いてスキル確認をするわけだが、しっかりFWS自体は封印と言うかイベント仕様に切り替わっている。

「ま、流石にデータログ取ってる運営がFWS何て言うチートスキルをほったらかしにするわけないわな……固定ダメージ∞は出せないね」
「チッ、役立たずだな」

 イラっとしたので猫耳を引っぱたく。

「でも、まあ……あいつを派手に倒すって所は賛成だな」

 ぎしっと椅子をきしませてから立ち上がり、110mm対艦ライフルを肩に担ぎ階段の方へ進む。

「ほら、てめーら、あいつに一発かまそーぜ?」

 にぃーっとギザ歯を見せて笑うとライフルを持っていない手でこっちにこいと合図をする。

「ほら、やっぱりこうなったろ?」
「いえーい、ボコボコにしてやるぜぇー」
「しょーがねえなあ、腕の一本二本引きちぎってやろうや」
「老体に鞭を打つとはこういう事かね……」
「配信していい?配信していいー?」

 イベントは楽しまなきゃ損だろーが。



「おーう、ちゃんと付いて来いよお前ら」

 私を先頭に、後ろに5人それぞれの獲物を構えながらしっかり付いてくる。
 分かってるじゃねーか、お前ら、お祭り騒ぎは思いっきりやってなんぼよ。
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