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95 一人の少年
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ようやく私たちはノーヨゥルの街に到着した。
……街が荒れ果てている。
魔獣の襲撃があったのだろうか。
村から街へ向かう道では魔獣という魔獣は遭遇しなかっただけに騎士たちからは緊張が伝わってくる。騎士たちは鞘から剣を抜き、戦闘態勢のまま街に入った。
グルルルル……。
大きな狼型の魔獣十頭が私たちを見つけて駆けてきた。私は補助魔法を唱えた。火を吐く魔獣の動きは素早くて騎士たちも苦戦をしていたが、数としてはこちらが断然優位だ。
体力強化をしている騎士たちはじわじわと狼を斬りつけて体力を削り、一頭、また一頭と倒していった。
狼型の魔獣は確かに強いけれど、街にも衛兵や戦う人たちがいたはず。彼らはどうしたのだろうか。
そしてこの街の荒れ具合からみても新しいものではないようだ。
前回の巡視から数年経っているとはいえ、この荒廃具合は違和感を覚える。街を巡回したけれど、狼型の魔獣全部で二十頭ほど討伐した。群れでこの街を住処にしていたようだ。
街の人たちはどこへ消えてしまったのだろうか。
一軒一軒調べてまわっていると、カサリと音がした。
「おい、誰かいるのか?」
一人の騎士がそう叫ぶと、建物の隅からゴトリと音がする。出てきたのは一人の男の子。十歳くらいだろうか。
「おい、大丈夫か??」
「おい、坊主。名前は?」
「俺の名前はカシュール・マドーラ・ヒェルだ」
男の子は平然とそう答えた。
「ヒェル子爵子息か。子爵はどこに?」
「父たちは街を捨てて別の場所で暮らしている」
「君は何故この街に?」
「あぁ、俺はこの街の様子を見にたまに来ている」
「子供一人でよく子爵は許したな」
「あぁ、だって俺、魔法が使えるからな。魔獣たちは俺が火を使えるから避けているみたいなんだ。だからといって用心するに越したことはないけどな!」
魔法という言葉に騎士たちは息を飲んだ。カシュールという男の子は騎士に対して偉そうな態度で接している。魔法が使える俺は偉いと言わんばかりに。
「まぁ、まず、ヒェル子爵たちが住んでいる場所に案内してくれ。話を聞きたい」
「仕方がないなぁ。いいよ。俺に金をくれるんならね?」
エサイアス様たち第十二騎士団はそんな彼の要望を無視する。チェッと舌打ちしながらでも彼は村まで案内してくれるようだ。
街を出て少し歩いた場所に作られた村にやってきた。
村の周りには堀があり、大きな返しのついた柵が村を囲むように付けられていた。監視小屋が私たちに気づいたようで扉が開かれて私たちは村の中に入っていく。
街とは言わないまでも村としてはかなりの大きさのようだ。街が捨てられたのはやはり魔獣が入ってこられないように対策をしたが、間に合わなかったのだろうか。
色々な考えが浮かびながらもカシュール君と一緒に村の中央までやってきた。
「カシュール様、お帰りなさい! 街はどうでしたか?」
村の人たちは次々にカシュール君に話し掛けている様子。彼も手を挙げて応える。
私たちには横柄な態度だが、少なくとも街の人には同じような態度ではないらしい。
そして最初に話し掛けた村の人が子爵たちを呼んだのだろう、ヒェル子爵と夫人はすぐに出迎えてくれた。
「ようこそおいで下さいました。何もないですが、歓迎いたします」
エサイアスと隊長は子爵と話をする事になり、騎士たちはこの場で一旦休憩となった。
街に戻ってテントを張るかこの村の周辺でテントを張るか隊長たちの話し合いで決めるようだ。私は気になっていたカシュール君に話し掛けてみた。
「カシュール君、先ほど魔法が使えるって言っていたけれど、本当?」
「お前! 耳が! 魔獣がこんなところに紛れ込んでいたのか! やっつけてやる!」
カシュール君はそう言うと、小さな火の玉を出して私に投げつけてきた。私はヒュールトーロの指輪を嵌めていたため、そのまま結界を張る。火の玉は結界に当たるとシュンッと消えていった。
それを見たカシュール君はびっくりして魔獣だと言ったことも忘れて私に駆け寄ってきた。
「お前! 魔法が使えるのか!」
「えぇ、使えるわ。私以外の魔法使いを探しにここまで来たの。カシュール君は何歳かしら?」
「俺は今年で十三歳だ! この街は魔法が使える奴もいるが、俺が一番なんだぞ? 凄いだろう? 俺の夢は大魔法使いになることなんだ!」
『えっへん』と聞こえてきそうな態度でカシュール君は話をした。
ローニャの一つ下なのね。
そう思うとなんだか可愛く思えた。
いつから使えるようになったのか、どんな魔法が使えるのか、他の人も使えるのかとカシュール君に魔法の事を聞いてみた。
カシュール君の話では小さな頃、何となく身体がむずむずして気づいたら水鉄砲のように水が手から出てきたらしい。
みんなは水が出せる事を喜んでくれたから褒められたくて何度も出しているうちに水をすぐに出せるようになったのだとか。父や母も二人いる妹も使えるらしい。
街の人たちも小さな火や水を出すことができる人も多いのだとか。中には魔法が一切使えないけれど、人より重たいものを持ったりすることができる人もいるらしい。
