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54 王宮での出来事 ケイルート視点
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「お姉ちゃん、どうしちゃったんだろう?部屋に戻ってはいけないの?」
「あぁ、数日自分の部屋に戻っていてくれ」
「ケイルート兄様、どうして?」
「んーまぁ、なんだ。ナーニョも大人として悩みを抱えているんじゃないか?これからの事を考える機会なんだろう」
「そっか。分かった。ローニャは良い子だからお姉ちゃんに心配かけないようにいい子にするわ」
「あぁ。そうだな。後で一緒にカードゲームしよう」
「本当!? じゃぁいい子で待ってるね!」
そうしてローニャは侍女と護衛を連れて自分の部屋に戻っていった。体が大分成長してきているが、まだ子供っ気は抜けていないようだ。
ローニャが部屋に戻り、サロンに残っているのは父と母、兄のナーヴァルと俺だけだ。ナーヴァルの妻は今日、お茶会を開いてここにはいない。
「ナーニョは体調が悪いと聞いたが、どうなんだ、ケイルート?」
「父上、ナーニョはこの世界に来る前からもここに来てからも必死に妹を守るために全てを犠牲にしていたようです。
今でもローニャが臥せっている日は彼女が治療を一人で行っていますよね」
「そうね。休まずに働いていてこちらが心配してしまうほどにね」
「そうですね、母上。けれど、今ローニャは成長中で、成人になりつつある。ローニャは自分の将来を見越して行動しているが、ナーニョは悩んでいるようです。
今までローニャのために生きてきてこれから自分のためにと言われてもどうすれば良いかわからないと」
俺はナーニョが悩んでいることを話す。
「なら、無理せずに貴族に嫁がせればいい。アルゼルド公爵のところはどうだ? 聖女を娶れば公爵もこちらに援助を多く出してくれるだろうし、ナーニョは心配事から無縁な生活ができるだろう」
「は? 兄上は何を言っているんだ?」
俺は兄の言葉に苛立ちを抑えられなかった。
「父上は王女としてあの娘達を養女に迎えたんだ。グレイスの勧めもあるし、役に立つのは良いことだと思うが? 魔力を持つ子を産めば働かなくてもいいんじゃないか」
俺はその言葉に憤り、グッと手に力を込め、立ち上がった。
「ケイルート座りなさい。ナーヴァル、やはりお前はいつまで経ってもソリュートを越えられんのだな。儂があの姉妹を養女にしたのは政争の道具にするためではない。それもわからんとはな」
「ち、父上! 兄上は死にました。私が今王太子ですよ!」
「ナーヴァル、母も貴方にはがっかりしています。あの家に嫁げと言うなんて。誰の影響なのかしら? 本当に困った息子だわ」
「兄上、彼女たちを兄妹に迎えたのは政争の道具にするためではない。もし、勝手をするなら許さないからな!」
「ナーヴァル、お前はこれ以上妹たちに何もするな。今後、妹たちに何かするようなら王太子を降りるつもりでおれ」
「!! わかりました」
父の言葉に不満な表情をしながらも口を閉じたナーヴァルであった。
「わしが何になりたいか聞いたのがきっかけか……」
「ナーニョは働きすぎて疲れているんです。少し休めばきっと復活する。今はゆっくり休ませないといけない」
「そうだな。我々は浮かれすぎた。もっと慎重にならねばな。そういえば、近隣の村の状況はどうだ?」
「芳しくはありません。現在、異次元の空間が空いてないとはいえ、空間から漏れ出ていた魔獣は多い。
エサイアスを中心に騎士達は近隣の村に出没する魔獣を退治しているので王都周辺は安全になりつつありますが、やはり地方までは手が足りていない状況です」
「そうか。また騎士団を派遣せねばならんな」
「そうですね」
父の言葉に兄はゆっくりと頷いている。
そうしてサロンでの家族会議は終わりを告げた。
翌日、俺は第一騎士団の団長でもあるため地方に巡視する騎士を選定する事になった。
