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33 魔力のある人間
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「ナーニョ!? 今、なんと言ったのだ?? グリークス神官長に魔力が、ある、のか……?」
「? えぇ。少しではありますがグリークス神官長には魔力が存在します」
私は陛下真剣な表情で詰め寄るように問われたので怖くなり、慌ててエサイアス様の後ろに隠れながら答えた。
何か不味い事を言ったのだろうか?
グリークス神官長は手を眺めた後、身体を動かして確認している。
「素晴らしい!! 長年の痛みや傷が治っている! 奇跡だ! 聖女ナーニョ様、感謝します。最初は疑っていましたが、傷が治るのをこの身をもって実感しました。疑いようがありません。
私は今でこそ神官長として王都の教会に在中しておりますが、神官長になる前は聖騎士として若いころから魔獣と対峙しておりました。
ここ数年、古傷が痛み、日によっては歩く事さえままならなくて今は週一度の礼拝の時間だけ皆に顔を見せるだけだったのです。
……それと、お聞きしたいのですが、私に魔力があるというのは本当なのでしょうか!!?」
神官長の漲る声に私もローニャも驚き、更に縮こまってエサイアス様の後ろで震えた。
「こらっ、神官長。少し落ち着け。二人とも怖がっておるではないか。子猫を虐めてどうするのだ」
陛下が諫めると、神官長はハッとなり、杖を拾い上げてコホンと咳払いをした後、先ほどのように穏やかな声に戻った。
私はエサイアス様の後ろで彼らの顔を覗くと、誰もがこちらに視線を向けている。
彼が魔法を持っていることを詳しく聞きたいようだ。
エサイアス様は震える私の頭を撫でて大丈夫だと声を掛けた。
私は意を決してエサイアス様の後ろからひょっこりと顔を出して答える。
「え、えっと。し、神官長は無意識にま、魔力を使っていたのだと思います。た、例えば、ひ、人より重い武器を使えたり、剣などで攻撃した時、ほ、他の人よりダメージが大きかったり、するのでは、なかったでしょうか」
私の言葉に思い当たる節があったようだ。
「グリークス神官長、どうだ?心当たりがあるのか?」
「ええ。ナーニョ様の仰った言葉に身に覚えがあります。私の武器は大斧。他の者達は重くて上手く扱えない代物なのです。
確かに重いのですが、戦う時に重さを感じず戦えていたのはそのおかげだったのですね。魔力があるのならナーニョ様達のように私も他の人たちを治療する事ができるのでしょうか?」
「で、できる、かも、しれません。ただ、し、身体強化に魔力を、つ、使う人は外へ魔力を出す時に、ち、調整が難しくて苦手な、人が多かったように、お、思います」
ガクブルと震える私とは反対に感動すらしている様子のグリークス神官長の姿がそこにはあった。
「どうだ? 儂が言っていたのは嘘ではなかっただろう?」
「陛下、疑って申し訳ありませんでした。ではこのまま彼女達を教会にお迎えして聖女として生活してもらうのが良いと思いますが」
「それは駄目だ、駄目だ。魔法が使える人間が我々の世界にもいることが判明したのだ。ここから魔法の研究や異次元の空間の閉じ方も研究が進んでいくのに彼女達無しでは成り立たんのだ」
「ですが、このまま彼女達を隠し、城だけに留まることは難しいのではないでしょうか?」
「そうだな。ナーニョもローニャも未成年だ。それにローニャはまだこの通りの幼さ。世界を救う鍵となる二人を今無理して働かせるのは許可出来ぬ」
「ですが、日々魔物の脅威と戦い彼女達を望む人々を無下にも出来ない状況なのは陛下もご承知でしょう。我らには必要なのです」
私たちを置いて勝手に話を進めている神官長に少し嫌悪感を覚える。
私たちはエサイアス様の邸でお世話になっているし、この世界に住むから今の研究にも怪我人の魔法使用も協力しているが、妹と一緒に毎日人々を癒して回るのも違うような気がする。
