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5母の面影
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父の親族は遠い所に住んでいるためどこか分からない。
どこに住んでいるのか話をしていたようだけれど、私が幼すぎて覚えていない。
不確かなのだが母達の話を思い出すと、昔、母はお嬢様のような暮らしをしていて旅をしていた父と知り合い恋に落ちて結婚したと言っていた。
今だから分かるけれど、きっとそこには身分差が存在していたのだと思う。
それでも父と母は仲が良くて、とても幸せな家庭だった。
祖母と会い、少し感傷的になってしまったわ。
私は考えを振り払うようにそのまま一直線に孤児院に走って戻った。
「ただいま戻りました」
「試験はどうだったかのぉ?」
神父様は優しく私を迎え入れてくれる。先ほどまでの不安は神父様の声でスッと解けて消えていく。
「持てる魔力と知識を全て使いました」
「ナーニョは回復魔法が得意なのかのぉ?」
「はい。試験官にも言われたのですが、攻撃の魔法より回復魔法の方が好きです」
「そうか、そうか。パロはお前さんの回復魔法を褒めていてな、もし国王軍の試験に落ちても教会で治癒師として働いてはどうかと話をしておったんだ」
「そうなんですね」
「ナーニョは古傷も治せるのであろう?」
「はい」
「回復は初期魔法でみんなが使える。だが、深い傷を治しきるのは相当な技量がなければ無理なのだ。どれ、試しにわしに掛けてみんかのぉ?」
「わかりました」
私は尻尾をフリフリさせながら笑顔で答えた。
神父様は私の様子を見てカカカッと笑っている。
まだ魔力は残っていたので神父様の言う通りに指輪をつけていつものように気軽な気持ちでヒエロスを唱える。
え!?
指輪から消費される魔力は大きく、魔力が放出される指が震えている。
集中しなければ傷の治りが浅くなる。もしかして神父様は自分が思っていたよりも多くの怪我を負っている?
神父様は笑顔で元気そうに見えるのに……。
私は驚きながら聞いてみた。
「し、神父様、どうしてこのような怪我を?」
「おぉ、これは凄いのぉ。教会の神官といい勝負じゃなかろうか」
どうやら私が試験を受けている間、神父様は街の外に出て魔物と戦っていたようだ。
私は魔物の討伐は国王軍がするものだと思っていたのだが、国王軍は魔物も討伐するが、異界の穴を見つけ、閉じる作業をするのがメインの仕事だそうだ。
そして教会は国王軍が討伐しきれなかった魔物を見つけ次第倒していく。
これは聖騎士が担っていると言っていたが、孤児院の神父様も戦っていたのは知らなかった。
「パロ神父も戦っているのでしょうか?」
「今はどうであろうのぉ。昔はワシと二人でそこら辺をうろつく魔物を退治していったがのぉ。それにアイツは魔法使いだったからのぉ」
だから私やローニャに魔法の勉強を教える事が出来たのかと納得する。
すっかり魔力が空になった私はシスターの用意してくれていた料理をぺろりと平らげてしまった。
「ねぇちゃん、よく食うな! すげぇ!」
「ふふっ、いっぱい魔法を使ったからね!」
「いっぱい使っても倒れないのか!?」
犬の耳と尻尾を持つ男の子が驚いたように聞いてきた。
最近まで知らなかったのだが、魔力が枯渇した場合、倒れる人がいるらしい。生命の危険があるのだとか。これは獣人の血が多いほどその傾向は高い。
「そうみたい。私は人間の血が濃いから倒れることはないの。だけど、魔力を使った分お腹が減るんだ」
「倒れないっていいな!」
「でもいつもお腹ぺこぺこだもん。お腹が減りすぎて倒れちゃうことはあるわ」
「食いしん坊姉ちゃんだ!」
「そうね」
私は他の孤児たちと笑い合う。
成長期に枯渇するまで魔法を使っていると魔力を貯める器が足りないと感じ大きくなるのだと神父は言っていた。
私はあの時から毎日枯渇するまで使っていたのでもしかしたら相当な魔力量なのかもしれない。
今日は色々あった。
疲れもあって食後はすぐにベッドで眠りについた。
翌朝早くに子供達が起こしにきた。どこの孤児院でも朝の掃除やお祈り、食事の準備などやることは同じで私はシスターと共に食事の手伝いをする。
ハナン村では私達姉妹だけだったが、ここ王都の孤児院は子供だけで三十人はいるようだ。
村の子供は魔物に親が殺されて行き場がなく教会に引き取られるのだが、王都の孤児院ではそればかりが理由ではないらしい。
どの子も素直で協力し合って生きているのには違いない。食事を終えて、街の清掃の時間になろうとした時、一台の家紋が描かれてある馬車が孤児院の前に到着した。
「ナーニョ・スロフはいるだろうか?」
先に外に出ていた子供達はナーニョを大声で呼ぶ。ナーニョが外に出てくると、そこには執事服を着た狐獣人の男が立っていた。
「……わ、私ですが」
私が恐る恐る声を出すと、執事服を着た人は馬車に戻り、エスコートするように馬車の中から人が出てきた。祖母だ。
「少し話をいいかしら?」
「はい」
私はきゅっと尻尾に力が入り、緊張で身体が硬張る。
祖母は何をいうのだろう。
私に迷惑だ、田舎に帰れというのだろうか。
不安と恐怖で涙が出そうになるのを我慢する。
「立ち話もなんですので、こちらの談話室へどうぞ」
シスターが談話室に案内し祖母と二人で話す事になった。もちろん祖母の後ろには執事や護衛がいる。
先ほどまで厳しい表情をしていた祖母は一気に悲しそうな顔になったと思ったらギュッと私を抱きしめた。
!?
