51 / 82
錬金術師
しおりを挟む
「ガロン、今お祖母様達はどこにいるのかしら?」
「カインなら今は水晶の谷で修行しているはずですぞ」
水晶の谷ね、今はまだ行かない方が良いわね。
そうだわ! 久々に彼に会いに行きましょう。
「ガロン、思いついたわ。あの錬金術師に会いに行きましょう? まだ生きているかしら?」
ガロンはパタパタ飛んでいたが、ポフンと執事に変身してジェットを抱える。
「そうですな。辛うじて生きてはいると思いますが急がれた方が良いかと」
「そうよね。すぐ出発しましょう」
私はいつものようにローブを羽織り街の手前まで転移する。ガロンは何度も街に出ているため驚く事は無いけれど、ジェットは初めての街で興奮しているわね。
街に入ると、ジェットはポンッと子供に変化して甘い香りがする露店に向かって走ろうとしてガロンに手を繋がれる。
「ガロン! ガロン! あっち!」
ジェットは指差しをしながらグングンと引っ張っていく。仕方なくジェットに手を引かれて露店前にきた。
「いらっしゃい! 甘くて美味しいトゥルデルニークだよ」
ドーナツのようなパンには蜂蜜や砂糖がかかっていたり、アーモンドがまぶしていたりととても美味しそうに店頭に並んでいる。
「おじさん、この蜂蜜がかかっている物を一個ちょうだい」
私はお金を渡すと、おじさんはジェットに『気をつけて食べな!』と渡してくれた。
ジェットはとても嬉しそうにドゥルデルニークに目と口を一杯に開いて齧り付いた。
「ガロン! 美味しい!」
ジェットは口の周りに砂糖が付いていてガロンに口を丁寧に拭かれている。
「良かったわね。さぁ、行くわよ」
ジェットはガロンに抱っこされながらモグモグしている。どうやら一個で満足したみたい。食べ終わると、早速元の黒毛玉に戻って私の肩に乗って目を閉じているわ。
私達は目的の錬金術師の住んでいる街外れの家に向かった。以前と変わらず、家の周りには魔法が掛かっている。
まだ生きていそうね。
ーコンコンコンー
ノックして私達は家に入る。
「こんにちは。まだ生きているかしら?」
すると『誰だ?』と作業を止めてこちらを振り向く白髪の老人の姿があった。私に気付いたようで彼はとても驚いていたわ。
「おぉ、あんたは虹色鱗の魔女様じゃないか。今日はどんな用かな」
「剣に付けるチャームとピアスを作って欲しいのよね。お願いできるかしら?」
「作りたいのは山々なんだが、年のせいか細かな作業に時間がかかるんだ。この年だ、完成させるまで生きているかどうか」
錬金術師は憂いを帯びた顔をしている。
「あら、じゃぁ、若返ればいいんじゃないかしら? そうすれば作れるでしょう?」
錬金術師は驚いたように聞いてくる。
「そんなことが出来るのか!? 錬金術では若返りや不老不死は永遠のテーマなんだ。出来るのであれば私は若返り、不老不死となって作品を作り続けていきたい」
白髪の老人は若返りの言葉を聞いてかなり興奮している様子だ。まだ人間達はそこまで到達していないのね。まぁ、仕方がないわよね。今の所母しか作れないもの。
「いいわ、私の持っている若返りの薬を分けてあげる。それとまだ虹色の鱗は手元に残っているんでしょう? 不老の薬を作ってあげるわ。残念ながら不死ではないけれど良いかしら?」
錬金術師は喜んで棚に置いてある箱をあさり、瓶に入った虹色の鱗を私に差し出した。私は虹色の鱗を受け取ると、替わりに空間から若返りの薬を錬金術師に渡した。
「とりあえず今からこれを飲んでちょうだい。三日後に不老の薬を作って持ってくるわ。若返りの薬は飲んでから定着するまでは二日ほど絶対安静にする事。ではまた三日後にくるわ」
私はそう告げてガロン達と家へと戻った。
「エイシャ様、今から薬を作るのですかな。久々に難しい薬。たのしみですな」
「そうね。久々に不老の薬を作るわね。失敗しないようにしないとね。ガロン、手伝ってちょうだい」
そうして私は久々の薬に心も浮かれる。何十種類もの素材を準備し、鍋に一つずつ入れていく。
入れていく素材の順番があり、間違えると一からやり直しだ。そうして素材を鍋に入れていき一定の魔力を流し、詠唱を行う。
三日三晩休むことなく続けてようやく完成する事ができた。もちろんガロンの手伝いがあるからこれで済んでいる。
「ガロン、では行ってくるわ。ジェットと留守番をお願いね」
そう言って転移する。今度は錬金術師の家の前に転移し、ノックして家に入った。
「どう? 調子は良いかしら?」
