92 / 125
92 魔法使いの手がかり
しおりを挟む
「ナーニョ様、マリン様、おはようございます」
翌朝早くに侍女が起こしに来てくれた。
「おはようございます」
私はサッと立ち上がり、服を着替えて朝の準備に取り掛かった。マリンちゃんはまだ眠いようでベッドに座っているけれど、目は開けられないようだ。
「マリンちゃん、おはよう。今日は騎士団の巡視に付いていくからゆっくりできなくてごめんね」
「わかったぁ。待ってるね」
眠そうなマリンちゃんを侍女に託し、さっと着替えて部屋を後にする。食堂で朝食が用意されていたのでいただいた後、騎士団へと向かった。
「お待たせしました」
私たちはバタバタと走りながら騎士団へ合流した。エサイアス様たちはいつものように笑顔で迎えてから出発する。
今日は街の周辺を歩いて魔獣の確認をした後、昨日伯爵の言っていた海にいる魔獣を見に行くことになった。
「やはり街の周りには大きな魔獣はいないようですね」
「えぇ、これならこの街の巡視も早く切り上げても良いと思います」
「昨日あれから街の人たちに聞き込みをしていたのですが、海にいる魔獣は縄張りから出てこないから船を出さない限り怪我人はないらしいです。放置していても特段問題はなさそうですが」
隊長と私を含めた騎士たちで雑談のように話をしていた。
「まぁ、そうだよな。暮らしていく上で不便だろうが、怪我人が出ているわけでもない。縄張りとは別の場所に船を出そうと思えば出せるからな」
波が穏やかな湾内に魔獣の縄張りがある。駆除できれば生活はしやすいだろうが、何せ海の上では分が悪い。
騎士たちの剣は届かないのだ。陸上の魔獣とは違うようだし、不便だがこのまま刺激しない方がいいとみんなが判断した。
「巡視が終わったら伯爵には私から話すよ」
エサイアス様がそう言って話は終わった。
巡視はやはり何事もなく終わり、私たちは伯爵に滞在日時の短縮と海の魔獣に対しての騎士団の考えを伝えると、伯爵は仕方がないですよね、と少し残念そうにしがながらも納得はしてくれたようだ。
海に住む魔獣はこちらとしても手が出せないので仕方がない。
伯爵は『魔獣が住み始めてから別の場所から船を出しているので不便だが問題はない。峠の魔獣を討伐してもらっただけで十分だ、これから貴族たちがこの街に挙って保養に訪れることは大変嬉しい。
それにマリンもナーニョ様に懐いてしまい、ナーニョ様と離すことがとても残念で仕方がない』と言っていた。
私はマリンちゃんが慕ってくれるのはとても嬉しくてローニャを思い出し、可愛く思う。
けれど、私には魔法使いを見つけるという使命があるので少し心苦しい。
「ナーニョ様だけこの街に残ることは可能でしょうか? 少しくらい時期をずらしても……」
「残念ながらナーニョ様には別の目的がある。それは難しい」
「目的、ですか?」
「えぇ。ナーニョ様の使命と捉えている。この巡視で各都市を周り、自分たち以外の魔法使いを探しているのだ。今、魔力を持つ人間を探すことができるのはナーニョ様だけなのだ」
「……そうでしたか。この国の未来、いや人類の未来が掛かっているのですね。そんな中、娘のわがままで引き留めるのは違いますね。申し訳ありません」
「いや、分かってくれたのならいいんだ。伯爵も昔は魔法使いがいたという話を知っているだろう?」
「えぇ、もちろん」
「王都では”いた”という話は残っているが、記録が残っておらず彼らの子孫がどのようになっているのか謎なのだ」
「この世に魔法を使う人間がまだ存在しているのですか?」
「王都にいる神官長がそうだ。ナーニョ様が魔力を持っている事を知らせ、神官長は魔法を使いこなせるよう日々研鑽の毎日だそうだ。残念ながら、王都では神官長しか見つけることができなかった。伯爵は魔法使いの事について何か知っているだろうか?」
エサイアスの言葉に伯爵は腕を組み、考え事をしている様子。
「……真偽は不明ですが、エサイアス様たちが次に向かおうとしているドロナーダ地方の街には魔法使いの所縁の遺物があると聞いたことがあります。ただ、あくまで言い伝え的なものであって真偽のほどは定かではありませんが」
伯爵の言葉に私は嬉しくなった。
次の地方にもしかしたら魔法使いがいるかもしれない。これは大きなことだった。
魔獣が峠に住み着いた事でこの街の流通はもちろん人々の往来も無くなったため次の街は現在どうなっているのか分からないのだという。
「伯爵、感謝する」
エサイアス様はセイン伯爵にお礼を言う。
残りの滞在で騎士たちは訓練を行い、私は畑や井戸に魔法を掛けていった。この街では怪我人は少ないが、神父の勧めもあり、神殿で治療を行った。
「ナーニョ様、またこの街に来てね! 必ずだよ!」
「マリンちゃん、また会おうね。いつでも王都に遊びに来てね」
「うん!」
私たちはこうしてラーシュの街を後にした。ラーシュの街では滞在が短かったけれど、美味しい魚も食べられたし、マリンちゃんにも会えた。
それに魔法使いの話も聞くことができたので私にとってはとても心に残る街だった。
翌朝早くに侍女が起こしに来てくれた。
「おはようございます」
私はサッと立ち上がり、服を着替えて朝の準備に取り掛かった。マリンちゃんはまだ眠いようでベッドに座っているけれど、目は開けられないようだ。
「マリンちゃん、おはよう。今日は騎士団の巡視に付いていくからゆっくりできなくてごめんね」
「わかったぁ。待ってるね」
眠そうなマリンちゃんを侍女に託し、さっと着替えて部屋を後にする。食堂で朝食が用意されていたのでいただいた後、騎士団へと向かった。
