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入学式と聖女さま
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「新入生の皆さん、こんにちは。」
朗々と響く低い声は、学園長の威厳と貫禄を感じさせる。
ホールに集められた入学生達が、舞台の上に立つ学園長からの祝辞に緊張した面持ちで真剣に耳を傾けている。
これから始まる学校生活への憧れと期待を胸にふくらませ、ドキドキと胸が高鳴った。
「____皆さんの未来が輝かしいものになるよう、教職員一同力を合わせ支援をさせて頂く所存であります。__改めまして、皆さんの入学を心より歓迎致します。」
学園長の祝辞の後は、生徒会長であるルブラン殿下から新入生への言葉。
「新入生の皆さん、こんにちは。生徒会長のルブラン・マグダナイトと申します。」
見目秀麗な殿下に女性陣の視線はクギ付けだ。
微笑を崩さず、堂々と祝辞を述べる姿は凄くかっこいい。正しく、理想の先輩像そのものだ。
ルブラン殿下のお言葉に大きな拍手で新入生が応える。
「ルブラン殿下素晴らしいお言葉をありがとうございました。続きまして____」
いくら入学式を楽しみにしていても、やはり長い間同じ姿勢を維持するのは疲れた。後半はだいたい同じことしか言わないし…
入学式後、私はクラス分けテストともうひとつ用事があるのでそれまでの間エリザベス達と談話していた。
すると、廊下の向こうから、黄色い歓声が湧いた。
人の波を裂くように、ルブラン殿下がこちらに向かってくるのが見える。
「入学おめでとう。エリザベス、スティール、アリア。」
「ええ、ルーヴ、祝辞お疲れ様。素敵だったわよ。」
「ありがとう、兄上。祝辞、最高だった!」
「ありがとうございます。祝辞かっこよかったです!」
「ありがとう。」
しばらく、4人で話したら集合時間が近くなってきたので3人と別れて教室に向かった。
テストは、前々から勉強していた成果を出すことができ難なく終わった。そして、今からもうひとつの用事に向かう。
今日は、入学式とテストしか無かったからまだお昼前だ。窓ガラスを通して眩しい陽の光が入り込んでいる。
春先の暖かい空気の中、誰もいない静かな校舎を歩く。
待ち合わせ場所は、温室。
音質はガラス張りで、植物に光が届きやすいようになっている。植物との見栄えもあると思うけど。
入口である磨りガラスのドアを開けると、人影が見えた。…約束時間の30分前だけど、もしかして__
ドアの開く音で、こちらを振り返る人影。
温室に射し込む日光に照らされて、キラキラと反射した銀色の髪の毛と金色の瞳が美しい少女がそこにいた。
「お初にお目にかかります、アリア・シュトラウスと申します。…貴方様のお名前をお聞かせ願えますか?」
「…私は、イザベル……と申します。」
やはり間違いない。このお方が、聖女であるイザベル・スティアラー様。
「……どなたからか、言伝を預かってはいませんか?」
「……いいえ、私は陽が上がりきる前に温室に向かうよう言われただけなのです。」
「そうでしたか。」
ふむ。私もルブラン殿下から、会えるように手筈を整えておいたとしか言われてない。
私から、お手伝いをさせて頂きたいという旨を伝えるべきよね。
イザベル様は、先程から視線を下に逸らしたまま少し俯いている。
「スティアラー様、私と少しお話しませんか?」
「……え?」
私の提案に驚いたのか俯いていた顔を上げた。開かれた金色の瞳と、視線が重なり私は微笑んだ。
朗々と響く低い声は、学園長の威厳と貫禄を感じさせる。
ホールに集められた入学生達が、舞台の上に立つ学園長からの祝辞に緊張した面持ちで真剣に耳を傾けている。
これから始まる学校生活への憧れと期待を胸にふくらませ、ドキドキと胸が高鳴った。
「____皆さんの未来が輝かしいものになるよう、教職員一同力を合わせ支援をさせて頂く所存であります。__改めまして、皆さんの入学を心より歓迎致します。」
学園長の祝辞の後は、生徒会長であるルブラン殿下から新入生への言葉。
「新入生の皆さん、こんにちは。生徒会長のルブラン・マグダナイトと申します。」
見目秀麗な殿下に女性陣の視線はクギ付けだ。
微笑を崩さず、堂々と祝辞を述べる姿は凄くかっこいい。正しく、理想の先輩像そのものだ。
ルブラン殿下のお言葉に大きな拍手で新入生が応える。
「ルブラン殿下素晴らしいお言葉をありがとうございました。続きまして____」
いくら入学式を楽しみにしていても、やはり長い間同じ姿勢を維持するのは疲れた。後半はだいたい同じことしか言わないし…
入学式後、私はクラス分けテストともうひとつ用事があるのでそれまでの間エリザベス達と談話していた。
すると、廊下の向こうから、黄色い歓声が湧いた。
人の波を裂くように、ルブラン殿下がこちらに向かってくるのが見える。
「入学おめでとう。エリザベス、スティール、アリア。」
「ええ、ルーヴ、祝辞お疲れ様。素敵だったわよ。」
「ありがとう、兄上。祝辞、最高だった!」
「ありがとうございます。祝辞かっこよかったです!」
「ありがとう。」
しばらく、4人で話したら集合時間が近くなってきたので3人と別れて教室に向かった。
テストは、前々から勉強していた成果を出すことができ難なく終わった。そして、今からもうひとつの用事に向かう。
今日は、入学式とテストしか無かったからまだお昼前だ。窓ガラスを通して眩しい陽の光が入り込んでいる。
春先の暖かい空気の中、誰もいない静かな校舎を歩く。
待ち合わせ場所は、温室。
音質はガラス張りで、植物に光が届きやすいようになっている。植物との見栄えもあると思うけど。
入口である磨りガラスのドアを開けると、人影が見えた。…約束時間の30分前だけど、もしかして__
ドアの開く音で、こちらを振り返る人影。
温室に射し込む日光に照らされて、キラキラと反射した銀色の髪の毛と金色の瞳が美しい少女がそこにいた。
「お初にお目にかかります、アリア・シュトラウスと申します。…貴方様のお名前をお聞かせ願えますか?」
「…私は、イザベル……と申します。」
やはり間違いない。このお方が、聖女であるイザベル・スティアラー様。
「……どなたからか、言伝を預かってはいませんか?」
「……いいえ、私は陽が上がりきる前に温室に向かうよう言われただけなのです。」
「そうでしたか。」
ふむ。私もルブラン殿下から、会えるように手筈を整えておいたとしか言われてない。
私から、お手伝いをさせて頂きたいという旨を伝えるべきよね。
イザベル様は、先程から視線を下に逸らしたまま少し俯いている。
「スティアラー様、私と少しお話しませんか?」
「……え?」
私の提案に驚いたのか俯いていた顔を上げた。開かれた金色の瞳と、視線が重なり私は微笑んだ。
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