【完結】魔女を求めて今日も彼らはやって来る。

まるねこ

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錬金術師

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「ガロン、今お祖母様達はどこにいるのかしら?」
「カインなら今は水晶の谷で修行しているはずですぞ」

 水晶の谷ね、今はまだ行かない方が良いわね。

 そうだわ! 久々に彼に会いに行きましょう。

「ガロン、思いついたわ。あの錬金術師に会いに行きましょう? まだ生きているかしら?」

 ガロンはパタパタ飛んでいたが、ポフンと執事に変身してジェットを抱える。

「そうですな。辛うじて生きてはいると思いますが急がれた方が良いかと」
「そうよね。すぐ出発しましょう」

 私はいつものようにローブを羽織り街の手前まで転移する。ガロンは何度も街に出ているため驚く事は無いけれど、ジェットは初めての街で興奮しているわね。

 街に入ると、ジェットはポンッと子供に変化して甘い香りがする露店に向かって走ろうとしてガロンに手を繋がれる。

「ガロン! ガロン! あっち!」

 ジェットは指差しをしながらグングンと引っ張っていく。仕方なくジェットに手を引かれて露店前にきた。

「いらっしゃい! 甘くて美味しいトゥルデルニークだよ」

 ドーナツのようなパンには蜂蜜や砂糖がかかっていたり、アーモンドがまぶしていたりととても美味しそうに店頭に並んでいる。

「おじさん、この蜂蜜がかかっている物を一個ちょうだい」

 私はお金を渡すと、おじさんはジェットに『気をつけて食べな!』と渡してくれた。

 ジェットはとても嬉しそうにドゥルデルニークに目と口を一杯に開いて齧り付いた。

「ガロン! 美味しい!」
 ジェットは口の周りに砂糖が付いていてガロンに口を丁寧に拭かれている。
「良かったわね。さぁ、行くわよ」

 ジェットはガロンに抱っこされながらモグモグしている。どうやら一個で満足したみたい。食べ終わると、早速元の黒毛玉に戻って私の肩に乗って目を閉じているわ。

 私達は目的の錬金術師の住んでいる街外れの家に向かった。以前と変わらず、家の周りには魔法が掛かっている。

 まだ生きていそうね。

 ーコンコンコンー

 ノックして私達は家に入る。

「こんにちは。まだ生きているかしら?」

 すると『誰だ?』と作業を止めてこちらを振り向く白髪の老人の姿があった。私に気付いたようで彼はとても驚いていたわ。

「おぉ、あんたは虹色鱗の魔女様じゃないか。今日はどんな用かな」
「剣に付けるチャームとピアスを作って欲しいのよね。お願いできるかしら?」

「作りたいのは山々なんだが、年のせいか細かな作業に時間がかかるんだ。この年だ、完成させるまで生きているかどうか」

 錬金術師は憂いを帯びた顔をしている。

「あら、じゃぁ、若返ればいいんじゃないかしら? そうすれば作れるでしょう?」

 錬金術師は驚いたように聞いてくる。

「そんなことが出来るのか!? 錬金術では若返りや不老不死は永遠のテーマなんだ。出来るのであれば私は若返り、不老不死となって作品を作り続けていきたい」

 白髪の老人は若返りの言葉を聞いてかなり興奮している様子だ。まだ人間達はそこまで到達していないのね。まぁ、仕方がないわよね。今の所母しか作れないもの。

「いいわ、私の持っている若返りの薬を分けてあげる。それとまだ虹色の鱗は手元に残っているんでしょう? 不老の薬を作ってあげるわ。残念ながら不死ではないけれど良いかしら?」

 錬金術師は喜んで棚に置いてある箱をあさり、瓶に入った虹色の鱗を私に差し出した。私は虹色の鱗を受け取ると、替わりに空間から若返りの薬を錬金術師に渡した。

「とりあえず今からこれを飲んでちょうだい。三日後に不老の薬を作って持ってくるわ。若返りの薬は飲んでから定着するまでは二日ほど絶対安静にする事。ではまた三日後にくるわ」

 私はそう告げてガロン達と家へと戻った。

「エイシャ様、今から薬を作るのですかな。久々に難しい薬。たのしみですな」
「そうね。久々に不老の薬を作るわね。失敗しないようにしないとね。ガロン、手伝ってちょうだい」

 そうして私は久々の薬に心も浮かれる。何十種類もの素材を準備し、鍋に一つずつ入れていく。

 入れていく素材の順番があり、間違えると一からやり直しだ。そうして素材を鍋に入れていき一定の魔力を流し、詠唱を行う。

 三日三晩休むことなく続けてようやく完成する事ができた。もちろんガロンの手伝いがあるからこれで済んでいる。

「ガロン、では行ってくるわ。ジェットと留守番をお願いね」

 そう言って転移する。今度は錬金術師の家の前に転移し、ノックして家に入った。

「どう? 調子は良いかしら?」

 私の目の前にいる錬金術師は振り向き、驚きながらも笑顔で出迎えてくれた。

 三日前は白髪の老人だったが今は十代後半位の若さに見えるわ。薬はよく効いたみたいね。

「魔女様のおかげでどうやら十八、十九くらいまで戻ったようだ。身体が軽くて意欲が湧き出てくるんだ」
「あら、良かったわね。これ、今日はこれを持ってきたわ。不老の薬。不死では無いから気をつけるのよ?」

 私は出来上がった虹色の液体の入った小瓶を渡す。

「俺は、この不老の薬を作る事は出来るようになるのだろうか?」
「今は無理でしょうね。けれど、不老になったのだからいつかは出来るはずよ? この薬を飲んだら身体中が痛み始めるわ。痛みが治ると薬が効いたと思ってちょうだい。無事を祈るわ。

 あと、不老になったらチャームとピアスを作って欲しいのよ。出来たらこの魔法手紙に包んでくれると勝手に私の所に送られるわ。薬の対価はピアスとチャームでいいわ。ではまた忘れた頃に来るわ」

 私はそうして家まで転移する。

「エイシャ様、対価が軽すぎではないですかな?」

 ガロンはお茶を淹れながら聞いてきた。

「あら、ガロン。珍しいわね。対価はあれでいいのよ? この先何百年もお世話になるのだから安いものよ。彼なら神族にも気に入られるような良い物が作れるわ。ふふ、成長が楽しみね」

 ガロンは珍しくヤレヤレと肩を窄めていた。

 それから三ヶ月程した後、魔法手紙に包んできたピアスとチャームは素晴らしい出来栄えだった。これにはガロンも目を丸くして認めているようだったわ。
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