「お待たせしました」
私たちはバタバタと走りながら騎士団へ合流した。エサイアス様たちはいつものように笑顔で迎えてから出発する。
今日は街の周辺を歩いて魔獣の確認をした後、昨日伯爵の言っていた海にいる魔獣を見に行くことになった。
「やはり街の周りには大きな魔獣はいないようですね」
「えぇ、これならこの街の巡視も早く切り上げても良いと思います」
「昨日あれから街の人たちに聞き込みをしていたのですが、海にいる魔獣は縄張りから出てこないから船を出さない限り怪我人はないらしいです。放置していても特段問題はなさそうですが」
隊長と私を含めた騎士たちで雑談のように話をしていた。
「まぁ、そうだよな。暮らしていく上で不便だろうが、怪我人が出ているわけでもない。縄張りとは別の場所に船を出そうと思えば出せるからな」
波が穏やかな湾内に魔獣の縄張りがある。駆除できれば生活はしやすいだろうが、何せ海の上では分が悪い。
騎士たちの剣は届かないのだ。陸上の魔獣とは違うようだし、不便だがこのまま刺激しない方がいいとみんなが判断した。
「巡視が終わったら伯爵には私から話すよ」
エサイアス様がそう言って話は終わった。
巡視はやはり何事もなく終わり、私たちは伯爵に滞在日時の短縮と海の魔獣に対しての騎士団の考えを伝えると、伯爵は仕方がないですよね、と少し残念そうにしがながらも納得はしてくれたようだ。
海に住む魔獣はこちらとしても手が出せないので仕方がない。
伯爵は『魔獣が住み始めてから別の場所から船を出しているので不便だが問題はない。峠の魔獣を討伐してもらっただけで十分だ、これから貴族たちがこの街に挙って保養に訪れることは大変嬉しい。
それにマリンもナーニョ様に懐いてしまい、ナーニョ様と離すことがとても残念で仕方がない』と言っていた。
私はマリンちゃんが慕ってくれるのはとても嬉しくてローニャを思い出し、可愛く思う。
けれど、私には魔法使いを見つけるという使命があるので少し心苦しい。
「ナーニョ様だけこの街に残ることは可能でしょうか? 少しくらい時期をずらしても……」
「残念ながらナーニョ様には別の目的がある。それは難しい」
「目的、ですか?」
「えぇ。ナーニョ様の使命と捉えている。この巡視で各都市を周り、自分たち以外の魔法使いを探しているのだ。今、魔力を持つ人間を探すことができるのはナーニョ様だけなのだ」
「……そうでしたか。この国の未来、いや人類の未来が掛かっているのですね。そんな中、娘のわがままで引き留めるのは違いますね。申し訳ありません」
「いや、分かってくれたのならいいんだ。伯爵も昔は魔法使いがいたという話を知っているだろう?」
「えぇ、もちろん」
「王都では”いた”という話は残っているが、記録が残っておらず彼らの子孫がどのようになっているのか謎なのだ」
「この世に魔法を使う人間がまだ存在しているのですか?」
「王都にいる神官長がそうだ。ナーニョ様が魔力を持っている事を知らせ、神官長は魔法を使いこなせるよう日々研鑽の毎日だそうだ。残念ながら、王都では神官長しか見つけることができなかった。伯爵は魔法使いの事について何か知っているだろうか?」
エサイアスの言葉に伯爵は腕を組み、考え事をしている様子。
「……真偽は不明ですが、エサイアス様たちが次に向かおうとしているドロナーダ地方の街には魔法使いの所縁の遺物があると聞いたことがあります。ただ、あくまで言い伝え的なものであって真偽のほどは定かではありませんが」
伯爵の言葉に私は嬉しくなった。
次の地方にもしかしたら魔法使いがいるかもしれない。これは大きなことだった。
魔獣が峠に住み着いた事でこの街の流通はもちろん人々の往来も無くなったため次の街は現在どうなっているのか分からないのだという。
「伯爵、感謝する」
エサイアス様はセイン伯爵にお礼を言う。
残りの滞在で騎士たちは訓練を行い、私は畑や井戸に魔法を掛けていった。この街では怪我人は少ないが、神父の勧めもあり、神殿で治療を行った。
「ナーニョ様、またこの街に来てね! 必ずだよ!」
「マリンちゃん、また会おうね。いつでも王都に遊びに来てね」
「うん!」
私たちはこうしてラーシュの街を後にした。ラーシュの街では滞在が短かったけれど、美味しい魚も食べられたし、マリンちゃんにも会えた。
それに魔法使いの話も聞くことができたので私にとってはとても心に残る街だった。
46
あなたにおすすめの小説
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
底無しポーターは端倪すべからざる
さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。
ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。
攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。
そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。
※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。
※ごくまれに残酷描写を含みます。
※【小説家になろう】様にも掲載しています。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる