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36.蛇族の元王子様
「おまえはもう下がれ」
ユラン殿下の言葉に、わたしの肩をつかんでいた従僕は弾かれたように後ろに飛びのいた。
「エステル」
もう一歩近づかれ、わたしは叫ぶように言った。
「申し訳ありません許してください!」
前世で何があったのかは知らないが、もう勘弁してほしい。クレイン様じゃないけど、今を生きようよ、今を!
「……許す?」
ユラン殿下は足を止め、戸惑ったような声で言った。
「なんのことだ? なにを言っている?」
「な、なにって……、あの、あなたはユラン殿下ですよね?」
わたしは震えながら問いかけた。
間違いなくこの人は、あの時の不法侵入者だと思うんだけど……。
わたしの問いかけに、不吉な死神のような男性はうなずき、言った。
「いかにも。俺の名はユラン・ベル・リス・ズメイ。ズメイ王国の第二王子……、だった。今は王籍を剥奪されたゆえ、身分を持たぬが」
やっぱりそうかー!
わたしは絶望で泣きそうになりながら、ふたたび叫んだ。
「ご、ごめんなさい、本当に申し訳ありません!」
「なにを謝る」
「なにって……、ぜ、前世のことです」
わたしは震えながらユラン殿下を見上げた。
月明りの下、フードを外したせいでユラン殿下の顔がよく見えた。
肩につくくらいの長さの真っ直ぐな黒髪に、つり上がり気味の赤い瞳。ちょっとキツい印象だけど端整な容姿をしている。こんな状況じゃなければ美しいお方だなあと思えただろうけど、いかんせん今は恐怖しかない。
「前世? ……おまえは前世を覚えているのか?」
ユラン殿下の言葉に、わたしは激しく首を横に振った。
「ごめんなさい、覚えてません!」
「……そうか」
怒るかな、とびくびくしながら顔を上げたが、なぜかユラン殿下は安心したような表情をしていた。
「エステル」
肩をつかまれ、ぐいっと体を引き寄せられた。
「行くぞ」
そのまま強引に歩きだそうとするユラン殿下に、わたしは叫んだ。
「待って、離してください!」
なんとかユラン殿下の手から逃れようとするわたしに、殿下は顔をしかめた。
「何をしている。大人しくしろ」
「お、大人しくって……、わ、わたしをどこに連れていくおつもりなんですか!?」
「どこに……」
ユラン殿下は立ち止まり、困ったように首をかしげた。
「それは考えていなかった」
「はあ!?」
わたしはまじまじとユラン殿下を見た。
「え……、え? ど、どういう事ですか?」
「……おまえと二人きりになりたいとは思ったが、どこに行くのかまでは考えていなかった。……おまえはどこに行きたい? おまえの行きたい場所に行こう、エステル」
わたしはちょっと呆れてユラン殿下を見た。
クレイン様もだけど、獣人族の王子様ってなんか……。いや、一括りにするのはよくない。よくないけど、この王子様も何となく、クレイン様と同じ浮世離れした感じがするなあ。
ユラン殿下の言葉に、わたしの肩をつかんでいた従僕は弾かれたように後ろに飛びのいた。
「エステル」
もう一歩近づかれ、わたしは叫ぶように言った。
「申し訳ありません許してください!」
前世で何があったのかは知らないが、もう勘弁してほしい。クレイン様じゃないけど、今を生きようよ、今を!
「……許す?」
ユラン殿下は足を止め、戸惑ったような声で言った。
「なんのことだ? なにを言っている?」
「な、なにって……、あの、あなたはユラン殿下ですよね?」
わたしは震えながら問いかけた。
間違いなくこの人は、あの時の不法侵入者だと思うんだけど……。
わたしの問いかけに、不吉な死神のような男性はうなずき、言った。
「いかにも。俺の名はユラン・ベル・リス・ズメイ。ズメイ王国の第二王子……、だった。今は王籍を剥奪されたゆえ、身分を持たぬが」
やっぱりそうかー!
わたしは絶望で泣きそうになりながら、ふたたび叫んだ。
「ご、ごめんなさい、本当に申し訳ありません!」
「なにを謝る」
「なにって……、ぜ、前世のことです」
わたしは震えながらユラン殿下を見上げた。
月明りの下、フードを外したせいでユラン殿下の顔がよく見えた。
肩につくくらいの長さの真っ直ぐな黒髪に、つり上がり気味の赤い瞳。ちょっとキツい印象だけど端整な容姿をしている。こんな状況じゃなければ美しいお方だなあと思えただろうけど、いかんせん今は恐怖しかない。
「前世? ……おまえは前世を覚えているのか?」
ユラン殿下の言葉に、わたしは激しく首を横に振った。
「ごめんなさい、覚えてません!」
「……そうか」
怒るかな、とびくびくしながら顔を上げたが、なぜかユラン殿下は安心したような表情をしていた。
「エステル」
肩をつかまれ、ぐいっと体を引き寄せられた。
「行くぞ」
そのまま強引に歩きだそうとするユラン殿下に、わたしは叫んだ。
「待って、離してください!」
なんとかユラン殿下の手から逃れようとするわたしに、殿下は顔をしかめた。
「何をしている。大人しくしろ」
「お、大人しくって……、わ、わたしをどこに連れていくおつもりなんですか!?」
「どこに……」
ユラン殿下は立ち止まり、困ったように首をかしげた。
「それは考えていなかった」
「はあ!?」
わたしはまじまじとユラン殿下を見た。
「え……、え? ど、どういう事ですか?」
「……おまえと二人きりになりたいとは思ったが、どこに行くのかまでは考えていなかった。……おまえはどこに行きたい? おまえの行きたい場所に行こう、エステル」
わたしはちょっと呆れてユラン殿下を見た。
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