私は驚きのあまり動けずにいた。
「奥様、お嬢様が驚いておられます」
「そうね」
祖母はそう言うと、私を放し、隣同士に座った。祖母は私の手をつなぎ、離す気はないようだ。
私は驚きながらも震えるその手の温かさを感じて涙が出そうになった。
「突然来てしまってごめんなさいね。どうしても会いたくなって。ナーニョは今までどのような暮らしをしていたの?」
私はハナン村の暮らしを話した。どうやら祖母は私の下に妹がいる事も知らなかったようだ。
祖母の話では祖父と伯父さんが母と父の結婚を大反対していたが、母は既に私を身ごもっていたらしい。
祖母が仕事で王都を離れている間に母は家から追い出されたのだとか。
帰宅してからその事を知り、探したけれど見つからなかったのだと言っていた。
そして昨日、ユキヒョウの獣人が『魔法使いの試験を受けたい』と希望した子を追い払おうとしたところ、自分の名を出した子がいると聞いてすぐに見に行く事にしたようだ。
祖母曰く、娘に似た子が目の前に現れて驚いた。
サーシャによく似た女の子。あの子はこんなに可愛い子供を産んでいたと知った。
そして孫は自分を上回るかもしれない魔法使いの才能だということに驚愕したこと。
それと同時にサーシャを追い出した兄であるシュロに対する怒り。
試験の後、すぐに家に戻り、伯父であるシュロさんを叱ったのだと言っていた。
祖父は数年前に他界しているようだ。
どこに住んでいるのか話をしていたようだけれど、私が幼すぎて覚えていない。
不確かなのだが母達の話を思い出すと、昔、母はお嬢様のような暮らしをしていて旅をしていた父と知り合い恋に落ちて結婚したと言っていた。
今だから分かるけれど、きっとそこには身分差が存在していたのだと思う。
それでも父と母は仲が良くて、とても幸せな家庭だった。
祖母と会い、少し感傷的になってしまったわ。
私は考えを振り払うようにそのまま一直線に孤児院に走って戻った。
「ただいま戻りました」
「試験はどうだったかのぉ?」
神父様は優しく私を迎え入れてくれる。先ほどまでの不安は神父様の声でスッと解けて消えていく。
「持てる魔力と知識を全て使いました」
「ナーニョは回復魔法が得意なのかのぉ?」
「はい。試験官にも言われたのですが、攻撃の魔法より回復魔法の方が好きです」
「そうか、そうか。パロはお前さんの回復魔法を褒めていてな、もし国王軍の試験に落ちても教会で治癒師として働いてはどうかと話をしておったんだ」
「そうなんですね」
「ナーニョは古傷も治せるのであろう?」
「はい」
「回復は初期魔法でみんなが使える。だが、深い傷を治しきるのは相当な技量がなければ無理なのだ。どれ、試しにわしに掛けてみんかのぉ?」
「わかりました」
私は尻尾をフリフリさせながら笑顔で答えた。
神父様は私の様子を見てカカカッと笑っている。
まだ魔力は残っていたので神父様の言う通りに指輪をつけていつものように気軽な気持ちでヒエロスを唱える。
え!?
指輪から消費される魔力は大きく、魔力が放出される指が震えている。
集中しなければ傷の治りが浅くなる。もしかして神父様は自分が思っていたよりも多くの怪我を負っている?
