星降る夜を貴方に

ごま

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愛しさを示して

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噂を払拭する為には、それを塗り替える事実が必要。つまり、私とエリザベスがとっても仲が良いことをみんなに知ってもらえば、噂を信じる人も少なくなる筈。

まず、スティールに言われた通りエリザベスに相談することにした。

というより、私がどう伝えればいいのかうだうだと悩んでいる間にスティールからエリザベスに伝わってしまったみたいで_____

「アリア、今日の放課後時間あるわね?」

「はい…あります」

ニコニコと満面の笑みを浮かべたエリザベスは迫力が凄くてこれ絶対おこr




「アーリーアー」

腰に手を当てて座る私の目の前で仁王立ちをするエリザベスの顔は般若さながらに怒りで歪んでいる。


「はい」

「どうして、私に言わないのかしら?」

「……エリザベスは無視なさることを望んでいたように思ったので自分もそのようにするべきだと…」

「はぁ?答えになってないわ。あなたが傷ついているのに、気づけない私が馬鹿みたいじゃない。」

「ごめんなさい…」

「別に謝罪なんて要らないわよ。私が言いたいのは、私だってアリアが気にするって分かってたら、予想出来ていたら、あんな噂さっさと消してた。」

エリザベスは、息を吐き出すと私の隣に腰掛けた。

「ごめんなさい、友達なのにアリアのことを考えられなくて。」

エリザベスは何も悪くない。
私は首を横に振って
「エリザベスは、何も、悪くありません。全ては、噂をする卑しい人と弱い私で___」

「馬鹿なこと言ってないでよ……!!」

顔をあげたエリザベスが私の目を睨むように見つめながらそう叫んだ。

「どこの世界に友達が傷ついてるのに悪くないって言われて平気な顔してそっかって納得できる人がいるって言うのよ……!」

涙目になったエリザベスが私の顔を手で包んで必死になって伝えてくれる。

「……アリアが判断することじゃないわ!気づけない私が悪かったのよ…私は嫌なの、大切な友達を守れない、頼って貰えないことが……お願いだから、遠慮なんかしないでよ…!」

私を強く抱きしめたエリザベスの手はとても温かくてまるで優しさに包まれているかのように錯覚した。

「ていうか、あなたおかしいのよ。私の事、ただ1人の女の子として見ていてくれてその上で一つ一つの役割を認めて、尊重してくれる癖に何故同じことを求めてはくれないの。」

上目遣いに少し眉間に皺を寄せているエリザベスはすごく可愛い。とても可愛い。

「ちょっと聞いてるの?」

「聞いてます。」

「で、どうしてなのかしら?」

「私……元々人に甘える…というかどのように自分から人との距離を詰めればいいのか…わからなくて。今まで、エリザベス達以外にも私と仲良くしようと声をかけて下さった方はいらしたんです。でも…どうしても殆ど無意識的に壁を作って本当の自分を見せられませんでした。」

「…笑わせるような話題を積極的に探して、会話が途切れるのが我慢出来ないので失敗談をわざと誇張して話したり、相手の話を盛り上げて自分を深掘りさせないようにしたり。……道化…と言われたこともありました。」

「そうやって、自分の身を守っているうちにエリザベス達にすら話しかけることが…怖くなりました。もちろん、エリザベス達のことを友達だと思っていないとか信頼出来ないとかそういう風には思っていません。ご一緒できる時間が私の楽しみです。」

「きっと私は、いつも恐れています。エリザベス達にさえ嫌われてしまったら……と。だから、いつも1人でまず何とかしようと行動してしまうのだと思います…ごめんなさい。自分から、何かを、求めることが怖いのです。」

眉を八の字に曲げたエリザベスが心配そうに私の顔を覗き込み、それからまた抱きしめてくれた。

最近私は、抱きしめて貰ってばかりだ。

「私は、君とよく似た人を知っているよ。……道化を演じることは、1番手軽な身を守る方法だ。…ただ、自分を見失う危険性とアリアのように自分を見せることが怖くなる。」

「自分で壁を作っていると分かっているから、相手からの好意を受け取らないね。上辺だけだと感じるからだよね?好意を受け取らなければ、返せなければ、相手と深い関係になることがない、相手に自分を見せられない。」

「……とある哲学者が言っていたけど、自分を作っているのは自分じゃない。他人からの認識や評価が創り出している、という考え方。世界でたった1人になった時、自分が何者か分からなくなるそうだ。」

「案外、自分を知っているのは、創り出しているのは、アリア自身ではなく私たちかも知れない。きっと、道化を纏って身を守るアリアも、私たちには自分を見せたいと思いながらも遠慮するアリアも、紛れもない君の一部だ。頼るのが怖いなら、見せることが怖いならそれすら、話してみてくれないかな?」

「はい…これからそうしてみます。」

皆の優しさが嬉しくてこの間も泣いたのに、また目に涙が溜まってきてしまった。心の中の突っかかりとともに涙が流れた。















積極的にエリザベスへ話しかけに行くことに決めた。
あんな変な噂が広がったのは、私が受け身だったせいだ。私もエリザベスと共にいたいということを示して行かなければならない。
まずは、お菓子作戦なり。



「っえ、エリザベス!」

吃ったとかそんなことは無い。幻聴である。

「何?」

「お昼ご一緒して下さい!」

「喜んで」

エリザベスは私に誘ってもらえたことが嬉しいかのように振る舞ってくれるから、私も嬉しい。

久々に自分からエリザベスを誘ったような気がする。

いつもは、食堂にあるほぼ個室のように周りの視線から遮られているところで4人で食べていたけど今日は天気もいいので、外で食べることにした。

他の人が利用しているのをみて羨ましく思っていたので誘うことが出来て良かった。

いつものように4人で楽しく昼食を食べ終わって一息ついたところでお菓子を取り出す。

今回は、チョコブラウニーとアイシングクッキー、マカロンに似たお菓子を作ってきた。

もちろん全て全員分あるけど、ルブラン殿下はブラウニー以外を召し上がることは無いと思う為言われるまで出さない。

「……これはクッキーに色がついているんだ、何で描いてあるの?」

不思議そうな顔をしたスティールに意気揚々と説明する。

「これは、粉状の砂糖を水で溶かし、それに着色してクッキーに糖衣しているんです!あ、着色料は植物由来のものを使用しているので砂糖が甘い以外の健康被害はありませんからご安心ください。」

「…私の分は?」

「……このクッキーは、糖衣があるのでルブラン殿下には甘すぎると思うのですが___」

「……」

こてんと小首をかしげて手を差し出している。とても可愛らしい仕草ではあるけど、絶対甘いと思うんだけどなぁ?後で文句言われても知りません。

「どうぞ。」

ついでにマカロン紛いも渡しておいた。

そんなに難しい柄は描けなかったので、3人の瞳の色の薔薇や、くまやひつじ、ねこにした。

マカロンは、アーモンドプードルの代用品が上手く見つけられなかったので、アーモンドに似たリプアンスという木の実を根気よくすり潰して代わりにした。

そのせいか、なんか記憶の中にあるマカロンよりもしっとりしてしまい、バームクーヘンみたいな食感になりました。これはマカロンとは否なるものである。

次は、授業中に大勢へのアピール作戦なり。











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