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55 エピローグ
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「シャロア、大分落ち着いたようだからそろそろ私はボルボアの元に戻るわ」
「お母様、寂しくなります」
「大丈夫よ。私の娘だもの」
そうして母はあっさりと護衛と侍女を引きつれて帰ってしまった。私ももう立派な大人。いつまでも泣いていられないことは分かっている。
邸に元からいた侍女達と新たな生活をスタートすることになったの。もちろん費用は婚約無効になった時に支払われたお金よ?
結局働こうと思ったけれど、母からもクリフォード様からも止められてしまったの。
私は働く気満々だったのだけれど。
それと重要な事がもう一つ。クリフォード様との婚約が決まった。
母はクリフォード様なら婚約しても大丈夫だと契約書にサインをしたの。
何度も言うようだけれど、我が家は恋愛結婚。好きな人が出来なければ無理に結婚しなくてもよいという考え。それは今も変わっていないわ。
けれど母は父の代理として婚約の契約書にサインをした。我が家としても情勢が不安定になっているこのご時世に女一人で生きていくのは難しいと思ったようだ。
それに行き遅れの私と結婚したいと言ってくれる殿方はもう出てこないだろう。
私自身も彼のことを嫌いではないし、好きだとストレートに言葉をくれることが嬉しい。それを見越して母は婚約を決めたのだ。
母が帰国した後、王弟殿下と私の婚約発表が王城から大々的に宣伝された。すると、貴族達は挙って私が住む邸へ来ようとしていた。
元々この邸には最低限しか人がいなかったため、他の貴族達をもてなすような準備は出来ない。そして私を狙う人もいるようで陛下からすぐにクリフォード様の邸に花嫁修行として移り住むように言われた。安全面を考えると仕方がない。
そこからは駆け足のように毎日が過ぎていったわ。
「シャロア! ただいま。嬉しいよ。邸に帰ると愛する人が出迎えてくれるなんて夢のようだ」
「もうっ、クリフォード様。毎日お出迎えしているではありませんか」
「毎日、言葉に出てしまうほど嬉しいんだ。今日はどうだったかな?」
「今日は領地の勉強をしました。休憩時間は護衛騎士と共に剣の稽古をして、午後はマナーの勉強でした」
クリフォード様は私の腰を抱きサロンへと移動する。ここから夕食までの時間はこうして二人の時間を過ごす事が毎日の日課となっている。
「結婚式の日取りが決まったからすぐに君に知らせようと思って急いで帰ってきたんだ」
ここは普通の貴族と違うところよね。クリフォード様は王族籍なので私達の都合で結婚式するわけにはいかないのだ。
クリフォード様は私のことをとても大切にしてくれている。婚約者が彼で良かったと今は素直に思える。
過去の悲しい記憶を忘れている事も多くなった。
「本当ですか!? 私、嬉しいです」
「私も嬉しい。こうして君と結婚する日が決まったんだ。私がせっついたおかげで兄上からは籍だけはもう入れておいてもいいんじゃないかと言われたよ。シャロアのためにと」
私はその言葉を聞いて涙が出た。それに驚いたクリフォード様。
「駄目だった!? 無理はしなくていいんだよ??」
「いえ、嬉しくて。……私、二度も結婚が駄目になったんですよ? この先一人で生きていこうって思っていたんです。
好きになった人と無理やり引き離されてもう恋愛はしたくないって思っていたのです。でも、こうしてクリフォード様に出会い、婚約できた。
クリフォード様、お慕いしております。私を嫁に貰って下さいますか?」
クリフォード様は私にガバリと抱きついた。
「嬉しい! 嬉しいよ! シャロア。大好きだ! 愛している。すぐに結婚しよう。
私は君に出会うまで結婚したいと思ったことは無かった。
けれど、あの日、あの時、君に助けられた。私は君に恋に落ちてしまったんだ。
君の心に大切な人がいてもいい、それすらも全て受け入れられるほど君が好きで、愛おしくてたまらない」