神父様は笑顔で元気そうに見えるのに……。
私は驚きながら聞いてみた。
「し、神父様、どうしてこのような怪我を?」
「おぉ、これは凄いのぉ。教会の神官といい勝負じゃなかろうか」
どうやら私が試験を受けている間、神父様は街の外に出て魔物と戦っていたようだ。
私は魔物の討伐は国王軍がするものだと思っていたのだが、国王軍は魔物も討伐するが、異界の穴を見つけ、閉じる作業をするのがメインの仕事だそうだ。
そして教会は国王軍が討伐しきれなかった魔物を見つけ次第倒していく。
これは聖騎士が担っていると言っていたが、孤児院の神父様も戦っていたのは知らなかった。
「パロ神父も戦っているのでしょうか?」
「今はどうであろうのぉ。昔はワシと二人でそこら辺をうろつく魔物を退治していったがのぉ。それにアイツは魔法使いだったからのぉ」
だから私やローニャに魔法の勉強を教える事が出来たのかと納得する。
すっかり魔力が空になった私はシスターの用意してくれていた料理をぺろりと平らげてしまった。
「ねぇちゃん、よく食うな! すげぇ!」
「ふふっ、いっぱい魔法を使ったからね!」
「いっぱい使っても倒れないのか!?」
犬の耳と尻尾を持つ男の子が驚いたように聞いてきた。
最近まで知らなかったのだが、魔力が枯渇した場合、倒れる人がいるらしい。生命の危険があるのだとか。これは獣人の血が多いほどその傾向は高い。
「そうみたい。私は人間の血が濃いから倒れることはないの。だけど、魔力を使った分お腹が減るんだ」
「倒れないっていいな!」
「でもいつもお腹ぺこぺこだもん。お腹が減りすぎて倒れちゃうことはあるわ」
「食いしん坊姉ちゃんだ!」
「そうね」
私は他の孤児たちと笑い合う。
成長期に枯渇するまで魔法を使っていると魔力を貯める器が足りないと感じ大きくなるのだと神父は言っていた。
私はあの時から毎日枯渇するまで使っていたのでもしかしたら相当な魔力量なのかもしれない。
今日は色々あった。
疲れもあって食後はすぐにベッドで眠りについた。
翌朝早くに子供達が起こしにきた。どこの孤児院でも朝の掃除やお祈り、食事の準備などやることは同じで私はシスターと共に食事の手伝いをする。
ハナン村では私達姉妹だけだったが、ここ王都の孤児院は子供だけで三十人はいるようだ。
村の子供は魔物に親が殺されて行き場がなく教会に引き取られるのだが、王都の孤児院ではそればかりが理由ではないらしい。
どの子も素直で協力し合って生きているのには違いない。食事を終えて、街の清掃の時間になろうとした時、一台の家紋が描かれてある馬車が孤児院の前に到着した。
「ナーニョ・スロフはいるだろうか?」
先に外に出ていた子供達はナーニョを大声で呼ぶ。ナーニョが外に出てくると、そこには執事服を着た狐獣人の男が立っていた。
「……わ、私ですが」
私が恐る恐る声を出すと、執事服を着た人は馬車に戻り、エスコートするように馬車の中から人が出てきた。祖母だ。
「少し話をいいかしら?」
「はい」
私はきゅっと尻尾に力が入り、緊張で身体が硬張る。
祖母は何をいうのだろう。
私に迷惑だ、田舎に帰れというのだろうか。
不安と恐怖で涙が出そうになるのを我慢する。
「立ち話もなんですので、こちらの談話室へどうぞ」
シスターが談話室に案内し祖母と二人で話す事になった。もちろん祖母の後ろには執事や護衛がいる。
先ほどまで厳しい表情をしていた祖母は一気に悲しそうな顔になったと思ったらギュッと私を抱きしめた。
!?
私は驚きのあまり動けずにいた。
「奥様、お嬢様が驚いておられます」
「そうね」
祖母はそう言うと、私を放し、隣同士に座った。祖母は私の手をつなぎ、離す気はないようだ。
私は驚きながらも震えるその手の温かさを感じて涙が出そうになった。
「突然来てしまってごめんなさいね。どうしても会いたくなって。ナーニョは今までどのような暮らしをしていたの?」
私はハナン村の暮らしを話した。どうやら祖母は私の下に妹がいる事も知らなかったようだ。
祖母の話では祖父と伯父さんが母と父の結婚を大反対していたが、母は既に私を身ごもっていたらしい。
祖母が仕事で王都を離れている間に母は家から追い出されたのだとか。
帰宅してからその事を知り、探したけれど見つからなかったのだと言っていた。
そして昨日、ユキヒョウの獣人が『魔法使いの試験を受けたい』と希望した子を追い払おうとしたところ、自分の名を出した子がいると聞いてすぐに見に行く事にしたようだ。
祖母曰く、娘に似た子が目の前に現れて驚いた。
サーシャによく似た女の子。あの子はこんなに可愛い子供を産んでいたと知った。
そして孫は自分を上回るかもしれない魔法使いの才能だということに驚愕したこと。
それと同時にサーシャを追い出した兄であるシュロに対する怒り。
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