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51 ナーニョの悩み
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「……ふむ。この武器では瞬発力は出ないか。では次を」
この日、私は一人で騎士団に第三研究室の研究員とともに来ていた。
第三研究室は騎士の強化を専門に研究をしている。私も協力という形でたまに第三研究室にも足を運んでいるのだ。
「ナーニョ、どうしたんだ? 最近どことなく元気がないな」
騎士の強化に立ち会っていたケイルート兄様が私を心配して声を掛けてきた。
「兄様……。ごめんなさい。元気がないように見えましたか? 私は元気ですよ」
ケイルート兄様はわざとらしく溜息をつき、手招きした。
「元気なわけがないだろう。まぁ、こんなところでは話すこともできないな。ちょうどきりもいい。このまま私室へ来い。美味い茶と美味しい菓子でも食べれば元気も出るだろう。あぁ、お前達は付いてくるな。あくまで兄妹の話だからな!」
私は第一騎士団の執務室の隣にある私室に兄様と入り、護衛は部屋の外で待機することになった。
「まぁ、最低限の物しか置いていないがそこに座ってくれ」
私室は兄様の趣味の部屋なのだろう。壁一面に剣や盾がところ狭しと飾られている。
家具などはソファと小さな丸テーブルなど最低限のものが置かれているだけだった。
兄様の従者がお茶を淹れてくれる。私はその香り豊かなお茶に心が満たされていると、兄様が口を開いた。
「で、何がそんなにお前を不安にさせているんだ?」
「不安……ですか?……」
私は言葉に詰まってしまった。
どう答えて良いのか分からない。
自分自身で答えが出せていないのだ。
「何でもいいから話してみろ」
ケイルート兄様は心配しながら私の隣にドスンと座った。
口を開きかけて、止まり、言葉にできない。しばらく沈黙が続いた後、ようやく私は口をひらいた。
「……よく、わからないのです」
「何が分からないんだ?」
「……先日、指輪のお披露目会の時にローニャは将来魔法の研究員になりたいとお父様たちに言っていました」
「ああ」
「そして私にもお父様はなりたいものがあるのかと言ったんです」
「そうだな」
「でも、答えられなかった。分からないんです。私は今まで必死で生きてきた。妹と暮らすために魔法使いになろうと頑張って勉強していたんです」
「ああ」
「けれど、異界の穴に落ちて、世界が変わり、生活や食べ物も全て変わった。ローニャは必死で自分の居場所を作ろうと頑張っている。ローニャなら魔法の研究員になれるだけの魔力も技術もある。ローニャが成長していく中で私はどうなんだろうって……」
過去の出来事を思い出し、抑えていた気持ちが抑えられなくなり、涙を滲ませる。
「ローニャを姉の私が守らなきゃって必死になってきたの。でも、ローニャはもうすぐ大人になって自分の意思で動こうとしている。
そこに私は必要ないんじゃないかなって。
嬉しいことなの。でも、寂しい気持ちもある。今までローニャのためにって動いていたことが無くなったら……。
これから私は何のために生きていけばいいのかなって。ローニャはとても人懐っこくて誰からも愛されてて、私からみても上手く立ちまわっていて私より何倍も大人だなって思わせられる。
凄く賢いし、気配りも出来ていて誰よりも周りを見ているの。
そんなローニャが羨ましくもあって、私が守っているつもりでも実は私が守られているのだと思う。色んな気持ちが混ざりあってどうしていいか分からないの。
だって今まで生きるために必死になってきたから。私はお姉ちゃんで。妹のためだけにって考えて過ごしていたから。
やりたい事なんて考えた事も無かった。……好きな事、嫌いな事もないの」
「……そうか。ナーニョは頑張ってきたんだな。人生を変えるほどの出来ことがあったんだ。仕方がないことだ。ナーニョは何も可笑しくない。
俺だってこうして騎士団長をしているが、今まで兄がやっていた事だ。だが、三男の俺が今こうして騎士団長になっている。
人生どうなるかなんて分からないもんだ。ただ、俺はナーニョがこの世界に来た事を喜んでいる。こんなに可愛い妹が出来たんだ。
妹が聖女だと崇められようが俺にとっては守るべき妹だ。無理にやりたいことなんて考えなくてもいい。
ただ何もせず自堕落に生きたっていいんだぞ? 王女ってもんは好き勝手わがままに生きているもんなんだからな」
ケイルート兄様はハハッと笑いながら菓子を口に放り込んだ。
私は、その言葉に、涙が溢れ出た。今までそんな事を言ってくれる家族は居なかった。
あぁ、私は辛かったのかもしれない。
苦しかったんだ。
一生懸命我慢していたんだ。
ケイルート兄様の優しい言葉に今までぐっと我慢してきた心が震える。
「!? ナーニョ、どこか痛いのか?」
それらしく話していた兄様が驚き、斜め上の気遣いをしてくれたことに泣きながらクスリと笑ってしまった。
「兄様、どこも痛くないです。兄様の言葉が嬉しい。ケイルート様が私の兄様になってくれて本当に良かった」
「俺もナーニョが妹になってくれて嬉しい。あまり無理はするな。我慢もするな。吐き出したくなったらいつでも聞いてやる」
「……はい。兄様」
