まさか猫種の私が聖女なんですか?

まるねこ

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92 魔法使いの手がかり

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「ナーニョ様、マリン様、おはようございます」

 翌朝早くに侍女が起こしに来てくれた。

「おはようございます」

 私はサッと立ち上がり、服を着替えて朝の準備に取り掛かった。マリンちゃんはまだ眠いようでベッドに座っているけれど、目は開けられないようだ。

「マリンちゃん、おはよう。今日は騎士団の巡視に付いていくからゆっくりできなくてごめんね」
「わかったぁ。待ってるね」

 眠そうなマリンちゃんを侍女に託し、さっと着替えて部屋を後にする。食堂で朝食が用意されていたのでいただいた後、騎士団へと向かった。

「お待たせしました」

 私たちはバタバタと走りながら騎士団へ合流した。エサイアス様たちはいつものように笑顔で迎えてから出発する。

 今日は街の周辺を歩いて魔獣の確認をした後、昨日伯爵の言っていた海にいる魔獣を見に行くことになった。

「やはり街の周りには大きな魔獣はいないようですね」
「えぇ、これならこの街の巡視も早く切り上げても良いと思います」

「昨日あれから街の人たちに聞き込みをしていたのですが、海にいる魔獣は縄張りから出てこないから船を出さない限り怪我人はないらしいです。放置していても特段問題はなさそうですが」

 隊長と私を含めた騎士たちで雑談のように話をしていた。

「まぁ、そうだよな。暮らしていく上で不便だろうが、怪我人が出ているわけでもない。縄張りとは別の場所に船を出そうと思えば出せるからな」

 波が穏やかな湾内に魔獣の縄張りがある。駆除できれば生活はしやすいだろうが、何せ海の上では分が悪い。

 騎士たちの剣は届かないのだ。陸上の魔獣とは違うようだし、不便だがこのまま刺激しない方がいいとみんなが判断した。

「巡視が終わったら伯爵には私から話すよ」

 エサイアス様がそう言って話は終わった。

 巡視はやはり何事もなく終わり、私たちは伯爵に滞在日時の短縮と海の魔獣に対しての騎士団の考えを伝えると、伯爵は仕方がないですよね、と少し残念そうにしがながらも納得はしてくれたようだ。

 海に住む魔獣はこちらとしても手が出せないので仕方がない。

 伯爵は『魔獣が住み始めてから別の場所から船を出しているので不便だが問題はない。峠の魔獣を討伐してもらっただけで十分だ、これから貴族たちがこの街に挙って保養に訪れることは大変嬉しい。
 それにマリンもナーニョ様に懐いてしまい、ナーニョ様と離すことがとても残念で仕方がない』と言っていた。

 私はマリンちゃんが慕ってくれるのはとても嬉しくてローニャを思い出し、可愛く思う。

 けれど、私には魔法使いを見つけるという使命があるので少し心苦しい。

「ナーニョ様だけこの街に残ることは可能でしょうか? 少しくらい時期をずらしても……」
「残念ながらナーニョ様には別の目的がある。それは難しい」
「目的、ですか?」

「えぇ。ナーニョ様の使命と捉えている。この巡視で各都市を周り、自分たち以外の魔法使いを探しているのだ。今、魔力を持つ人間を探すことができるのはナーニョ様だけなのだ」
「……そうでしたか。この国の未来、いや人類の未来が掛かっているのですね。そんな中、娘のわがままで引き留めるのは違いますね。申し訳ありません」

「いや、分かってくれたのならいいんだ。伯爵も昔は魔法使いがいたという話を知っているだろう?」
「えぇ、もちろん」
「王都では”いた”という話は残っているが、記録が残っておらず彼らの子孫がどのようになっているのか謎なのだ」

「この世に魔法を使う人間がまだ存在しているのですか?」
「王都にいる神官長がそうだ。ナーニョ様が魔力を持っている事を知らせ、神官長は魔法を使いこなせるよう日々研鑽の毎日だそうだ。残念ながら、王都では神官長しか見つけることができなかった。伯爵は魔法使いの事について何か知っているだろうか?」

 エサイアスの言葉に伯爵は腕を組み、考え事をしている様子。

「……真偽は不明ですが、エサイアス様たちが次に向かおうとしているドロナーダ地方の街には魔法使いの所縁の遺物があると聞いたことがあります。ただ、あくまで言い伝え的なものであって真偽のほどは定かではありませんが」

 伯爵の言葉に私は嬉しくなった。

 次の地方にもしかしたら魔法使いがいるかもしれない。これは大きなことだった。

 魔獣が峠に住み着いた事でこの街の流通はもちろん人々の往来も無くなったため次の街は現在どうなっているのか分からないのだという。

「伯爵、感謝する」

 エサイアス様はセイン伯爵にお礼を言う。

 残りの滞在で騎士たちは訓練を行い、私は畑や井戸に魔法を掛けていった。この街では怪我人は少ないが、神父の勧めもあり、神殿で治療を行った。

「ナーニョ様、またこの街に来てね! 必ずだよ!」
「マリンちゃん、また会おうね。いつでも王都に遊びに来てね」
「うん!」

 私たちはこうしてラーシュの街を後にした。ラーシュの街では滞在が短かったけれど、美味しい魚も食べられたし、マリンちゃんにも会えた。

 それに魔法使いの話も聞くことができたので私にとってはとても心に残る街だった。
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