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22 出入り禁止となった令嬢
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「フラン様、お客様がお見えになっております」
「ここに私の客? 誰?」
「エフィン公爵令嬢です」
従業員が私の問いに答えた。
今日はブラジェク伯爵の立ち上げた商会で商品の検討会が行われていたの。
最近は私もロイ様との結婚の日取りが決まり、商会の手伝いをするようになっていた。
「仕方がないわね。サロンへお通ししてちょうだい」
「畏まりました」
「お義父様、しばらく席を外しますね」
「ああ。私が対応しようか?」
「いえ、あの馬、公爵令嬢一人くらいいなせなければこれからやっていけないですもの」
「そうか。なら君に任せる。何かあればすぐに呼んで欲しい」
「わかりました」
私は義父となる伯爵の申し出を断り、アーシャを連れて商会のサロンへと向かった。
「エフィン公爵令嬢、お待たせしました。今日は商会にどういったご用件でしょうか?」
「あなたっ! 遅いわよ。私が呼んだならすぐに来なさいよ」
彼女は相変わらず自分の世界だけに生きているのね。
後ろにいた護衛騎士たちの顔ぶれは前回とは変わっている。さすがにあれは公爵家でも問題になったのね。
「今日はどういったご用件でしょうか?」
「貴女に用があってきたのよ」
「……はあ。なんでしょうか」
私はため息を吐きながら彼女を見ていると、彼女の後ろで控えていた従者が重そうな袋を抱えてテーブルの上に置いた。
「この袋には金貨三百枚あるわ。これで彼から手を引きなさい」
私はついその様子に笑ってしまった。
「なんで笑うのよ!」
「いえ、失礼。ロイ様が金貨三百枚の価値しかないと? そのお金は公爵が用意したものではないでしょう?」
「そうよ。私の持てる財産よ。何が悪いの」
彼女は本当に目先のことしか考えていないのね。このことを知れば公爵もさすがに怒ると思うけど。
せっかく前公爵が自分の借金をブラジェク伯爵に押し付けられたのに孫がその借金をまた自分のところに戻そうとしているんだものね。
教えてはあげないけど。
「エフィン公爵令嬢、このお金でブラジェク伯爵子息と婚約を破棄したとしてその後はどうするのです?」
「私が彼のことをずっと面倒みるわ」
「借金はどうするのです?」
「……それは。お父様がなんとかするわ」
「エフィン公爵令嬢とロイ様の婚約は今まで結ばれることはなかったでしょう? それはなぜか考えなかったのでしょうか?
借金がある限り、これからも結ばれることはないでしょうね。ロイ様はずっとエフィン公爵令嬢に買われていろということなのかしら。奴隷がほしいのですか?」
「奴隷!? ロイ様は奴隷じゃないわっ! 貴女、失礼よ」
「お金で買うと言うのはそういうことではないですか? ああ、言葉が悪かったですね。愛妾でしたか」
「ロイ様を愛人なんかにはさせないわ。愛し合っているんですもの」
私は彼女とこれ以上話すのも無駄だとは思ったけれど、一言だけは言っておこうと思った。
「エフィン公爵令嬢、もっと周りを見るべきですね。そのお金は領民が汗水たらして稼いだもの。
あなた一人のお金ではないわ。それにロイ様は婚約解消しないと言ったの。それ以上でもそれ以下でもない。
これ以上ロイ様に付き纏うようでしたらこちらとしても手を打たねばなりません」
「なによっ! 一介の男爵令嬢でしかない貴女に何が出来るっていうのよ! こんな商会すぐに潰せるんだからっ」
「国からブラジェク伯爵の商会に口を出すなと注意を受けているのを知らないのですか?」
「知らないわよ!!」
「話になりません。ブラジェク伯爵の事業を邪魔したいのならどうぞ国へ掛け合ってください」
私がそう話をしていると、サロンに一人の男性が入ってきた。
「ここに私の客? 誰?」
「エフィン公爵令嬢です」
従業員が私の問いに答えた。
今日はブラジェク伯爵の立ち上げた商会で商品の検討会が行われていたの。
最近は私もロイ様との結婚の日取りが決まり、商会の手伝いをするようになっていた。
「仕方がないわね。サロンへお通ししてちょうだい」
「畏まりました」
「お義父様、しばらく席を外しますね」
「ああ。私が対応しようか?」
「いえ、あの馬、公爵令嬢一人くらいいなせなければこれからやっていけないですもの」
「そうか。なら君に任せる。何かあればすぐに呼んで欲しい」
「わかりました」
私は義父となる伯爵の申し出を断り、アーシャを連れて商会のサロンへと向かった。
「エフィン公爵令嬢、お待たせしました。今日は商会にどういったご用件でしょうか?」
「あなたっ! 遅いわよ。私が呼んだならすぐに来なさいよ」
彼女は相変わらず自分の世界だけに生きているのね。
後ろにいた護衛騎士たちの顔ぶれは前回とは変わっている。さすがにあれは公爵家でも問題になったのね。
「今日はどういったご用件でしょうか?」
「貴女に用があってきたのよ」
「……はあ。なんでしょうか」
私はため息を吐きながら彼女を見ていると、彼女の後ろで控えていた従者が重そうな袋を抱えてテーブルの上に置いた。
「この袋には金貨三百枚あるわ。これで彼から手を引きなさい」
私はついその様子に笑ってしまった。
「なんで笑うのよ!」
「いえ、失礼。ロイ様が金貨三百枚の価値しかないと? そのお金は公爵が用意したものではないでしょう?」
「そうよ。私の持てる財産よ。何が悪いの」
彼女は本当に目先のことしか考えていないのね。このことを知れば公爵もさすがに怒ると思うけど。
せっかく前公爵が自分の借金をブラジェク伯爵に押し付けられたのに孫がその借金をまた自分のところに戻そうとしているんだものね。
教えてはあげないけど。
「エフィン公爵令嬢、このお金でブラジェク伯爵子息と婚約を破棄したとしてその後はどうするのです?」
「私が彼のことをずっと面倒みるわ」
「借金はどうするのです?」
「……それは。お父様がなんとかするわ」
「エフィン公爵令嬢とロイ様の婚約は今まで結ばれることはなかったでしょう? それはなぜか考えなかったのでしょうか?
借金がある限り、これからも結ばれることはないでしょうね。ロイ様はずっとエフィン公爵令嬢に買われていろということなのかしら。奴隷がほしいのですか?」
「奴隷!? ロイ様は奴隷じゃないわっ! 貴女、失礼よ」
「お金で買うと言うのはそういうことではないですか? ああ、言葉が悪かったですね。愛妾でしたか」
「ロイ様を愛人なんかにはさせないわ。愛し合っているんですもの」
私は彼女とこれ以上話すのも無駄だとは思ったけれど、一言だけは言っておこうと思った。
「エフィン公爵令嬢、もっと周りを見るべきですね。そのお金は領民が汗水たらして稼いだもの。
あなた一人のお金ではないわ。それにロイ様は婚約解消しないと言ったの。それ以上でもそれ以下でもない。
これ以上ロイ様に付き纏うようでしたらこちらとしても手を打たねばなりません」
「なによっ! 一介の男爵令嬢でしかない貴女に何が出来るっていうのよ! こんな商会すぐに潰せるんだからっ」
「国からブラジェク伯爵の商会に口を出すなと注意を受けているのを知らないのですか?」
「知らないわよ!!」
「話になりません。ブラジェク伯爵の事業を邪魔したいのならどうぞ国へ掛け合ってください」
私がそう話をしていると、サロンに一人の男性が入ってきた。
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