まさか猫種の私が聖女なんですか?

まるねこ

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24 お腹ぺこぺこ

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「エリオット、ローニャ様は大丈夫か? 怖がっていなかったか?」
「ザイオン先生!! ローニャさんはとても素晴らしい治療者です。僕は感動しました」

 エリオットさんは目を輝かせながら部屋に入ってきた私たちに駆け寄ってきた。

 ローニャはというと、怪我人と話をしている。ローニャが治療したのは五人程で骨折や裂傷があったようだ。

「ローニャちゃん、可愛いね! こんなに小さくて可愛い子に癒してもらえるなんて俺、幸せ!」
「もうっ! 次は怪我しないようにしてね。私、心配で眠れなくなっちゃう」
「分かったよ! 俺もローニャちゃんのために怪我しないように頑張るからね~♪」

 医務室はカラカラと笑いに包まれていた。

「ローニャ、大丈夫だった?」

 私は心配になり、声を掛けた。

「お姉ちゃん、お帰りなさい。大丈夫だよ! みんな私の事を心配して怪我を見せないようにしてくれたの。ちょっと怖かったけど、怪我は治るんだから大丈夫。それよりも、お腹が減った~。いっぱい頑張ったんだ。五人も治したんだよ!」
「大丈夫。ちゃんと食べる物を準備してもらっているわ」

 私がそう言うと、マルカスさんが小さなロティをローニャに渡した。

「どうぞ、お食べ下さい」
「マルカスさん、ありがとう!!」

 ローニャがもぐもぐとロティを口いっぱいに頬張っているとザイオン医務官が話し掛けてきた。

「魔法を使うとお腹が減るのでしょうか?」
「これは人によると思いますが、私たちの身体は魔力が減ると食事で賄おうとするみたいです。魔力が減ると貧血のようになり、倒れてしまう人もいるようです」

「魔力が底を突くとどうなるのですか?」
「貧血のように倒れる人達はそのまま亡くなる人もいると聞きました。私たちは底を突いても空腹で倒れるくらいですね。獣人でも亡くなる人もいるため、あまり空になるまで魔力を使う人は少ないと思います。私たちは別ですが」
「……別なのですか?」

「私たちはただお腹が減るだけなのでそこまで問題はないです。それに獣人は幼い頃から魔力を空になるまで使い続ければ成人になるまでに使用できる魔力の量が格段に上がるんです。

 私は魔物に殺された人達を見た時から妹を守るために強くなろうと毎日魔力を空にしてきました。

 そんな私を側で見てきたローニャも私を真似して同じことを繰り返しています。そのため二人のご飯はいつも大盛なのです」

「なるほど。ではこちらでも間食ができるように何か用意しておくことにしましょう」
「そうしてもらえると助かります」

 マルカスさんからロティをもらい、口にする。

 治療を終えた騎士達は上機嫌で治療室を後にした。

「ナーニョ様、ローニャ様、明日からは治療する騎士達が増えるが大丈夫でしょうか? 一日に何人くらい治療できるのですか?」
「私は大丈夫だよー。ザイオン先生、何人治療すればいいかはやったことがないけど、一生懸命頑張るね!」

 ローニャは笑顔でザイオン医務官にそう告げた。ローニャの笑顔につられたようにザイオン医務官も笑みを浮かべた。

「ザイオン先生、ローニャもそうですが、私もこれだけの人数を回復させたことはないので何人、ということは難しいです。今日治療したような重症の人であれば魔力を多く使うため、大人数は難しいと思います。軽傷であれば多数の方は治療出来ると思います」

「そうか、こればかりは治療をしながら確認するしかないですね。ナーニョ様もローニャ様も疲れたらすぐに仰ってください」
「わかりました」

 今日は初めての治療という事もあってそれ以上は治療せず、ザイオン医務官達と雑談をして時間を過ごすことになった。

 私たちはこの時ようやく帽子を取り、彼らに耳を見せた。

「異次元の空間から来た獣人と聞いていたのだが、改めてその耳を見ると、信じられない。だがこれが現実なのでしょう」

 そして研究所に話をしていた指輪の話になった。

 指輪の種類により範囲回復魔法がある事を知ったザイオン医務官はすぐに研究所に作成を依頼すると言っていた。

 私は魔法使いの試験で一度指輪を使っているのでどのような指輪なのかは知っている。

 範囲魔法のヒエストロはヒエロスほど個人に時間を掛けることが出来ないため、細かな回復は難しい。

「えっとね、ヒエロスは怪我をぜーんぶ治しちゃうんだよ。ヒエストロはたくさんの人を回復するけど半分も回復できないんだ」

 ローニャの言葉にザイオン医務官はなるほど、と理解した様子だ。

 範囲魔法は治療の効果は低いけれど、大人数をこまめに出来るとしたら生き残る可能性はグンと上がることは間違いないだろう。

「ナーニョ嬢、ローニャ嬢、迎えにきた」
「エサイアス様、お仕事はもう大丈夫なのですか?」
「ああ、君達を守る事が最重要事項だ。さぁ、邸に帰ろう」

 私たちはザイオン医務官達に挨拶をした後、馬車に乗り込み、帰宅の途に着いた。

 今日の夕食は動物の乳から出来たような物と何か野菜が混ぜられたペースト状のものと豆を煮たものと木の実があり、薄いロティに乗せて食べる物のようだ。

 どれも素朴な味わいで私もローニャもぺろりと食べた。

「おかわりはいかがかな? 今日はマーサの手料理なんだ。気に入ったかい?」
「そうなのですね。とっても美味しいです。マーサさんにお礼を言わないといけないですね」
「後で私からも言っておこう。今日は初めて医務室へ行ったけれど、ザイオン医務官は怖くなかったかな?」

「最初会った時は怖かったけど、お姉ちゃんが怪我人を治療するのを見てからザイオン先生は優しくなってたよ。それに私が治した人達も私の事をとーっても心配してくれていたの。こんなに小さい子がって。私もうすぐ十二歳だからお姉ちゃん位に大きくなるのにね」

「獣人の成長の仕方を知らない人は仕方がないと思うわ。五、六歳位に見えても仕方がないもの。ザイオン先生は最初私たちの事を疑っていたみたいですね。ですが怪我人が治っていくのを目の当たりにして考えが変わったのかもしれません」

「そうか。最初は誰だって信じられない。でもこの奇跡を目の当たりにしてナーニョ嬢達を否定する人はいないだろうな。残念ながら怪我をしている騎士はたくさんいる。明日からの治療は大変だと思うけれど、無理はしないように」
「うん。お姉ちゃんと頑張る!」

 私はローニャの言葉に無理をさせたのではないかと少し不安になった。

 ローニャは私と違ってとっても頑張り屋さんだから無意識に頑張りすぎてしまうのではないかと思う。

 もっと私が気を付けないと。

 そこからはエサイアス様と雑談をしながらマーサさんの手料理をたくさん食べた。
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