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38刑の執行 カインSide
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「さぁ、お前達はここへ並べ。魔力の無い者はこの馬車に乗り込むんだ」
そうして魔力のある者と無い者に分けられた罪人達。魔力のある者は一列に並び、フェルトと他の魔導士によって胸に結界と魔力を繋ぐ魔法陣を入れられていく。
「俺はっ、まだ死にたくないっ。助けてくれっ」
誰もが騒ぐが答える者はいない。
「カイン、俺を守れ。盾になるのだ」
「……父上」
父もファルム元子爵も騒ぐ一方で家族たちは黙ったまま抵抗一つしないでいた。筆頭魔導士のフェルト様が俺の前に立ち、胸に手を当てて呪文を唱えようとした時に違和感に気づいたようだ。
「クレア様か。陛下も甘いお方だ。陛下に感謝しろ」
胸元の魔法陣を見てそう言い残し、隣に移る。どういう事だろうか?だが、フェルト様が言っていた事がすぐに分かった。
俺達は地下室へと足を踏み入れる。
暗い地下室には少し前に刑を執行されたブラス・カミーロ一家がいた。彼等は反応が無い。
死んだように見えるが生きているのか?
父達が彼等を見て恐怖に慄いている。誰もが叫び、怯え、助けを請う。
何故だろう。
俺には不思議と恐怖心が芽生えて来なかった。
それよりも地下室に入ると同時に強い睡魔に襲われ、抗う事に必死だった。罪人達が椅子に括りつけられていく。
『良い夢を』誰かがそう耳元で囁いたような気がした。
そこから俺は深い眠りに付いたのか分からない。
だが不思議な感覚だった。
身体は地下室にあるのに結界と一体化しているような感覚。国中を見て回る。何処へでも飛んでいけるような感覚さえ覚える。ただ見るだけ。声を掛ける事も触ることも許されない。
だが、俺は見た。
畑が潤い、感謝している人。愛し合う二人を祝福する人々。物を盗む男。愚痴を言いながら客を取る娼婦。老人を助けている子供。怒りながらでも執務をしている夫人。遊び歩いている卿。色々なものを見た。世の中は何気ない事だらけだ。だけど、素晴らしい。
今までの自分はなんて小さな男だったのだろう。
もっとこうすれば良かった。ああ言えば良かった。と、後悔するが俺には何も出来ない。
何年もこうしてただ見守るだけの存在。
ふと城の中を歩いてみた。誰も俺には気づかない。忙しく仕事をしている人々。あぁ、この国はクレア様のおかげでこんなに平和なのだな。謁見の間で陳情を聞いているクレア様と目が合ったような気がした。
そう、気がしただけかもしれない。
だけれど、俺は嬉しくて仕方がなかった。ただ一人、気づいてくれたんだ俺を。そこからは嬉しくて国中を飛び回っていた。暫くして急に身体に引き戻されるような感覚になった。
「おい。起きろ」
誰かが俺を揺すり起こす。
「ここ、は?」
「お前、よく眠っていたな。ほらここから出ろ」
男はそう言った。ずっと動けずにいたから身体が思うようにいかない。男は『五年も寝ていれば無理はないか』と言って俺を担ぎ上げ、無言のまま俺を幌馬車に乗せ森の外れにある小さな家に連れてきた。
「カインは死んだ。お前は今日からここでテッポと名乗れ。分かったな?そこの爺さんがお前の身体が動くまで世話をしてくれるはずだ。これからは木こりのテッポだ。ではな!」
男は荷物を置いてさっさと出て行ってしまった。
それからは爺さんが山での暮らしを俺に教えながら俺の身体の自由が利くまで世話を続けてくれた。身体が動くようになってくると、爺さんは木の切り方を教えてくれる。
俺は助けられた命に感謝しながら木こりとして生きていく事を決めた。爺さんは何も知らないと教えてくれなかったが、多分、あの男はクレア陛下の影なのだろう。
そして置いていった荷物の中には木こりには多すぎる金貨が詰まった袋が入っていた。
あぁ、彼女は今頃何をしているのだろう。
俺は森の片隅で彼女の幸せを毎日祈るばかりだ。
そうして魔力のある者と無い者に分けられた罪人達。魔力のある者は一列に並び、フェルトと他の魔導士によって胸に結界と魔力を繋ぐ魔法陣を入れられていく。
「俺はっ、まだ死にたくないっ。助けてくれっ」
誰もが騒ぐが答える者はいない。
「カイン、俺を守れ。盾になるのだ」
「……父上」
父もファルム元子爵も騒ぐ一方で家族たちは黙ったまま抵抗一つしないでいた。筆頭魔導士のフェルト様が俺の前に立ち、胸に手を当てて呪文を唱えようとした時に違和感に気づいたようだ。
「クレア様か。陛下も甘いお方だ。陛下に感謝しろ」
胸元の魔法陣を見てそう言い残し、隣に移る。どういう事だろうか?だが、フェルト様が言っていた事がすぐに分かった。
俺達は地下室へと足を踏み入れる。
暗い地下室には少し前に刑を執行されたブラス・カミーロ一家がいた。彼等は反応が無い。
死んだように見えるが生きているのか?