その言葉を聞いてまた涙が出た。
そのままクリフォード様が用意していた婚姻届けを書いて城に提出し晴れて夫婦になった私達。
結婚式は半年後になっていた。
どうやら一年後に決まったのだが、クリフォード様が待ちきれないと最短の日程にしたようだ。
先に婚姻届けを出して夫婦なるように陛下に直談判したらしい。
何もない場合は結婚式の時に神父に立ち合ってもらいサインをして結婚したと証明するのだが、教会もクリフォード様はまた命を狙われても可笑しくない状況だという理由で先に婚姻届けを出しても問題はないと判断したみたい。(今、彼を狙う人はいないのだが)
「シャロア、新婚旅行は何処へ行こう?ミローナがいいかい? それとも他の国に滞在してみたい?」
「出来るのであれば、もう一度家族と会いたいです。結婚してしまえば家に帰ることはあまり出来ませんもの」
「いいよ。ならミローナでゆっくりと過ごそうか。あと、私が治めていた直轄地の街の領主になった。これからはレイル公爵と名乗ることになった」
「クリフォード様……。有難う」
私は胸が詰まった。もう生涯泣くことはないだろうという程の涙を流したのにまだ涙は枯れることを知らないみたい。
悲しみの涙ではなく、幸せだと感じることでこんなにも涙が溢れるなんて知らなかった。
結婚式当日、天気にも恵まれ、皆の前でクリフォード様と生涯共にすることを誓った。
純白のドレス。少し膨らんだお腹に手を当てた私。その上からそっと彼の手が包み込む。
私は幸せです。
【完】
ーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読みいただきありがとうございました⭐︎
今回は他者視点を極力減らす感じで書きました。塩梅は難しいですね。毎回勉強です。(*´ω`*)
この後、ラダンの話が続きます。
ラダンにとってはバッドエンド以外何者でもないので読みたい方だけお願いします。
もちろんそれだけではラダンが救われないのでifバージョンも書いております。(*´ω`*)
お読み頂ければ幸いです。
「お母様、寂しくなります」
「大丈夫よ。私の娘だもの」
そうして母はあっさりと護衛と侍女を引きつれて帰ってしまった。私ももう立派な大人。いつまでも泣いていられないことは分かっている。
邸に元からいた侍女達と新たな生活をスタートすることになったの。もちろん費用は婚約無効になった時に支払われたお金よ?
結局働こうと思ったけれど、母からもクリフォード様からも止められてしまったの。
私は働く気満々だったのだけれど。
それと重要な事がもう一つ。クリフォード様との婚約が決まった。
母はクリフォード様なら婚約しても大丈夫だと契約書にサインをしたの。
何度も言うようだけれど、我が家は恋愛結婚。好きな人が出来なければ無理に結婚しなくてもよいという考え。それは今も変わっていないわ。
けれど母は父の代理として婚約の契約書にサインをした。我が家としても情勢が不安定になっているこのご時世に女一人で生きていくのは難しいと思ったようだ。
それに行き遅れの私と結婚したいと言ってくれる殿方はもう出てこないだろう。
私自身も彼のことを嫌いではないし、好きだとストレートに言葉をくれることが嬉しい。それを見越して母は婚約を決めたのだ。
母が帰国した後、王弟殿下と私の婚約発表が王城から大々的に宣伝された。すると、貴族達は挙って私が住む邸へ来ようとしていた。
元々この邸には最低限しか人がいなかったため、他の貴族達をもてなすような準備は出来ない。そして私を狙う人もいるようで陛下からすぐにクリフォード様の邸に花嫁修行として移り住むように言われた。安全面を考えると仕方がない。
そこからは駆け足のように毎日が過ぎていったわ。
「シャロア! ただいま。嬉しいよ。邸に帰ると愛する人が出迎えてくれるなんて夢のようだ」
「もうっ、クリフォード様。毎日お出迎えしているではありませんか」
「毎日、言葉に出てしまうほど嬉しいんだ。今日はどうだったかな?」