もっと魔法の話を聞いてみたい、子爵に話を聞きたいと胸が高鳴る。
……街が荒れ果てている。
魔獣の襲撃があったのだろうか。
村から街へ向かう道では魔獣という魔獣は遭遇しなかっただけに騎士たちからは緊張が伝わってくる。騎士たちは鞘から剣を抜き、戦闘態勢のまま街に入った。
グルルルル……。
大きな狼型の魔獣十頭が私たちを見つけて駆けてきた。私は補助魔法を唱えた。火を吐く魔獣の動きは素早くて騎士たちも苦戦をしていたが、数としてはこちらが断然優位だ。
体力強化をしている騎士たちはじわじわと狼を斬りつけて体力を削り、一頭、また一頭と倒していった。
狼型の魔獣は確かに強いけれど、街にも衛兵や戦う人たちがいたはず。彼らはどうしたのだろうか。
そしてこの街の荒れ具合からみても新しいものではないようだ。
前回の巡視から数年経っているとはいえ、この荒廃具合は違和感を覚える。街を巡回したけれど、狼型の魔獣全部で二十頭ほど討伐した。群れでこの街を住処にしていたようだ。
街の人たちはどこへ消えてしまったのだろうか。
一軒一軒調べてまわっていると、カサリと音がした。
「おい、誰かいるのか?」
一人の騎士がそう叫ぶと、建物の隅からゴトリと音がする。出てきたのは一人の男の子。十歳くらいだろうか。
「おい、大丈夫か??」
「おい、坊主。名前は?」
「俺の名前はカシュール・マドーラ・ヒェルだ」
男の子は平然とそう答えた。
「ヒェル子爵子息か。子爵はどこに?」
「父たちは街を捨てて別の場所で暮らしている」
「君は何故この街に?」
「あぁ、俺はこの街の様子を見にたまに来ている」
「子供一人でよく子爵は許したな」
「あぁ、だって俺、魔法が使えるからな。魔獣たちは俺が火を使えるから避けているみたいなんだ。だからといって用心するに越したことはないけどな!」
魔法という言葉に騎士たちは息を飲んだ。カシュールという男の子は騎士に対して偉そうな態度で接している。魔法が使える俺は偉いと言わんばかりに。
「まぁ、まず、ヒェル子爵たちが住んでいる場所に案内してくれ。話を聞きたい」
「仕方がないなぁ。いいよ。俺に金をくれるんならね?」
エサイアス様たち第十二騎士団はそんな彼の要望を無視する。チェッと舌打ちしながらでも彼は村まで案内してくれるようだ。
街を出て少し歩いた場所に作られた村にやってきた。
村の周りには堀があり、大きな返しのついた柵が村を囲むように付けられていた。監視小屋が私たちに気づいたようで扉が開かれて私たちは村の中に入っていく。
街とは言わないまでも村としてはかなりの大きさのようだ。街が捨てられたのはやはり魔獣が入ってこられないように対策をしたが、間に合わなかったのだろうか。
色々な考えが浮かびながらもカシュール君と一緒に村の中央までやってきた。
「カシュール様、お帰りなさい! 街はどうでしたか?」
村の人たちは次々にカシュール君に話し掛けている様子。彼も手を挙げて応える。
私たちには横柄な態度だが、少なくとも街の人には同じような態度ではないらしい。
そして最初に話し掛けた村の人が子爵たちを呼んだのだろう、ヒェル子爵と夫人はすぐに出迎えてくれた。
「ようこそおいで下さいました。何もないですが、歓迎いたします」
エサイアスと隊長は子爵と話をする事になり、騎士たちはこの場で一旦休憩となった。
街に戻ってテントを張るかこの村の周辺でテントを張るか隊長たちの話し合いで決めるようだ。私は気になっていたカシュール君に話し掛けてみた。
「カシュール君、先ほど魔法が使えるって言っていたけれど、本当?」
「お前! 耳が! 魔獣がこんなところに紛れ込んでいたのか! やっつけてやる!」
カシュール君はそう言うと、小さな火の玉を出して私に投げつけてきた。私はヒュールトーロの指輪を嵌めていたため、そのまま結界を張る。火の玉は結界に当たるとシュンッと消えていった。
それを見たカシュール君はびっくりして魔獣だと言ったことも忘れて私に駆け寄ってきた。
「お前! 魔法が使えるのか!」
「えぇ、使えるわ。私以外の魔法使いを探しにここまで来たの。カシュール君は何歳かしら?」
「俺は今年で十三歳だ! この街は魔法が使える奴もいるが、俺が一番なんだぞ? 凄いだろう? 俺の夢は大魔法使いになることなんだ!」
『えっへん』と聞こえてきそうな態度でカシュール君は話をした。
ローニャの一つ下なのね。
そう思うとなんだか可愛く思えた。
いつから使えるようになったのか、どんな魔法が使えるのか、他の人も使えるのかとカシュール君に魔法の事を聞いてみた。
カシュール君の話では小さな頃、何となく身体がむずむずして気づいたら水鉄砲のように水が手から出てきたらしい。
みんなは水が出せる事を喜んでくれたから褒められたくて何度も出しているうちに水をすぐに出せるようになったのだとか。父や母も二人いる妹も使えるらしい。
街の人たちも小さな火や水を出すことができる人も多いのだとか。中には魔法が一切使えないけれど、人より重たいものを持ったりすることができる人もいるらしい。
もっと魔法の話を聞いてみたい、子爵に話を聞きたいと胸が高鳴る。
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