父達が彼等を見て恐怖に慄いている。誰もが叫び、怯え、助けを請う。
何故だろう。
俺には不思議と恐怖心が芽生えて来なかった。
それよりも地下室に入ると同時に強い睡魔に襲われ、抗う事に必死だった。罪人達が椅子に括りつけられていく。
『良い夢を』誰かがそう耳元で囁いたような気がした。
そこから俺は深い眠りに付いたのか分からない。
だが不思議な感覚だった。
身体は地下室にあるのに結界と一体化しているような感覚。国中を見て回る。何処へでも飛んでいけるような感覚さえ覚える。ただ見るだけ。声を掛ける事も触ることも許されない。
だが、俺は見た。
畑が潤い、感謝している人。愛し合う二人を祝福する人々。物を盗む男。愚痴を言いながら客を取る娼婦。老人を助けている子供。怒りながらでも執務をしている夫人。遊び歩いている卿。色々なものを見た。世の中は何気ない事だらけだ。だけど、素晴らしい。
今までの自分はなんて小さな男だったのだろう。
もっとこうすれば良かった。ああ言えば良かった。と、後悔するが俺には何も出来ない。
何年もこうしてただ見守るだけの存在。
ふと城の中を歩いてみた。誰も俺には気づかない。忙しく仕事をしている人々。あぁ、この国はクレア様のおかげでこんなに平和なのだな。謁見の間で陳情を聞いているクレア様と目が合ったような気がした。
そう、気がしただけかもしれない。
だけれど、俺は嬉しくて仕方がなかった。ただ一人、気づいてくれたんだ俺を。そこからは嬉しくて国中を飛び回っていた。暫くして急に身体に引き戻されるような感覚になった。
「おい。起きろ」
誰かが俺を揺すり起こす。
「ここ、は?」
「お前、よく眠っていたな。ほらここから出ろ」
男はそう言った。ずっと動けずにいたから身体が思うようにいかない。男は『五年も寝ていれば無理はないか』と言って俺を担ぎ上げ、無言のまま俺を幌馬車に乗せ森の外れにある小さな家に連れてきた。
「カインは死んだ。お前は今日からここでテッポと名乗れ。分かったな?そこの爺さんがお前の身体が動くまで世話をしてくれるはずだ。これからは木こりのテッポだ。ではな!」
男は荷物を置いてさっさと出て行ってしまった。
それからは爺さんが山での暮らしを俺に教えながら俺の身体の自由が利くまで世話を続けてくれた。身体が動くようになってくると、爺さんは木の切り方を教えてくれる。
俺は助けられた命に感謝しながら木こりとして生きていく事を決めた。爺さんは何も知らないと教えてくれなかったが、多分、あの男はクレア陛下の影なのだろう。
そして置いていった荷物の中には木こりには多すぎる金貨が詰まった袋が入っていた。
あぁ、彼女は今頃何をしているのだろう。
俺は森の片隅で彼女の幸せを毎日祈るばかりだ。
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