前回、異次元の空間が開いた時、ナーニョたち落ちてきた。同じ年に複数空間ができるのは珍しいため、予測として次の空間が空くまで残り二年程だと考えられる。
「エサイアスに頼むしかないか……」
アイツは俺に対して口は悪いが、国のためにずっと戦ってくれている。
ナーニョのことがとても気になっているのも知っている。ナーニョと離れたくないという気持ちも。
悲しいことにナーニョにはその気持ちは伝わっていないようだが、嫌われてはいないようだ。
二人には上手くいってほしいが状況は許さない。溜息が出る。
エサイアスは強いが人間だ。
だが大怪我だってする。
地方では王都のように治療ができない。一歩間違えれば死がやってくる。
友に『死にに行け』と言わねばならない苦しさ。
これまで多くの騎士達が冥土へと旅立っていった。
兄はいつも笑っていたが、こんなにも苦しい思いを抱えていたのかと思うと心は晴れない。
それから三日した後、エサイアスを執務に呼びつけた。
「お呼びでしょうかケイルート殿下」
「……あぁ。頼みがある。お前にしかできない。部隊を編制し、地方を回って欲しい」
「……畏まりました。いつからでしょうか」
「準備もある。一月後だ」
「分かりました。ナーニョ様はあれからどうしているのでしょうか? 研究所にも顔を出していない様子」
「あぁ、ナーニョは部屋から一歩も出てきていない。食事もほとんど口にしていないようだ」
「大丈夫なのでしょうか? 皆が心配しております」
「……どうだろうな。そろそろローニャが突撃してナーニョを引っ張り出してくる頃だと思うが、まだ心の整理がつかないのだろう」
ケイルートはふうと重い溜息を一つ吐き、お茶を一気に飲み干す。
エサイアスは一礼した後、準備のために戻っていった。
それから二日間、俺は変わらず仕事を続けた。相変わらずナーニョは部屋から出てこない。
侍女の話では今はただベッドの上に座り、ボーッと動くことなく過ごしているのだとか。
食も細くなり、かなり窶れているらしい。ローニャが一度部屋を訪れたけれど、反応も薄く、ローニャは静かに部屋でナーニョが元気になっているのを待っているようだ。
「緊急伝令! 緊急事態発生致しました!!」
「あぁ、数日自分の部屋に戻っていてくれ」
「ケイルート兄様、どうして?」
「んーまぁ、なんだ。ナーニョも大人として悩みを抱えているんじゃないか?これからの事を考える機会なんだろう」
「そっか。分かった。ローニャは良い子だからお姉ちゃんに心配かけないようにいい子にするわ」
「あぁ。そうだな。後で一緒にカードゲームしよう」
「本当!? じゃぁいい子で待ってるね!」
そうしてローニャは侍女と護衛を連れて自分の部屋に戻っていった。体が大分成長してきているが、まだ子供っ気は抜けていないようだ。
ローニャが部屋に戻り、サロンに残っているのは父と母、兄のナーヴァルと俺だけだ。ナーヴァルの妻は今日、お茶会を開いてここにはいない。
「ナーニョは体調が悪いと聞いたが、どうなんだ、ケイルート?」
「父上、ナーニョはこの世界に来る前からもここに来てからも必死に妹を守るために全てを犠牲にしていたようです。
今でもローニャが臥せっている日は彼女が治療を一人で行っていますよね」
「そうね。休まずに働いていてこちらが心配してしまうほどにね」
「そうですね、母上。けれど、今ローニャは成長中で、成人になりつつある。ローニャは自分の将来を見越して行動しているが、ナーニョは悩んでいるようです。
今までローニャのために生きてきてこれから自分のためにと言われてもどうすれば良いかわからないと」
俺はナーニョが悩んでいることを話す。
「なら、無理せずに貴族に嫁がせればいい。アルゼルド公爵のところはどうだ? 聖女を娶れば公爵もこちらに援助を多く出してくれるだろうし、ナーニョは心配事から無縁な生活ができるだろう」
「は? 兄上は何を言っているんだ?」
俺は兄の言葉に苛立ちを抑えられなかった。
「父上は王女としてあの娘達を養女に迎えたんだ。グレイスの勧めもあるし、役に立つのは良いことだと思うが? 魔力を持つ子を産めば働かなくてもいいんじゃないか」