私は妹を守るために魔法使いになることを選ぼうとした道だ。
あちらの世界で育ててくれた神父様達には申し訳ないけれど、別に人に奉仕する事を選びたいと思った事はない。
このまま黙っていればきっと良いように使われるのではないのだろうか。
不安になる。
ローニャを無理やり働かせるわけにはいかない。
魔獣に蹂躙された後のあの光景を見せたくない。
私の守るべきは妹。
私はぐっと手に力を入れて口を開いた。
「あ、あのっ!」
私の言葉に二人の会話が止まる。
「ナーニョ、どうかしたのか?」
「わ、私は今、エサイアス様の邸でお世話になっています。冷たいように聞こえるかもしれませんが、私はローニャの『みんなに協力したい』と願う気持ちを尊重して協力しているだけです。
人々のために働きたい、癒したいという崇高な考えはないです。聖女というものになる気はないし、人々を癒して回りたいとも思っていません。私はただ一人の家族であるローニャを思って動いているだけです」
この言葉を聞いた後、二人ともピタリと止まった後、神官長はワナワナと震え、訴える。
「ナーニョ様、どうしてですか!? この力で皆を救えるというのに。何故力を示そうとしないのですか!?」
グリークス神官長はまさかと言わんばかりの表情で私に聞いてきた。
「私たちは幼い頃、私たちの住む村は魔物により壊滅しました。生き残ったのは私たちだけ。
幼い妹はあまり覚えていないのですが、私は国王軍の方達と両親を含め村人の生死確認をしました。
建物がことごとく破壊され、血しぶきが飛んでいる壁、血だまりになった道、手足の無い遺体が集められた広場、あの惨状を目の当たりにして苦しかった。
自分のような子供達が一人でも減ればいいとは思います。だからこうして研究所の研究にも協力をしています。
ですが、私の一番に優先すべきはただ一人の家族である妹です。妹のために動いているだけです。妹にあの惨状を思い出させるような真似はさせたくないのです」
私は自分達が置かれていた状況を話した。
陛下や宰相は単に妹思いで怪我が酷い様子を見せたくないだけなのだと思っていたのかもしれない。
「? えぇ。少しではありますがグリークス神官長には魔力が存在します」
私は陛下真剣な表情で詰め寄るように問われたので怖くなり、慌ててエサイアス様の後ろに隠れながら答えた。
何か不味い事を言ったのだろうか?
グリークス神官長は手を眺めた後、身体を動かして確認している。
「素晴らしい!! 長年の痛みや傷が治っている! 奇跡だ! 聖女ナーニョ様、感謝します。最初は疑っていましたが、傷が治るのをこの身をもって実感しました。疑いようがありません。
私は今でこそ神官長として王都の教会に在中しておりますが、神官長になる前は聖騎士として若いころから魔獣と対峙しておりました。
ここ数年、古傷が痛み、日によっては歩く事さえままならなくて今は週一度の礼拝の時間だけ皆に顔を見せるだけだったのです。
……それと、お聞きしたいのですが、私に魔力があるというのは本当なのでしょうか!!?」
神官長の漲る声に私もローニャも驚き、更に縮こまってエサイアス様の後ろで震えた。
「こらっ、神官長。少し落ち着け。二人とも怖がっておるではないか。子猫を虐めてどうするのだ」
陛下が諫めると、神官長はハッとなり、杖を拾い上げてコホンと咳払いをした後、先ほどのように穏やかな声に戻った。
私はエサイアス様の後ろで彼らの顔を覗くと、誰もがこちらに視線を向けている。
彼が魔法を持っていることを詳しく聞きたいようだ。
エサイアス様は震える私の頭を撫でて大丈夫だと声を掛けた。
私は意を決してエサイアス様の後ろからひょっこりと顔を出して答える。
「え、えっと。し、神官長は無意識にま、魔力を使っていたのだと思います。た、例えば、ひ、人より重い武器を使えたり、剣などで攻撃した時、ほ、他の人よりダメージが大きかったり、するのでは、なかったでしょうか」