私の目の前にいる錬金術師は振り向き、驚きながらも笑顔で出迎えてくれた。
三日前は白髪の老人だったが今は十代後半位の若さに見えるわ。薬はよく効いたみたいね。
「魔女様のおかげでどうやら十八、十九くらいまで戻ったようだ。身体が軽くて意欲が湧き出てくるんだ」
「あら、良かったわね。これ、今日はこれを持ってきたわ。不老の薬。不死では無いから気をつけるのよ?」
私は出来上がった虹色の液体の入った小瓶を渡す。
「俺は、この不老の薬を作る事は出来るようになるのだろうか?」
「今は無理でしょうね。けれど、不老になったのだからいつかは出来るはずよ? この薬を飲んだら身体中が痛み始めるわ。痛みが治ると薬が効いたと思ってちょうだい。無事を祈るわ。
あと、不老になったらチャームとピアスを作って欲しいのよ。出来たらこの魔法手紙に包んでくれると勝手に私の所に送られるわ。薬の対価はピアスとチャームでいいわ。ではまた忘れた頃に来るわ」
私はそうして家まで転移する。
「エイシャ様、対価が軽すぎではないですかな?」
ガロンはお茶を淹れながら聞いてきた。
「あら、ガロン。珍しいわね。対価はあれでいいのよ? この先何百年もお世話になるのだから安いものよ。彼なら神族にも気に入られるような良い物が作れるわ。ふふ、成長が楽しみね」
ガロンは珍しくヤレヤレと肩を窄めていた。
それから三ヶ月程した後、魔法手紙に包んできたピアスとチャームは素晴らしい出来栄えだった。これにはガロンも目を丸くして認めているようだったわ。
「カインなら今は水晶の谷で修行しているはずですぞ」
水晶の谷ね、今はまだ行かない方が良いわね。
そうだわ! 久々に彼に会いに行きましょう。
「ガロン、思いついたわ。あの錬金術師に会いに行きましょう? まだ生きているかしら?」
ガロンはパタパタ飛んでいたが、ポフンと執事に変身してジェットを抱える。
「そうですな。辛うじて生きてはいると思いますが急がれた方が良いかと」
「そうよね。すぐ出発しましょう」
私はいつものようにローブを羽織り街の手前まで転移する。ガロンは何度も街に出ているため驚く事は無いけれど、ジェットは初めての街で興奮しているわね。
街に入ると、ジェットはポンッと子供に変化して甘い香りがする露店に向かって走ろうとしてガロンに手を繋がれる。
「ガロン! ガロン! あっち!」
ジェットは指差しをしながらグングンと引っ張っていく。仕方なくジェットに手を引かれて露店前にきた。
「いらっしゃい! 甘くて美味しいトゥルデルニークだよ」
ドーナツのようなパンには蜂蜜や砂糖がかかっていたり、アーモンドがまぶしていたりととても美味しそうに店頭に並んでいる。
「おじさん、この蜂蜜がかかっている物を一個ちょうだい」
私はお金を渡すと、おじさんはジェットに『気をつけて食べな!』と渡してくれた。
ジェットはとても嬉しそうにドゥルデルニークに目と口を一杯に開いて齧り付いた。
「ガロン! 美味しい!」
ジェットは口の周りに砂糖が付いていてガロンに口を丁寧に拭かれている。
「良かったわね。さぁ、行くわよ」
ジェットはガロンに抱っこされながらモグモグしている。どうやら一個で満足したみたい。食べ終わると、早速元の黒毛玉に戻って私の肩に乗って目を閉じているわ。
私達は目的の錬金術師の住んでいる街外れの家に向かった。以前と変わらず、家の周りには魔法が掛かっている。
まだ生きていそうね。
ーコンコンコンー
ノックして私達は家に入る。
「こんにちは。まだ生きているかしら?」
すると『誰だ?』と作業を止めてこちらを振り向く白髪の老人の姿があった。私に気付いたようで彼はとても驚いていたわ。
「おぉ、あんたは虹色鱗の魔女様じゃないか。今日はどんな用かな」
「剣に付けるチャームとピアスを作って欲しいのよね。お願いできるかしら?」
「作りたいのは山々なんだが、年のせいか細かな作業に時間がかかるんだ。この年だ、完成させるまで生きているかどうか」
錬金術師は憂いを帯びた顔をしている。
「あら、じゃぁ、若返ればいいんじゃないかしら? そうすれば作れるでしょう?」
錬金術師は驚いたように聞いてくる。
「そんなことが出来るのか!? 錬金術では若返りや不老不死は永遠のテーマなんだ。出来るのであれば私は若返り、不老不死となって作品を作り続けていきたい」
白髪の老人は若返りの言葉を聞いてかなり興奮している様子だ。まだ人間達はそこまで到達していないのね。まぁ、仕方がないわよね。今の所母しか作れないもの。