私は涙が乾くまでの間、兄様とお菓子を摘まみながら王宮の話をしていると、ノックの音がした。
この日、私は一人で騎士団に第三研究室の研究員とともに来ていた。
第三研究室は騎士の強化を専門に研究をしている。私も協力という形でたまに第三研究室にも足を運んでいるのだ。
「ナーニョ、どうしたんだ? 最近どことなく元気がないな」
騎士の強化に立ち会っていたケイルート兄様が私を心配して声を掛けてきた。
「兄様……。ごめんなさい。元気がないように見えましたか? 私は元気ですよ」
ケイルート兄様はわざとらしく溜息をつき、手招きした。
「元気なわけがないだろう。まぁ、こんなところでは話すこともできないな。ちょうどきりもいい。このまま私室へ来い。美味い茶と美味しい菓子でも食べれば元気も出るだろう。あぁ、お前達は付いてくるな。あくまで兄妹の話だからな!」
私は第一騎士団の執務室の隣にある私室に兄様と入り、護衛は部屋の外で待機することになった。
「まぁ、最低限の物しか置いていないがそこに座ってくれ」
私室は兄様の趣味の部屋なのだろう。壁一面に剣や盾がところ狭しと飾られている。
家具などはソファと小さな丸テーブルなど最低限のものが置かれているだけだった。
兄様の従者がお茶を淹れてくれる。私はその香り豊かなお茶に心が満たされていると、兄様が口を開いた。
「で、何がそんなにお前を不安にさせているんだ?」
「不安……ですか?……」
私は言葉に詰まってしまった。
どう答えて良いのか分からない。
自分自身で答えが出せていないのだ。
「何でもいいから話してみろ」
ケイルート兄様は心配しながら私の隣にドスンと座った。
口を開きかけて、止まり、言葉にできない。しばらく沈黙が続いた後、ようやく私は口をひらいた。
「……よく、わからないのです」
「何が分からないんだ?」
「……先日、指輪のお披露目会の時にローニャは将来魔法の研究員になりたいとお父様たちに言っていました」
「ああ」
「そして私にもお父様はなりたいものがあるのかと言ったんです」
「そうだな」
「でも、答えられなかった。分からないんです。私は今まで必死で生きてきた。妹と暮らすために魔法使いになろうと頑張って勉強していたんです」
「ああ」
「けれど、異界の穴に落ちて、世界が変わり、生活や食べ物も全て変わった。ローニャは必死で自分の居場所を作ろうと頑張っている。ローニャなら魔法の研究員になれるだけの魔力も技術もある。ローニャが成長していく中で私はどうなんだろうって……」
過去の出来事を思い出し、抑えていた気持ちが抑えられなくなり、涙を滲ませる。
「ローニャを姉の私が守らなきゃって必死になってきたの。でも、ローニャはもうすぐ大人になって自分の意思で動こうとしている。
そこに私は必要ないんじゃないかなって。
嬉しいことなの。でも、寂しい気持ちもある。今までローニャのためにって動いていたことが無くなったら……。
これから私は何のために生きていけばいいのかなって。ローニャはとても人懐っこくて誰からも愛されてて、私からみても上手く立ちまわっていて私より何倍も大人だなって思わせられる。
凄く賢いし、気配りも出来ていて誰よりも周りを見ているの。
そんなローニャが羨ましくもあって、私が守っているつもりでも実は私が守られているのだと思う。色んな気持ちが混ざりあってどうしていいか分からないの。
だって今まで生きるために必死になってきたから。私はお姉ちゃんで。妹のためだけにって考えて過ごしていたから。
やりたい事なんて考えた事も無かった。……好きな事、嫌いな事もないの」
「……そうか。ナーニョは頑張ってきたんだな。人生を変えるほどの出来ことがあったんだ。仕方がないことだ。ナーニョは何も可笑しくない。
俺だってこうして騎士団長をしているが、今まで兄がやっていた事だ。だが、三男の俺が今こうして騎士団長になっている。
人生どうなるかなんて分からないもんだ。ただ、俺はナーニョがこの世界に来た事を喜んでいる。こんなに可愛い妹が出来たんだ。
妹が聖女だと崇められようが俺にとっては守るべき妹だ。無理にやりたいことなんて考えなくてもいい。
ただ何もせず自堕落に生きたっていいんだぞ? 王女ってもんは好き勝手わがままに生きているもんなんだからな」
ケイルート兄様はハハッと笑いながら菓子を口に放り込んだ。
私は、その言葉に、涙が溢れ出た。今までそんな事を言ってくれる家族は居なかった。
あぁ、私は辛かったのかもしれない。
苦しかったんだ。
一生懸命我慢していたんだ。
ケイルート兄様の優しい言葉に今までぐっと我慢してきた心が震える。
「!? ナーニョ、どこか痛いのか?」
それらしく話していた兄様が驚き、斜め上の気遣いをしてくれたことに泣きながらクスリと笑ってしまった。
「兄様、どこも痛くないです。兄様の言葉が嬉しい。ケイルート様が私の兄様になってくれて本当に良かった」
「俺もナーニョが妹になってくれて嬉しい。あまり無理はするな。我慢もするな。吐き出したくなったらいつでも聞いてやる」
「……はい。兄様」
私は涙が乾くまでの間、兄様とお菓子を摘まみながら王宮の話をしていると、ノックの音がした。
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