まさか猫種の私が聖女なんですか?

まるねこ

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70 笑顔のアンガスト

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 翌朝、私はいつもよりすっきりと目を覚ました。

「お酒を飲んだ次の日は頭が痛いと兄様は言っていたけれど、全然痛くないわ。私はお酒に強いのかもしれない」

 なんだか朝から気分がいい。

「おはようございます、ナーニョ様。昨日はゆっくりお休みになれましたか?」
「神官様、お休みをありがとうございます。しっかりと休めました」
「それは良かったです。今日は東の方面の討伐でしたね。無理をしないようにしてくださいね」

 私は食事の後、騎士服に着替えて騎士団に向かった。いつものように合流し、討伐へ向かった。

 毎日討伐しているおかげか、魔獣は少しずつ減ってきた。このまま順調にいけばあと五日程度で次の街に向かうだろう。

 毎日の討伐で私も魔獣に慣れてきた。最初に見た時はやはり怖かった。

 口には出さなかったけれど、必死に蓋をしていた恐怖心がよみがえってきた。それでも、命をかけて戦う騎士たちを見て、私も皆を守りたいと自分にできること必死にやってきた。

 必死に魔法を使っているうちに恐怖心に打ち勝つことができた。

 ここ数日の間に比較的軽い怪我人の治療は終わった。

 残念ながら今回は欠損を治す時間はない。欠損治療ができなくても伯爵子息のような重傷の人たちは優先的に治療に当たっている。

 怪我人の治療もひと段落し、今日からは畑や井戸に魔法を順番に掛けていくことになっている。

「討伐お疲れさまでした。ではまた明日もよろしくお願いします」

 いつものように治療魔法を騎士たちに掛けた時、一台の馬車が私たちの前で停まった。

「ナーニョ様、お迎えに上がりました」
「フォード伯爵子息様、ありがとうございます」

 満面の笑みを浮かべたアンガスト様が私の手を引いたそのとき、エサイアス様が声を掛けてきた。

「ナーニョ様、ではまた明日」
「エサイアス様、また明日」

 その様子を騎士たちはヒヤヒヤしながら見守っている。

 きっとナーニョ様はなーんにも気づいていないのだなと。
 騎士たちは何も言わないが、内心ではやきもきしているのだろう。


 アンガスト子息の笑顔とは対称的にエサイアス様の雰囲気は氷点下で冷たい風が吹きすさんでいる。

 ナーニョ様を見送った騎士たちからは悲壮感が溢れていた。

「さて、回復もした。お前たち、元気だな。これから訓練をはじめる!」
「鬼だ! 鬼がここにいるぞ!」
「誰が鬼だ! さぁ、腕立て伏せ三百回、始め!」

 彼が現れなければ訓練場を走って打ち合いだけで済んだのだろうなぁと騎士たちは思ったのだった。



「ナーニョ様、ここからこの街の畑になっております。魔獣は現れないと思いますが、気を付けて下さい」
「フォード子爵子息、ありがとうございます。では始めますね」

 さすがに街を支えるだけあって目の前に広がる畑は広大だ。すべてに魔法を行き渡らせるには数回に分けて掛ける必要がありそうだ。

 畑は魔獣の被害が及ばないように高い塀で囲われており、被害は出ていない。

 ここの街の畑はそこまで問題を抱えていないが、苗が病気に罹ると全滅するかもしれない。

 その辺りを考えながら魔法を少しずつ掛けていく。

「今日はこの辺りで終わりにしますね」
「凄いですね。植物たちがイキイキしている。奇跡だ。何度見ても見飽きない」
「ふふっ。奇跡は何度も起こりませんよ? それに私より妹の方がこの魔法を得意なんです」

「そうなんですね。もっと魔法の話が聞きたいです。我が家で食事でもしていきませんか?」
「お誘いありがとうございます。ですが、神殿の方の治療も残っていますので、このまま戻ります」
「そうですか。とっても残念です。明日も魔法の話を聞かせて下さいね!」
「えぇ、是非」

 アンガストとまた馬車に乗り込み魔法の話をしながら神殿まで送ってもらい、ここからは残った魔力で患者の治療を行っていく。
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