「いいわ、私の持っている若返りの薬を分けてあげる。それとまだ虹色の鱗は手元に残っているんでしょう? 不老の薬を作ってあげるわ。残念ながら不死ではないけれど良いかしら?」
錬金術師は喜んで棚に置いてある箱をあさり、瓶に入った虹色の鱗を私に差し出した。私は虹色の鱗を受け取ると、替わりに空間から若返りの薬を錬金術師に渡した。
「とりあえず今からこれを飲んでちょうだい。三日後に不老の薬を作って持ってくるわ。若返りの薬は飲んでから定着するまでは二日ほど絶対安静にする事。ではまた三日後にくるわ」
私はそう告げてガロン達と家へと戻った。
「エイシャ様、今から薬を作るのですかな。久々に難しい薬。たのしみですな」
「そうね。久々に不老の薬を作るわね。失敗しないようにしないとね。ガロン、手伝ってちょうだい」
そうして私は久々の薬に心も浮かれる。何十種類もの素材を準備し、鍋に一つずつ入れていく。
入れていく素材の順番があり、間違えると一からやり直しだ。そうして素材を鍋に入れていき一定の魔力を流し、詠唱を行う。
三日三晩休むことなく続けてようやく完成する事ができた。もちろんガロンの手伝いがあるからこれで済んでいる。
「ガロン、では行ってくるわ。ジェットと留守番をお願いね」
そう言って転移する。今度は錬金術師の家の前に転移し、ノックして家に入った。
「どう? 調子は良いかしら?」
私の目の前にいる錬金術師は振り向き、驚きながらも笑顔で出迎えてくれた。
三日前は白髪の老人だったが今は十代後半位の若さに見えるわ。薬はよく効いたみたいね。
「魔女様のおかげでどうやら十八、十九くらいまで戻ったようだ。身体が軽くて意欲が湧き出てくるんだ」
「あら、良かったわね。これ、今日はこれを持ってきたわ。不老の薬。不死では無いから気をつけるのよ?」
私は出来上がった虹色の液体の入った小瓶を渡す。
「俺は、この不老の薬を作る事は出来るようになるのだろうか?」
「今は無理でしょうね。けれど、不老になったのだからいつかは出来るはずよ? この薬を飲んだら身体中が痛み始めるわ。痛みが治ると薬が効いたと思ってちょうだい。無事を祈るわ。
あと、不老になったらチャームとピアスを作って欲しいのよ。出来たらこの魔法手紙に包んでくれると勝手に私の所に送られるわ。薬の対価はピアスとチャームでいいわ。ではまた忘れた頃に来るわ」
私はそうして家まで転移する。
「エイシャ様、対価が軽すぎではないですかな?」
ガロンはお茶を淹れながら聞いてきた。
「あら、ガロン。珍しいわね。対価はあれでいいのよ? この先何百年もお世話になるのだから安いものよ。彼なら神族にも気に入られるような良い物が作れるわ。ふふ、成長が楽しみね」
ガロンは珍しくヤレヤレと肩を窄めていた。
それから三ヶ月程した後、魔法手紙に包んできたピアスとチャームは素晴らしい出来栄えだった。これにはガロンも目を丸くして認めているようだったわ。
67
あなたにおすすめの小説
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
偽りの婚姻
迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。
終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。
夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。
パーシヴァルは妻を探す。
妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。
だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。
婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……
特技は有効利用しよう。
庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。
…………。
どうしてくれよう……。
婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。
この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる