神々の遠い記憶を継ぐ者

まるねこ

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第一章 神祇官へ

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 そう思った途端、コロンと手のひらから小さな玉が地面に落ちた。

 !!

 封印の玉が出来た!

「宵闇、気を抜くな!」

 驚いていると、火影様がげきばす。

「は、はい!」

 私は悪しきものに集中し直して瘴気を取り込む。悪しきものがまとっていた瘴気は徐々じょじょに薄くなっていき、火影様が更に左に一文字斬いちもんじり、切り返しと悪しきものを斬りつけていく。

 火影様が斬る度に悪しきものの抵抗が減って瘴気が取り込みやすくなる。取り込む度に私の手に熱が集まるのが分かる。

 ……コロン。

 悪しきものと一緒だと封印の玉が出来るの? そう思った途端、火影様は一歩踏み込み、袈裟斬けさぎりし、悪しきものを倒した。

 私はそのまま悪しきものを取り込むと先ほどより少し大きめの玉が転がった。

「宵闇、封印ができるようになったのか?」
「わかりません。が悪しきものを瘴気と一緒に取り込んだらこの玉が出来たんです」

 私は玉を拾い上げて火影様に差し出した。

「ふむ。しっかりと封印が出来ているな。宵闇のおかげで悪しきものを楽に屠ることができた。このことは曼殊沙華様に報告せねばな」

 火影様は剣の汚れを拭き取りながら私を見た。

「ところで、宵闇。お前の薙刀の扱いはなんだ。あれでは悪しきものに傷を付けることも出来ないだろう。薙刀の訓練を行うように神祇官に言っておく」

 火影様から見た私の薙刀はまだまだなのだろう。実際、悪しきものに傷を与えることができなかった。

「分かりました」
「悪しきものは封印された。後は任せた」

 火影様はそう言うと封印の玉を持ち、一足先に国に戻っていった。残った私は瘴気を取り込みはじめた。

 悪しきものがいた場所付近の濃い瘴気を吸うと少し手が熱くなる感覚はあるけれど、少し離れた場所で瘴気を吸っても何も起こらないようだ。

 やはり封印の玉が出来るのは悪しきものを取り込んだ時だけなのかもしれない。

 そう考えると、瘴気を体内に取り込んだ後の動きをしっかりと身につけた後、武官達について行って悪しきものを封印する練習をすればいいのではないだろうか。

 今まで暗闇の中を手探りで歩いていたけれど、少しばかり光が見えてきた気分になった。

 ……頑張ろう。

 その後、衛門府へ報告した後、癒し池に行くように言われ、向かおうとしていると後ろから声が掛かる。

「あ、宵闇。明日から当分の間は武官達と一緒に薙刀の訓練をすると火影様から聞いている。しっかりと準備してくるように」
「はい」

 彼らと訓練、か。今日よりも明日が癒し池に行く必要があるんじゃかな。そう思いながら私は癒し池に向かった。




 癒し池には既に何人かの名無し様が入っていたようだ。

「宵闇、衛門府より許可を受け、癒し池に着ました」
「宵闇、入りなさい」

 萌黄もえぎの名無し様が応えた。私はゆっくりと池の端に入る。

「宵闇、封印の玉を作ることができたと聞いたよ」

 あおいの名無し様が笑顔で話しかけてきた。

「はい! 葵の名無し様、今日、悪しきものが鯉柄山こいがらやまほこらに出現していて初めて一人で悪しきものと戦ったんです。でも、私の薙刀では全く傷つけることが出来なくて、結局、応援に来てくれた火影様が倒したんですけどね」

 私は今日の出来事を葵の名無し様や他の名無し様に話をする。

「宵闇は頑張っているんだね。でも君が作る封印の玉のおかげで僕たちも頑張れる」

 私の封印の玉のおかげ?

 意味が理解が出来ずにいると、よもぎの名無し様が話してくれた。

「宵闇、私達は常日頃白帝になるため修行しているのは知っているな。神祇官が封印した悪しきものはかくしやしろに集められるのだ。そして私達が封印を解き、悪しきものを消滅させる作業を行っている」

「封印を解いて悪しきものを消滅させるのですか」
「そうだよ。今回は強かったからこうして僕達数人掛かりで完全消滅させたんだ」

 ……知らなかった。

 衛門府の武官達では倒せない時に神祇官や白帝様が悪しきものを封印する。それを隠の社で封印を解いて悪しきものを消滅させていたようだ。


 普段、衛門府の武官達は悪しきものを倒しているのだが、厳密に言えば悪しきものは瘴気と同じで消滅はしていない。

 様々な手法で霧散むさんさせているという感じに近いだろうか。倒して瘴気が集まらないように処理をする。だが完全な消滅ではない。

 極端に言えば濃い瘴気の中に倒した悪しきものを放置していれば元通りに復活してしまうのだ。

 白帝様や名無し様は悪しきものを完全に消滅させることができる。封印の玉は動けなくなった悪しきものを玉に閉じ込めているが、完全な死ではないため、相手も封印が解かれた時に必死に抵抗するのだろう。

「衛門府の武官が攻撃し、散らすことしかできないのに消滅させるのは凄いとしか言いようがありません」

「そんなことはないよ。武官達が弱らせてくれているおかげで僕達は消滅させることが出来る。今回は少しばかり強くてみんなでこの池に来ることになってしまったけどね」

 葵の名無し様は苦笑いをしながら話す。

「先ほど宵闇が封印した玉が衛門府より送られてきたから今頃、別の者が消滅させているでしょう。封印が出来る者は少なく、難しいのです。宵闇のおかげで私たちは沢山修練を積むことができてとても助かります」

 萌黄の名無し様が優しくゆったりとした口調でそう話してくれた。

「わ、私。皆様のお役に、立てているんですね。もっと、もっとお役に立てるように、頑張ります!」
「宵闇、無理しないでね」
「はい!」

 私の傷は深く無かったのですぐに回復し、癒し池から出た。

 私よりも先に来ていた名無し様達はまだ回復ができていない。どれだけ深い傷を負っていたんだろう。

 少し心配になりながらも名無し様達に礼をして神祇官の部屋へと戻っていった。


**********

冒頭~3話まで修正いたしました。
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