悪の組織のバイトが活躍したらダメですか?

くらげさん

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良い後輩

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◇◇◇◇


 時計を持って、勇先輩が起きそうな時間帯にアラームをセットする。

「こんなに良い後輩は何処にもいませんからね」

 ベッドに寝そべる勇先輩に布団をかける。

 だがしかし、昨日からちょっと付き合いすぎたなと反省する。朝になるなんて思わなかった。……もう学校へ行く時間だ。

「もうここで着替えるしかないかな」

 僕は窓から入ってくる朝の陽射しをカーテンで遮った。


 姿鏡の前でコートとシャツとズボンを脱ぎ、変身ベルトのアイテムボックスに放り込む。トランクスも脱ぎ、大事に畳んでアイテムボックスに入れる。

 下着のトランクスは僕の誕生日に勇先輩がくれたものだ。

 右腕の銀色のブレスレットを外すと、水色の髪が腰まで長くなる。

 姿鏡に映った自分の姿は、体格の角がなくなり、全体的に身体が丸くなっていることを確認する。

 水色のショーツとブラをベルトから取り出して、スルスルッとショーツを履き、ブラを着用する。

「少し大きくなったかも」

 胸を両肘の腹で持つと重量感があり、Dカップのあるブラが少しキツくなっていた。

「学校の帰りにランジェリーショップに行こうかな」

 学校帰りの予定を立てると、シャツをベルトから取り出して、スルッスルッとシャツの袖に手を通す。

 眠いからだろうか? ボタンを止めるのにも苦労する。

 次にベルトから取り出したのは、青と白のチェックのスカート。スカートは足で跨ぐ、そこから腰まで持って来てチャックを閉める。

 変身ベルトをスカートに装着すると、白のブレザーを取り出して羽織る。

 赤のリボンを襟先に付ける。

 ブレザーのボタンを締めながら、姿鏡で変な所が無いか最終チェック。

「よし完了かな」


 茶色の学校指定のカバンを持って、勇先輩の寝顔を見る。

「ここに美少女がいますよ~、大特価セールです。僕の名前を呼んだらタダで付き合ってやらなくもないですよ~」

 勇先輩の頬を人差し指でチョンチョンと指す。

「ぅうん、岡村」

「ッ!」

「岡村は、ホントに、良い奴だ」

 寝言でも自分の事を褒めてくれる勇先輩。

「はぁ。むぅ!」

 チョンチョンじゃ足りなかった。グリグリと人差し指に力を加える。

 視界に姿鏡が入ると、自分の顔が真っ赤になっている事に気づいて、勇先輩に向けている指をしまう。

 自分の火照った顔を手で仰ぎながら、僕は学校に行くことにした。




 ガチャりと勇先輩の家のドアを開閉して、合鍵で閉める。


「あなた、誰?」

 綺麗な凛とする声が聞こえてきて、声の方に振り向くと女の人がいた。その女の人の顔を見た瞬間に思う、僕と同じか、それ以上の美少女だと。

 そして、この女の人は魔法少女だ。

「僕……私は岡村春おかむらはる、勇先輩の後輩です」

「その制服。蘭華らんか女子高よね」

「はい。で、桜川さんはどうしてここへ?」

 桜川さんの眉がピクんと跳ねた。名前は合ってたみたいだ。

 この人が、勇先輩の元彼女。

 桜川さんは僕を警戒している。

「今は勇先輩の恋人をやらせていただいてます」

 僕が彼女と言うと、朝の澄み切った空気に鋭さが宿った気がして、桜川さんの黒の髪がほんのりとピンクがかった。

「恋人は冗談です。でも、貴女は勇先輩を振ったわけですよね。勇先輩を振り回したら本当に許さないですよ。
 貴女だけが勇先輩の凄さに気づいていると、貴女だけが勇先輩の事を想っていると、そういう勘違いはしないでください」

 心の起伏で変身する魔法少女も大変だなと思う。でも、でもと思う。

「そんなに勇先輩の好意がいらないなら僕にくださいよ」

 僕は歩きながら、桜川さんとの場所を入れ替わる最中に、言葉を置いていった。


 勇先輩のマンションから出て、ここからでは勇先輩の部屋は見えない。

「勇先輩が僕のこと良い後輩と言ってくれるから、悪い後輩にはなれないんですよ。良い後輩か……良い後輩も大変だ」

 視界からマンションを切る。

「後輩の役目はここまでですよ勇先輩」

 僕は学校に行く。





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