私の言葉に思い当たる節があったようだ。
「グリークス神官長、どうだ?心当たりがあるのか?」
「ええ。ナーニョ様の仰った言葉に身に覚えがあります。私の武器は大斧。他の者達は重くて上手く扱えない代物なのです。
確かに重いのですが、戦う時に重さを感じず戦えていたのはそのおかげだったのですね。魔力があるのならナーニョ様達のように私も他の人たちを治療する事ができるのでしょうか?」
「で、できる、かも、しれません。ただ、し、身体強化に魔力を、つ、使う人は外へ魔力を出す時に、ち、調整が難しくて苦手な、人が多かったように、お、思います」
ガクブルと震える私とは反対に感動すらしている様子のグリークス神官長の姿がそこにはあった。
「どうだ? 儂が言っていたのは嘘ではなかっただろう?」
「陛下、疑って申し訳ありませんでした。ではこのまま彼女達を教会にお迎えして聖女として生活してもらうのが良いと思いますが」
「それは駄目だ、駄目だ。魔法が使える人間が我々の世界にもいることが判明したのだ。ここから魔法の研究や異次元の空間の閉じ方も研究が進んでいくのに彼女達無しでは成り立たんのだ」
「ですが、このまま彼女達を隠し、城だけに留まることは難しいのではないでしょうか?」
「そうだな。ナーニョもローニャも未成年だ。それにローニャはまだこの通りの幼さ。世界を救う鍵となる二人を今無理して働かせるのは許可出来ぬ」
「ですが、日々魔物の脅威と戦い彼女達を望む人々を無下にも出来ない状況なのは陛下もご承知でしょう。我らには必要なのです」
私たちを置いて勝手に話を進めている神官長に少し嫌悪感を覚える。
私たちはエサイアス様の邸でお世話になっているし、この世界に住むから今の研究にも怪我人の魔法使用も協力しているが、妹と一緒に毎日人々を癒して回るのも違うような気がする。
私は妹を守るために魔法使いになることを選ぼうとした道だ。
あちらの世界で育ててくれた神父様達には申し訳ないけれど、別に人に奉仕する事を選びたいと思った事はない。
このまま黙っていればきっと良いように使われるのではないのだろうか。
不安になる。
ローニャを無理やり働かせるわけにはいかない。
魔獣に蹂躙された後のあの光景を見せたくない。
私の守るべきは妹。
私はぐっと手に力を入れて口を開いた。
「あ、あのっ!」
私の言葉に二人の会話が止まる。
「ナーニョ、どうかしたのか?」
「わ、私は今、エサイアス様の邸でお世話になっています。冷たいように聞こえるかもしれませんが、私はローニャの『みんなに協力したい』と願う気持ちを尊重して協力しているだけです。
人々のために働きたい、癒したいという崇高な考えはないです。聖女というものになる気はないし、人々を癒して回りたいとも思っていません。私はただ一人の家族であるローニャを思って動いているだけです」
この言葉を聞いた後、二人ともピタリと止まった後、神官長はワナワナと震え、訴える。
「ナーニョ様、どうしてですか!? この力で皆を救えるというのに。何故力を示そうとしないのですか!?」
グリークス神官長はまさかと言わんばかりの表情で私に聞いてきた。
「私たちは幼い頃、私たちの住む村は魔物により壊滅しました。生き残ったのは私たちだけ。
幼い妹はあまり覚えていないのですが、私は国王軍の方達と両親を含め村人の生死確認をしました。
建物がことごとく破壊され、血しぶきが飛んでいる壁、血だまりになった道、手足の無い遺体が集められた広場、あの惨状を目の当たりにして苦しかった。
自分のような子供達が一人でも減ればいいとは思います。だからこうして研究所の研究にも協力をしています。
ですが、私の一番に優先すべきはただ一人の家族である妹です。妹のために動いているだけです。妹にあの惨状を思い出させるような真似はさせたくないのです」
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