【完結】魔女首のラナ

まるねこ

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 静かな毎日。今日も自然に目が覚めてのんびりと外を眺めている。

 午後からは何をしようかと考えていると、誰かが私の家に入ってくる音がする。

 ガタガタ、ゴトン。ガチャリ。

 それはいつぶりか分からない程忘れられていた扉が開かれた音だった。

 入ってきたのは小さな男の子。

 緑がかった金髪に緑目をしていて貴族のような服装をしている。

 男の子はここに一人で来たのだろうか?
 何かを探しに来たのだろうか?

 こんな忘れられた塔に来るなんて珍しい。そう思いながら黙って男の子をじっと観察する。
 男の子はどうやら探検しているようだ。

 ガサゴソと私の私物に触っては『これは何だ?』と物珍しそうに眺めている。

 雑然とした私の部屋を見られるのは少し恥ずかしい気もするが、相手は子供だし気にしない。
 男の子は暫く探検をしているとふと窓際にいる私を見つけた。

「うわっ。生首だ!!!」

 男の子は頭だけの私に驚いたようで後退り、机にぶつかって転んだ。

「うわぁぁぁ!」

 男の子は気が動転しているようで落とした紙類をバサバサと広げながらお尻で歩いている。

 ……何とも器用な事だわ。

「煩いわよ。少しお黙りなさい」

 私の折角の資料を破られるのは困るので男の子に声を掛けることにした。

「うあぁぁぁ。な、生首がしゃべったっっ」

 バチンッと小さな雷を男の子に落とす。

 威力は手をはたいた程度の強さだったのだけれど、驚いた男の子は口を空けながら私を見て止まっていた。

「折角纏めた紙がバラバラになっちゃったじゃない」

 私は愚痴の一つを溢しながら魔法で紙を拾い一つに纏めて置いていく。

 その様子を見た男の子はさっきまでとは打って変わり、キラキラした目で私に話し掛けてきた。

「お前! 魔法が使えるのか!?」
「えぇ。そうよ? それがどうしたの?」

 私は当たり前のように男の子に言った。

 けれど、その言葉を聞いた男の子はさっきにも増して目を輝かせている。生首が怖くないのかしら。

「お前! 俺に魔法を見せろ!」

 言葉遣いと言い、どうやらこの貴族と思われる男の子は言葉遣いがなっていないようだ。

「お前とは誰の事かしら? 名を名乗らぬ者に見せる必要はないわ」
「!!! す、すまなかった。僕はシャヌール国第一王子のツィリル・クルサーチ・ファブリシオだ。もうすぐ九歳になる」
「そう。今はシャヌール国と言うのね」

 私はこの間国名が変わったのはいつだったか思い起こしてみる。

 ……三回だったような?
 気がするわ。

 私が物思いに耽っているとツィリルがプンプンと聞こえてきそうな程の態度で話し掛けてきた。

「さぁ、僕は名を名乗った。お前の名は?」

 こうして人間と話すのはいつぶりかしら。

 答える義務はないけれど、私は久々の人間に興味が湧いたので答えてあげることにした。

「ツィリル王子。私の名はラナ。魔女首のラナよ。見ても分かる通り私は首だけで生きているの。今は何年かしら?」
「カプロ暦千八百二十六年だ」
「そう。もうそんなに経ったのね。私がここに住み着いて約千二百年ってところかしら」「そ、それは本当か!?」
「えぇ。本当よ?ツィリル王子は何故この塔に来たのかしら?」
「えっへん。僕は魔法使いになるためにこの『忘却の塔』に来たんだ!」
「供も付けずに? 黙って来たのでしょう? 皆、王子の行方を探しているわ。早く帰りなさいな」

 王子は私に言われてこっそり来たのを思い出したようで焦っていた。

「わ、分かった。今日の所は帰ってやる。だが、また来るからな」
「はいはい。次来るときは歴史書の一つでも持ってきなさいな」

 私は魔法でツィリル王子を塔の外へと押し出した後、バタンッと勢いよく扉を閉めた。

 珍しい事もあるのね。

 今日は少し魔法を使いすぎたわ。少し眠るとするわ。

 そうして私は窓から自分の頭用ベッドに飛び乗り目を瞑った。
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