「今日は領地の勉強をしました。休憩時間は護衛騎士と共に剣の稽古をして、午後はマナーの勉強でした」
クリフォード様は私の腰を抱きサロンへと移動する。ここから夕食までの時間はこうして二人の時間を過ごす事が毎日の日課となっている。
「結婚式の日取りが決まったからすぐに君に知らせようと思って急いで帰ってきたんだ」
ここは普通の貴族と違うところよね。クリフォード様は王族籍なので私達の都合で結婚式するわけにはいかないのだ。
クリフォード様は私のことをとても大切にしてくれている。婚約者が彼で良かったと今は素直に思える。
過去の悲しい記憶を忘れている事も多くなった。
「本当ですか!? 私、嬉しいです」
「私も嬉しい。こうして君と結婚する日が決まったんだ。私がせっついたおかげで兄上からは籍だけはもう入れておいてもいいんじゃないかと言われたよ。シャロアのためにと」
私はその言葉を聞いて涙が出た。それに驚いたクリフォード様。
「駄目だった!? 無理はしなくていいんだよ??」
「いえ、嬉しくて。……私、二度も結婚が駄目になったんですよ? この先一人で生きていこうって思っていたんです。
好きになった人と無理やり引き離されてもう恋愛はしたくないって思っていたのです。でも、こうしてクリフォード様に出会い、婚約できた。
クリフォード様、お慕いしております。私を嫁に貰って下さいますか?」
クリフォード様は私にガバリと抱きついた。
「嬉しい! 嬉しいよ! シャロア。大好きだ! 愛している。すぐに結婚しよう。
私は君に出会うまで結婚したいと思ったことは無かった。
けれど、あの日、あの時、君に助けられた。私は君に恋に落ちてしまったんだ。
君の心に大切な人がいてもいい、それすらも全て受け入れられるほど君が好きで、愛おしくてたまらない」
その言葉を聞いてまた涙が出た。
そのままクリフォード様が用意していた婚姻届けを書いて城に提出し晴れて夫婦になった私達。
結婚式は半年後になっていた。
どうやら一年後に決まったのだが、クリフォード様が待ちきれないと最短の日程にしたようだ。
先に婚姻届けを出して夫婦なるように陛下に直談判したらしい。
何もない場合は結婚式の時に神父に立ち合ってもらいサインをして結婚したと証明するのだが、教会もクリフォード様はまた命を狙われても可笑しくない状況だという理由で先に婚姻届けを出しても問題はないと判断したみたい。(今、彼を狙う人はいないのだが)
「シャロア、新婚旅行は何処へ行こう?ミローナがいいかい? それとも他の国に滞在してみたい?」
「出来るのであれば、もう一度家族と会いたいです。結婚してしまえば家に帰ることはあまり出来ませんもの」
「いいよ。ならミローナでゆっくりと過ごそうか。あと、私が治めていた直轄地の街の領主になった。これからはレイル公爵と名乗ることになった」
「クリフォード様……。有難う」
私は胸が詰まった。もう生涯泣くことはないだろうという程の涙を流したのにまだ涙は枯れることを知らないみたい。
悲しみの涙ではなく、幸せだと感じることでこんなにも涙が溢れるなんて知らなかった。
結婚式当日、天気にも恵まれ、皆の前でクリフォード様と生涯共にすることを誓った。
純白のドレス。少し膨らんだお腹に手を当てた私。その上からそっと彼の手が包み込む。
私は幸せです。
【完】
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最後までお読みいただきありがとうございました⭐︎
今回は他者視点を極力減らす感じで書きました。塩梅は難しいですね。毎回勉強です。(*´ω`*)
この後、ラダンの話が続きます。
ラダンにとってはバッドエンド以外何者でもないので読みたい方だけお願いします。
もちろんそれだけではラダンが救われないのでifバージョンも書いております。(*´ω`*)
お読み頂ければ幸いです。
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