まさか猫種の私が聖女なんですか?

まるねこ

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81 ノト神父の治療

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 魔力を通し、身体の状態を確認する。どうやらワット神官の足以外は健康のようだ。

 ノト神父が作っていた義足が合っていたのだろう。
 そのまま治療を行う。淡い光とともにみるみる生えてくる足に神官は視線を離せないでいた。

「……足が。足が生えている。奇跡が! ナーニョ様! ありがとうございます」
「義足になってからかなりの年月が経っているようでできるか少し不安でしたが、成功して良かったです」
「できない事もあるのでしょうか?」

 ワット神官は不安そうに聞いてきた。

「怪我人の持っている“足のイメージ”で再生されるんです。生まれながらに欠損している人は残念ながら治せないと思います。不安だったのは義足で長年過ごしているから足の先を覚えていない、本人がイメージできない場合は成功率が下がります」

「そうなのですね。今、この街にいる人々は重症患者が少ない。魔獣による軽い怪我は一定数います。ですが治療するほどではないでしょう。ただ、昔に異次元の空間で出てきた魔獣たちを倒す時に怪我をした者たちは怪我のせいで行商にいけず、この街に留まっているのです。

 弟子や仲間が行商に行き、足手まといの自分はこの街に留まる。苦しい胸の内を隠し、仲間を見送る。そうした者が多いのです。一人でも彼らの助けになってほしいのです」

 ワット神父は自分のことのように彼らを慮り、悲し気な表情を見せる。彼も辛い思いをしてきたし、見てきたのだろう。

「今回、この街に来るまでに魔獣が多くて到着に時間がかかりました。滞在中は騎士団の巡視に同行し、午後は治療に入りますね。欠損を治すのはとても難しい魔法なのです。欠損の程度にもよりますが、ワット神官くらいの怪我なら一日二人がやっとです。それでも構いませんか?」
「えぇ、もちろん。お願いします」

 ワット神父はホッとした表情になる。治療する人は商会長と話し合って決めるそうだ。

 その後、街の話を聞いた私たちはエサイアス様のいる駐屯所に向かい、明日からの予定を話し合った。

 この街周辺は魔獣が多い。

 滞在期間も他の街よりも長くなるかもしれないという話だった。私が神官から聞いた話や治療の事も話をしておく。

 話し合いをした後、エサイアス様や隊長たちと一緒に食事に出た。

 夕方も少し早い時間だったが、様々な店が立ち並んでいて、選ぶのに迷ったくらいだ。

 先に休養に入っていた騎士たちの姿もチラホラ見受けられた。彼らも食事を楽しんでいるようだ。

 物流の中継地点なだけあって海産物も食べられるようだ。隊長たちは王都の料理を懐かしく思うのか食べ慣れた物を注文していた。

 エサイアス様も同じように注文している。

 ……あの香り。

「すいません、私もあれをください」
「わかりました」

 私は隣のテーブルの人が食べているのを見て同じものを注文することにした。以前マーサさんが私に作ってくれた料理に似ていたから。

「珍しいな。普段ナーニョ様が食べている物とは違う気がするんだが」
 エサイアス様は不思議そうに私に聞いてきた。
「ええ、以前エサイアス様の邸で過ごしていた時にマーサさんが家庭料理を私たちに振舞ってくれたんです。それに似ていたのでつい、注文してしまいました」

「確か、マーサの母親は沿岸の出身だったような気がする。似たような食事があってもおかしくはないな。そういえば、マーサが心配していると手紙が来ていた。この巡視が終わったら邸で一緒にマーサの手料理を食べないか」

「本当ですか!? マーサさんの作る手料理はとても美味しかったです。エサイアス様の邸の料理人が作る食事も美味しかったのですが、マーサさんの手料理をまた食べたいです」

 私は嬉しくて尻尾をひょこひょこ動かしながら食事を口にする。やはりマーサさんの手料理に近い味だ。

 お店の味は、家庭料理とはまた少し違った味わいがある。

 雰囲気なのか心情がそうさせているのかは分からないけれど、マーサさんやロキアさんたちを思い出しながら美味しく食べることができた。

「皆様、本当にお疲れ様でした」

 私は神殿まで送ってもらい、護衛に挨拶をして部屋に入った。ベッドに腰を下ろし、ほっと息を吐くことのできる瞬間だ。

 サッと湯浴みをした後、ローニャに今日露店で買った品物を紙袋ごと送った。

『お姉ちゃん、これ、どうしたの?』

 ローニャからすぐに返事がきた。どうやら部屋で勉強している最中だったようだ。

『今日、カールカールの街に着いたの。この街は物流の中継地点なんですって。それでね、魔獣の素材を専門に売っている店を見つけたの。その丸い玉、魔獣の身体の中に丸い玉があるものがいるんですって。

 心臓みたいなものじゃないかって店主は言っていたわ。あるのとないのがいるみたい。珍しいし、何かの研究に使えないかなって思って買ってみたの』

 私がそう言うと、ローニャは丸い玉を手に取っていたようだ。

『不思議な玉ね。今魔力を流してみたんだけど、不思議な感じがする! 明日研究所に持ち込んでみるね! お姉ちゃん、ありがとう』
『良かった。それはそうと、王宮の方は大丈夫? 誰かに意地悪されてない?』

『んー、まぁ、相変わらずかな。私も最近やり返してるからあんまり気にしていないかな。それに兄様もお父様も味方だからね』
『そう、あまり無理はしないのよ? 何かあればすぐに飛んでくればいいわ』
『そうね! その手もあるね! じゃぁ勉強に戻るね』

 通信を終える頃にはローニャは明るい声になっていた。

 何もなければいいのだけど、不安は残った。

 今日も一日良く働いたわ。

 今は何も考えず、明日のことに全力を尽くそう。私はベッドに寝っ転がり気が付けばそのまま眠りに落ちていた。
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