俺はその言葉に憤り、グッと手に力を込め、立ち上がった。
「ケイルート座りなさい。ナーヴァル、やはりお前はいつまで経ってもソリュートを越えられんのだな。儂があの姉妹を養女にしたのは政争の道具にするためではない。それもわからんとはな」
「ち、父上! 兄上は死にました。私が今王太子ですよ!」
「ナーヴァル、母も貴方にはがっかりしています。あの家に嫁げと言うなんて。誰の影響なのかしら? 本当に困った息子だわ」
「兄上、彼女たちを兄妹に迎えたのは政争の道具にするためではない。もし、勝手をするなら許さないからな!」
「ナーヴァル、お前はこれ以上妹たちに何もするな。今後、妹たちに何かするようなら王太子を降りるつもりでおれ」
「!! わかりました」
父の言葉に不満な表情をしながらも口を閉じたナーヴァルであった。
「わしが何になりたいか聞いたのがきっかけか……」
「ナーニョは働きすぎて疲れているんです。少し休めばきっと復活する。今はゆっくり休ませないといけない」
「そうだな。我々は浮かれすぎた。もっと慎重にならねばな。そういえば、近隣の村の状況はどうだ?」
「芳しくはありません。現在、異次元の空間が空いてないとはいえ、空間から漏れ出ていた魔獣は多い。
エサイアスを中心に騎士達は近隣の村に出没する魔獣を退治しているので王都周辺は安全になりつつありますが、やはり地方までは手が足りていない状況です」
「そうか。また騎士団を派遣せねばならんな」
「そうですね」
父の言葉に兄はゆっくりと頷いている。
そうしてサロンでの家族会議は終わりを告げた。
翌日、俺は第一騎士団の団長でもあるため地方に巡視する騎士を選定する事になった。
前回、異次元の空間が開いた時、ナーニョたち落ちてきた。同じ年に複数空間ができるのは珍しいため、予測として次の空間が空くまで残り二年程だと考えられる。
「エサイアスに頼むしかないか……」
アイツは俺に対して口は悪いが、国のためにずっと戦ってくれている。
ナーニョのことがとても気になっているのも知っている。ナーニョと離れたくないという気持ちも。
悲しいことにナーニョにはその気持ちは伝わっていないようだが、嫌われてはいないようだ。
二人には上手くいってほしいが状況は許さない。溜息が出る。
エサイアスは強いが人間だ。
だが大怪我だってする。
地方では王都のように治療ができない。一歩間違えれば死がやってくる。
友に『死にに行け』と言わねばならない苦しさ。
これまで多くの騎士達が冥土へと旅立っていった。
兄はいつも笑っていたが、こんなにも苦しい思いを抱えていたのかと思うと心は晴れない。
それから三日した後、エサイアスを執務に呼びつけた。
「お呼びでしょうかケイルート殿下」
「……あぁ。頼みがある。お前にしかできない。部隊を編制し、地方を回って欲しい」
「……畏まりました。いつからでしょうか」
「準備もある。一月後だ」
「分かりました。ナーニョ様はあれからどうしているのでしょうか? 研究所にも顔を出していない様子」
「あぁ、ナーニョは部屋から一歩も出てきていない。食事もほとんど口にしていないようだ」
「大丈夫なのでしょうか? 皆が心配しております」
「……どうだろうな。そろそろローニャが突撃してナーニョを引っ張り出してくる頃だと思うが、まだ心の整理がつかないのだろう」
ケイルートはふうと重い溜息を一つ吐き、お茶を一気に飲み干す。
エサイアスは一礼した後、準備のために戻っていった。
それから二日間、俺は変わらず仕事を続けた。相変わらずナーニョは部屋から出てこない。
侍女の話では今はただベッドの上に座り、ボーッと動くことなく過ごしているのだとか。
食も細くなり、かなり窶れているらしい。ローニャが一度部屋を訪れたけれど、反応も薄く、ローニャは静かに部屋でナーニョが元気になっているのを待っているようだ。
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